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INTERVIEW

2017.09.06

隠した”こころ”を奏でる音楽 TVアニメ『覆面系ノイズ』 SADESPER RECORD NARASAKI/WATCHMAN インタビュー

イノハリ楽曲に宿る「90年代オルタナ」の精神

──────楽曲についてもう少し詳しく聞かせてください。OPテーマでもある「ハイスクール」はどのようなイメージで作ったのですか?

NARASAKI まずアップテンポというのが前提としてあって、そこから最初に作ったものをプロデューサーとやり取りしながら調整して作った曲なんです。自分的には他の楽曲に比べると変化球を投げてる感じがしますね。他は構成が一辺倒なんですけど、この曲はAとBとCで違う感じがあるというか。

WATCHMAN 転調がかなり印象的ですよね。「ハイスクール」は最初に作ったものからどんどん構成が変わっていって、AからBのパターンで転調がきて、そこからさらに進行してサビに繋がっていくという形にたどり着くまでにいろいろあったんですけど、完成形は僕らが聴いてもスリリングな流れになってると思います。それがイノハリらしさに結びついてるのかもしれませんね。

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「ハイスクール [ANIME SIDE] -Alternative-」

──────この曲は深桜役の高垣彩陽さんが歌う「ハイスクール [ANIME SIDE] -Bootleg-」と、ニノ役の早見さんが歌う「ハイスクール [ANIME SIDE] -Alternative-」の2バージョンありますが、どのように作りわけましたか?

NARASAKI 深桜バージョンの方はバンド編成での最小限の音なので、わりとシンプルな感じなんですよ。そこは途中からニノ・バージョンに変わることを前提に考えてましたね。ニノ・バージョンの方はブラッシュアップした感じを出したいという話をしていて、音数を増やしてより華やかになればと思って作りました。

WATCHMAN ミックスのやり方も完全に変えてますからね。

──────高垣さんと早見さんのおふたりに同じ曲を別々のバージョンで歌ってもらったわけですが、それぞれ歌のディレクションで違いをつけたりはしましたか?

NARASAKI 楽曲の求めている歌のあり方のようなものは決まっているので、ニノだからこうしてくれ、深桜だからこうみたいのは特になくて。歌としてよいものが録れればいいだけなので、ディレクションに関してはそんなに違いはなかったです。

──────一方でEDテーマの「アレグロ」はイントロから少し影のある感じで、「ハイスクール」とはまた違った雰囲気のエモーショナルなイノハリらしさが出てますね。

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「アレグロ」
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NARASAKI この曲はプロデューサーから「月9のドラマが終わったときにかかり始める曲」というイメージのリクエストがあったんです。なので自分も月9の曲をいっぱい聴いたんですけど、どの曲をもってそのイメージなのかよくわからなくて(笑)。でも多分こういうことかなというところで、イントロから作り始めていきました。アニメのお話は大体最後にユズのモノローグで終わるので、そこに途中から乗っかってくるギターの感じが印象に残るものになればと思って。

──────この曲のアレンジは終盤に抜きみたいな部分があって、そこから再び高まっていく流れがドラマティックでカッコいいですよね。

NARASAKI サビのメロはB面的というか少し地味な感じなので、曲中でそれをいい感じに響かせたくてあの構成にしてるんです。最後はちょっとハッピーな感じで終わらせていて、サビだけじゃなく全体でストーリーがあるという感じですね。

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「ノイズ」
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──────さらに「カナリヤ」や「ノイズ」といった印象的な楽曲がアニメ本編を彩りましたが、それらとは別にアニメ未使用の楽曲も何曲か作られていますよね。例えば「アレグロ」のカップリングに収められている「サテライト」は、マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン直系のシューゲイザーだったりして、それらのアニメ未使用曲はNARASAKIさんらしさがより強く出ている印象を受けました。

NARASAKI 原作に登場しない楽曲で縛りがないですから、そこでバリエーションを持たせようと思ったんです。それと作品全体を通して90年代のオルタナ感があるので、そういうアーリー90’sの音楽でまとめるのであれば、自分の好きなシューゲイザーをやるいいタイミングだと思って(笑)。なおかつ早見さんの歌でシューゲイザーができれば、よさそうなイメージもあったので。

──────たしかに早見さんの歌とシューゲイザーの組み合わせは最高でした。さらに「カナリヤ [ANIME SIDE]」のカップリング曲「ボーダーライン」は、ダイナソーJr.あたりを彷彿させるギター・リフが強烈なグランジ・ロックに仕上がってますし。

NARASAKI たしかに「ボーダーライン」は、J・マスシスが歌っても違和感ないかもしれない(笑)。初期のダイナソーにありそうかも。

WATCHMAN そのあたりは自分たちの青春の音でもあるし、イノハリというバンドは高校生がやっているというところを曲にぶつけたかったんです。その青春感とアーリー90’sのオルタナ感は合致すると思いますし、ダイナソーとかあの辺が表現のやり方としてはいちばんピンときたんだと思いますね。

──────『覆面系ノイズ』という物語の青春とやるせなさが交錯するところはオルタナっぽくもありますしね。

NARASAKI ちょっともやっとしてる、やるせない青さというかね。

──────そういったカップリング曲での遊び心は、自分のようなオルタナ直撃世代はもちろん、当時を知らないいまの若い人にとっても新鮮に響くものになってると思います。

NARASAKI アニソンが好きな人にもこういうシンプルな感じの音楽が響いてほしいとは思いますね。なんの転調もなくて、ABAB終わりみたいな感じのものもよいですから(笑)。実はそういうシンプルな曲がフォーマットとして少なくなってるんじゃないかと思っていて、だからこそ今回、アニメのなかでそういった曲をやることはすごい有意義だと思ったんですね。自分もアニソンについては詳しくないですし、別に否定的なことはなにもないんですけど、アニソンとしてのフォーマットってある程度予想のつくものだったりする部分もあるので。

WATCHMAN 自分たちが形にするのであれば、そういうところに則ったものよりも、自分たちにしかできないことで勝負したほうが面白いと思いますしね。

NARASAKI 例えば「ステイ」(「ノイズ」のカップリング曲)はちょっとグラスゴーっぽかったり、原作の単行本についてた「消失の空」という曲(※コミックス13巻ドラマCD付き限定版に収録)はネオアコっぽいというかザ・スミスみたいな感じで……まあフェード・インで曲が始まるなんてもうザ・スミスですよね(笑)。なのでオルタナのなかでも幅のある表現はしてます。

──────たしかにイノハリというバンドのイメージを保ちつつ、多様性を見せている感じはします。しかもどの曲にも青さがあって。

NARASAKI そこは絶対にそうしたかったんですよ。

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