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REPORT

2017.05.30

故郷に広がる夕映え色の夢景色。「THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS 5thLIVE TOUR Serendipity Parade!!!」石川公演レポート(前編)

『アイドルマスター シンデレラガールズ』初の全国ライブツアー「THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS 5thLIVE TOUR Serendipity Parade!!!」石川公演が5月27日~28日、石川県産業展示館・4号館で開催された。

石川公演には青木瑠璃子(多田李衣菜役)、飯田友子(速水 奏役)、大坪由佳(三村かな子役)、金子有希(高森藍子役)、洲崎 綾(新田美波役)、髙野麻美(宮本フレデリカ役)、高橋花林(森久保乃々役)、種﨑敦美(五十嵐響子役)、津田美波(小日向美穂役)、長島光那(上条春菜役)、花守ゆみり(佐藤 心役)、原 優子(向井拓海役)、春瀬なつみ(龍崎 薫役)、牧野由依(佐久間まゆ役)、安野希世乃(木村夏樹役)が出演した。今回は切り口を変えながら初日2日目を横断してレポートする。

宮城公演では諸星きらり役の松嵜 麗がセンターに立って『シンデレラガールズ』の新しい光景を見せてくれた。では石川では?と注目しながら始まった一曲目。全員曲「Yes! Party Time!!」でセンターを務めたのは牧野由依だった。

5th宮城・石川公演のライブ衣裳は、『デレステ』1周年時に登場した衣裳「アクロス・ザ・スターズ」にイメージが近いマーチングバンド風衣裳。牧野は衣裳の赤と、まゆらしさを表現するためのリボンの色調を合わせていることもあり、まるでリボンも含めてあつらえたかのように豪奢できれいな仕上がりだ。牧野は髪の毛にもリボンを編みこむなど、リボンにこだわったまゆカスタムでステージに上がったのだが、髪の毛に編みこんだリボンにあしらわれた飾りの数々は、松嵜から贈られたものだそうだ。この衣装の牧野の姿が一際輝いたのは「Love∞Destiny」で、ステージのいちばん高いセンターに立ち、豪奢な紅い天鵞絨の広間の映像を背に歌う牧野の姿は一枚の絵画のような美しさだった。

そしてライブソロの一曲目はもちろん牧野の「エヴリデイドリーム」だ。愛情が一途すぎてちょっとこわいくらい、という側面に注目されることもあるまゆだが、今回のステージはあふれる愛情を惜しみなく客席に向けた、誰よりもキュートでキラキラした王道アイドル・佐久間まゆの色が特に強かった。それが一番現れていたのが「エヴリデイドリーム」の想いを込めた落ちサビで、牧野は小指のリボンを楽しそうにふるわせながら輝くような笑顔を見せていた。

驚いたのは、同じくだりの笑顔が2日目の方がずっと印象的だったこと。落ちサビの前半はやや顔を伏せがちに歌い、「あなた見てる それだけで幸せです」のフレーズに合わせてすっと客席に目線を上げ、輝くような、幸せいっぱいの笑顔を見せたのである。こういった歌詞と連動した目線、表情、カメラを含めた演出の作りこみはどちらかと言えば、メンバー固定で特定の楽曲を何年も磨き上げる『ミリオンライブ!』のお家芸なイメージがある。

だが、初日に全力を尽くしたパフォーマンスで得た経験と反省を、本人と演出サイドが協力してブラッシュアップすれば、翌日にはさらに違った何かを見せられる可能性がある。「2日間同一セットリスト」という言葉に、「2日間作りこんで、ライブの中でさらに成長できる可能性を秘めたセットリスト」という新しい意味合いが与えられた気がした。アーティストとしても声優としてもキャリアと実績がある牧野が、センターとして誰よりも頑張り、よりよいものを作ろうとする姿勢を見せる姿が、チームを牽引している面もあったのではないだろうか。

石川公演を語る上で外せない要素としてひとつ紹介しておきたいのが、フラットな会場構成だ。日本国内のライブ会場は3000人、5000人の収容人数のラインを超えると使える会場数が急減し、それ以上を収容する大規模会場はアリーナ席の周りをスタンド席が取り囲み、スタンド席はステージから離れるほど座席位置が高くなるアリーナタイプが中心となる。アリーナや、さらに上のドームクラス以外の場所で大規模ライブをやりたいのなら、幕張メッセやインテックス大阪のような展示場(あるいは野外)にライブ会場を特設するのが基本となる。展示場内にライブ会場を特設する場合は、フラットな床にパイプ椅子が後方まで並ぶ感じになる。石川県産業展示館も床面全域がフラットなため、ややステージが見にくい会場後方までしっかりとパフォーマンスを届けるには工夫が必要となる。

だが、同じようにフラットな客席だった「THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS 3rdLIVE シンデレラの舞踏会 – Power of Smile – 」以来、『シンデレラガールズ』のライブが磨きに磨き上げてきた武器がひとつある。それは大型LEDスクリーンをぜいたくに使い、ステージと映像演出が一体になったライブエンターテイメントとしての見せ方だ。

ソロ曲でスクリーンを楽しく使っていたステージを幾つか挙げていこう。前半戦で印象的だったのが種﨑の「恋のHamburg♪」で、スクリーンに映るのは、カラッと晴れた晴天の空とピンク色のかわいいおうち。庭に干された真っ白なシーツが風になびく、幸せを形にしたような光景だ。そこで響子のビジュアルに寄せたサイドアップの髪型も印象的な種﨑が「お料理、得意なんです♪」とかわいく片足をあげてポーズをとれば、その空間はもう理想の新居そのもの。2番では家の中から見た別アングルの映像とともに、響子が作るであろうおいしそうな料理が次々と映し出され、あたかも手料理曼荼羅のような不思議な空間を作り上げた。そこで種﨑はフライ返しを手に歌い踊り、手に手に調理用具を持ったダンサーたちが周囲を彩る。初日、このパフォーマンスと共に種﨑が「今日はハンバーグを食べてくださいね♪」とお願いしたのだから、石川県からハンバーグが消える(※金沢駅前の人気ハンバーグ店などでハンバーグの品切れが確認されている)のも当然なのである。

とてもかわいく楽しい映像演出があったのが大坪の「おかしな国のおかし屋さん」で、スクリーンに映し出されるのは、大坪が小人サイズに見える大きな家の中。小人サイズの大坪が、自分より大きなメレンゲうさぎと会話をかわしながらお菓子作りにチャレンジするというファンシーな物語仕立てだ。前述の「恋のHamburg♪」では種﨑がハンドマイクとフライ返しの二刀流という変則的なパフォーマンスを見せたが、この曲で大坪はヘッドセットを身につけて登場。客席にマイクを意識させないヘッドセッドだから、大坪が歌いながらメレンゲうさぎの台詞も受け持つのにも違和感がない……という副産物もあるのだが。理由としては、大坪が歌いながらボウルと泡立て器を持って上手に泡立て、おいしいレモンタルトを作り上げ(る姿を演じ)、ステージ上で実食するためには両手をあける必要があったから、がメインだろう。ステージ上でレモンタルトを実際に頬張る姿が誰よりも幸せそうだったのは、甘いお菓子が大好きなかな子と、それを演じるスイーツマスター大坪由佳ならではの、演技いらずの真実のリアクションだった。

そして、2日間ほぼ同一セットリストの中にあった変化のひとつが「おかしな国のおかし屋さん」のラストだ。昨年の「THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS 4thLIVE TriCastle Story」では上坂すみれ(アナスタシア)が王子役を務めたシーンで、初日は飯田が王子としてステージの奈落からすっとポップアップ。大坪の手の甲に優雅に口づける王子っぷりを見せた。飯田は大坪と並んで身長面でも王子らしさを感じさせるために、ブーツのかかとを高くしてもらったそうだ。

飯田王子のインパクトの余韻も残る2日目には、今度は安野が王子役で登場。安野は初日にはなかった王子のマントを身にまとっていたが、このマントは初日の晩にスタッフが手作業で仕上げてくれたとのことで、ステージをより進化させようとする熱意と愛情が裏方のスタッフにも共有されていることが感じられた。

逆に、スクリーン映像をステージ演出に取りこんでみせたのが金子の「青空リレーション」だ。間奏で金子演じる藍子がはしゃいだように「プロデューサーさん、こっちこっち、笑って!」と言葉を弾ませる台詞があるのだが、曲ラスト、スクリーンに映った青空に虹の橋がかかった美しい景色からカメラが徐々に引いていくと、実は景色が1枚の写真だったことがわかる。ああ、あの藍子の台詞はプロデューサーさんの写真を撮っていたんだな、この曲の明るく元気で弾むような藍子のテンションはプロデューサーが引き出していたんだな、とわかる粋な趣向だった。そして初日金子が、この曲では緑のサイリウムを振って、Dメロでは青のサイリウムにきりかえて青空を広げてほしいとお願いすると、2日目にはしっかりそれに応える客席だった。

客席後方からでもよく見えるスクリーン、そしてライブビューイングの映像が、肉眼で直接見る以上の情報量を与えてくれるのは、アップで切り取った演者の表情だ。その表情の見せ方がとにかく素晴らしかったのが津田の「空と風と恋のワルツ」だった。ワルツのリズムに乗せたやや変則的で不思議な響きのある難曲。その中で津田は純真さ、緊張、恥ずかしさ……といった、複雑な感情の色合いを表情の芝居で見せていく。そして最後の最後、津田ははにかんだようににこっ、と微笑むのだが、その前に照明のトーンを敢えて暗くして余韻を残す。ピンスポットで「照らす」ばかりでなく、あえて顔に影を落としたり、逆光で鮮烈さを出したり、光の演出で役者の表現を後押ししていたのも印象的だった。

そうした映像や光を十全に活かしたライブの中で、個人的にひとり異色な印象が残ったのが、春瀬なつみだった。スクリーンやライブビューイングの映像を活かした見せ方の弱点……というか、必ずしも得手ではないポイントは「多人数曲」だと思う。多人数が入り乱れる楽曲の中で、表情や細部を見せるためにカメラが寄ると、自然に同時にステージの別の場所で起こっている何かは画面情報から抜け落ちることになる。スクリーンがつかまえきれない部分に関しては、会場では肉眼で全体像を捉えようとすることになるのだが、その時明らかに、会場後方まで気配がダイレクトに飛んで来たのが春瀬だった。誰よりも小柄な彼女が、全身から発する爆発するようなエネルギー。元気よく行進するような振付で、片足を上げている時にもう一方の足も浮いているようなイメージだ。面白いのは全員曲での配置で、春瀬を縦2列の後列に配置するのである。小柄な春瀬が後列に回るとさらに小さく見えて、その彼女が誰よりも躍動するのだから目立たないはずがない。おそらく、会場の後方に行くほどその効果は大きくなったのではないだろうか。

逆に、スクリーンが切り取った映像の中で春瀬が一際輝いていたのは「生存本能ヴァルキュリア」だった。原曲メンバーからは金子と洲崎が参加。おだやかでふわりとした普段の藍子のイメージとはまったく違う、鋭く強い表現を見せる金子。誰もが望んでいた、この曲のセンターに立つ洲崎の姿。そんな女神たちと並んでなお、龍崎薫そのものといったビジュアルの春瀬が見せるきっぱりと決然とした眼差しのアップは、とても強い印象を残した。それでいて彼女の動きの爆発力は健在で、5人の中で明らかに春瀬のステップワークだけ激しいパートまであったほどだ。MCで春瀬は原曲メンバーのひとり、橘ありすがユニット「L.M.B.G」の仲間であることを紹介し、ありすの力を借りたと語っていたが、そのつながりへの想いの強さもまた、より彼女のパフォーマンスを印象的にしていたのかもしれない。

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