BOOM BOOM SATELLITES「LAY YOUR HANDS ON ME」レビュー

限りない幸福感に満ちたヴォーカルとサウンドが果てしなく広がる!TVアニメ『キズナイーバー』OPテーマ収録。

1990年にヴォーカル/ギターの川島道行とベース/プログラミングの中野雅之によって結成されたBOOM BOOM SATELLITES。1997年6月にはケン・イシイに続く日本人アーティストととしてベルギーのレーベル、R&Sレコーズとの契約を果たし、12インチシングル「4 A Moment Of Silence」をリリース。これを皮切りにBOOM BOOM SATELLITESの快進撃が始まる。イギリスの老舗音楽誌「Melody Maker」は「ケミカル・ブラザーズ、プロディジー以来の衝撃!」と彼らを大きく紹介し、その年のベストバンドとレビュー。音楽誌「NME」はシングル・オブ・ザ・ウィークのベストに選出、ダンス・ミュージック専門誌「Mixmag」の絶賛コメントなどと、現地での精力的なライヴ活動とともに彼らのシングルは海外音楽誌の話題を独占した。

評価が高まる中、1998年にリリースされた1stアルバム『OUT LOUD』は、ヨーロッパで爆発的なヒットを巻き起こし、その人気は世界中へと飛び火した。ブレイクビーツ、テクノ、ドラムンベース、ジャズ、ダブなどのダンスミュージックとロックをクロスオーバーした最先鋭のサウンドは、ジャンルを超え幅広く音楽好きに支持されることとなった。

そして彼らは現在までに9枚のアルバムをリリースしている。時代の変化に呼応しつつも、独自の進化/深化を遂げたBOOM BOOM SATELLITESのサウンドは、作品のみならず圧倒的なライヴ・パフォーマンスでもオーディエンスを魅了し、国内外に大きな影響を与えて続けている。

BOOM BOOM SATELLITESはアニメーションとも所縁が深く、2004年に映画『アップルシード』主題歌「Dive For You」、2007年に映画『ベクシル -2077日本鎖国-』挿入歌「EASY ACTION」、2009年にTVアニメ『忘念のザムド』OPテーマ「BACK ON MY FEET」、2012年にOVA『機動戦士ガンダムUC episode 5 「黒いユニコーン」』主題歌「BROKEN MIRROR」、2015年『ニンジャスレイヤー フロムアニメイシヨン』メインテーマ「BACK IN BLACK」などと、様々な作品でシングルやアルバム収録曲が使用されてきた。

またsupercellのryoは、かねてからBOOM BOOM SATELLITESを敬愛しており、自身がプロデュースしているEGOISTによるTVアニメ『ギルティクラウン』EDテーマ「Departures ~あなたにおくるアイの歌~」、OPテーマ「The Everlasting Guilty Crown」のリミックスをBOOM BOOM SATELLITESに依頼している。また後にsupercellとして、BOOM BOOM SATELLITESのリミックス・アルバム『REMIXED』に、「BROKEN MIRROR」のリミキサーとして参加している。

2015年の9thアルバム『SHINE LIKE A BILLION SUNS』に続く作品『LAY YOUR HANDS ON ME』のタイトル曲は、TRIGGER制作のTVアニメ『キズナイーバー』のオープニングを美しい映像とともに飾る。このうえない多幸感と昂揚感に包まれるサウンドは、BOOM BOOM SATELLITESのすべてを凝縮し結晶化した、彼らのサウンドの到達点となるものだ。4曲入りのこの作品は彼らの最新作にして最高傑作に仕上がった。

中野雅之は「レートの低い圧縮音源などは実際多くの情報が欠けてしまい楽曲の背景にある様々な世界観や作り手の意図や思いがスッパリと消えてしまうものなのです」「少しでも優れたフォーマットと環境で楽しんで欲しい。音自体に宿るスピリットを聴きとってください」(『SHINE LIKE A BILLION SUNS』ハイレゾ版リリース時のコメント)と発言している通り、ハイレゾのリリースに意欲的だ。今作『LAY YOUR HANDS ON ME』のCD初回限定盤に同梱されているBlu-rayディスクには、同楽曲のハイレゾ音源のデータが収納されている。「クリエイターとリスナーの関係をより近づけてくれるフォーマットがハイレゾ音源だと思います」との言葉そのもの、BOOM BOOM SATELLITESに深くのめり込むことができる、より親密なサウンドが隅々まで広がっている。

「LAY YOUR HANDS ON ME」

ダンス・ミュージックを通過したエレクトロニクス・サウンドと、ダイナミックさを兼ね備えたバンドが紡ぎ出す美しい歌とメロディが見事なまでに調和したナンバー。イントロでは、オーケストラのチューニングのような、またそれを待ちわびる観客のような雑踏の音が沸き起こる。そして開演を告げるブザーの如く一本のノイズが揺らめき、徐々に現われてくる持続音が高みに達した瞬間、美しい和音のタクトが一気に振り下ろされる。BOOM BOOM SATELLITESの音楽を幾度となく紡いできたNord Leadの音色が重なり合い、彼らのラストワルツが華麗に始まる。

音の微粒子に多幸感が乱反射する、その精彩な解像感が伝わってくるハイレゾ。透明感に加え厚みを増したサウンドは重力を忘れたかのように上昇を続け、その電子音はいっそうの輝きを放ち、眩いばかりの光が降り注ぐ。シンセとともに昂揚感へと導くビートやリズムも音色は鮮やかなれどエッジは緩いカーブを描き、分離感だけでなく全体的な音のなじみが感じられる。アナログな温かみや柔らかさも含んだハイファイさといった音像が伝わり、CDよりもさらにトランス感のあるサウンドへの没入感が強まった仕上がりだ。

川島道行のヴォーカルは伸びやかに何処までも高く飛翔し清々しく響き渡る。

“ Wait I’m here always, brighter than sunshine ”

このシンプルなセンテンスをごく自然に、素直に言い切るために、人はどれだけ走ればよいのだろうか。
「LAY YOUR HANDS ON ME」というタイトルに込めた意味についての質問に対して中野雅之は「本当の意味は川島しかわからないと思いますが、あえて代弁するなら“希望” “痛み” “祈り” “共有” だと思います」(「リスアニ!Vol.25」~BOOM BOOM SATELLITES INTERVIEW~)と答えている。哀愁でも諦観でもない、希望を照らし出すその声の力強さは静かに激しく胸を打つ。開放感を与えるその澄み切った歌声は限りない優しさに満ちあふれ、世界を祝福するように静かに佇む。

「STARS AND CLOUDS」

シンセサイザーの緩やかな持続音とピアノ、深いリヴァーヴがかかったヴォーカルが教会の賛美歌を思わせる荘厳さ。そしてシューゲイズな轟音が呑み込まんばかりに押し寄せては引いていく、ホワイトアウトするサイケデリック感がうっすらとにじむゴスペルロック。

ハイレゾでは、彼らならではのダイナミズムが遠近感を消失してしまうかのような広大なスケールで展開。フィードバック・ノイズが増幅されるエネルギーのシャワーとなって放たれて、透き通ったピアノの音色と歌声に溶け込み、空間を鳴動させる。炸裂する「動」と回帰する「静」が優美に交差するその真っ只中へと引き込まれる、音の情報量とイメージは豊穣だ。残響と歌声は時間を引き延ばすように深く重なり合い、とめどなく美しさがあふれ出る。轟音の渦に沈み込むエモーショナルな激しさと透明なヴォーカルの浮遊感が相まって、ドリーミーなサウンドへ心地好く漂流させる。

そして雑踏の音が流れ込み、そのまま「FLARE」へと繋がる。流麗な弦楽奏と川島道行のコーラスにジャーマンロックや初期NEW AGEミュージックを取り入れたE.A.R.風味の電子音が重なる極上のアンビエントナンバー。弦楽奏の深い響きと幾重もの声のレイヤー、細やかなシンバルとシンセの音色が緩やかに引き起こすめくるめく昂揚感による神秘的なコズミック・トリップへと誘なう。

「NARCOSIS」は、コーラスにブレイクビーツが絡み合う、古巣のR&Sやワープ、初期エイフェックス・ツインを彷彿とさせるアンビエントテクノ。後半からは川島道行の声が逆回転でエディットされ、覚醒前の状態を意味するタイトルのごとく、言語化される前の抽象的な心象風景を喚起させる。これら4曲のサウンドは彼らが過ごした90年代の音響/エレクトロニクス・ミュージック・シーンを何処となく思い出させ、BOOM BOOM SATELLITESの音楽的ルーツといったものも窺える。

様々なメディアやクリエイターを触発し、常にこれまでを超える新たな作品を切望され、それを叶えてきたBOOM BOOM SATELLITES。音楽と、リスナーとともに駆け抜けた歳月が過ぎ去り、その活動は幕を閉じる。そして彼らの曲、こめられた思いは耳に、心にずっと残り続けるに違いない。

声で始まり再び雑踏の音で終わるラストナンバー「NARCOSIS」から1曲目の「LAY YOUR HANDS ON ME」をリピートさせるとエンドレスにつながり続けるような、そんな楽曲の構成と全体へと集約する共通のイメージが伝わってくる。それはもしかすると循環することによってもたらされる、永遠性といったものを示しているのかもしれない。

BOOM BOOM SATELLITES
LAY YOUR HANDS ON ME

Sony Music Labels Inc.
2016.06.22

FLAC 96kHz/24bit

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e-onkyo music
mora

収録曲

   作詞・作曲・編曲:BOOM BOOM SATELLITES

 1.LAY YOUR HANDS ON ME (TRIGGERオリジナルTVアニメーション「キズナイーバー」OPテーマ)

 2.STARS AND CLOUDS

 3.FLARE

 4.NARCOSIS

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