現在放送中の『弱虫ペダル GLORY LINE』のOPテーマ「僕の声」を歌うロックバンド、Rhythmic Toy World。熱い歌声が彩る青春の汗迸る物語は今期も手に汗握る展開。そんなRhythmic Toy Worldに『弱虫ペダル』への想いとこの情熱的な楽曲について聞いた。
内田直孝(Vo&G) 来たよ!「リスアニ!」!いいんですか!? 僕らでも!
岸明平(Gt) やったーーー!
――えっと、リスアニ!です。
内田 もう、この取材が決まったと聞いたとき、小躍りしました!僕、アニメやアニメ音楽全般が好きなんです。上坂すみれさんのファンで、ライブに行ったあとに観て感じた想いを勝手に楽曲にしたくらいです。
――ご存知でいてくださって光栄です!そんなお話からのスタートですが、今回はアニメ『弱虫ペダル GLORY LINE』のOPテーマである「僕の声」についてお話を伺います。
内田&岸 よろしくお願いします!
――まず、おふたりが思う『弱虫ペダル』の名場面を教えてください。
内田 名場面って絞れますかねぇ……。でもグっとくる場面を、というと、御堂筋くんのお母さんの話ですね。ちらちらと出始めるときがあっての、御堂筋くんが負けてしまうところですね(※TVアニメ2期第3話)。御堂筋くんはヒール的なポジションなんですけど、憎めない感じがあり、主人公級のストーリーがちゃんと裏側にはあって。敵だけど彼には彼のドラマがうまく描かれていて、そこにグっときました。いい人だけにスポットが当たるのではなく、ちゃんとそうではない人にも物語があって、目標をかなえて表に立っているところに、嘘偽りなく全ての人に等しく目を向けている作品だなと思ったことですね。
岸 俺は結構、最初の方なんですが、小野田坂道くんと鳴子章吉くんが秋葉原で出会ったところです。最初は「変な人だな」ってなっていたのが、一緒にいるうちに仲良くなっていく感じがすごく良かったですね。運命的な出会いでもありましたし。
内田 でもお金を見ず知らずの人に貸しちゃうなんて、いいのかな、と思っちゃうんですけど、さりげなく坂道くんの純粋さが描かれているのかなって。
――その『弱虫ペダル』の楽曲を作る、となると改めて作品と向き合ったと思うんですが、この物語の魅力はなんだと感じていらっしゃいますか?
内田 贔屓目なしに、今まで読んできたマンガ作品でいちばん涙を流した回数の多い作品なんです。とにかく泣いた回数がいちばん多い。
岸 毎シーン、毎シーン、感動する。
内田 そう。もうページを捲るたびにまたボルテージが高まって、また泣いて、の繰り返しで。しかも大人になってから見てこんなに泣かされる作品ってないなって思ったんです。それで「なんでなのかな」って思ったんですよね。僕らはバンドをやっていて、それこそ18歳で、高校卒業と同時に上京して。バンドをやりながらうまくいかないこともあって、大学卒業と同時くらいに今のメンバーと出会って、バンドを本格的にやることになって。4人だけではなく支えてくれるチームの人がどんどん増えていって、大きな舞台に立たせてもらうことも増えていって。それに対する準備だったり、終わったあとのみんなの「良かったね」「悔しかったね」っていう部分を話し合ったりしてまた次に進んでいく。バンドって一年単位で活動のサイクルがあって。夏にライブがあって、それが終れば年末のライブに向けて下半期を走っていって。一年が終ればまた夏にフェスに出たい!と頑張って……っていうのが、すごくインターハイに似てるなって思うんです。僕は競技自転車に乗ったことはないけど、部活はずっと体育会系だったし、来年の目標にめがけて一年間頑張っていく大変さだったり、そこで生まれるドラマを知っているんですね。一年後にやっと成果が出せる。そこが自分たちのバンド人生とすごくリンクしていて、そういうところが魅力だな、と思うんです。例えば、今日頑張れば明日結果が出るものではなくて、一年、もしくは二年、三年。もしかしたら三年かけても大会に出られない人もいて。それは俺たちも同じで。三年かけても立てないステージはやっぱりある。だけどそこに立ちたい、と進んでいく。諦めない精神と、それを達するために一緒に戦ってくれる人たちがいる。それが『弱虫ペダル』の魅力だなと思いますね。
岸 僕もやっぱり、バンドに繋がるところがあるなと思っています。熱いですし。内田も言うような、バンドと似ているっていうことを考えるようになってから「テッペン獲るぞ」っていうのを意識するようになりました。今までは「いい曲を作るぞ」とか「頑張るぞ」と思っていたんですけど、自転車競技は順位があるように、バンドでも考えるようになったり。影響を受けました。
内田 たしかに。「日本一」っていうのを意識するようになった。
岸 インターハイめざす感じで。
内田 優劣は人が決める価値観なんですけど、それでも僕らの世界には順位が存在していて、そこを僕らも意識して、「一桁ゼッケン欲しいよね」みたいな気持ちでいたい。それはモチベーションには確実に繋がるので、そういうことを考えるようになりました。
――今回その「弱虫ペダル」のオープニング曲を、というお話が出たときにはどのようなお気持ちになられましたか?
内田 本当に僕は、80%くらいはアニメに支えられていると言っても過言ではないので、そこに携われるというだけでも個人的にはすごくありがたくうれしいことでした。たとえば声優の方の楽曲への作詞のお仕事をいただいたことがあるんですけど、それは自分が「好きだ」と言っていることが伝聞して実現した、というのがあったんです。でもやっぱり自分たちの曲でやりたい、というのが同時に夢というか、目標として出てきていたので、それをかなえられるし、今のメンバーや支えてくれる人たちと一緒に自分の夢を達成することが出来るというのはめちゃくちゃ幸せだな、と。素直に思いました。
――そもそもアニメのOPテーマというのはどんな存在だと考えていらっしゃいますか?
内田 アニメのOPテーマとEDテーマがあって、OPは先に流れることもあって、その作品の看板みたいな印象があると思うんです。OPテーマがあることによってその作品が見たい、と。作品が主役で、その作品に対しての気持ちをアゲる滑走路というか。そういうものだと思っているんです。なので、例えば僕らの時代で特にみんながアガるのって、『デジモンアドベンチャー』の「Butter-Fly」なんですよね。デジモンにもいろんな曲があったんですけど、それでも僕らはこの曲をいちばん憶えている。それでありたいな、というのがあって。だから僕は、特に『弱虫ペダル』は楽曲が素晴らしい中で、プレッシャーもある。でもその曲に勝ちにいくのではなく、今回やらせてもらう、このクールの内容だったりが少しでもグっと来たり、興奮できるようなブースターになれればいいな、というのを思って書きました。
岸 自分も『デジモン』の「Butter-Fly」か、『ドラゴンボール』の「CHA-LA HEAD-CHA-LA」が浮かぶんですね。自分が音楽をやる前にもう触れていた音楽なんですよね、アニソンって。このアニメと言えばこの曲だよね、この曲と言えばこのアニメだよねっていうイメージがあるくらいのものがオープニングだと思っていて。そんなアニメ音楽に携われていることが本当にうれしいですね。
――今回は『弱虫ペダル』というモチーフがあっての楽曲制作となったわけですが、それは普段の楽曲制作とはまた違った手法になったのかなと思います。いかがでしたか?
内田 そうですね。でもあまり作品をなぞらえずに、というお話をいただいていたので、そこは逆に伸び伸びとやらせていただいたんです。特に作品を観ていて、自分的にすごく印象に残っていたフレーズやシーンをメモしてもいたんですが、そうではなく、自分がインスピレーションとして『弱虫ペダル』を見ている人たちに何を感じて欲しいか、どういう人たちが観ているのか、というもうひと段階違うところを見て書く、というやり方をとらせてもらえたんです。基本的に、誰かの背中を押して応援をしたい、というのが僕らのやってきた音楽の土台にどっしりとあるので、そこはやりやすかったんですけど、さらに自分の腕の見せ所というか、作品の内容に触れてはいないんだけど、勝手に「これってあの場面のことを言っているのかな」と思ってもらえるギリギリのラインを突く作業というか。アニメの曲だけどアニメだけの曲になってはいけない。その曲単体でしっかり芯を持っていて、楽曲自体も「素晴らしい曲だね」と思ってもらえることで、アニメとの化学反応が起きるだろうなとも思っていたんです。だからこそ過去の『弱虫ペダル』の楽曲群とは少しだけ世界線が違う立ち位置の曲を書くことが出来たと思います。僕らが作品にとって初めての楽曲だったらこのやり方はできなかったなと思うし、そこは先人の素晴らしいアーティストの皆さんに感謝ですね。
――それでも先ほどのお話のように、バンドの状況と作品とがシンクロしているからこそ、楽曲も好きに書いたとしても作品の世界観から乖離しなかったんでしょうね。
内田 自分たちの基本的なデフォルトの部分でかなり近い精神性が作品にあったので、何も考えずに書いてもきっと寄り添えるだろうなというのは自信にも近いものがあったので、あとはいろんなギミックを織り込んでいければいいかな、という感じでした。
――その「僕の声」をレコーディングしていて気合が入る、というような影響はありましたか?
岸 めっちゃありました。すごく。だからギター録りのときは音が前に走っちゃうんですよね。「もうちょっと弱く弾いてください」って言われたりしました。
内田 歌録りのディレクションも、うまく歌うのではなく、本当に目の前に応援したい人がいて、その人を思い浮かべて歌いましょう、ということでみんなでやっていたので、普段よりもライブに近いような熱を込めることが出来ました。言っていること、歌っていること、鳴らしている音が嘘じゃないんだな、本当なんだなっていうふうに、聴いてくれている人に感じてもらえるような楽曲になったと思います。
――実際に映像と共に流れているのをご覧になっていかがでしたか?
内田 僕は単純に泣きました。時間も深いので、平常心で見れないなってことでちょっとお酒を飲みながら待機していたので、ほろ酔いの状態のときに流れて来て。しかも一話ではオープニングが流れるまでにじらしプレイがありましたから(笑)。不意打ちで流れたので涙腺崩壊した、というか。映像とリンクして、なんでこんなに泣いているんだろうっていうくらい泣きましたね。
岸 自分もずっと待っていて、流れた瞬間に呆然としてしまって。途中でタイトルが流れたところでハッとして携帯で写真を撮りまくりました(笑)。
――反響はいかがでしたか?
内田 この曲がすごく好きだ、と言ってくださる方がすごく多くて。それって自分が「弱虫ペダルってめちゃくちゃいいよね!」って思っている気持ちをしっかり形にすることができたから、同じ気持ちを持っている人が「こういうオープニングだったらめっちゃアガるよね」っていうところにちゃんとリンクできたのかな、と思えてほっとしました。答え合わせもちゃんとできて、なおかつ自分のバンドをずっと応援してくれる人たちはこれからライブで体を動かせるかっていう部分で「すごくいい曲だ」と受け入れてくれたので、僕らのお客さんにもまたひとつ宝物みたいなものをプレゼントできたことがうれしかったな、と思います。
――この曲でRhythmic Toy Worldを知る人たちがたくさんいると思います。その人たちへ向けて、この曲でどんなRhythmic Toy Worldが届くと思いますか?
内田 僕が書いたときの心境としては、自分と同世代、同年代の、20代中盤の人たちって社会人としてある程度のリズムであったり経験を重ねて来ている中で、自分がどういうふうな将来にしていきたいのかなというのが見え始める時期だと思うんです。そこには希望もあれば不安が募る人もきっといる。自分にはスポットライトが当たっていない、と焦る時期でもあって。そこで自分に手を差し伸べられるのは誰なのか、と考えればそれは最終的に自分。自分が折れなきゃきっと倒れることはない。折れない自分を見て、傍にいてくれる人が増えるかもしれない。やっぱり頑張っている人を見て手を差し伸べたくなる人はいる。まずは自分に自信を持つことから始めたい、と鼓舞したい。だからストレートに「頑張れ」という言葉を自分に言って欲しい。そしていつか誰かに「頑張れ」と言える人になって欲しい。その連鎖でその人の生きる時間を彩れたらいいなと思っているので、自分に自信がない人がこの曲を受け取ってくれたら「ダメでいいじゃん」と。今日明日で答えを出さなくていいじゃん。まずは自分って本当は強いんだよって。それでも今日を生き、明日を生きる。それはめっちゃ強いことだ。それを受け取って欲しい、と思っている曲です。
――だからこその「僕の声」なんですね。この歌って本当に、どのキャラクターにも当てはまる曲だな、と感じるんですね。
内田 それは皆さん、そのときに思い浮かぶキャラクターと繋げてくださっているらしくて。自分も誰かに限定して書いているわけではないので、そういうところが伝わっているのかな、と思うとうれしいですね。この曲が物語と一緒に聴いてくれる人の中で深まっていってもらいたいです。
岸 いろんな人たちがこの曲を聴いて、「僕の声」がその人の曲になっていってくれるとうれしいです。
Interview&Text By えびさわなち
●リリース情報
TVアニメ「弱虫ペダル GLORY LINE」OPテーマ
「僕の声」Rhythmic Toy World
発売中
【アニメ盤】

品番:THCS-60206
価格:¥1,300+税
※アニメ描き下ろしジャケット
【アーティスト盤】

品番:THCS-60207
価格:¥1,300+税
<CD>
1.「僕の声」
2.「LIFE」
3.「僕の声」(Instrumental)
4.「LIFE」(Instrumental)
●作品情報
TVアニメ新シリーズ
『弱虫ペダル GLORY LINE』
好評放送中
テレビ東京:毎週月曜深夜2:05
テレビ大阪:毎週月曜深夜2:05
テレビ愛知:毎週月曜深夜3:05
テレビせとうち:毎週水曜深夜2:10
テレビ北海道:毎週火曜深夜2:35
TVQ九州放送:毎週月曜深夜3:00
NBC長崎放送:1/14より毎週日曜深夜1:20
AT-X:毎週金曜夜8:00~8:30
※リピート放送:毎週日曜朝6:30/毎週月曜昼12:00 /毎週水曜深夜4:00
<Rhythmic Toy World:Profile>
2009年11月、東京で結成された4ピースバンド。
須藤憲太郎(Ba)が大学の同級生だった内田直孝(Vo/Gt)、そして須藤の幼なじみである岸明平(Gt)を誘い結成。曲作りの期間を経てライブ活動をスタートした矢先にドラムが脱退する。危機的状況の中、内田の誘いにすぐさま応じたのがバイト先の先輩であり、バンド活動においても経験豊富な磯村貴宏(Dr)だった。こうして2010年4月、内田の才能に強く惹かれた須藤、岸、磯村が揃い、RTWの本格始動となる。2011年には”キャッチーさ”を強く押し出した楽曲「さなぎ」が大きな反響を呼び、ライブ動員も急増する。2012年には「RO69JACK 2012」で入賞。「コンクールではなく、自分たちの力でそこ(ROCK IN JAPAN FES.ステージ)へ行く!」というひとつの大きな目標が生まれる。2013年よりSTROKE RECORDSに所属。プロデューサー川原祥太と出会い、音作りからライブパフォーマンスに至るまで飛躍的に向上する。
2014年7月、フランスで開催された「Japan Expo 2014」に出演。「国境を越えても歌ってもらえるような言葉を紡ぎたい」と考えるきっかけとなる。
2015年7月、ライブ動員を増やして行く中、「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2015」に初出演を果たす。ライブ直後のステージ袖で、内田はさまざまな思いが溢れ号泣。以来、R.I.J.FES./C.D.J.FES.の常連となる。
その後も次々と音源をリリースし精力的にライブ活動を行う。ツアーを重ねる毎にステージも大きくなり、日本全国の音楽フェスから次々と声がかかる注目のロックバンドへ成長する。
2017年9月、初のセルフプロデュースとなる3rd Full Album『TALENT』リリース。作品ごとに毛色を変えながらも”Rhythmic”でしか表現しえない楽曲を造り続ける。
2018年1月、『弱虫ペダル GLORY LINE』(第4期)のOP主題歌に抜擢。TVアニメのタイアップは初となる。以前からメンバー全員でTVアニメ「弱ペダ」3期までを視聴済みだったが、現在は日常生活に弱ペダ用語が飛び交うほどドハマり中。
(C)渡辺航(週刊少年チャンピオン)/弱虫ペダル04製作委員会
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