南條愛乃ライブ・ツアー“Yoshino Nanjo Live Tour 2017 <・R・i・n・g・>”ファイナル公演レポート

南條愛乃のライブ・ツアー“Yoshino Nanjo Live Tour 2017 <・R・i・n・g・>”のファイナル公演が、11月5日に東京・両国国技館にて開催された。今年7月にリリースされた3rdフルアルバム『サントロワ∴』の楽曲を中心にセットリストが組まれ、ソロデビュー5周年を間近に控える歌手・南條愛乃としての魅力はもちろん、「ひとりの女性」としての彼女らしさが伝わってくる、温かな空気に満ち溢れた公演となった。

彼女の地元・静岡を皮切りに6か所7公演を巡ってきた今回のツアー。その千秋楽の舞台となったのは、相撲の聖地として知られる両国国技館だ。力士たちの優勝額がステージを見守るなか、ライブはどこか神秘的なムードを纏ったイントロからスタート。バンド・メンバーたちが静かに登場してそれぞれの持ち場に着き、『サントロワ∴』の収録曲「ユアワールド」を奏で始める。するとステージ上段の後方に設置された大きな三角形のスクリーンが上昇し、そこから純白の衣装に身を包んだ南條が登場。躍動感たっぷりのバンドサウンドに乗せて美声を届ける。新しい一日の始まりを描いたこの楽曲は、ライブの幕開けにもピッタリだ。

「さあ、盛り上がっていきましょう!」と客席に向けてひと声かけた南條は、ステージ前に降りてデビュー・ミニアルバム『カタルモア』から爽やかなアップ「飛ぶサカナ」を披露。オーディエンスのボルテージは一気に高まり、彼女もその歓声を受け止めるように両手をいっぱいに広げて気持ち良さそうに笑顔を浮かべる。MCで元気いっぱいに「ドスコーイ!」と挨拶した南條は、この日でツアーが終わることを寂しく思いつつ、「すごく楽しい気持ちがすでにあります!」とライブを心から楽しんでいる様子。お客さんとのやり取りを楽しみながら、リラックスした雰囲気でライブを進行していく。

南條の凛とした佇まいとダンサー2人の扇情的な動きとの対比が際立った「誇ノ花」、キーボードのみをバックに切々と歌い上げた奥華子提供のバラード「逢えなくても」という最新アルバムからの楽曲に続けては、ふたたび『カタルモア』よりドラマティックなミディアム「光」を披露。ソロ5周年を控える彼女らしく、過去の曲も織り交ぜながらしっかりとライブ全体のストーリーを作り出していく。続く「Recording.」では2番の歌詞“それとも みんなとなんでしょうか?”を客席に呼びかけるように歌うなど、会場の規模は大きいがお客さんとの距離感はあくまでも親密だ。

アコギとストリングスの音が晴れやかな印象を与えた「今日もいい天気だよ」に続いては、『グリザイアの楽園』のEDテーマだった「きみを探しに」。ラスサビの“愛してる”のフレーズでは大合唱が巻き起こり、会場にますますの一体感が生まれる。そこから立て続けに人気曲「ゼロイチキセキ」へと繋ぎ、南條はステージを下手から上手へと動きながら国技館の隅々へと歌声を届けていく。アコースティックな響きでひとり旅のように気楽な風通しの良さが表現された「スキップトラベル」では再びダンサーが登場。その曲終わりで南條は一旦舞台からはけ、バンドによるインスト演奏へ。ダンサー2人の側転やブレイキングを含めた華麗なダンスに続き、森藤晶司(キーボード兼バンドマスター)、星野威(ギター)、キタムラユウタ(ベース)、八木一美(ドラムス)がそれぞれソロ回しで見せ場を作りながら情熱的なプレイを繰り広げていく。

そしてピアノの音色と光の差すような照明が清澄な雰囲気を作り出したかと思うと、そこから景色は一変、「一切は物語」の激情的とも言える厳かなイントロが流れ始める。またしてもステージ後方の三角スクリーンが上昇し、そこに姿を現したのはなんと南條愛乃とやなぎなぎ!黒いロングドレスを身に纏った南條と、肩の空いた真っ白のドレス姿のやなぎ、対照的な衣装でペアを組んだふたりの歌姫は、互いの声を絡み合わせるように壮大な景色を紡いでいく。<染まるべき色は白か 黒か>という歌詞そのままの世界観を現出させた演出はまさに圧巻。間違いなくこの日のライブのハイライトのひとつだった。

続けて南條がひとりでステージ前に勇ましく降り立ち、「一切は物語」のシングルのカップリング曲「嵐のなかで君だけは」を披露。どこかゴシック感を漂わせた重厚極まりない曲調に彼女の悲哀を帯びた美声が浮かぶ様は、劇的と呼びたくなるほどのもの。ここの2曲のパートは、ある意味、演者としての彼女の表現力が発揮された部分だったように思う。同曲を歌い終わってすぐステージ袖にはけ、衣装を早着替えして戻ってきた南條は、何故か鼻歌交じりですっかり元の気さくな雰囲気に。ゲストのやなぎを迎えてトークに花を咲かせる。そこで明かされたのだが、実は「一切は物語」のレコーディングは別録りだったため、彼女たちが一緒に歌ったのはこの日が初めてだったという。

バンドメンバーの紹介とフリーダムなよもやま話を挿み、ライブは後半戦に突入。ここで歌われたのが、『サントロワ∴』初回限定盤の特典CDにも収められていた、より子。「ほんとはね。」のカバーだ。南條がこの曲と出会ったのはまだ学生のころ。それからずっと好きで聴いていて、声優として駆け出しの時期に歌のサンプル用に歌ったこともある、思い出の1曲なのだという。伴奏はピアノ一本なので、その生々しい歌声からは息遣いも伝わるよう。ラストのかすれるような高音からは、片思いの秘めた気持ちの切なさがリアルに感じられるかのようだった。

そんなしっとりモードから一転、ここからはダンサーを引き連れてのキュートな振り付けで魅せた「idc」を皮切りに、ポップな楽曲が続く。ダンサーとのシンクロした動きが見た目にも爽快だったピアノロック「ゼリーな女」、幾何学的なアレンジと照明の演出が見事にマッチしていた「OTO」と盛り上げ、続く「pledge」で南條はステージ上段に駆け上がってこの日初めてマイクスタンドを使ってパフォーマンス。逆にギターとベースはステージ前面に飛び出し、熱のこもった演奏で観客を煽りまくる。ラストは南條もマイクを片手に前面へと降り立ち、ダンサーと5人で並んで動きを合わせながら熱唱。耳はもちろん目でも楽しませる構成が楽しい。

「本っ当に楽しくて、終わりたくないんだけども……次が最後のブロックなんです」と、その場にいる誰よりも名残惜しそうな表情を見せる南條。次に歌う曲「螺旋の春」について「悩んだときや困ったときに背中を押してくれる曲」と説明し、「この曲を支えにしてもらえたらと思ってセトリに入れました」と語る。なんでも南条條は「自分は同じことばかり考えてしまってるけど先に進めてるのかな?」と不安になることがあるなかで、この曲の提供者である橋本由香利が楽曲と共に寄せた「同じ場所に戻ってきたと思っても、視点を変えて横から見ると、螺旋階段のように実はちょっとずつ上に昇って行ってるはず」というコメントに感銘を受けたのだという。そういう頼もしい言葉を胸に、未来への希望を感情たっぷりに表現する彼女の歌声には深い滋味が溢れていたように思う。

そこから「光のはじまり」で会場を一気に眩い世界へと塗り替え、歌詞の最後の一節“思いのままに 僕等が創り出す 未来”で希望の道を指し示すように右手を上げてパフォーマンスした彼女は、「ありがとうございました!」とお辞儀して降壇。客席からの拍手喝采はやがてアンコールへと切り替わり、期待の声が間断なく上がる。それに応えてふたたびステージへと舞い戻った南條は「Latest Page」からアンコールをスタート。ツアーグッズのパーカーとTシャツに身を包んだ彼女は、思い出を写真に例えた歌詞の内容と合わせるように、カメラを片手に客席の写真をパシャパシャと撮りながら柔らかな歌声を伸ばしていく。

続くMCではツアーグッズの紹介や、国技館に備え付けられた力士サイズのお風呂やトイレの大きさについてゆる~く語りつつ、「ツアーをやっててこんなに寂しいなと思うのは初めてなんですよ」と思いのたけを吐露。fripSideやキャストとしてのイベント出演時とは違い、ソロツアーではそのままの南條愛乃としてステージに立つことができ、自分のやりたい世界観を表現できることに、また別の感慨があるのだという。「デビューしたときはいまよりずっと心細かったし、ピュアで繊細で儚い少女だった……まあそれでも28歳だったんだけど(笑)、そんな私がこんな雑なMCをして笑っていられるような空間でいられるのが、すごく幸せなことだなと思いながら、今日はファイナルを楽しみました」と気持ちを伝えて、最後のパートへと繋げる。

「今回のセトリを考えるときに、みなさんと繋がる円ということで〈<・R・i・n・g・>ツアー〉というタイトルにしたんですけど、歌ってたら絶対最後に〈ありがとう〉という言葉を言いたくなってしまうだろうなと思って、この曲を入れたことを……昨日思い出しました(笑)」との言葉に次いで歌われたのは、1stフルアルバム『東京 1/3650』の収録曲「だから、ありがとう」。ファンや支えてくれるすべての人への感謝の気持ちがストレートに表現されたこの楽曲の歌詞は、南條自身が作詞したもの。きっとMCでは照れくさくて面と向かっては言いにくいであろう言葉も、歌であれば素直に伝えられるという気持ちもあったのだろう。締めの“これから先も…よろしくね”というフレーズは、その場にいたすべての人の心に染み渡ったはずだ。

そしてこの日の公演のラストを飾ったのは、ツアータイトルにも冠された「・R・i・n・g・」。こちらも南條自身が作詞したナンバーだ。「最後まで絶対楽しい思い出を作っていきましょう!」との言葉通り、疾走感のあるバンドサウンドにはすべての感傷を吹き飛ばすような明るさがあり、南條のクリスタルボイスも煌きと共に力強く降り注ぐ。ステージ後方の三角モニターには南條の過去のライブツアーの写真が次々と映し出され、オーディエンスもここぞとばかりに限界まで声を上げて盛り上がる。間奏に入ると南條は後ろを向き、モニターには今回のツアーに参加したファンたちのうれしそうな写真が投影。やがて光のリングが現れ、南條とファンの絆の輪を象徴するようにリングが広がったタイミングで楽曲もピークへ。彼女のエモーショナルな歌声を媒介に全員の気持ちがひとつになり、ライブは大団円を迎えた。

本人の(特にMCにおける)リラックスした振る舞いもあって、大規模な会場らしからぬアットホームな雰囲気が心地良かったこの日の公演。それは彼女がソロで展開している音楽性にも通じるところであり、凛とした部分を持ちながらも、背伸びをしたようなアーティスト性をことさらに打ち出すのではなく、等身大の自分らしさを追求してきた結果なのかもしれない。ソロ活動5周年を迎えて、この先その歌声と世界観がどのように成熟していくのか楽しみでならない。

Text By 北野 創
Photography By 江藤はんな

“Yoshino Nanjo Live Tour 2017 <・R・i・n・g・>”ファイナル公演
2017年11月5日(日)両国国技館

<SET LIST>
1. ユアワールド
2. 飛ぶサカナ
3. 誇ノ花
4. 逢えなくても
5. 光
6. Recording.
7. 今日もいい天気だよ
8. きみを探しに
9. ゼロイチキセキ
10. スキップトラベル
11. 一切は物語
12. 嵐のなかで君だけは
13. ほんとはね。
14. idc
15. ゼリーな女
16. OTO
17. pledge
18. 螺旋の春
19. 光のはじまり
20. Latest Page
21. だから、ありがとう
22. ・R・i・n・g・

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