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2017.10.04

八木沼悟志の生解説付きの豪華イベント!“リスアニ!Presents fripSide 15周年記念アルバム『crossroads』全曲試聴会”レポート

八木沼悟志の生解説付きの豪華イベント!“リスアニ!Presents fripSide 15周年記念アルバム『crossroads』全曲試聴会”レポート

“リスアニ!Presents fripSide 15周年記念アルバム『crossroads』全曲試聴会”が、9月23日に開催された。

fripSideの結成15周年を記念したスペシャル・アルバム『crossroads』を、10月4日のリリース日に先駆けて全曲試聴するというこのイベント。リスアニ!編集部の澄川龍一司会のもと、会場にはメンバーの八木沼悟志(コンポーザー/プロデューサー)が迎えられ、彼の解説を交えながらニューアルバムを聴くことができるファン垂涎のプログラムとなった。

今回のスペシャル・アルバム『crossroads』は、naoがボーカルを務めていたfripSideの1期の楽曲の中から、ファン投票で選ばれたナンバーを南條愛乃のボーカルで表現したリアレンジ集のDisc-1と、最新シングル「clockwork planet」などのオリジナル楽曲をまとめたミニアルバム・サイズのDisc-2からなる2枚組。結成15周年を飾るにふさわしい、まさにスペシャルな内容のアルバムだ。

八木沼はまず本作のタイトルの由来について「1期のfripSideと2期のfripSideがクロスする、現在の僕たちが過去を振り返る1枚でもありますし、この先には15周年イヤーや来年以降の活動もありますので、fripSideの過去・現在・未来の交差点という意味」と説明。リアレンジ曲については、原曲のイメージから大きく変えるのではなく、あくまで正統進化をめざして作り上げていったという。また、今回はあえて原曲を聴き返さず、まずは記憶頼りで作り始めたとのことで、詳細に聴き比べるとコードや譜割りが以前と違う楽曲もあるとのこと。ある意味、マニアックな楽しみ方もできる作品と言えそうだ。

そしてDisc-1の1曲目から順番に試聴がスタート。冒頭を飾るナンバー「sky」は、2004年発表の2ndアルバム『2nd fragment of fripSide』に収録された初期の人気曲だ。今回のリアレンジ版では、オリジナルと同様に八木沼のコーラスが大きくフィーチャーされている。「この曲は当時から思い入れの強い楽曲で、1期fripSideの形を代表する曲だと思うので1曲目にしました。今回も僕のコーラスがデュエットかと言うぐらい入っています。2期になってからは僕のコーラスをあまり入れてなくて、「eternal reality」とかぐらいですからね。実は歌うのも好きなんですよ」(八木沼)。

2曲目の「Red “reduction division”」は2006年のベスト盤『the very best of fripSide 2002-2006』収録曲。八木沼は「やっぱりナンちゃんがこうも違和感なく自分のものにしてしまえるところがすごい!ただ、それを見越して2009年に彼女を加入させた俺もすごい!」と自画自賛なコメントを挿みつつ、制作エピソードを披露していく。「ギターは(オリジナル版と同じ)a2cくんです。彼とはもう10何年もfripSideの音を一緒に追求してきた仲なので、今回も彼と相談しながら作りましたね。でも、ギターソロは大きく変えると曲の雰囲気そのものが変わってしまうので、ふたりでずっと正統進化と言いながら作業して」(八木沼)。

続く「hurting heart」はPCゲーム『神曲奏界ポリフォニカ THE BLACK』の主題歌として知られるナンバー。オリジナル版は2007年の4thアルバム『binarydigit』に収録されている。八木沼は「これは間奏がカッコいいよね」と語りながら笑顔で聴き入る。そのギターソロから、南條による落ちサビのエモーショナルな歌声へと繋がっていく後半の展開について、澄川から「fripの曲は後半にもおいしいところがたくさんありますね」と振られると、「2サビが終わってからが楽しいところはありますね」と自身の楽曲について分析する。

オリジナル版は2005年の3rdアルバム『3rd reflection of fripSide』に収録された「an evening calm」を聴きながら、「いやー懐かしい!今聴くと初期3部作というのはあまり音が良くないんですよ」と当時を振り返る八木沼。そのころはレコーディングも含めすべて自宅で行っていたとのことで、「この曲まではダイナミックマイクで録っていたので、naoさんはマイクを手で持って歌うから(声が)近くなったり遠くなったりするの。それを録りながら俺がフェーダーでリアルタイムで調整して(笑)」と宅録時代の苦労話を懐かしむように語る。それだけに今回のリアレンジ版は上手くアジャストできて、納得のいく出来だったようだ。

5曲目は2008年の5thアルバムの表題曲でもある「split tears」。今年3月に行われたfripSideのさいたまスーパーアリーナ公演でも披露されたナンバーだ。「あのときは昔の音源を使っていて、そこにバンドサウンドを乗っけていたんですけど、今回はイチから作り直しまして。原曲ではサビ前にエレクトリックタムが入ってたんですけど、もっとガッといきたかったので、アレンジがいちばん変わって、いまのfripSideの音に近づいてると思います。終わり方もお洒落になってると思いません?」(八木沼)。

6曲目「the chaostic world」は、ベスト盤『the very best of fripSide 2002-2006』に収録されているエッジーなアップチューン。八木沼いわく、1期のときは透明感のあるアレンジをめざしていたというが、今回は「ライブで盛り上がる仕様にしたくて、少しアグレッシブというか跳ねるような音にしたかったんですよね」とのこと。「この曲のシンセソロがカッコいいんですよ。これゼロから作り直してるんですけど違和感ないでしょ。新しい音を作ったり選んだりしながら組み立てているんですよね。でも、過去のクオリティーを超すのは大変なんですよ、もうやりたくない(笑)」(八木沼)。

続く「prominence」はコンピ盤『SUMMER MIX vol.01』に提供された楽曲で、4thアルバム『binarydigit』に別バージョンの「prominence -version 2007-」が収録されている。「いろんなバージョンの存在する曲がありますけど、今回のリアレンジ盤では、いちばん元の曲を基準にカバーしてます。なぜかというと、やはりファースト・インプレッションというか初動の情熱というものがあるじゃないですか。いままでの経験上、大抵は〈バージョン○○〉とか言って小手先でアレンジを変えると失敗するんですよ(笑)。だから大本の楽曲を正統進化させたのが今回の作品なんです」(八木沼)。

そして2003年の1stアルバム『1st odyssey of fripSide』に収録された楽曲「distant moon」へ。「この曲はfripSideの原点で、naoさんと活動する前から曲だけはできていたんですよ。fripSideの名前もまだ決まってないときに、〈俺はこういう音楽をやっていきたいんだ〉っていう、ある種の物差しにした曲なんです」と八木沼が語る通り、まさにfripSideの始まりの楽曲でもあるのだという。1stアルバムを作っていた当時は、音楽で成功する夢をかなえるためサラリーマンを辞め、4tトラックの運転手をしながら楽曲制作に励んでいたというエピソードも飛び出し、彼の音楽にかける情熱に触れることができた。

9曲目の「escape」は、4thアルバム『split tears』に「escape -version2008-」として収録されていることで知られるが、これはもともと音楽ユニットのresetによる楽曲のカバー。今回は再カバーとなる。「ネットが普及し始めた2000年ごろ、resetさんはインターネットで超人気で、彼らが僕らの第一目標だったんですよ。その後、友だちになって、いろんなことを教わったり、いっしょに曲を作ったりしましたね。今回ひさしぶりにKimuraさんに連絡して、カバーすることを報告したら、嬉しいって言ってくれたんです」(八木沼)。また、この楽曲では90年代感を出すために、いまどき珍しいフェードアウトでの曲終わりにもこだわったとのことだ。

「before dawn daybreak」はPCゲーム『Before Dawn Daybreak ~深淵の歌姫~』の主題歌。5thアルバム『split tears』に収録され、PCゲームとのタイアップ曲を集めた2015年のコンピ盤『fripSide PC game compilation vol.2』では、南條のボーカル・バージョンで新録された。今回はそのバージョンが少し違った形で収録されている。「マニアックな話なんですけど(『fripSide PC game compilation vol.2』のバージョンは)ちょっと納得いってないところがあって、トラックダウンをもう一回やり直したいとずっと思ってたんです。出したものにケチつけるのはプロとして失格なんだけど、もう一回やるチャンスがあればと思っていたので、今回やり直して収録することにしました」(八木沼)。

そしてfripSideのサポートメンバーとしてお馴染みのDJ HENTAIこと川﨑海がリアレンジを手掛けたのが、5thアルバム『split tears』収録のバラード「snow blind」。切々とした歌声とサウンドが、まさに雪が深々と降り積もる冬景色を思わせる。「スケジュール的に全部自分でやるのは無理だったので、この曲は海くんにアレンジしてもらったんです。彼はHENTAIのわりにはキレイなものを作るじゃないですか(笑)。まあ僕も少しシンセを弾いたり、プロデューサーっぽいことをやってはいますけど」(八木沼)。

Disc-1の締め括りとなるのが、4thアルバム『binarydigit』の収録曲となる「brave new world」。この曲では15周年を迎えたfripSideからファンへの感謝のプレゼントとでも言うべき、スペシャルなサプライズが用意されていた。なんと、南條、naoの歴代ボーカリストに加えて、八木沼とはALTIMAで活動を共にしていた黒崎真音、さらに「→unfinished→」などの楽曲提供で縁のあるKOTOKOという4人の歌姫が共演しているのだ。「naoちゃんと南ちゃんのデュエットはDecadeのときにやったので、今回は僕に縁のあるボーカリスト4人に歌っていただきました。このハーモニーは録ってるときも泣きそうになって。その感動がみんなにも伝わるといいなと思いましたね。ドラムは八木一美さん、ベースは北村雄太くん、ギターはa2cくん、コーラスは悟志とゆかいな仲間たち(笑)。総動員で作りましたよ」(八木沼)。

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