INTERVIEW
2018.01.24
──爽やかに滑り出したこの曲に続くのが、前半の中では唯一ダークめな「A Crow」というのにいきなり驚きました。
渕上 やっぱりひとつダークめな曲もやりたいなと思って、「ダークとなるとカラスだな」と思ってこのテーマにしたんですよ。でもカラスとひと口に言っても人によってその解釈は違うので、そこをお伝えする大変さもあったりとか。私の中では、早朝の歌舞伎町でゴミを漁ってるカラス、みたいなイメージでした。
──ちょっとアウトローな感じの。
渕上 そうですそうです。でも、この曲以前に上がってきたものはすごくオシャレだったので、「うーん……求めてるのは、オシャレじゃないんです」とお伝えして、申し訳ないなとは思いながらもやり直していただいて。それを経て、最終的には「これぞ、私の中のカラスです!」っていう曲をいただけて、大満足の1曲になりました。ただ、シングルではなくアルバムの中の1曲なので、ひとつだけ飛び抜けて擦れた歌詞になってしまってもいけなくて。そういう意味では、歌詞を書くうえでの言葉選びにいちばん苦労した曲なのかなって思ってます。
──浮いてはいけないのはボーカルもだと思うので、そこも含めて難しいポイントの多い1曲だったのかなと思います。
渕上 そうですね。レコーディング自体も結構後半のほうだったので、そういう意味でも全体のバランスをすごく意識した曲ではあると思います。
──本当に“擦れた”という言葉がぴったりな主人公像が、すごく見える曲ですね。
渕上 イメージとしては、“若かりし頃のちょっと荒れてる時期”みたいな感覚ですね。書きながら「あぁ……私か、これ」って思ったりもしながら(笑)。そういうつもりで書き始めたわけじゃないんですけど、やっぱり書いていくと自分になるんだんって思いましたね。だから、嫌な時期もあってよかったなって、こういう形になるとすごく思います(笑)。
──続く「Migratory」はEDMチックな曲ですが、先ほどおっしゃったように結構歌われているイメージのある曲とはいえ、キャラクターのときとは違う色合いも感じられました。
渕上 やっぱり声色を意識することがない、というのがいちばん大きいのかなと思います。自分自身のナチュラルな、出しやすいところで歌わせていただいているので、より“渕上 舞”として歌えているのかな? なんて思いましたね。
──羽ばたきを感じるサウンドと、「渡り鳥」を意味するタイトルがすごくピッタリな印象を受けました。
渕上 渡り鳥って、目指す場所があって高くまっすぐに飛んでいって、そこには力強さや美しさ、爽やかさがあると思うんですけど、鳥自身としては好きで飛んでいるわけでもないんですよね。悪く言うと“行かされてる”部分もあったりすると思うので、その使命感みたいなところをうまい塩梅で表現していただけたらうれしいです、というお願いをした曲です。
──その想いは、私たちの人生にも言えるものなのかもしれませんね。
渕上 そうですね。「みんなやりたいことだけやって生きてるわけじゃない」っていうところと、渡り鳥とを重ね合わせて。なので曲順としては序盤の曲なんですけど、私は「Fly High Myway!」のアンサー的な曲になるのかな? とも感じているんですよ。レコーディングでは、この曲が最後の曲だったというのもありまして。
──そうなると、感慨深い部分もありましたか?
渕上 そうですね。これまでのレコーディングのこととか、自分自身が今まで声優としてステージに立ってきたこととかが思い出されてきて、ひとりですごく感動してました(笑)。それにこの曲の歌詞を手がけてくださったアイラさんには、今回3曲歌詞を書いていただいたり、最初の会議からいろいろお話もさせていただいたりしたので、勝手ながら「見守ってくれていたのかな?」って感じていて。それも合わせて、すごくジーンときちゃいましたね。
──ただ、その曲の次が「トロピカルガール」ということは……?
渕上 南の国まで渡って行っちゃったんですね(笑)。
──こういうサンバっぽい曲こそ、なかなか歌われる機会がなかったのでは?
渕上 そうですね。「意味ないテンション高い感じの曲を歌えたら楽しいかな?」と。それと、自分の中で新しい発見になるのかな、とも思ったんですよね。
──この曲にも、イメージの元になった鳥はいるんですか?
渕上 オニオオハシっていう、黒い身体で黄色い大きなくちばしのザ・トロピカルな鳥がいるんですけど。アマゾンで“空飛ぶ宝石”って言われてる鳥なので、これをモチーフにして書いていただきました。
──それが、“グアルーリョス空港からマナウスまでひとっ飛び”する。
渕上 もう、「位置関係全然わかんない!」って思いながら(笑)。でもそういう、意味はわかんないんだけどテンション高い、嫌なこともめんどくさいことも全部忘れて盛り上がって、お祭り騒ぎで楽しい気分になっちゃおうっていうのが曲のテーマだったりもするので。
──渕上さん自身、序盤から奔放に歌われてるなという印象がありました。
渕上 すごく楽しかったです(笑)。それとこの曲、ラララで合唱するパートがあるんですけど、その場にいたスタッフの男性陣全員にブースの中に入って歌ってもらったんですよ。逆に私はブースの外に出て「もっと元気、出してくださーい!」って言ったりしていて(笑)。
──ディレクション側に(笑)。
渕上 はい(笑)。そういう遊び心も溢れさせてみんなで楽しんで録った曲でもあります。男性の声も入ってわーっとなる曲なので、ライブのときは男女関係なく盛り上がれる曲になったらいいなぁ、っていう想いでレコーディングさせていただきました。歌詞にも“みんなで歌おう!踊ろう!”ってあるので……まぁ、4月のライブはスタンディングなので、あんまり踊るのはちょっとアレなんですけど(笑)。でも思いやりを持ちつつ、みんなで盛り上がれたらな、と思います。

──ひとしきり盛り上がったあとは、流れるような美しいメロディの「君と雨に歌うソネット」で少し落ち着きを取り戻していきます。
渕上 ただその分、一定のリズムを続けるのが難しくて、意外と歌うのが大変な曲なんですよ。あんまり息継ぎのポイントもなくて。なんだか、白鳥みたいな感じだなって思いました。優雅に泳いでるけど、足元はバタバタバタ! みたいな(笑)。でもメロディの作り方や曲調は、馴染みのあるものだったので、気持ちよく歌わせていただきました。しかもこの曲、レコーディングよりも完成版で、すごくバージョンアップしていたんですよ。
──それは、どんな部分でですか?
渕上 完成版には、雨音とかいろんな水の音が入っていたりするんです。雫の音一つひとつを作編曲の中土(智博)さんが作ってくださって。そのお話を聞いてから、曲として聴くのはもちろん、全体の音も楽しんでほしいなって思うようになりました。
──歌はもちろん、ひとつの作品として聴いてほしいというか。
渕上 そうですね。「ピチョンピチョン」っていう音の一つひとつまで、楽しんでもらえたらうれしいなって思います。
──そしてここからは、「Beautiful Sunday」や「Cute♡Appeal」とミドルテンポの曲が続きます。ミドルテンポの曲は、やはり歌いやすいですか?
渕上 そうですね。ただ、馴染みがあるとはいえ「Beautiful Sunday」は英語の部分が多かったり、「Cute♡Appeal」は自分で歌詞を書いた曲ということで、どれも新鮮な気持ちでレコーディングには臨みました。
──そのうち「Beautiful Sunday」は、聴いていて思わずクラップをしたくなるような温かさのある曲です。
渕上 この曲は、このアルバムの中で唯一鳥があまり関係ない曲なんですよ。これはお家に鳥がいて、雨が止んだから出かけようっていう流れなので。カフェに行ったりお買い物するのが好きっていう私自身の休日の楽しみ方や、憧れのオシャレな休日の過ごし方をコンセプトにしていただいた曲なんですよ。それこそ仮タイトルまで「成城石井」だったぐらいで。
──オシャレスーパーな感じ。
渕上 はい。でも一瞬「西友」に変わったときがあって。もう大ブーイングですよ(笑)。
──「『カカクヤスク』って言ってるじゃん! むしろ庶民の味方じゃん!」って(笑)。
渕上 そうですそうです(笑)。
──その一方で、続く「Cute♡Appeal」はご自身で作詞されたというのもあってか、より等身大のイメージがあるように思えます。
渕上 そうですね。それこそ私がよく言う言葉だったり考えてることが、「いちばん反映されてるんじゃないか」疑惑があって(笑)、周りからもそう言われました。それは書いてる段階でも若干感じてはいたんですけど、「やっぱりそう思います?」って再確認した感じでしたね。
──この曲も、サビのメロディがすごくキャッチーで。
渕上 そうですよね。この曲は最初ペンギンの曲だったというのもあって、かわいらしくコミカルな印象もありつつ、伸びやかなサビのおかげでちょうどいいところに落ち着いたのかなって思ってます。
──そのコミカルっぽさが少し残っているのが、サビ最後の“鼻歌うたって”のあたりなのかな、と思いました。
渕上 そうですね。歌詞でもちょっと楽しげな感じを表現して、入れてみました。この曲もみんなで声を出して楽しみたいポイントがちょこちょこあるので、ぜひ覚えてライブに来てほしいです。
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