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INTERVIEW

2017.06.20

あの「プリン賛歌」のカバーも収録!ミニアルバム『à la mode』リリース記念、TWEEDEESインタビュー

あの「プリン賛歌」のカバーも収録!ミニアルバム『à la mode』リリース記念、TWEEDEESインタビュー

新進気鋭の女性シンガー・清浦夏実と沖井礼二(ex-Cymbals)によるバンド、TWEEDEES。先行リリースされた『おじゃる丸』のEDテーマ「プリン賛歌~20th à la mode edition」も話題となった彼女たちが、6月21日にミニアルバム『à la mode』をリリースする。結成3年目を迎え、進化を続けるTWEEDEESの最新モードとは――?バンドとしては「リスアニ!」初登場となるふたりに話を聞いた。

「プリン賛歌」をカバーを制作することで、TWEEDEESを一度客観視することができた(沖井)

――『à la mode』はTWEEDEES初のミニアルバムということで、どういった経緯でこの形式でのリリースに至ったのでしょうか?

沖井礼二 デビューから今まで、1年に1枚のペースでアルバムを作ってきたんですよ。なので昨年2ndフルアルバムを出した後に、なんとなく3rdの構想も浮かんできていたんです。

清浦夏実 それに向けて進もうと思っていた夏頃に、『おじゃる丸』のEDテーマ「プリン賛歌」のお話をいただきましたね。

沖井 でもアニメが始まる春までにフルアルバムを作るのはちょっと、じっくり作りたい構想だったので難しそうで。それでひとまず「プリン賛歌」の作業に取りかかるんですけど、楽曲をいただいてそれをカバーする訳じゃないですか。その作業が、カバーだからこそTWEEDEESを一度客観視することに繋がったんです。「カバーだけどTWEEDEESらしくしてください」というのがNHKのプロデューサーからの依頼で、「ベースはリッケンバッカーでお願いします」とメールに書いてありましたからね(笑)。

――すごいオーダーですね(笑)。「プリン賛歌」のカバー依頼は、そこまでTWEEDEESのキャラクターを把握したうえでのものだったんですね。

沖井 「自分が作った曲じゃないのに、それをTWEEDEESらしく」というオーダーが、「じゃあTWEEDEESらしいって何だろう?」という考えに繋がる訳です。それをきっかけに客観的に自分達のことを見直しながら作業をすることになって、とても濃密かつ有意義な時間でした。

清浦 それでアニメで「プリン賛歌」が流れ始める春に、やっぱり何かしらの形にしたいという話になって。フルアルバムにするよりも、今のTWEEDEESでフルスイングしたものをミニアルバムにした方がいいんじゃないかという結論に至ったんです。

沖井 ミニアルバムはできることが限られていて、でもミニアルバムだからこそできることもあるんです。それを突き詰めようとした結果、フルアルバムを1枚作るのと同じかそれ以上の労力がかかりました。

――ミニアルバムは曲が少ないぶんコンセプティブであることが多いですが、『à la mode』にはテーマやコンセプトはあるのでしょうか?

沖井 フルアルバムで掲げるコンセプトって、例えばテーマやキーワードで括って12曲くらいでドラマを作っていくことが多いですよね。ミニだとそれには非常に不向きなんです。それで今の音楽の聴かれ方や、ミニアルバムの果たすべき役割を考えて、6曲入りの全部新曲のベスト盤のようなものを出すのがいちばん面白いと思ったんですよ。そう思って作り出したらえらいことになったという(笑)。

――TWEEDEESは精力的にライブ活動をしているイメージがありますが、『à la mode』の収録曲はライブで披露してきたものではなく、今回のために書き下ろした新曲なんですか?

沖井 そうです。「プリン賛歌」という強敵がいたので大変でした。メロディーがきれいで、何しろいい曲じゃないですか。それをTWEEDEESらしくフルスイングで作ったら、カバーでありながら代表作足り得る作品になったんです。それと一緒に並ぶ曲と考えると、おいそれと適当なものは出せないですよね。その分気合いは入ったし……。

清浦 プレッシャーも大きかったですね。やっぱり「プリン賛歌」があることによる、最初のハードルが高かったんですよ。日本全国にこの曲を知っている人がいて、20年分の思いがこの曲には詰まってますから。

沖井 そう!でも絶対に「プリン賛歌」には負けられないっていうね。

――結成3年目にして3枚目のアルバムリリースですが、初期の頃と何か制作過程に変化はありましたか?

沖井 ふたりだから多数決もないし、徹底的に相談しながら作っているんです。その相談のプロセスが、取捨選択の捨てる方じゃなくなった感じがします。2枚アルバムを作って、TWEEDEESというものを我々にふたりが把握したんでしょうね。お互いから出てくるアイデアに対して、「それはないでしょ」ということがほぼなくなってきたのが、いちばん印象的な違いかな。

清浦 わりと初期はやりあってた感じですよね。

沖井 うんうん、やりあってたよね。

清浦 ふたりの「TWEEDEES的にありかなしか」のズレが減ってきたというのは大きいかも。

――今作の楽曲は初期に比べてさらに洗練されて、聴き口はキャッチーなままでアレンジがより複雑化しているように感じました。

沖井 「○○みたいな」という感じの、曲を作るときの理想を外に求めることがなくなったんですよ。「例えば○○」の「例えば」がないから、全部自分達のなかで完結しているんです。そこで自分達が描きたい世界を追い求めるから、そのなかでたくさんの取捨選択があって、結果的に複雑化しているのかもしれません。「すごくポップなものを作りたい」という気持ちが有り余って、普通のA→B→サビの構成じゃないものができあがったり……。

清浦 私は、沖井さんからしたら普通のことなんじゃないかと思いますよ。意図してポップスの型にはめようと思っていないというか、「できたらこうなっちゃった」という結果なのかなって。

沖井 そうだね。でも「いいのかな」と思いながら作った曲もあるよ。

清浦 まあ私も歌詞の展開を考えながら書いていて、「またここでAメロきたよ!」とか「Dメロ急にきたよ!」とか思うことはありましたけど(笑)。スタートからゴールまでの流れを考えて書くので「ここでもう1回スタートに戻るのね」という部分もありますけど、でも曲としてはそれが正解なんです。

沖井 構成もアレンジも、もう何に影響を受けてこうなっているのか自分でもよくわからないんですよ。ただ、この曲はこれを求めているとか、TWEEDEES的にこれが求められているとかはなんとなくわかっていて、そうでないものはやらないようにしました。だから苦労はしたけど、迷いはなかった感じです。

――沖井さんほどのキャリアを持った方が、今、自由を楽しめているのは非常に素晴らしいことだなと思います。発注・納品の仕事もあるなかで、制約を離れて好きに作っていいバンドで新たなオリジナリティが生まれているという。

沖井 それは本当に、常日頃から幸せだなと思っています。やればやるほど、自分はバンドマンだったんだなと思いますね。だってもう、早く次のアルバムを作りたいですから。

清浦 資質ですね、これは。

沖井 例えばアレンジの手法に関して、花澤香菜さんや竹達彩奈さんに曲を提供したり、CMの音楽を作ったりするなかで学んだものもたくさんあります。それが自分の中で、ひとつひとつの粒じゃなくてドロッとゲル状になって……ゲル状って言葉きれいじゃないな。発酵……でもないな(笑)。

清浦 「セミの変態」みたいな?

沖井 そうそう、サナギの中で一回ドロドロになって。それで羽化してくれている感じがあります。

――清浦さんから見て、この3年で沖井さんに変化はありましたか?

清浦 沖井さんはどんどんイキイキしてきてますね(笑)。

――「あの頃は死んだ魚のような目をしていたのに」的な言い方ですね(笑)。

清浦 でもほんとそうなんですよ!(笑)。何かやりたい音楽に飢えてる感じ。お仕事で音楽をやってはいらしたと思うんですけど、そういう第一印象はありました。それに比べたらここ数年は……。

沖井 キャッキャしてるよね(笑)。

清浦 どんどんお茶目なおじさんになっています(笑)。

沖井 バンド活動というものに飢えてたのかもしれませんね。「TWEEDEESの沖井です」と言えることが、やっぱりうれしいんですよ。

清浦 そうですね。それは私も同じです。

――それでは1曲ずつ収録曲について伺います。まずはM1「未来のゆくえ」ですが、こちらはポップなメロディーに対して非常に複雑なリズムの楽曲ですね。

清浦 すごかった……プログレかと思いました……(笑)。

沖井 これはドラムがSOIL & “PIMP” SESSIONSのみどりんなんですよ。最初はデモを聴いて、80年代っぽいアプローチのリズムパターンを考えてきてくれていたんです。スネアのチューニングも青山 純さんっぽい感じだったり。でもたしかにそれもかっこいいけど、「今みどりんは、どんな感じの音楽が好きなの?」という話をして、「アフリカっぽいこういうのが好き」と言うので、「じゃあそっちの方が絶対かっこいいじゃん」「今のみどりんのモードがそれなら、そっちでいこう」ということで、あんな感じになりました(笑)。

――たしかにドラムのサウンド的にも土着の雰囲気がありますね。

沖井 みどりんはみどりんで考えてきてくれたんだろうけど、用意されたものは僕はちょっと違うと思ったんです。最初は仕事だから行儀がいいんですよ。でも元々みどりんと知り合ったのが飲み会だったから……。

清浦 ROUND TABLEの北川(勝利)さんを介して出会いましたからね。

沖井 それで仲良くなったから、「そっちのモードで来いよ」という気持ちがあったんです。そういう話をしたらみどりんもわかってくれて、それまで用意してあったスネアを片付けて「こっち!?」「それそれ!」みたいな。そこから先はただただ楽しいだけでした。

――沖井さんもスラップを多用した、かなり跳ねたベースを弾かれていますね。

沖井 ですね。こういうものを僕がやる日が来るとはあんまり思っていなかったから、自分でもびっくりしています。とはいえTWEEDEESの楽曲としてはすごくしっくり来ているので、僕らが頭で考えて作ったというよりは、TWEEDEESが求めるとおりに作ったらこうなりましたという感じです。TWEEDEESが自立してきたということを、そういうところからも感じますね。

――軸がしっかりしてきたぶん、エッセンスを変えても軸はブレないという余裕によるものですかね?

沖井 余裕というよりは、めざしているものをその場で探せるようになったというのが近いですね。わりと僕はデモを作り込んでいくんですけど、それを完コピするより面白いものが出てくるなら「そっちやっちゃおうぜ」と言えるんです。デモに囚われずに、その場できちんと判断ができるようになってきている、というのはありますね。

――「未来のゆくえ」は清浦さんと沖井さんの共作詞ということですが、どういった形で作業は進められるのでしょうか?

清浦 この曲は先に私が歌詞を書いて、沖井さんに相談しました。構成で悩んだ部分があったんですよ。

沖井 「ここは苦労してそうだから、こういうふうに書いてみたけどどう?」って提案したね。清浦が中心になって書いている歌詞だから「この主人公はここではどういう感じなの?」と話を聞いてサポートする感じで。

清浦 ここはどんな詞をはめたいかとか、ここはどんな景色を見せたいかとか、そういうことを聞きながら世界観を共有していきました。わりと揉み合って書きましたね。

沖井 お互いの中にそれぞれ辞書があるから、その辞書を持ち寄った感じです。

――今までの楽曲とはリズムの取り方も異なると思いますが、ボーカル録りはいかがでしたか?

清浦 この曲は……最初はやっぱり困りましたね(笑)。

沖井 リズムが裏、裏、裏だったりとか、ブレスのタイミングが非常に微妙だったりするからね。

清浦 テクニカルなものを必要としている曲なので、結構苦労はしました。

沖井 でも仮歌をきちんと作ったから、本チャンの歌録り自体はそんなに苦労しなかった印象がある。仮歌の段階で「ブレスはここに入れなきゃダメだね」とか「ここは裏拍で入るから気を付けよう」とか、そういう細かい部分を決めておいたんですよ。それを復習して翌日スタジオに入ったときにはそんなに苦労してなかった。

清浦 わりと筋トレ的な作業でした。事前に裏拍筋とブレス筋を鍛えるほかなかった感じです(笑)。油断のできない曲でしたね。

――M2「à la mode」はMVも制作されたタイトルチューンになります。こちらはどのように作られたのでしょうか?

沖井 これはまず『à la mode』というアルバムタイトルを、先に清浦から提案されたんですよ。それでそういうアルバムになるんだと思っていたら、「アラモード」という言葉が乗るメロディーを思い付いたんです。それに従って曲を書いていきましたね。

――そもそもアルバムタイトルとしての『à la mode』の提案は、どういった意図でなされたんですか?

清浦 まず最初に「プリン賛歌」がありまして。単純な話なんですけど「プリン賛歌」に副題を付けようとなったときに、やはりプリンだからアラモードだろうと(笑)。20周年だから「20th à la mode edition」にしようという形で副題は決まったんです。それでアラモードという言葉は「最新流行」「最先端」という意味なんですけど……。

沖井 当世風だよね。

清浦 そういう意味を持っていたので、TWEEDEESのモードともとても合っているなと思ったんですよ。

沖井 ドンピシャじゃんと思って、それでアルバムのタイトルにしたんです。で、それに合わせて「アラモード」の部分だけメロディーが思いついたので、歌詞はどうしようと相談をしたら「アラモードな恋よ」というフレーズを提案してくれたんですよ。

清浦 刹那的な恋をする女の子の歌にしようと思ったんです。

沖井 彼女が提案してきたモチーフが、「女の子の無敵感」やカラフルさがあってとてもいいなと思ったんです。それで歌詞を進めてもらいつつ、アレンジを進めていきました。作っていったら「この曲でMVいいよね」という話になったんですよ。

清浦 女の子が取っかえ引っかえ男性を脱がしていくというMVになりました。

沖井 今回のリード曲という言い方が正しいかはわからないですけど、TWEEDEESの今の雰囲気をビジュアル化する意味でこの曲がぴったりだなと。

――ジャケ写と同じフォーマルなおふたりも出てきつつ、清浦さんはかなり派手な衣装でも登場されますよね。

清浦 金髪ですからね。「かっこいい」もやりたいし「かわいい」もやりたい、という欲張りな女の子の曲です。

沖井 女の子の変身願望ってきっとあるじゃないですか。ブレザーになってみたり金髪になってみたり、「おしおきよ」的なものもあるかもしれないけど(笑)。それって僕達男にはあんまり表現できないものだと思うんですよ。でも女の子のそういう、変身願望や無敵感は魅力的だということはわかりますよね。羨ましくも思うし。それを音楽的にも映像的にも表現できていると思います。TWEEDEESにそういう季節が訪れているんだなあという感じですね。始めたばかりの頃はキャリアのせいで僕のことを見ている人が多かったと思うんですけど、その重心はもう清浦に移り始めているんだろうなあという。それは絶対にその方がいいことだし、その象徴的な曲なんじゃないかなという気がします。

――続いてM3「Birthday Song」はどういった曲になりましたか?

沖井 これはレコーディングのいちばん最後にできた曲で、だからもう結構おかしな状況になっていて(笑)。

清浦 ナチュラルに言いましたね、「おかしな状況」(笑)。

沖井 もう自動操縦みたいになっていましたね。知り合いの誕生日のパーティーに呼ばれたときに、ちょっとカバー曲を演奏することがあるんですよ。そのときに、みんなが状況関係なく歌えるバースデーソングが「Happy Birthday to You」以外に世の中にあんまりないと思ったんです。それで「これは必要だな」と。

清浦 「欲しい」と。

沖井 「まず俺が欲しい」と。

――バースデーソング印税を貰いたいと。

沖井 貰いたい!365日きっと誰かの誕生日な訳じゃないですか。だから毎日どこかでオンエアしてほしいです(笑)。それでバースデーソングを作るために誕生日というものについて考えていたんですけど、0歳児が誕生した日というのは人生でいちばん美しくて素晴らしい日だと思うんです。それを膨らませていったらこういう曲になりました。

――アルバムの収録曲が確定する前に、レコーディングが始まっていたんですか?

沖井 そうです。「Birthday Song」は本当にレコーディング終盤に思い付いて作った曲で、他の曲もレコーディングと並行して作っていました。

清浦 さっき言っていた「おかしな状況」というのはそういうことです。

沖井 6曲というのは先に決めたうえで、6曲以上の曲を作ってどの曲をアルバムに入れるかを作りながら考えてました。最終的にこの6曲がいちばんまとまるだろうということで選ばれたんですが、「Birthday Song」が入ることで別の曲がボツになったりしているんですよ。

――こちらは作詞作曲が沖井さんの担当ですが、清浦さん的に自分が作詞作曲に携わっている曲とそうでない曲を歌う際の意識の差はありますか?

清浦 やっぱりフィルターが沖井さんのものになるので、自分の意識とは別のフィルターですから、それをきれいに通って行こうというのはあります。ちゃんと飲み込んでから歌わなきゃなという気持ちですね。この曲には生だけじゃなくて死も含まれているので、スケールの大きいイメージで歌いました。そういう大きさを描けるのがTWEEDEESの良さなのかなと感じています。(次ページに続く)

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