TVアニメ『クジラの子らは砂上に歌う』ED主題歌「ハシタイロ」rionosインタビュー

今秋に放送がスタートした梅田阿比原作のTVアニメ『クジラの子らは砂上に歌う』。砂の海に覆われた世界をさまよう漂泊船〈泥クジラ〉を舞台に、そこで外の世界との接触を絶って暮らす人々に訪れる劇的な運命と、それに抗わんとする少年少女たちの記録を描いたハイ・ファンタジー作品だ。〈情念動(サイミア)〉と呼ばれる感情を源とした超能力をはじめ、多くの謎を隠し持つ幻想的な世界設定や息もつかせぬストーリー展開などで、早くも今期話題のタイトルとなっている。

そんな注目作のED主題歌「ハシタイロ」でメジャーデビューを飾るのが、ここで紹介するシンガー・ソングライターのrionos。アニメ・タイアップ曲を歌うのは今回が初ながら、以前から作曲家/クリエイターとしてChouCho、上田麗奈、寺嶋由芙ほか多くの作品に携わっていることもあり、その名前に見覚えがある人も多いことだろう。『クジラの子らは砂上に歌う』という作品に出会ったことでスランプを乗り越え、ソロアーティストとしての再起を果たしたという彼女に、今回のシングルに込めた『クジラ』や自身の活動に対する想いを語ってもらった。
なお、リスアニ!WEBでは、同じく本アニメのOP主題歌「その未来(さき)へ」でメジャーデビューするシンガーソングライター・RIRIKOのインタビュー記事も同時展開。ぜひ併せてチェックしていただきたい。

※リスアニ!WEB掲載、『クジラの子らは砂上に歌う』OP主題歌「その未来へ」RIRIKOのインタビュー記事はこちら

Interview & Text by 北野 創
at Lantis

rionos「ハシタイロ」のレビューはこちら

音楽の道を進むことになったきっかけ

─── 今回はリスレゾ初登場ということで、プロフィール的な部分からお話をお伺いできればと思います。まず音楽の道を志されたきっかけはなんですか?

rionos 私のお家は母がクラシックのマリンバ奏者、父がジャズ・ドラマーという音楽一家だったので、自分も自然と音楽をやって生きていくんだろうなという思いで育ってきました。なので、小さいときからピアノを演奏したり、バイオリンを習ったりしていたのですが、高校生のころにいろんなことが原因でプレイヤーになるのは諦めることになって。それで体調的にもあまり外出できなかったので、お家で映画やアニメを観たり、ゲームで遊んでいるうちに、サウンドトラックや作曲の人を注目するようになり、作曲家であればお家で仕事ができるし、自分でもなれるんじゃないかと思うようになったんです。そこからDTMを知って、いろいろ調べて作曲を始めた感じですね。

─── 自己流で学ばれたのですか?

rionos 最初は大阪芸術大学の通信教育部に入って、そこの作曲科で勉強していたのですが、そのうちに少しずつ元気になっていって、自分のできることが増えていったんです。それで芸大とは別にDTMを本格的に教えてくれる教室を見つけて、そこに1年間通って一気に詰め込むように勉強をしてDTMで曲が作れるようになったんです。そのころにはもう元気になっていたので、大阪芸大にも3年生のタイミングで通学制に編入して、そこからクラシックやポップスなど色々なものを学びました。

─── どんな作曲家になろうと思っていたのですか?

rionos 人と違うことをしたいという気持ちはあったので、音を聴いただけでその人の作品だとわかる、その人が作ることに意味がある作曲家になりたいという思いはずっと持っていました。自分の曲は、不思議なコード感や音の響きが一番のポイントになっていると思うのですが、その感覚は昔から自然とあるんです。例えば菅野よう子さんの曲は聴けば「そのコードすごくわかる!」という感じがするんです。もちろん私なんかが「わかる」というのは畏れ多いんですけど(笑)。

─── サントラが好きになるきっかけになった作品はありますか。

rionos この1本というのはあまりないのですが、坂本龍一さんや久石譲さん、菅野よう子さんの作品は好きでよく聴いてました。元々ピアノの発表会でもゲーム音楽や映画音楽を弾いたりしていて。坂本龍一さんだったら『星になった少年』のテーマ曲(「Shining Boy & Little Randy – opening title」)がすごく好きで、発表会でも弾きました。『シェルタリング・スカイ』のテーマ曲も好きですね。クラシックにはない感覚が好きだったみたいです。

─── アニメ音楽ではどうですか?

rionos 作品的に好きなのは『HUNTER×HUNTER』で、劇伴もよく聴いていました。冨樫義博さんの作品は『幽☆遊☆白書』も『レベルE』も、ちょっとダークさがあって好きなんです。音楽で言うと『ピアノの森』の曲も好きで発表会で弾きましたね。

─── そこからどんなきっかけで、ご自身で歌われるようになったのですか?

rionos 元々中学生のころにaikoさんが好きで「歌手になりたい!」と言っていたこともあるのですが、ちゃんと歌うようになったのはDTMの教室で歌ものの曲を作る授業を受けたのがきっかけですね。そこでみんなに歌を聴いてもらったら評判が良くて、先生とも一緒に歌ものを作るようになったんです。その教室には卒業制作としていろんなタイプの曲を作って一枚のCDにする課題があったのですが、そこで自分でCDを作ることの楽しさも覚えて、できた作品をいろんなレコード会社に送ってみたりとかもして。それでいくつか反応をもらえたうち、私に自分の歌をした方がいいよと背中を押してくださったのが、当時東芝EMIにいらっしゃったディレクターさんだったんです。そのご縁があって、そのディレクターさんのところで最初の作品『read me.』(2012年)を作らせていただいたり、ゆっふぃー(寺嶋由芙)やふぇのたすの作品に関わらせてもらうようになって。

─── なるほど。そこから作曲家としての道も一気に開けたわけですね。そのシンガーソングライターとしての初作『read me.』はどのような反響を得られましたか?

rionos それを聴いて私を認知してくれる人が増えましたし、自分のインスト曲だけじゃなく歌にも興味を持ってもらえることが多くなりました。でもその後、自分の作品作りに迷い始めてしまったんです。私は元々新居昭乃さんが大好きで、最初は新居さんみたいになりたいという単純な気持ちで作品を作っていたところがあるのですが、東京に上京してから新居さんとご縁があって仲良くしていただくようになりまして。新居さんやアレンジャーの保刈久明さんが、お家でご飯を食べさせてくれたり、すごく親身になってくださって、もう神様みたいな存在なんですが(笑)。でも、新居さんが近くになったこともあって、私はこの人には絶対になれないと思ったし、そもそもその人になりたいという志がダメなんじゃないかとか考え始めて、自分の曲を作ることに対して迷走するようになってしまって。だから自然と作家活動のほうに集中するようになったんです。

─── それが、今回『クジラの子らは砂上に歌う』のED主題歌「ハシタイロ」でメジャーデビューすることになったわけですからね。

rionos ずっと迷走していて、自分がアーティストとして出ることはもうないだろうと思っていたので、本当に自分がメジャーデビューする日がくるなんてという感じです。でも今回、以前からChouChoさんの楽曲提供などでお世話になっていた、ランティスのプロデューサーさんから『クジラ』のお話をいただいて、作品を読ませていただいたら自分のすごく好きな世界観で、その『クジラ』という作品が楽曲のテーマとしてもらえるわけじゃないですか。それまで自分の曲は迷走して作れないでいましたが、テーマがあることで作り始めることができて、さらに作ってみたら自分らしいものが作れた実感もあって、今は迷走期を乗り越えたような気持ちです。

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