INTERVIEW
2017.10.25
─── 一方でカップリング曲の「空を飛びたいと」はどのように作られたのですか。
rionos こちらは自由に作っていいというお話だったので、最初はジブリ作品の主題歌っぽいイメージで作ろうかなと思っていたのですが、気がついたらシガー・ロスみたいになっちゃってました(笑)。たまりに溜まってたエネルギーがバーンって出たら、もうシューゲイザーみたいにギャイーンって(笑)、大爆発した感じで。でも、私はこういうことが歌いたかったんだなということがわかって、結果的にすごく好きな曲になりました。
─── その〈歌いたかったこと〉と言うのはなんですか?
rionos やっぱり東京に出てきてからの孤独というのがずっとあって。昔は思うようにできなかった思春期を取り戻すじゃないですけど、その分音楽で成功しないと自分の人生に納得できないと思っていて、絶対成功するんだという気持ちが強かったんです。でも、上京してから3年が経つのですが、本当に気心の知れた人との人間関係の築き方や、自分の居場所みたいなものを作ることの難しさを感じていて、だんだん音楽で成功することだけが幸せではないんじゃないかと思うようになって。そういう孤独な気持ちがこちらの曲に出ていると思います。
─── それはこの曲の歌詞で言うと〈うまく涙が流せるまで となりに座っているよ〉や〈テーブルひとつ囲もう〉などに表れてますか?
rionos 誰かとテーブルを囲むということの大事さを日々感じていて。まだ向こうで一人暮らししていたころも、なんだかんだで実家に帰って、おじいちゃんやおばあちゃんとご飯を食べたりしていたし、寂しいと思ったらそうできていたんです。でも、今はそれが気軽にできないし、一緒にご飯を食べる人がいることってすごく大事なことだと思って。地位とか名誉とか出世とかをめざしても、自分の心はずっと幸せになれないかもしれないと考え始めてしまったんです。成功するよりも日常的なことが大事なんじゃないか、自分が本当に欲してるのはそういうことなんじゃないかなって。
─── それは曲を書いていくなかで気づいていったんですか?
rionos 書いたら自然とそうなったというか。自分はこう思っていたんだって、あとから実感する感じですかね。
─── 楽曲の内容で言うと、後半の〈小さな家をつくろう〉のところからrionosさんの歌声が暖かく聴こえます。そこにrionosさんの願いが込められているように思えます。
rionos 私はたぶん、暖かい家みたいなものにすごく憧れがあって。おじいちゃんとおばあちゃんがいて、お父さんとお母さんがいて、そこに子どもの自分がいる。でも、私はもう大人になってしまったので、その理想は叶わないわけじゃないですか。その叶わないものへの強い憧れというか、自分の中にずっと残っているのはこういう部分なんだなって思って。この曲は自分の気持ちがすごく出てると思いますね。
─── 楽曲的にはだんだん盛り上がっていくようなアレンジで、最後は祝祭感のある終わり方をします。それも理想の形の表れではないでしょうか?
rionos そうですね……孤独ななかで昭乃さんや保刈さんがご飯を食べさせてくれたり、数少ない友だちが私の生命を繋いでくれてるありがたみというか。すごく孤独なんだけど、助けてくれる人がいてくれるんだみたいな気持ちもあって、うーん……。
─── 楽曲の後半ではシンガーの伊礼 亮さんがコーラスを歌われてますけど、伊礼さんはrionosさんのお友だちですよね。
rionos 数少ない友だちのひとりです(笑)。
─── あそこはrionosさんと伊礼さんの男女混声になって、家族っぽい雰囲気が生まれる素敵なパートになっています。やはり伊礼さんと一緒に歌うことが大きなポイントになっているかと思います。
rionos そうですね、この人しかいないだろうと思って。あそこはみんなで生きていく感じを出したくて、少年少女感が出たらいいなと思ったんです。
─── 歌い手がふたりになることで、歌詞の最後の一節〈僕の代わりに 泣いた君よ〉にも繋がっていきますしね。
rionos 私、泣きたいときに泣けないことがあるんです。感情を抑えがちなので、ひとりのときじゃないと涙をこらえてしまうクセがついてしまっていて。でも、私の曲を聴いて泣いてくれる人がいたりすることで、自分も救われることがあるんですよね。それこそ伊礼くんは私の曲を聴くとすぐ泣いちゃうんです(笑)。そんな人がいてくれることのありがたみをジンワリ感じたりとか、そういう暖かいものと寂しいものが混ざって一気に爆発したから、こんなに壮大な曲になったのかもしれないです。
─── こうやってお話を聞いてると、どちらの曲もrionosさんなりの人に対する優しい気持ちみたいなものが表れてるのかなと思いました。
rionos 優しくはないですよ。人間らしくなってきたのかなって思います(笑)。
─── それって、感情を取り戻していくリコスの物語そのものじゃないですか。
rionos でも本当にそんな感じかもしれないですね。「空を飛びたいと」も書いてみると『クジラ』っぽくもあると思うんです。みんなで小さな家を作っていく感覚もそうだし、〈真水と汐水のちがいで そこに何の意味があろう〉も作品と関係して見えるように書けたかなと。育ち方とか身体の環境とか、テンションとか元気さが全然違っていたとしても、その人がその人であればいいじゃないかという気持ちというか。
─── その気持ちは「ハシタイロ」と「空を飛びたいと」、両方の曲にはっきりと表れてますね。
rionos 私の憧れなのかもしれないですね。そういう未来があればいいなっていう。
─── さて今回のシングルは、ハイレゾでは192kHz/24bitで配信されますね(e-onkyo musicのみ192kHz/32bitも配信)。
rionos 今回は生楽器をたくさん使って、素晴らしい演奏をしていただいているので、その響きの豊かさを聴いてもらえるとうれしいです。弦楽器って基本は奥にあるのですが、ラインがはっきりして見えやすいかなと。また音の粒立ちや空気感も感じられますよね。私の声は倍音が多いと言われるので、それがたっぷり詰まって聴こえるかと思います。環境が整っている方はぜひ聴いていただきたいです。<END>
●「ハシタイロ」のレビューはこちら
●リスアニ!WEB掲載、『クジラの子らは砂上に歌う』OP主題歌「その未来へ」RIRIKOのインタビューはこちら
rionos
大学在学中よりミュージカル、ゲーム、ドラマCD、映画のBGM制作など、クリエイターとして活動し、上田麗奈やChouChoなどのアーティストへの楽曲提供を活動的に行うなど、すでにクリエイターとして活発に活躍中。自身もrionos(リオノス)名義でシンガーソングライターとして活動を行っており、幅広い活動を続けている若手実力派アーティスト。
●Lantis webサイト:rionosのアーティスト・ページ
●rionos˙ᴥ – Twitter
●rionos | Free Listening on SoundCloud
●TVアニメ「クジラの子らは砂上に歌う」公式サイト
© 梅田阿比(月刊ミステリーボニータ)/「
rionos
ハシタイロ
Lantis
2017.10.25FLAC・WAV 192kHz/24bit、WAV 192kHz/32bit
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© 梅田阿比(月刊ミステリーボニータ)/「クジラの子らは砂上に歌う」製作委員会
1.ハシタイロ
作詞・作曲・編曲:rionos
2.空を飛びたいと
作詞・作曲・編曲:rionos
3.ハシタイロ(Instrumental)
4.空を飛びたいと(Instrumental)
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