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2016.11.30

花澤香菜「ざらざら」レビュー

花澤香菜「ざらざら」レビュー

秦 基博とのコラボレーションによる11枚目のシングル。 SUEMITSU & THE SUEMITHの末光 篤や、i-depのナカムラヒロシが手がけたカップリング曲を含む全3曲を収録。

2016年2月にはシングル『透明な女の子』、6月にはシングル『あたらしいうた』、8月にはキャラソン・コンセプト・アルバム『KANAight ~花澤香菜キャラソン ハイパークロニクルミックス~』をリリースした花澤香菜。歌手活動の4thシーズンがスタートした2016年を締めくくる作品が11枚目のシングルとなる「ざらざら」。秦 基博作曲のタイトル曲「ざらざら」、SUEMITSU & THE SUEMITHの末光 篤による、爽やかな疾走感あふれるピアノ・ロック「クラッシュシンバル」、i-depのナカムラヒロシ作曲による「IN LOVE AND IN TROUBLE」の全3曲を収録している。

「ざらざら」

『君の名は。』の新海 誠による監督作品、2013年に公開された映画『言の葉の庭』。花澤香菜はこの作品でヒロイン・雪野百香里役を演じている。秦 基博は、この映画のEDテーマとして大江千里の「Rain」(1988年のアルバム『1234』に収録)をカヴァー、またイメージソング「言ノ葉」を提供している。このことがきっかけとなり、花澤香菜が秦 基博とのコラボレーションを切望、今回それが実現したといういきさつだ。編曲は、aiko、いきものがかり、秦 基博、back numberなど、数々のアーティストのプロデュースや楽曲アレンジを手がけている島田昌典が担当している。

作詞は花澤香菜。心象風景を描くパートの中に“遠い空から 激しい雨が降るのを じっと待ってる”という言葉を織り込んでいるように歌詞には、劇中の多くが雨のシーンであった『言の葉の庭』で彼女が演じた、雪野百香里のイメージも投影されている。それはどうしようもない、停滞した気持ちを言葉に表わしたもの。ごくありふれた日常を過ごす誰しもに当てはまるものとして、その心模様を優しい眼差しで描き出している。

イントロでは秦 基博が爪弾くアコースティックギターとそれに寄り添うように島田昌典が奏でるピアノの音色が清々しく響き、室屋光一郎ストリングスの弦楽奏がうっすらと淡い旋律の層を描く。それぞれの楽器の音の響きは明瞭なれども、輪郭が際立ちすぎたり、また分離感が強すぎることもなく、音のまろやかさをうまく抽出しており、温かみのある音のなじみの良さが感じられるミックスとなっている。低域の密度が増しつつ、あらきゆうこによるドラムの存在感が意識されるものの、それは音圧や音の太さではなく、深みのある音色の方。ややタイトに抑えたビートが楽曲を引き締め、また花澤香菜のヴォーカルとのコントラストを強める役割を担っている。背景ではさりげなくかき鳴らされる八橋義幸のエレキギターがそっとアクセントを加え、メロトロンがセンチメンタルな音色をにじませる。ブリティッシュ・ロックを敬愛する島田昌典らしいアレンジが、アコースティックを基調としたスローなポップス・サウンドに、歌詞の世界観と重なり合うビターなイメージを描き加える。

ヴォーカルは、心の中にいつしか積もった“ざらざら”した気持ちを静かに語り出す。ただ哀しみに浸り続けるのでも、辛く耐えているでもなく、今はただじっとその気持ちから“やさしい花が咲くのを”待っている。優しいようで、でもちょっと寂しいような、聴き手の受け止め方によってどちらにも聴こえてくる柔らかなニュアンスが絶妙だ。そして澄んだ歌声だからこそ、“せつなくなればせつなくなるだけ くやしいけど 生きてるって思う”という言葉に込められた思いの深さも、より強く伝わってくる。

「IN LOVE AND IN TROUBLE」

「終わらないメロディーを歌いだしました。」「群青サバイバル」など、小松未可子にも楽曲提供を行なっているi-depのナカムラヒロシが作曲と編曲を手がけている。岩里祐穂の歌詞が描くイルミネーションに彩られた華やかな街の雰囲気がサウンドからも伝わってくる、ナカムラヒロシならではの洒落たセンスが散りばめられたスタイリッシュなナンバー。

清冽なシンセの音色と軽やかなピアノの響きが、澄み切った冬の空気感と同時にまたどこか温かな雰囲気を伝え、賑やかな12月の街で何故だかワクワクしてしまうような、ちょっと浮き立った気持ちを思い浮かべさせる。それぞれの音色はくっきりとした輪郭なれど、音と音の間をそれらの響きが柔らかく満たす、ふんわりと包みこむようなサウンドが心地好い。そして、躍動的なビートとハンドクラップが時には鮮烈に現われ、漂うような電子音とともに、恋するウインターストーリーといったこの楽曲に緩やかな昂揚感を与えている。

ヴォーカルは、それぞれのセンテンスやパートで歌い方を使い分けており、“白い息吐いて曇る街と歌うショーウィンドウ”では少しフィルターをかけたようなコーラス風のヴォーカルも効果的に、抑揚のヴァリエーションもますます豊か。ファルセットに近くなる高いキーの部分では、花澤香菜特有の高域の甘さが美しく響く。終盤の“会いたい夜も 会えない朝も 素敵な日々が待ってるから 手招くから”の明るい表情もさらに魅力的だ。

ざらざら_通常盤ジャケ写花澤香菜
ざらざら

Aniplex Inc.
2016.11.30

FLAC 96kHz/24bit

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mora

 収録曲

 1.ざらざら
   作詞:花澤香菜 作曲:秦 基博 編曲:島田昌典

 2.クラッシュシンバル
   作詞:岩里祐穂 作曲・編曲:末光 篤

 3.IN LOVE AND IN TROUBLE
   作詞:岩里祐穂 作曲・編曲:ナカムラヒロシ

 4.ざらざら(Instrumental)

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