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INTERVIEW

2018.02.22

西沢幸奏×WEST GROUND「LOVE MEN HOLIC」スペシャル対談

「そこはもっと“パキッ”と歌って」とか「“ガッ”とした感じ」とか(笑)

──なるほど(笑)。で、話を戻して「Brand-new World」ですが。

WEST GROUND 彼女が「吹雪」でバン!と登場して、その次の1曲目だったので、ちょっと個性を出さなきゃと思ってトラック数もかなりぶち込みましたね。レコーディングのときも「吹雪」のときと違って、ギターの歪みに負けない声の強さを出してほしいと相談したんです。要は「がなる」というか、もっと濁点のアクセントを強くつけるという注文をつけさせていただいたのは覚えてます。

西沢 それでも今聴くと、全然足りないなと思いますけど(笑)。

WEST GROUND その曲がきっかけで、ラウドロック的な方向にギューッといっちゃったので。もしかしたら本当はもっと爽やか路線でいく予定だったのかもしれないですけど、気づいたら本人がギターを担いでましたし(笑)。

一同 ハハハ(笑)。

──でも、今となってはそれが西沢さんのトレードマークであり、カラーでもありますから。

西沢 完全にそうですね。「Brand-new World」がなかったら、今の私はないですもん。もし、この対談で「いちばん印象深い曲は?」って聞かれたら、絶対に「Brand-new World」と答えようと思ってたぐらいで。それにあの曲はめちゃめちゃ難しくてすごく苦労したんですよ。当時はレコーディングで歌えても、ライブで歌うほどの技術力がなくて(笑)。

WEST GROUND あった!その問題はあるあるだね。

西沢 最初は本当にひどくて。今だから言えるんですけど(苦笑)。この曲に関しては自分でも「よくいつも歌えるなあ」って思いますもん。

WEST GROUND 僕は言葉数をたくさん入れて、いろんなリズムが鳴っているなかで、ボーカルのメロディでリズムを作り出すのが得意なのかなと自分で思ってて。歌もリズムを食って入るのがすごく好きなんです。

西沢 それすごくわかります。

WEST GROUND やっぱり?(笑)。もちろん歌い手さんの良さを出すというのも念頭にありますけど、確実に自分がやりたいことをやらせてもらってる感じもして(笑)。実際のレコーディングで馴染ませていく感じのほうが強いですね。

──西沢さんは曲を歌っててWEST GROUND節みたいなものを感じることはありますか?

西沢 めっちゃあります!(笑)。もうこれぞWEST GROUND節というのがわかるようになっちゃったので、ほかの方に提供している曲でも聴くと「これ絶対にそうだ」と思いますね(笑)。言葉で表すのは難しいですけど、癖がありますよね?

WEST GROUND ありますね。僕は引き出しが少ないと言われますから(笑)。

西沢 そんなことないですから。

──そこは持ち味ということですよね。

WEST GROUND 僕も今までと違うテイストのものを作ってはいますけど、軸はブラしたくないし、自分のカラーが薄まってしまうのが嫌なんですよね。

──西沢さんはそういったWEST GROUND節の楽曲をたくさん歌ってこられて、自分のアーティスト性のどういう部分を引き出してもらったように感じてますか?

西沢 まずは先ほども言ったように歌声の部分ですね。「吹雪」のときから強い声とおっしゃてくださいますけど、自分としては今よりも全然か細い声で、今ほどの迫力は出せてなかったと思っているので。あとは微妙なニュアンスのかっこよさもそうで、私たちはレコーディングのとき、音楽用語というよりもニュアンスで話すことが多いんですね。最初は「もうちょっとかっこよく歌ってくれる?」と言われても戸惑ったんですけど、今はその「かっこいい声」というものの像をはっきり共有できてるんですよ。

WEST GROUND そういうビジョンは明確にあるかもしれないですね。最初は共通言語がなかったんですけど、最近だと例えば「ちょっとダルく歌ってくれる?」みたいな感じで伝えても通じて。音楽用語で言うポルタメントで語尾を下げてほしいときも、「“ヴァ”みたいな感じ?」って言うと、「ああ、はいはい、わかりました」って(笑)。

──こちらからすると全然わかりませんが(笑)。

WEST GROUND 「もっとだらしなく発音してほしい」とか「そこはもっと“パキッ”と歌って」とか「“ガッ”とした感じ」とか(笑)。

西沢 並べてみるとすごいですよね。全然言葉になってない(笑)。でも今はそれで完全にわかりますね。レコーディングもスムーズになってきましたから。

──先ほど西沢さんは「Brand-new World」がいちばん印象深い楽曲とおっしゃってましたけど、WEST GROUNDさんはどの曲に思い入れがありますか?

WEST GROUND 僕は「The Asterisk War」(TVアニメ『学戦都市アスタリスク』新OPテーマ)ですね。もちろん今は彼女が熟成してうまくなったので、今回の5thシングル「LOVE MEN HOLIC」を含め常に印象深い楽曲が更新されてる感覚があるんですけど、最初の頃は「The Asterisk War」がいちばん僕の中で「これだな」と思った曲なんです。これは自分でも本当に気に入ってて、バンド曲なのにデジタルの音もそれを邪魔せずにバランス良く入れることができたし、構成もDメロの部分をばっさりカットして、ちょっとクラブ・ミュージックっぽい雰囲気を作ったりとか。

3rdシングル「The Asterisk War」(2016.05.25)
レビューはこちら

西沢 あそこかっこいいですよね。ライブでもめっちゃ暴れまくれるパートなんで(笑)。

WEST GROUND もちろんそこはライブを想定して自分の中で作ってたから。今ではそこでダイブとかモッシュが起こるようになったので良かったです。

あのフレーズ、なぜかラーメン感を感じるんですよね

──ではここからニュー・シングルの「LOVE MEN HOLIC」について聞かせてください。この曲は最近のラウドロック路線とは趣きの異なる、ノリのいいパーティー・ロックに仕上がってます。サウンド的には序盤から印象的なギターリフが鳴らされて、すごくキャッチーですよね。このリフは会心の出来だったのでは?

WEST GROUND いやあ、でもめちゃくちゃ作り直してますね。結局レコーディングでも変わりましたし。僕が作るときは打ち込みなので、そこから生ギターに差し変えたときの感覚が全然違うんですよ。だから、RECで変えることが多いですね。

西沢 私がこの曲ですごく変わったと思ったのはドラムで、フレーズとかが今までと全然違いますよね。

WEST GROUND これはジャム感を出したかったんですよ。ジャズじゃないですけど、要は4小節ワンループのドラムとかじゃなくて、ハット・アクションも入れながら自由にノッてほしいと思って。ベースもルート弾きとかじゃなくてスラップに近い感じでお願いしたので、ベースとドラムのRECがかなり苦労しましたね。プレイヤーの生の音とか手癖を通して作ったので。「LOVE MEN HOLIC」は難しかったです。タイアップも『ラーメン大好き小泉さん』で、今までの感じとは違ったので。

西沢 たしかにそうですよね(笑)。

WEST GROUND 彼女のかっこよさとかライブのセットリストに組み込みやすいものというのも踏まえて、どんな楽曲にすればいいのか考えてたら、パーティー・チューンのギター・ロックかなと思って。それでそういうタイプの曲をたくさん聴いて「どうしたもんかな~」と思ってたときに、例のギターリフができて、これを軸にすればいいかなと思ったんです。

──なるほど。

西沢 あのフレーズ、なぜかラーメン感を感じるんですよね。そう思いません?

WEST GROUND うーん、まあ、しないねぇ。

一同 ハハハ(爆笑)

──強引に言えばチャルメラっぽい感じはしますけど

西沢 それだ!(笑)。

WEST GROUND けどメロもジャム感に合わせると、スタンダードな感じにはならなかったんですよ。ちょっとラップ感もあるし。西沢さんは即興ソングが得意なんですよね。

西沢 そう言わせていただいてます。

WEST GROUND 歌詞で韻を踏むのがうまいんですよ。なので、そういうラップ感を強くして、Aメロはさらに音を抜いて、声の重ね方も気持ちいいところに何も考えずにはめていって、それがすんなりいったんでよかったです。僕も最後まで完成が見えないまま作っていった曲ですからね。

──実際、ジャム感とかノリの良さも含めて、これまでのWEST GROUNDさんの作風にはないテイストの楽曲ですよね。

西沢 最初聴いたとき、ホントにWEST GROUNDさんの曲かなと思って、びっくりしちゃいましたもん。

WEST GROUND タイアップの難しいところは、アーティストのエゴだけじゃダメなところで、やっぱり聴いてくださるお客さんはアニメのファンの方が多かったりしますからね。ただ、そのなかでも「西沢幸奏というカラーとはなんだろう?」というのを考えたので。

西沢 この曲で引き出せたと思う、私のカラーってなんなんですか?

WEST GROUND 僕はラップってすごくポップだと思ってて、そういうのをやってみたいというのはずっとあったんですよね。それがAメロの部分で。それでBメロから展開して、サビはバンドっぽくグラデーションのように移っていくことでポップ感を担保できれば、曲として成立するかなと考えて。あとはボーカルでもジャム感を出せるというのは、新しく引き出せたところかな。ルーズな感じだったりとか。

西沢 わー、それは新しいチャレンジ!

WEST GROUND 僕の今までの楽曲はメロディもガッチガチに作ってるから、あんまり抑揚をつける隙間がないんですね。だけど今回の曲はメロディに結構隙間があるんで、そこで表現みたいなものを出していったり、早口言葉的なものを無音程で言ってみたりとかできて。そういう意味ではライブ感のある曲だし、自由度の高い曲ができるようになったのは、今回いちばん良かったところかな。

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