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2017.11.15

XAI「WHITE OUT」レビュー

XAI「WHITE OUT」レビュー

BOOM BOOM SATELLITESの中野雅之がサウンド・プロデュース!期待の新人シンガーのデビュー作が完成。アーティスト盤にはTeddyLoid、牛尾憲輔、ミトら豪華クリエイター陣が参加した楽曲も併せて収録。

 

日本映画界を席巻した『シン・ゴジラ』から1年。ゴジラ・シリーズ初の劇場アニメ化となる『GODZILLA 怪獣惑星』が11月17日より公開される。TVアニメ『シドニアの騎士』の静野孔文と、劇場アニメ『BLAME!』の瀬下寛之が監督を務め、ストーリー原案・脚本には『魔法少女まどか☆マギカ』や『PSYCHO-PASS サイコパス』でもおなじみ虚淵玄が参加。また音楽は服部隆之が担当、3DCGスタジオのポリゴン・ピクチュアズが制作にあたっている。

この映画主題歌でデビューするのが、第8回「東宝シンデレラ」オーディションにて、初代「アーティスト賞」を受賞した女性シンガーのXAI(サイ)。劇場公開日に二十歳の誕生日を迎える彼女のデビュー曲「WHITE OUT」を手がけるのが、BOOM BOOM SATELLITESの中野雅之だ。中野にとって女性ソロシンガーのプロデュースは初となる。

「WHITE OUT」は表題曲とカップリング曲を収録したアニメ盤のシングルと、それらにTeddyLoid、牛尾憲輔(agraph)、ミト(クラムボン)が手がけた3曲を加えたミニ・アルバムの2形態でリリース。豪華クリエイター陣が集結した最高の楽曲で、シンガー・XAIの船出を華々しく飾っている。

「WHITE OUT」

作詞には、ねごとの蒼山幸子が参加。中野は、ねごとからのたっての願いに応え「アシンメトリ」や「DANCER IN THE HANABIRA」などの楽曲をプロデュースしており、そのことはねごとのサウンドにも大きな影響を与えている。そんな両者の活発な交流も伺える今回の組み合わせである。

明滅するようにリズムを刻み、シンセの音色が重なり合い、エレクトロニック・サウンドを構築していく。力強いキックとそれに呼応するマシーナリーな音も加わり、楽曲をさらに躍動的に展開させ、聴く者を心地よい昂揚感へと導く。星のまたたきを思わせる電子音も織り込まれたサウンドはダンサブルでありながらまた浮遊感も強く、時空を超える映画のスケールも投影したコズミックなイメージを描き出している。想像力をさらに刺激する鮮やかな音の仕上がりだ。

遥か彼方からのメッセージを届けるように歌声は宙に漂いながら、数光年隔てた距離を一気に縮めるように抑揚をしなやかに踊らせる。XAIの持ち味であるハスキーな低域から高域のロングトーンまで、声の持つ特性を存分に生かしたヴォーカリゼーションが印象的だ。そして、何より声の存在感が強く、高みを上りつめるサウンドと相まって、その響きに深く吸い込まれるかのよう。闇を照らす救いの光となって輝くボーカルの凜とした佇まいが限りなく美しい。

ハイレゾは一聴して感じられる鮮明な音の鳴りで、音の揺らぎやその輪郭が次第に鋭角になる様子など、微細な動きや変化までをも隈なく捉えた、強い解像感が伝わってくる。また立体的な音作りとなっており、リズミカルなシンセの音色やビートが迫ってくるようなイメージだ。中野雅之らしいサウンドへのこだわりがここでも感じられる。ボーカルは繊細なニュアンスを表しながら、またエネルギッシュに空間へと表現の翼を広げる。ラストのリアルなブレスは、あらたな旅立ちを示したBOOM BOOM SATELLITESの「NARCOSIS」(「LAY YOUR HANDS ON ME」のラストナンバー)のイメージと重なるようにも思える。

TeddyLoidが作詞・作曲・編曲を手がけた「Feeling Alive」は、「WHITE OUT」よりもさらにクラブミュージックへと近づいた楽曲だ。光が降り注ぐような華やかさと、フロアの昂揚感も重なったヴィヴィドな雰囲気に包み込まれる、アッパーなEDMサウンドが響き渡る。「Somewhere in Night」は、『交響詩篇エウレカセブン』『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』『カウボーイビバップ』などの作品で知られる脚本家の佐藤 大が作詞を、TVアニメ『ピンポン THE ANIMATION』や映画『聲の形』の音楽を手がける牛尾憲輔が作曲・編曲を担当。こちらは黎明期のハウス・ミュージックを現代音楽やエレクトロニカのフィルターを通して、再構築したようなサウンドとなっている。「WHITE OUT」「Feeling Alive」「Somewhere in Night」と、どれもダンスミュージックをベースとしながらも、三者三様のサウンドでXIAの個性を浮き彫りにしようとしており、異なる文脈による解釈や方法論の違いも垣間見えて興味深い。そして、これらのサウンドにXIAの歌声が実によく映えるのだ。

これらに曲に対してクラムボンのミトが手がけた「SILENT BIRD」は、ピアノを交えたバンドサウンドによるアプローチを取っている。やりきれぬ想いを叩きつけるような焦燥感を帯びた歌声と、感情がもつれ絡み合うさまを表したサウンド。そして、歌うことへの情熱をたぎるように綴った歌詞は、自らを〈歌っていないと死んでしまう〉とまで語る、XAIの姿そのものである。

表題曲とともにアニメ盤・アーティスト盤ともに収録されているのが「はじまりのうた」。作詞はアイドルからK-POP、アニソンと幅広いジャンルで活動している作詞家のPA-NON(今作では「SILENT BIRD」の作詞も担当)、作曲・編曲はClariSをはじめ、藍井エイル、内田真礼、黒崎真音、南條愛乃など、多数のアーティストへ楽曲提供を行っている丸山真由子が手がけている。これまでのアグレッシブな楽曲とはガラリと変わり、ピアノとストリングスが柔らかく旋律を紡ぐバラードナンバー。こわれもののような儚さも漂う歌声から、そっとこぼれ落ちる優しさが胸を強く打つ。ボーカルの表情や今までとは違った雰囲気にきっと驚くことだろう。「SILENT BIRD」とは歌詞もサウンドも歌も対になるような楽曲で、未来へと歩き出した今を美しく描いている。

多彩なサウンドで類い稀なる歌唱力をもつXAIの才能の扉を次々と開き、その魅力を様々な方向から浮かび上がらせた「WHITE OUT」。まるでデビュー作とは思えぬほどの完成度を誇っている。まだ未知なる可能性をその奥に秘めているだけに、今後どのような活躍をみせてくれるのか期待がますます高まる。

XAI
WHITE OUT

TOHO animaiton RECORDS
2017.11.15

FLAC・WAV 48kHz/24bit

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 収録曲

 1.WHITE OUT (アニメーション映画『GODZILLA 怪獣惑星』主題歌)
   作詞:蒼山幸子 作曲・編曲:中野雅之

 2.Feeling Alive
   作詞・作曲・編曲:TeddyLoid

 3.Somewhere in Night
   作詞:佐藤 大 作曲・編曲:牛尾憲輔

 4.SILENT BIRD
   作詞:PA-NON 作曲・編曲:ミト

 5.はじまりのうた
   作詞:PA-NON 作曲・編曲:丸山真由子

 6.WHITE OUT(Instrumental)

 7.Feeling Alive(Instrumental) 

 8.Somewhere in Night(Instrumental) 

 9.SILENT BIRD(Instrumental)

10.はじまりのうた(Instrumental)

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