INTERVIEW
2016.04.10
今回のゲストは『学戦都市アスタリスク』の劇伴・エンディングを手がける音楽プロデューサーのラスマス・フェイバーさん!
劇中に流れる挿入歌や、4月から放送される前途アニメの2ndシーズンのEDテーマにして千菅さんの新曲「愛の詩-words of love-」を手がけるラスマスさんですが、今回新曲の収録のために来日されたところ、ついでにお悩みも相談していただく運びになりました!
いったいどんなお悩みが飛び出すんでしょうか?
今回は新曲についてもたっぷりと話をしてもらい、ボリューミーな内容でお届けします!
千菅春香 お会いする前に音楽を先にいただいていたので、すごく自由で楽しい音楽を作る方なんだな、どんな方がこの曲を作ってるんだろうと思っていて、今日初めてお会いしてすごく穏やかで優しい方だなと思いました。
ラスマス・フェイバー 今回の来日で僕も千菅さんにやっと会えてうれしかったよ。僕は「愛の詩」のようなパワーのある楽曲を得意としているんだけど、千管さんとは今回レコーディングで初めて会うことになっていたので、できるだけリラックスした状態で歌ってもらえるように、落ち着いた雰囲気でレコーディングに臨んでいたんだ。
千菅 そのおかげですね!
ラスマス すごく素敵な声の歌手だなと思っていたし、特に今回はじめて英語で歌うということで大変だったと思うんだけど、努力家の千菅さんのおかげで良いテイクが録れたよ。スタジオで音楽的なコミュニケーションもとれたので、とてもいいコラボレーションになったと思う。
千菅 ありがとうございます!
――今回千菅さんからラスマス・フェイバーさんにご質問があるということでいくつか聞いてみたいと思います。
千菅 日本に来たときに必ず行くところや食べるものがあったら教えてください!
ラスマス 必ず行くところというと東急ハンズか100円ショップだね。あと服を買うときに必ず行くのはUNITED ARROWS。食事に関しては毎回いろんなものを食べるけど、柚子胡椒が入っていればだいたい好きだね(笑)。
千菅 柚子胡椒! 渋いですね。東急ハンズや100円ショップというと雑貨屋さんがお好きなんですね、何を買うんですか?
ラスマス これといったものを探しに行くと言うよりかは、“自分の生活を少し良くしてくれるような便利グッズがこれだけあるんだ!”という小物アイテムに出会って感動するために行くんだ(笑)。なかなかスウェーデンにはそういうアイテムはないので、何か買う物や目的がなくても行くのが楽しいんだよね……おかしいかな?(笑)
千菅 日本にいる私でもびっくりするような便利グッズがあるのでわかります! 例えば卵を綺麗に混ぜられる棒とか。
ラスマス 棒っていうのは本当に棒なの?
千菅 本当に棒なんですよ。
ラスマス 興味深いね! 日本のマンションやアパートはコンパクトな作りなので、皆これだけの小物を買っていたらどうやって整理してるんだろう? って思ったりする。例えば、“卵をうまくかき混ぜられる棒”が今自分の家のどこにしまってあるかわかる?
千菅 私は持っていないんですよ。 なぜならもう収納できる場所がないんです(笑)。ですので、私は東急ハンズには収納用品を見に行くんですよ。
ラスマス なるほど、たしかに小物が半分の売り場を占めていて、もう半分はそれを整理するための収納グッズが占めている状況だったね。
千菅 わかります(笑)! ところで、ラスマスさんの音楽って発想がすごく豊かな音だと聴いていて思います。どういったところからインスパイアされたり、何に刺激をもらいますか?
ラスマス 実は何から刺激を受けているのか自分でもよくわかっていないんだけど(笑)、自分の曲作りの方法としては、まずとりあえずアイデアを入れてみよう! といろいろとアイデアを足していって、時間を置いて聴いてみて調整していく、というスタイルをとることが多いね。自分も情報量が詰まっているような感じの音楽が好きだから、一秒一秒に情報量を詰めて作る気持ちがあるのかもしれないね。
千菅 日本に限らずいろんなシンガーの方とお仕事されて、何を大切にされていますか?
ラスマス 初めて一緒に曲を作る場合は、どんな歌声のシンガーなのかをより深く理解するために、その歌手のほかの作品を聴くようにしている。歌声というものは性格をよく表わすから、何回か会う機会があれば個性や性格を理解したうえで曲を作っているよ。逆に千菅さんは「この作曲家の方はどんな想いで作ったのかな」と思い浮かべたりする?
千菅 私は今までいつも違う方に曲を書いていただいているので、曲にその人の性格が表れて、その曲の世界に自分が飛び込むという気持ちで歌っています。
ラスマス 何年くらい歌手としての活動をしているの?
千菅 3年です。自分でもまだ自分のことはわからないことが多くて、レコーディングのときに気づくことがすごく多いです。今日も英語の歌を初めて歌って感じた気持ちがたくさんありました。
ラスマス そういう経験に立ち会えたのは僕としてもうれしいよ。
千菅 ラスマスさんといえばアニメ・ソングのジャズ・アレンジをたくさん聴かせていただいたんですが、日本のアニソンをどう感じていますか?
ラスマス ジャズ・アレンジのアルバムをプロデュースするなかで、本当にいろんなアニメの曲を聴いたけど、全体をひとつの言葉でコメントするというのは不可能なくらいいろんなジャンル、スタイルの曲が多いよね。特にカバーしたものは古いものから新しい曲まであったので、「アニソンとはこうだ!」ということをコメントできないくらい幅広い。ただジャズ・アレンジをするなかで思ったのは、すごくメロディアスな曲が多いということ。それはアレンジをするなかですごくやりやすかったね。
千菅 私も全然違う曲で多種多様だけどメロディアスというのは感じます。ラスマスさんのジャズ・アレンジを聴いても元の曲とは全然違うけどメロディアスなところは活かされていて、「こういうアニソンの解釈があるんだ!」というところにすごく感動しました。
ラスマス ありがとう。アレンジをするときは、まず僕ともうひとりのアレンジャーとでメロディとコードだけが載っている楽譜を作る。それをリハーサルスタジオに持っていって、ジャズ・ミュージシャンたちとアレンジを作り上げていくんだけど、彼らはオリジナルを聴いていないので、コードとメロディを読みとるだけ。それが新しい形のカバーになるきっかけでもあるんだ。
シングル「愛の詩-words of love-」について
――今回『学戦都市アスタリスク』2ndEDテーマで千菅さんの歌う「愛の詩-words of love-」を作られたので、それについてもお聞きしたいと思います。まずラスマスさんは『アスタリスク』という作品にどういう印象を抱いていますか?
ラスマス すごく完成度の高いアニメだなと思いつつ、自分が作った劇伴曲がどういうふうに使われているかにすごく気がいってしまって、なかなかほかの作品のように楽しむことができないんだ(笑)。楽曲を作るときに脚本を見せてもらったので、脚本とどのくらい違うかとか、作った楽曲はこのシーンで使われると思ったけど別のところで使われているんだとか、いちいち分析してしまうんだよね……(笑)。なのでなかなか普通には楽しめないんだけど、十分楽しませてもらっているよ。
千菅 作中の音楽とEDテーマを作られていますけど、それらの音楽を作る上でテーマなどを何か考えたんでしょうか?
ラスマス 自分としては最初ひとつの芯の通った統一感のある音をめざしていたんだけど、この作品はいろいろなシーンや感情表現があるので、オーケストラとエレクトロニクスが融合した統一感のあるサウンドがありつつも、日常生活で求められるサウンドだったり、特殊なシーン用の曲もたくさん制作したよ。
――今回「愛の詩-words of love-」を書かれましたが制作を振り返っての感想は?
ラスマス 非常に速いパッセージのメロディをつけてしまったので、作り終わったときに、「歌うの大変で本当にゴメンナサイ」と思った(笑)。
千菅 たしかに難しかったです(笑)。あまり自分の中でなじみ深いリズムではないから新鮮に感じました。すごくエネルギッシュでメロディも高低差があるような、ラスマスさんのリズムに日本語の歌詞がついているので、すごくユニークになっていると思います。そこを楽しめたらいいなと思って歌いました。
――そしてシングルに収録される新曲「Lonely Feather」は千菅さんが声を務める登場人物、シルヴィア(・リューネハイム)のテーマ・ソングであり、ラスマスさんが作詞を手がけた英語詞の曲になっています。作詞された心境はいかがでしたか?
ラスマス どういうシーンで使われるのかを脚本を読んで理解しつつ、原作者の方からキャラクターの個性などを教えてもらって、それを元にイメージを膨らませてシーンの持つべき意味を深められるように詞を書いたんだ。シルヴィアについて原作者の方にいろいろ教えてもらったことが曲と歌詞に反映できたかなと思う。歌ってみてどうだった?
千菅 英語はそんな得意じゃないんですけど、メロディも歌詞もすごく美しくて、私の持っているシルヴィアのイメージともフィットしました。いちばん不安だったのが発音でしたが、ラスマスさんに立ち会っていただいて一つひとつコツを伝授していただいたので、すっと受け入れることができました。
ラスマス さっきの「愛の詩」の話をしていたときに、日本語の歌詞を僕のメロディに乗せるという話があったけど、実は「Lonely Feather」も、当初は日本語の歌詞を乗せるイメージでメロディを作ったんだよ。デモが出来上がったタイミングで、これは英語にしたほうがいいんじゃないかというアイデアがあって結果英語曲になったんだけど、もしかしたら英語の歌詞を載せるつもりでメロディを書いたら全然違ったものになったかもしれない。だから逆にこの曲は自分にとってもなかなか作れない曲なんじゃないかな。
千菅 もし最初の予定どおりになっていたら私にとってすごく異国のものになったかもしれませんが、絶妙な楽曲になったなと思います。
ラスマス 次は英語詞を前提に作ってみて、それで比較してみようか(笑)。
千菅 やってみたいですね! この曲で私は英語の詞とか興味が湧きました。意味というよりは響きですね。
ラスマス 英語しか載っていないメロディと日本語しか載っていないメロディは発音も違うし歌い方も違うから、両方の音楽を聴くのはいいことだと思うよ。
――そして「愛の太陽」。一期劇中でもチラッと流れていましたが、改めて聴くとハッピーなイメージのある楽曲になっていましたね。
ラスマス 劇中のシルヴィアのシングルというコンセプトで作っていて、すごくポップな曲というイメージで自由に作らせてもらったんだ。実はさっきハッピーな曲と言ってくれて、自分的にはホッとしているんだよ。もしかしたらメランコリックすぎる曲になっているかな? とも思っていたから。特にBメロはシルヴィアがすごく感情を込めて歌うところなんだけど、千菅さんの歌唱力はとても素晴らしかった。この曲がポジティブに聴こえるのは彼女の歌声のおかげだと思うよ。
千菅 私は最初に聴いたときすごく新鮮に感じて、世界中で売れてるトップチャートに入っている感じと聞いていたので、ハッピーというよりは孤高の歌姫という感じが入り混じっていると感じました。ラスマスさんの楽曲には切なさの要素を感じるところが多いんですが、自分が歌うと明るくなってしまうと思ったので、うまくミックスできるように試行錯誤しました。
ラスマス 自分がハッピーに歌ってほしいと思っていたところはそうなっているし、切なさを入れてほしいところにはしっかり切ないし、いい歌声・歌唱力だなと思いました。仕上がりにはとても満足しているよ。
千菅 ありがとうございます!
お悩み相談開始!
千菅 さて、そんなラスマスさん。お悩みとはいったいなんでしょうか?
ラスマス 自分はすごくワーカーホリックなので、仕事ばかりしていて無趣味なんだ。仕事と家族以外は何もしていないので、何か趣味のようなものを見つけたいね。千菅さんの趣味は何?
千菅 私も趣味がないんですよ(笑)。趣味は何ですかって聞かれると困りますよね……。あ、でも私はひとりでカラオケに行くのは趣味と言えるかもしれません。ラスマスさんはカラオケに行ったことはありますか?
ラスマス もちろんあるよ。実はそれも悩みの種なんだ。アニソンを日本語で覚えて歌ってみたいっていう気持ちはあるんだけど、比較的覚えやすい曲が見つからないんだ。覚えるのが楽なほうがいいし、そして自分が楽しめる曲がいい。自分はそんなに歌がうまくないので歌いやすいアニソンを選んでほしいな。
千菅 難しいですね! 私も腕試しというか自分に試練を課すためにやるので簡単な曲と言うのは逆に難しいかもしれません。
ラスマス さっき母国語じゃない曲を歌う難しさの話をしたけど、僕が日本語で歌おうとしたときに感じる難しさと同じものだからよく理解できる。特にアニソンを日本語で歌おうとすると速すぎて覚えられないんだ。
千菅 ものによってはひとつの音に信じられないほどの言葉が乗っていることがありますね。でも歌いやすい曲か……難しいですね。
ラスマス それは自分がイメージしたものだけど、逆に「こういう曲を歌ったら?」とセレクトしてもらったほうが僕にとっては新鮮かもしれないね。
――ちなみにラスマスさんはどんなアニメを観られるんですか?
ラスマス 特に好きなのは『ノエイン もうひとりの君へ』。あと『交響詩篇 エウレカセブン』も好きだね。ちょうど『エウレカセブン』を観ていたときにインフルエンザにかかっていて、“何日間か休まなきゃいけない、でも何かしたい”っていう状況のなか全エピソードを一気に観たんだ。そのときの体調も手伝ってか、世界観にすごくハマったんだ。
千菅 それはすごく大変な状況ですね(笑)。
ラスマス たくさんのアニメを観てきたし、好きなアニメや曲はそのときのムードで変わったりもするから、決めるのは難しいよね。
千菅 そうですよね……そうすると、やっぱりどんな状況にも合ういいメロディの楽曲がラスマスさんにはいいと思います! そんなわけでラスマスさんにぴったりな曲は……。
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これです!
千菅 きれいなメロディのアニソンといえばメロキュアさんということで、歌わせていただきます!
ラスマス 楽しみ!
(千菅さん本日も大熱唱です♪)
(ラスマスさんも楽しそう!)
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(あれ、ラスマスさんの表情が渋いぞ……)
(あれれ……!?!?)
――熱唱終了――
ラスマス 最初英語の歌詞が出てきたのでこれは歌える! と思ったんだけど、すごく難しい曲だね……。
千菅 すいません、私もメロディがきれいという印象しかなかったので、久しぶりに歌ったら記憶より難しかったです(笑)。
――元の曲はデュエットで、メロディがハーモニーになっているんですよ。千菅さんとデュエットというのも面白いかもしれませんね(笑)。
ラスマス 僕も頑張らなきゃだね(笑)。ありがとう!
~相談を終えて~
<千菅さんのひと言>
ラスマスさんとはこんな機会でもないとたくさんお話できないので、すごく楽しかったです。東急ハンズに便利なものがあるというのは同じ感覚なんだ! というところがたくさんあったりして。「Agapē」に関しては、ラスマスさんとのお話の中でもありましたが、アニソンってメロディが大事なんだなと再確認して、自分にとってどんなところがアニソンなのかということを考えるよい機会になったと思います!
<ラスマスさんのひと言>
すごく頭もよくて楽しい女の子だね。楽しかったよ! 「Agapē」は英語詞が全体の10%くらいあったので、今の段階で10%だけは歌える。でもほかのパートはとても大変だね(笑)。自分があまり得意ではない“歌”についての技量が試される曲だよね。せっかくレコメンドしてもらったから歌えるようになってみたいね!
INTERVIEW & TEXT BY 大用尚宏(クリエンタ)
PHOTOGRAPHY BY Mao Yamamoto
<本日の一曲>
「Agapē」
メロキュア
日本コロムビア
(アルバム『メロディック・スーパー・ハード・キュア』収録)
<本日の相談者>
ラスマス・フェイバーさま
スウェーデン生まれのプロデューサー、コンポーザー、ソング・ライター、アレンジャー、プログラマー、マルチ・キーボーディスト、DJ。様々な場面で活躍する世界的アーティスト。2009年から、自身のルーツであるジャズと、共感してやまない日本のアニメを融合させた『Rasmus Faber pres. Platina Jazz』企画をスタート。ハウス・ファンのみならずアニメ・ファン、ジャズ・ファンをも魅了する稀有なアイコンとなり、世界各地をDJとして回るかたわら、ポータブル・スタジオを持ち運び様々なレコーディング・ワークをこなしている。
HPはこちら
<今回取材にご協力いただいたお店>
パセラリゾーツ六本木店
★宴会に最適な限定コース¥3,500~
〒106-0032
東京都港区六本木5-16-3
TEL:0120-911-086/HPはこちら
●リリース情報
「愛の詩-words of love-」
4月27日発売
品番:VTCL-35225
価格:¥1,400+税
【収録曲】
01. 愛の詩-words of love-(TVアニメ『学戦都市アスタリスク』新エンディングテーマ)
作詞:山田稔明 作曲・編曲:Rasmus Faber
02. Lonely Feather(TVアニメ『学戦都市アスタリスク』挿入歌)
作詞・作曲・編曲:Rasmus Faber
03. 愛の太陽(TVアニメ『学戦都市アスタリスク』挿入歌)
作詞:岩里祐穂 作曲・編曲:Rasmus Faber
04. Lonely Feather-a capella version-(TVアニメ『学戦都市アスタリスク』挿入歌)
作詞・作曲・編曲:Rasmus Faber
05. 愛の詩-words of love-(Instrumental)
06. Lonely Feather(Instrumental)
07. 愛の太陽(Instrumental)
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