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2016.04.04

青は藍より出でて藍より青し。「THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 3rdLIVE TOUR BELIEVE MY DRE@M!!」福岡公演レポート

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『アイドルマスター ミリオンライブ!』初のライブツアー「THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 3rdLIVE TOUR BELIEVE MY DRE@M!!」福岡公演が4月3日、アルモニーサンク・北九州ソレイユホールにて開催された。

福岡公演には最上静香役の田所あずさ、箱崎星梨花役の麻倉もも、北沢志保役の雨宮天、七尾百合子役の伊藤美来、高坂海美役の上田麗奈、矢吹可奈役の木戸衣吹、田中琴葉役の種田梨沙、木下ひなた役の田村奈央、ロコ役の中村温姫、北上麗花役の平山笑美が登場、公演リーダーは麻倉ももと雨宮天が務めた。 今回は、公演を通して印象的だった組み合わせや光景を軸にレポートしていきたい。

高めあう流星たち

この日のライブならではの体験をひとつ選ぶなら、田所あずさ、麻倉もも、雨宮天、平山笑美による「Shooting Stars」を挙げたい。『ミリオンライブ!』のユニット曲は様々なメンバーが歌う共通曲的な運用をされることも多いが、福岡公演には原曲オリジナルユニット「クレシェンドブルー」の5人のうち4人が揃った。  

筆者が多用する「蒼の系譜」「青いユニット」といった表現は、765プロの如月千早、『シンデレラガールズ』の渋谷凛、『ミリオンライブ!』の最上静香のような、クール系で歌に魂を込める髪の長い女の子的な属性を指すものと思ってもらいたい。ミリオンなら「Blue Symphony」が似合うキャラクター/キャストと言い換えてもいい。その分類で行けば「クレッシェンドブルー」は最上静香・北沢志保・北上麗花という“青い”メンバー3人の間に、元気いっぱいな野々原茜とキュートでみんなに愛される箱崎星梨花が入ってつなぐようなユニットだ。そのオリジナルメンバーを演じるキャストから、野々原役の小笠原を引いた4人がステージに並んでいるのだから、これはもう原曲以上にとびっきりの青さだ。逆に言えば、この3人を相手にしてキュート側で渡り合う麻倉の技量と存在感もまた非凡なものだろう。  

福岡の田所あずさは、一言で言えば研ぎ澄まされていた。怖いほどと言ってもいい。田所といえばラジオやMCでのふにゃふにゃした様子と、ライブでのソリッドなパフォーマンスのギャップが魅力だ。しかし彼女が歌とステージと仲間のことを好きすぎるせいか、クールな表現の中にも“楽しい”が隠し切れないことがよくあって、それを探すのも面白い。だが今日の田所は、いつになく楽曲への潜り方が深かった気がする。特に「Precious Grain」は曇りなく鋭く精悍で、純粋にパフォーマンスだけを見れば過去一番だったかもしれないと思うほどだ。  

雨宮天については後述するが、彼女は言葉で周りを引っ張っていくタイプではないと自覚しているからこそ、リーダーとしてのあり方をステージングで体現しており、パフォーマンスの完成度と熱量は素晴らしいものがあった。全体曲を除いたライブの締めの「絵本」と「星屑のシンフォニア」は、このライブを締めくくるのは彼女しかいないと断言できる説得力があった。  

言いたいのはそれだけこの日の田所あずさと雨宮天という、『ミリオンライブ!』の青を代表する歌姫たちの歌声と心のコンディションが素晴らしかったということ。そして、その上で。この「Shooting Stars」で一番の存在感を放っていたのは、大舞台には初挑戦となる平山笑美だった。田所や雨宮とはまた違う色合いの歌声と、それを支える圧倒的な技量。ライブでの平山のギアの上げ方を見ると、CD版ではかなり抑えて麗花らしさの表現を優先していたことがわかる。そんな彼女に刺激を受けたように田所と雨宮のソロパートでのテンションも上がっていき、非常に高いレベルで均衡し、せめぎあっていたのはまさにライブならでは、そしてこの組み合わせならではの化学変化だった。

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小さなつまずきが、次に仲間を支える力に

福岡公演で少し異色だったのが、上田麗奈と種田梨沙のデュオによる楽曲が「Understand? Understand!」と「ジレるハートに火をつけて」の2曲あったことだ。リーダー以外で特定の組み合わせが複数あるのは非常に珍しい。だがそれも納得なほど、この2人の相性は良かった。ステージ上でもアイドルを演じるキャストとして求められるものは歌やダンス、ビジュアル、たたずまいなどたくさんあるが、上田と種田については一番根っこにあるのが「役者として演じること」なのは共通している気がする。  

2人の表現は対照的で、上田が動だとすれば、種田は静。象徴的なのが「ジレるハートに火をつけて」だ。たとえば2ndライブの「ジレるハートに火をつけて」は、上田と藤井ゆきよによる、燃え上がるような情熱同士の相乗効果だった。今回の上田と種田の組み合わせは、真面目な琴葉が内に秘めた熱を垣間見せるような表現を種田が見せ、上田のまっすぐな熱さとのコントラストが際立つ感じだ。上田が「ココロ☆エクササイズ」で見せるテンション感は海美そのものだったし、765プロカバーコーナーでの「KisS」はそんな彼女が見せる普段とは違う妖艶な笑みにゾクリとするものがあった。  

一方、種田の表現は、もうちょっと難しいというか、深い。「ホントウノワタシ」は秘めた内面に潜っていくような楽曲だが、その途中でほんのわずかに、種田がなんとも言えない微笑みを浮かべたりする。その空気と歌詞を考えるとおそらく「自嘲」の意味合いがある笑いなのだと思うが、それとは質の違う優しい微笑みも浮かんでは消えていったりして、表現が繊細すぎて見ている側も試されている気分になった。  

この2人から“ツアーならでは”を一番感じたのは、実は全体曲の「Thank You!」だった。今回の「Thank You!」の構成には、全員が入り乱れて自由な動きを見せ、歌い出しまでに全員が横一列にスタンバイするところがある。だが人によって移動する距離が違う上に、周りと一緒にはしゃいだり、客席やカメラにサービスしすぎたりすると、端よりのメンバーは定位置への戻りが少し遅れることがあった。実は大阪公演初日で定位置への入りが少し遅れたのが上田で、その時は身をかがめて「ごめんなさいね〜」といった様子で急ぐ様子がかわいいらしい感じで、ミスとも言えないような小さな出来事だった。  

その大阪公演初日をなぞるように、福岡公演で立ち位置への入りが遅れたのが上田の隣の種田だった。落ち着いた様子で立ち位置に向かう種田だったが、その時上田が種田を迎え入れるように背中に手を添えた。そのまま上田が種田をエスコートして本来の立ち位置に収まると、2人は揃って胸元に手を当てて優雅に一礼。それはまるで事前に準備されていたかのように自然な流れだった。大阪公演で小さな失敗を経験した上田だからこそ、福岡公演のみ参戦の種田をサポートできたのは、37人全員で作るツアーならではのチームとしての成長に感じられた。

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重圧から放たれてのびのびと。

木戸衣吹は名古屋公演で、伊藤美来は仙台公演で公演リーダーを担当した。ステージの真ん中でチームをまとめる経験をした2人が、一体どんなパフォーマンスを見せるのかが気になった。そんな2人が一緒に歌ったのが、765プロカバーコーナーの「乙女よ大志を抱け!!」だった。原曲担当はもちろん765プロの天海春香。春香の誕生日である4月3日に彼女を追いかけるアイドルたちが、特に劇場版『THE IDOLM@STER MOVIE 輝きの向こう側へ!』で春香と特別なつながりができた可奈役の木戸がこの曲を歌うのは感慨深いものがある。ショートバージョンだがラストにはそれぞれに見せ場がある曲構成で、「言えない言葉がずっとあったの」に万感の思いを感じさせる木戸、「みんなに私」から他の誰にも出せないキラキラ感をあふれださせる伊藤と、しっかりと自分たちの表現を見せていた。
福岡の木戸を見ていて感じたのは、目立たないところで他のメンバーに積極的に絡んでいく姿勢だ。雨宮自身が「周りのメンバーの優しさに支えられた」と語っていたが、「Thank You!」のフリームーブの中で雨宮と木戸が一顔を近づけてけらけらと笑い合っているような絵はこのツアー前にはイメージしにくかった気がする。福岡公演のみ参加の中村温姫が舞台の2段目に一人になってちょっと手持ち無沙汰に見えた時、ステージを横断して駆け寄っていったのも木戸だった。  

伊藤の「正統派アイドル感」の揺るがなさを感じたのが中村と歌った「fruity love」。はちゃめちゃにコミカルで楽しい振付とリズムが印象的な楽曲だが、伊藤が入ると途端にアイドル感が増すというか、芯のある存在感が楽曲を食ってしまうほどだ。彼女のゆるがない存在感と高いレベルで安定した技術は、逆に言えば成長や変化がぱっと見にはわかりにくいという面もあったと思う。だが福岡公演で伊藤が久しぶりに歌った「透明なプロローグ」は、“こんな楽しそうに歌っている姿、見たこと無い!”というぐらいの感情の振れ幅が見て取れた。若い二人が真ん中に立って公演を引っ張る特別な経験を仙台でした伊藤が荷をおろし、肩の力を抜いて臨んだ福岡公演では、あふれるほどのきらめきとステージを楽しむ気持ちが感じられた。

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彼女たちのFirst Stage

ちょっと特別で面白い声質を持っているな…と思ったのが大舞台初参戦、福岡限定参加の木下ひなた役の田村奈央だ。会場の反響もあいまってか、ちょっと二重性のあるような不思議な響きがくせになる。それが「“Your”HOME TOWN」や「あのね、聞いてほしいことがあるんだ」では素朴で牧歌的に響くのだが、「チクタク」や「Helloコンチェルト」ではとても透明感がある音楽的な歌声に聴こえるのがとても興味深かった。  

中村温姫はにこにこな笑顔が魅力的。笑顔にあふれた福岡公演にあっても、ずーっとにこにこしている彼女の笑顔はとりわけ印象的だ。ラストの挨拶で大きな舞台に立つ夢を叶えてくれたプロデューサーへの感謝と、またみんなでみんなに会いたい、という次の夢を語った中村は、一瞬で笑顔から泣き顔に。舞台への想いや緊張を、笑顔で包んでいたのだろうか。だがその笑顔の力は筋金入りで、「STEREOPHONIC ISOTONIC」のスーパー早口ロコナイズタイムを笑顔でやりきったのは流石だったし、初舞台のふるえを歌った「First Stage」さえもにっこにこの笑顔でなんだか楽しい空間に変えてしまったのには驚かされた。

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同期で親友で戦友で

五公演のリーダー担当を見回して、一番どんな公演になるんだろう、と思ったのが雨宮と麻倉の福岡公演だった。なにしろ麻倉と村川梨衣はミリオンスターズのフリーダム担当で、まとめる側というよりこの2人の天真爛漫さを周りがどう活かしまとめるか、という印象だったからだ。一方の雨宮は公演中自ら「リーダー向いてない」「どうしようと思った」を連発したほど。  

そんなリーダー2人で周りを牽引したのは、まずは麻倉ももの笑顔だろう。今日の麻倉、特に「“Your”HOME TOWN」でステージ経験の浅い田村を引っ張る麻倉には今まで感じたことがないほどの頼もしさを感じた。リーダーが真ん中で楽天的ににこにこと笑っていることは、それだけで周りに安心感を与えるのだと思う。そんな彼女も、公演オープニングでは「今までにないぐらい緊張してるんですけど」と珍しい言葉をもらしていたが、そのあとは「福岡ですよー、いいでしょう?」と続く。麻倉は福岡が765プロ8周年ライブに初めて参加した思い出の場所であることなど、ともすれば重い意味を持つ事柄についても、さらーっと話してさらーっと進んでいく。この調子でにこにこされたら、周りもとても深刻な顔ではいられないはずだ。  

そしてもうひとつ、普段はちょっとしゃいな雨宮だが、ひとたぴステージに立てばトリを務めるのがこれほど似合う者はいないほどのクオリティを見せる。やはり最後は雨宮のソロから雨宮と麻倉のデュエットで締めという流れだったのだが、ソロの締め曲が世界を塗り替え染め上げるような強さの「ライアー・ルージュ」ではなく、優しく語りかけ、祈り、包みこむような「絵本」だったことは公演のカラーに少なからぬ影響を与えていた気がする。カバーコーナーで雨宮と田所が歌った「inferno」は、元は萩原雪歩と如月千早のために作られた楽曲だが、このステージを見た人の多くは、雨宮に雪歩を、田所に千早のカラーを見たのではないだろうか。  

青よりも純白をイメージするほど、今日の雨宮は優しく、よく笑っていた気がする。中でも一番の笑顔を見せたのは、階段を降りてきた麻倉が同じ段に立ち、ふたりが視線をかわした時だった。やはり彼女のこの笑顔を引き出せるのは、オーディションから、デビューからずっと一緒に歩んできた同期の麻倉だけなのだろう。2人が最後に声を揃えてコールした「Thank You!」の曲名には、何か特別な響きがあった。  

ラスト、他のメンバーがステージを降り、残った麻倉と雨宮。なにかささやきあい、頷きあいながら階段を登ると、力いっぱいの肉声で「ありがとうございました!」。そして向かいあった2人は、麻倉がぴっと元気よく手を差し出し、雨宮がしっかりと握り返して、手をつないでステージを降りた。他の公演で麻倉が原嶋あかりたち相手にお姉さんぶっていた時は誰もが微笑ましく、背伸びする子を見つめるような思いだったはずだが、今日この場所でだけは、彼女が本当に頼れるお姉さんのように見えたのだった。

Text by 中里キリ

「THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 3rdLIVE TOUR BELIEVE MY DRE@M!!」福岡公演
2016年4月3日(日)アルモニーサンク 北九州ソレイユホール
<セットリスト>
M01:Dreaming!(THE IDOLM@STER MILLIONSTARS)
M02:Understand? Understand!(上田麗奈、種田梨沙)
M03:サマ☆トリ~Summer trip~(平山笑美)
M04:ココロ☆エクササイズ(上田麗奈)
M05:おまじない(木戸衣吹)
M06:fruity love(中村温姫、伊藤美来)
M07:piece of cake(雨宮天、平山笑美)
M08:“Your”HOME TOWN(麻倉もも、田村奈央)
M09:Eternal Spiral (木戸衣吹、田所あずさ)
M10:あのね、聞いてほしいことがあるんだ(田村奈央)
M11:ジレるハートに火をつけて(上田麗奈、種田梨沙)
M12:夢色トレイン(麻倉もも)
M13:乙女よ大志を抱け!(伊藤美来、木戸衣吹)
M14:KisS(上田麗奈、麻倉もも)
M15:inferno(雨宮天、田所あずさ)
M16:First Stage(平山笑美、中村温美)
M17:チクタク(種田梨沙、田村奈央)
M18:Fu-Wa-Du-Wa(木戸衣吹、中村温姫)
M19:透明なプロローグ(伊藤美来)
M20:STEREOPHONIC ISOTONIC(中村温姫)
M21:Helloコンチェルト(田村奈央、伊藤美来)
M22:Shooting Stars(田所あずさ、麻倉もも、雨宮天、平山笑美)
M23:Precious Grain(田所あずさ)
M24:ホントウノワタシ(種田梨沙)
M25:絵本(雨宮天)
M26:星屑のシンフォニア(雨宮天、麻倉もも)
M27:Welcome!!(全員)
M28:Thank You!(全員)

©BANDAI NAMCO Entertainment Inc.

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