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INTERVIEW

2017.03.24

岸田教団&THE明星ロケッツ 待望のニュー・アルバム『LIVE YOUR LIFE』リリース記念!ロング・インタビュー【後編】

岸田教団&THE明星ロケッツ 待望のニュー・アルバム『LIVE YOUR LIFE』リリース記念!ロング・インタビュー【後編】

岸田教団&THE明星ロケッツのニュー・アルバム『LIVE YOUR LIFE』はなぜここまでメッセージ性の強い楽曲が並ぶ作品となったのか。その真相に迫る1万字ロング・インタビュー。後編はアルバムのストーリー、メッセージ性の強いアルバムとなった本作により深く迫ると共に、今年で10周年を迎えるバンドの現在地を、ichigo(Vo)と岸田(B)に語ってもらった。

★インタビュー【前編】はこちらから★

――メッセージ性の強い作風となったアルバム『LIVE YOUR LIFE』ですが、そうした傾向は冒頭の「希望の歌」からあります。またこれも、岸田教団の曲で「希望の歌」というタイトルが聞けるとは……。

岸田 でもあのサビのあとのシンセの音を聴いたら、どこからどう聴いても「希望の歌」にしかならないんです。これは間違いなく人を希望に向けて扇動している音だなと。ある種聖戦を呼びかけるような。これが正しいかどうかじゃなくて、神はいるということを信じればすべてが正しくなっていくという感覚です。テロリズムは迷惑なものでもあるんですが、やっている彼らは正義に殉じているんです。その感覚に近いイメージですね。今回は全体的にFPSゲームな世界観をイメージしているものはあります。

――いわば“個”対“世界”という世界観、岸田教団らしいセカイ系的な印象もありますよね。「zero-sum game」もそうですが。

岸田 セカイ系でもいろんなものがあって、どっちかというとヒーロー性があるというよりかは、僕らの場合はいち個人に世界を変える能力があるのではなくて、世界を変えられない奴らのセカイ系なんですよ。

ichigo 凡人のセカイ系ね。

岸田 ボーイ・ミーツ・ガールできなかった凡人のセカイ系ね(笑)。世界の鍵を握る女と出会わなかったセカイ系、でも世界を相手に戦わなくてはならないという。

ichigo だから今この世界で働いている人たちだよね。

岸田 そうだね、あるいはそこから放り出された人。やらざるを得ない人たちですね。

――でもそこに主人公感があるのは……。

岸田 たぶんそれは「GATE」から来る世界観なんでしょうね。

ichigo あと今回のアルバムはめっちゃ“世界”って言ってるんですよ。

岸田 ほぼ全曲で一回は言っているという(笑)。

――やはりそこは喘ぎながらも世界を相手にしているんですよ。

ichigo 小さい範囲で(笑)。「nameless survivor」も、戦場で童貞のまま死ねるかって言っているだけの歌なんですけど(笑)。でもそうだよね?このまま死んでたまるかっていう。

岸田 よくあるメッセージ・ソングって、いちばんパイの大きいメッセージを選ぶじゃないですか。でも、例えばゲーマーの皆さま方にどういう世界観が受けるかわからないんですよ。僕は彼らと近いと思っているので、今まで音楽を聴かなかった人たちや、音楽業界が発するメッセージに響かない人向けに作っているので、今まで音楽を聴いてきた人たちがなじみのあるメッセージではないと思うんですよ。

ichigo びっくりするのは、私はそのパイの大きい側の人間だと思っていたんですよ……結局狭いほうだった!

――とかくメッセージはより大勢に向ければポジティブに、時としてぼやけたものになりがちですよね。

岸田 トータルで「夢はかなわない」って言ってるもんな(笑)。夢とかない。

――ただそうであっても、現実では生きているんですよね。

岸田 そう、そのほうがリアリティあるんですよ。みんながみんな、夢とか希望があるわけじゃないでしょ?

――例えなくても、本作ではその生を肯定するような世界観なんですよね。

岸田 そうそう、希望がなければ生きていけないっていうのもおかしな話で、希望は得られれば作れる。

――だから聴いていて高揚するんですよね。

岸田 つらい悲しいというメッセージですら、そういうアイドルとかも生まれているので、そこも消費されていると思うんですよ。それらに対する新しいメッセージを発するとなったときに、「やるしかない!」っていう。「勝て!」という。

ichigo そういうニッチな部分を愛している人たちは、ニッチなところにいると思うんですよ。だから「LIVE MY LIFE」はそういう人たちに愛し続けてねっていう曲なんですよ。我々を、我々みたいなもんを(笑)。

――結果自分のことになったと(笑)。

ichigo だから、諦めないでほしい、私たちのことを(笑)。

――最終的には本作はこれまで以上に共感力があるなと感じました。

岸田 僕らの歌詞に共感するような人たちは、あまりいい人たちではないと思う(笑)。

ichigo でもそういう部分はだれもが持っていると思うんです。

岸田 きれいごとでは話が進まないんです。だからきれいごとはやめようという。

――それゆえか作品としてスッキリときれいにまとまったんですよね。

岸田 たぶんそこは世相があると思います。だってもう幸福のリソースは人間の数より少ないのは明らかなんですよ。ひとりのモテるイケメンは彼女が10人いるのに、残りの奴らは彼女がいないというのは、もう一部の人間に幸福が集中しちゃっているんですよ。

――まさに「zero-sum game」だと(笑)。

ichigo この曲も、歌詞が間に合ってなくて、「ええ……じゃあichigoが書くの……かしら?」ってなったときに、岸田が「借りを作るのは嫌だ」という(笑)。

岸田 だって誰かにやらせるということは俺にデメリットが発生するのだから、これはゼロサム・ゲームなんだと(笑)。ichigoさんが歌詞を書くということはichigoさんに行った利益の分俺がマイナスになるということだから、利益の取り合いをしているゼロサム関係なんですよ。

ichigo たしか私が「お前、伊勢丹の領収書待ったなしな」って言ったときだよね(笑)。

岸田 そこで閃いた(笑)。

ichigo 私は引き受けた分、寝ないで歌詞を書いて、それで伊勢丹を得るわけじゃないですか(笑)。

岸田 そこで「僕がもしも幸せならば きっと誰かが泣いてるんだ」っていう歌詞に至る(笑)。

――さっきのスッキリというのはここまで言い切ったという明快さもありますよね。

岸田 言っちゃったっていうね(笑)。でもこういうことを思っている人たちはいっぱいいるのに、そういう音楽がないということは、やはり何かみんなそこに対してビビっているんですよ。あるいは音楽やっている奴らってもっとハッピーなのかな……?(笑)。

ichigo 結局みんな矛盾を突かれたくないんですよ。頑張りたくないって言っていても結果頑張っているわけだし。でも矛盾だけどどっちもある感情なんですよ。

――さんざん悪態ついてきましたけど、その汗のきらめきは知っているというか(笑)。

ichigo 恥ずかしい(笑)。だからたぶんみんな言いたくないんですよ。結果頑張ってるからね。

岸田 そう。悪態ついても何しても、最終的には勝たなくてはならない。アルバムとしても今回は言ってやったなって思いますね。前作『hack/SLASH』からこの傾向はあったんですけど、あれを言っているだけではなくてやるようになったという感じですね。言ってはいたけど動かない『ハクスラ』から、言って動くようになったという。そこがいちばんの違いかな。『ハクスラ』で言った方向に動いた結果というか、『ハクスラ』がなければ「GATE」は生まれませんでしたからね。

――そうした渾身の一作をリリースしたあとは、夏にワンマン・ツアーが控えていますし、何より今年は岸田教団結成10周年になります。

岸田 10年やって、自分が音楽をやるうえで、自分の仕事はストーリーを作ることであり、メッセージ性をつける宿命に諦めをつけた10年でもあったという(笑)。普通は最初にそれがやりたいから音楽を始めるのに、僕の場合はそんなものがないのに始めちゃった。元々エンジニア志望だったのが、そんなことをやっている人たちのお手伝いをしたかったんですね。それがやる側に回るということは、結局は向き不向きであって、単純に向いていたからその方向に引きずられ、そして10年引きずられた結果、諦めたという。俺は主君じゃなくてただの中二病患者だ!という(笑)。俺は仕事人ではなかった、むしろ人にペラペラ中二病臭いことを言っているのが向いていたんだという諦め、年貢を納めたという。今回は開き直ってみんなのために年貢を納めたんです。

――10年を経て、自分自身の宿命に気づいたと。ちなみに現在はもう一枚アルバムを作っているんですよね?

岸田 “例大祭”に向けてです。これは東方アレンジというものに対しての10年間のケリをつけに行く。このアルバムの流れと同じですよね。自分がなんなのか、このアルバムに出しに行く。俺は自分がなんなのか認めたくなかったんですけど、それを認めていったんですね。俺はこうだと、諦めた。

――なるほど。

岸田 本当は最後までサウンドがどうかと言い続けるミュージシャンになりたかったんですけどね。アーティストにだけはなりたくなかった。でも向き不向きという流れには逆らえない。そこを無視していくと、自分の人生を代償にしなくてはならなくなるんですよ。つまりそれはそれで自分の最小のコストで生きていきたいという世界観と逆らうんですよ。効率を取るか自分のやりたいことを取るかで、僕は効率を取ってしまったんですよ。自分に無理がないほうを選ぶんですよね。無理がないほうに行けばいくほど、自分の本来に行きつくわけですよ。年々自分のやりたいこととかい離していくわけですよ。最終的に10年経ってどちらか選ばなくてはならないぐらいに乖離がひどくなった結果、「しょうがない、今まで自分が歩んできた道が正しい」っていう結論に至りました。やりたいことよりもみんなのために生きていく。

――いわば自分の世界観を発信していくという結論ですよね。

岸田 僕は自分の世界観を自分の意思とは関係なく見せていたわけじゃないですか。なぜならば世界観は出そうと思っていなくても勝手に出ていくので、勝手に出ていくぶんでアーティストの仕事をしているわけじゃないですか。でも僕はそこが好きではないので、積極的になっていったのはごく最近ですね。それこそ『ハクスラ』くらいからじゃないですか。そしてその2年間過ごした結果、この方向性が正しいという結論になったわけで。

――自分の想いに結論がついた。

岸田 でも先にアーティストになったことでどう思っているかとは別に、いろんなものを受け取っているじゃないですか、みなさんから。俺が適当にやってきたことを愛してもらっているんですね。その愛情を受け取っているんだから、それは返さないとだよね。俺が持ってどこかに逃げてしまえばうまくいくわけないし。経済ですから、愛情は。

ichigo 結局台なしだよ!(笑)。でも私が今回歌詞を書いたときに思ったのは、武道館やりたいし、たくさんの人に向けて書いた曲がすごく個人的なものになってしまったという絶望を感じたよ(笑)。そこでも諦めがついた。

岸田 俺は逆に自分が思ったよりわがままじゃないって気づいたね。それよりはみんなより受け止めたものを返していこうと。

――ある種『LIVE YOUR LIFE』はこの10年を結論づけて、またその先に進もうとする意志も感じられますよね。

ichigo たしかに、次の作品が見えるアルバムにはなったかと思う。

岸田 そうだよね。でもここでみんなが「違う」ってなったら方針転換するから(笑)。みんなのためにやったらみんなが違うってなったら「わかりましたー!」ってなるよね。

ichigo 「よろこんで!」って(笑)。

――なるほど(笑)。

岸田 信念とかプライドは、自分のためのものだとだめなんですよ。みんなのために打ち立てられた信念やプライドって高い価値があると思うし、それがないものはアーティストとして成り立たないと思うんです。自分のための信念やプライドってわがままだと思うんですよ。

ichigo (頭を抱えて)ああ……(笑)。

岸田 信念が出来るときに、そこに人の姿がないと信念は信念じゃない。

ichigo あった!ありました!(笑)。私もみんなの顔が浮かんでた!

岸田 (無視して)だから僕は信念やプライドの在り方というものをこのアルバムを通して語りたかったんですよ。

――今回じっくりとお話して、岸田教団のインタビューに“みんな”というワードが出てきたことがとにかく感慨深いですね(笑)。

岸田 わははは!(笑)。

ichigo 岸田さんがみんなって言っている間は私がわがままになるという。岸田が俺俺って言い出したら私がみんなって言うから(笑)。

岸田 そんな感じ(笑)。

――それもまた10周年の成せる業なのかなと。バンドも現在の編成になって成熟してきているというか、よりバンドとして充実しているのが伝わります。

岸田 言葉で語るより曲を書いたほうが伝わるのかな。曲を書かないで一生懸命あれこれ言ってもバンドの筋が通らないけど、この曲がありますこうしたいですって言えば、みんなこの方向性に向かって一本筋が通っていくというのを感じたかも。最初はメンバーがこのバンドでやりたいことがバラバラだったんですけど、みんなで曲を作っていくと揃っていくと。だからメッセージ性の強い曲って、メンバーに対してもメッセージ性が強かったんですよね、俺からの。こうしますよって。

ichigo こうしたいって言われているほうが、そのなかで自由なんですよ。「よろしく」って丸投げされるよりも。

岸田 だから今回は明確にコンセプトを出したんですよね。結局音楽家が口でコミュニケーションをとろうなんておこがましいんですよ。曲を書けよという気持ちになりました。

――10年経って、その先の未来に向けてよりバンドが結束している。そこに音楽でコミュニケートできているという結論ですね。

岸田 伝えるということは曲を書くことに戻ってきました。戻ってきたのか初めてなのかわからないけど。

Interview&Text By 澄川龍一(リスアニ!)


●リリース情報
『LIVE YOUR LIFE』
発売中
1703141705-003

【アーティスト盤(CD+特典DVD)】
品番:1000640261
価格:¥3,500+税

<CD>
1. 希望の歌 (新曲)
2. GATE~それは暁のように~
3. zero-sum game (新曲)
4. GATE Ⅱ ~世界を超えて~
5. nameless survivor (新曲)
6. 天鏡のアルデラミン
7. life logistics (新曲)
8. EGOISTIC HERO 9. Ruler (新曲)
10. Blood on the EDGE
11. vivid snow (新曲)
12. LIVE MY LIFE (新曲)

※デジパック仕様
※ライブ・チケット優先販売申込券封入

<DVD>
LIVE MY LIFE Music Video
Blood on the EDGE Music Video
天鏡のアルデラミン Music Video
GATE II ~世界を超えて~Music Video
GATE~それは暁のように~Music Video
LIVE YOUR LIFE TV-SPOT

ご予約はこちら

【通常盤(CD)】
品番:1000640260
価格:¥2,800+税

ご予約はこちら

【LP盤(アナログ)】※メロンブックス 限定販売商品
品番:1000642675
価格:¥3,200+税

●イベント情報
Twitter特別企画

『LIVE YOUR LIFEの推し曲と感想を教えて!』
全曲試聴動画を見て、あなたのお気に入りの曲と感想をtwitterに投稿しよう
募集期間:3月20日(月)19:00~4月3日(月)23:59

投稿していただいた方の中から抽選で5名様に岸田教団&THE明星ロケッツ
メンバー全員のサイン入りポスターをプレゼント!
詳細はこちら

『LIVE YOUR LIFE』発売記念イベント
「岸田教団&THE明星ロケッツ 春のトークショー 発売日だよ全員集合!」
3月22日(水)@アニメイト秋葉原 B1Fイベントスペース
開場/開演 19:00 / 19:30

「ichigoの出張ラジオ ゲスト:岸田教団&THE明星ロケッツ」
4月29日(土)@都内某所
開場/開演 未定

●ライブ情報
岸田教団&THE明星ロケッツ ワンマンツアー2017
7月28日(金)【大阪】梅田CLUB QUATTRO
開場/開演 18:15 / 19:00
7月30日(日)【愛知】名古屋 ELL
開場/開演 17:00 / 18:00
8月4日(金)【東京】TSUTAYA O-EAST
開場/開演 18:00/ 19:00
8月5日(土)【東京】TSUTAYA O-EAST
開場/開演 17:00 / 18:00

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