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REPORT

2015.04.15

ステージの忘れ物を見つけに。「THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 2ndlLIVE ENJOY H@RMONY」最終日レポート

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『アイドルマスター ミリオンライブ!』のライブイベント「THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 2ndlLIVE ENJOY H@RMONY」最終日が4月5日、千葉・幕張メッセで行なわれ、山崎はるか(春日未来役)、田所あずさ(最上静香役)、Machico(伊吹翼役)、麻倉もも(箱崎星梨花役)、雨宮天(北沢志保役)、伊藤美来(七尾百合子役)、夏川椎菜(望月杏奈役)、藤井ゆきよ(所恵美役)、渡部優衣(横山奈緒役)、愛美(ジュリア役)、上田麗奈(高坂海美役)、大関英里(佐竹美奈子役)、末柄里恵(豊川風花役)、高橋未奈美(馬場このみ役)、村川梨衣(松田亜梨沙役)が出演した。

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演出や会場設定については初日の記事も参考にしてほしいが、前方に大階段のあるメインステージ、会場後方に後方ステージがあるツーステージ構成で、4機のトロッコが自在に動きまわって花道のかわりを果たす思い切った演出は最終日も同様だ。2日目となる最終日のみの出演者は、愛美、上田麗奈、大関英里、末柄里恵、高橋未奈美、村川梨衣の6人。大関英里、上田麗奈、村川梨衣は2014年6月6日〜7日に中野サンプラザで開催された「THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 1stLIVE HAPPY PERFORM@NCE!!」にも出演。愛美は中野1stと2014年2月22日にさいたまスーパーアリーナで開催された「THE IDOLM@STER M@STERS OF IDOL WORLD!!2014」に出演するなど、比較的大舞台の経験があるキャストが多い。今回は最終日から参戦組の印象を中心にレポートしていく。対になるレポートとして構成しているので、初日レポートも併せて読んでほしい。(★初日レポートはこちらから

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「プラリネ」のソロを担当した愛美は、ピンスポットの中ギターを持って登場。会場を見つめてにっと口角を上げた愛美の頬には、ジュリアのトレードマークである星が輝く。登場するたびに鮮烈な印象を残してきた愛美だが、しーっと客席を静まらせ、ギターを一音かき鳴らしただけで場の主役になってしまう存在感は特筆すべきものがある。愛美といえば笑顔が印象的だが、「プラリネ」の曲調に合わせて少し切なげな微笑みを浮かべたり、輝くスポットを受けてキラキラと輝く瞳のままギラッとした笑顔を見せたりと、色合いも多彩だ。汗だくの笑顔でギターを爪弾きながらの「幕張ー!」の煽りがごく自然に響くのは、愛美という個性と今まで積み上げてきたものがシンプルにかっこいいからだろう。そして『ミリオンライブ!』という作品にとって幸運であり、選び出した側の目利きが確かだったのは、そんな愛美という女の子のかっこよさとジュリアというキャラクターの個性がぴったりとハマったことだろう。「悲しくたって、悔しくたって」のフレーズに一際濃い情念を込めた愛美は歌い終えると、ささやくように「…ありがとう」の一言。その鮮やかさに、この日一番の大歓声のあと、後から熱狂的な拍手が追いついてきた。

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ソロで愛美のパフォーマンスの後を受けたことが、良い方に作用したのが馬場このみ役の高橋未奈美だ。まだ愛美のパフォーマンスの余韻が残る場内だったが、高橋が「dear…」を歌い出すと一気に会場が歌声に引き込まれる。場の空気を和ませるコミカルな言動の印象が強い彼女だが、ひとたびステージに立つと舞台に立つ役者の、そして秀でたボーカリストの顔を見せる。ファルセットが心地よく響く歌声は、馬場このみというキャラクターの大人の一面を感じさせる。この時ステージに立った心境を、高橋はゾーンに入ったと表現した。「あいみんの作ったこの空気、壊したくないと思って、いつも以上にゾーン、高橋ゾーンに入ってました。そしたら不思議なことに後ろの端の方の人の顔まで見えたんです(高橋)」。優れたパフォーマンスが、続くステージのパフォーマンスをさらに引き上げる。部活のような仲間意識を感じる『ミリオンライブ!』だが、これこそひとつのライブのバトンをつないでいくということだろう。「PRETTY DREAMER」では現場を笑いで盛り上げるムードメーカーとしての、楽しい高橋未奈美の一面も見せていた。

今回のライブの開演前や休憩中には、『ミリオンライブ!』の楽曲やPVが流されて会場を盛り上げていた。初日の映像上映タイムを見ていて、一際会場の反応が大きく感じられた一人が、大関英里演じる佐竹美奈子だった。劇場版『THE IDOLM@STER 輝きの向こう側へ』に出演したミリオン組の中では、比較的ライブ出場機会が少ないだけに、会場の期待も大きい。ライブ冒頭には「全国のプロデューサーさーん! お昼ごはんは食べてきましたか? 今日のライブはカロリーを大量に消費すると思うので、おなかがすいたら私たち(隣の夏川にくっつく)のかわいい姿で満足してくださいね!」と美奈子らしいMCを見せた大関は、ソロの「SUPER SIZE LOVE!!」でエネルギーの塊のようなステージングを見せた。笑顔でステージを楽しみながら、マイクを向けて客席を盛り上がりに巻き込んでいくと、「幕張、行っくよ〜!」とステージ狭しと駆けまわる。そんな全開の大関に応えるように、会場も全開の「おかわり!」で応える。めいっぱいカロリーを消費しながらも、同時に元気のカロリーをもらえるようなステージだった。一方高橋とのコンビの「ドリームトラベラー」ではまるで舞台劇の大団円のステージのような表現力を見せ、ミックスナッツここにありを感じさせた。

キャラクターを演じるという意味において、もっとも役者の天性を感じさせたのは高坂海美役の上田麗奈かもしれない。上田がキャラクターを下ろした瞬間別人に化ける歌い手であることは、LTHイベントで披露した「恋愛ロードランナー」などでも感じることができた。そして今回のライブで感じたのは、彼女がキャラクターだけでなく、楽曲に対しても潜るタイプの役者であるということだ。藤井と共にトロッコに登場した「ジレるハートに火をつけて」ではまさに燃え上がるようなパフォーマンスを見せた。わかっていても、さっきまでふんわりしたぽんこつトークをしていた少女が歌い始めた瞬間、熱血アイドルに変身して「今日はみんなに火をつけてあげるからね!」と煽りまくるのは反則的なギャップがあり、少し目を細めたいたずらっぽい表情を浮かべながら、客席に挑むような堂々たるステージングを見せるのが印象的だ。一方、Machico、麻倉と歌った「Marionetteは眠らない」では、斜め下にすっと視線を落とす仕草にぞくっとするような妖艶さを漂わせる。上田と麻倉が楽曲に深く入り込んで世界を作り出し、その中でセンターポジションのMachicoが説得力のあるロングソロで強い引力を感じさせる組み合わせは非常に完成度の高いトリオだった。

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アイマスの大規模ライブには初参加となる豊川風花役の末柄里恵は、オープニングMCからかなり緊張した様子。キャラクター台詞で風花らしいネタを披露した後は「幕張です、おっきいです、すごいです…今日は皆さんととってもとってもたくさん楽しみたいと思います!」と言葉は短めだったが、大舞台に臨む高揚が伝わってくる。ソロの「オレンジの空の下」では夕暮れの公園のような情景のスクリーンをバックに、優しく包み込むような歌声を響かせた。奈落(ステージ下からの出入口)からすっとステージに現れた時のことを末柄は「ぱっと登場するのがジェットコースターみたいで、景色が変わってオレンジのサイリウムが見えるのがきれいでした」と語り、自分と風花のために振られた会場いっぱいのサイリウムがことのほか印象に残ったようだった。そして、そんな新鮮な緊張感にあふれた彼女のステージに、めったにない出来事が起こってしまうのがライブという生物の怖さだ。

16曲目の「Sentimental Venus」は、非常に夏川と渡部の波長が違うキュートボイスに、末柄が少しセクシーなかわいさを加えて初日とはまた違うハーモニーで楽しませていた。しかしトロッコで移動中、おそらく会場の高温高湿度に起因する機材トラブルで、音楽が途中で途絶えた。10年間アイマスのステージを見てきて、たぶん初めての出来事だ。その時、3人がアカペラで歌っているのに呼応して、客席も一緒に続きを歌い出した。この時の何気なさが、すごく良かった。客席が変に気負うでなく、演者たちも必要以上にあわてることもなく。さらりと歌い続けたことで、まるで生バンドの演奏中、アーティストと客席がアカペラで声を揃える演出のような空気だった。実際、曲終わりで客電が落ち、数十秒のトラブル対応が行なわれるまで、演出なのか、トラブルなのか確信を持てなかった人も多かったようだ(勘の良い人は、一回目の軽微な音飛びで察していたようだが)。ラストのマイクでは渡部が「みんな歌ってくれたでしょ? それって、エンジョイハーモニーじゃん! 本当にエンジョイハーモニーだったの!」と興奮気味に語った。そして、夏川が自分のMCのあとに渡部と末柄を呼びよせ、トラブルに対応したバックスタッフや仲間、一緒に歌ってくれたプロデューサーに3人で感謝を述べた。そして、本番では音楽なしでは歌いきれなかった「Sentimental Venus」の最後のワンフレーズである「迎えに行くよ」を3人と会場が一緒に大合唱する姿は、とてもハッピーな光景だった。

松田亜梨沙役の村川梨衣は、誰よりも感受性が豊かなのだと思う。だから会場みんなが楽しくハッピーな時は誰よりも楽しそうににこにこと笑っているし、彼女が顔中を笑顔にして歌っているのを見ると他の物が目に入らないぐらい印象的で、バックで頑張っているダンサーに申し訳なくなるほどだ。「Up!10sion♪Pleeeeeeeeease!」はそんな彼女の特異な個性あっての楽曲だし、村川から放たれる無尽蔵のハッピーさは大会場でも輝きを増すばかりだ。そんな彼女だが、ライブ終盤のMCで周りがウェットな雰囲気になると、誰よりも泣き虫になってしまう。実際昨年6月の1stライブでは、村川の大泣きとそれにもらい泣きした隣の藤井から、涙の連鎖が続いていた。それだけに、村川に限らず藤井も、上田も、前回涙で話せなくなった面々は今回は泣かない、という強い決意を持ってライブに臨んでいたように思う。ライブ前の体調不良で心配をかけたことを真面目なトーンで謝った村川だったが。最後は元気いっぱいに挨拶を終えた。実はそのあと、全員がトロッコで会場全体を回った時にはいつの間にか、村川は顔中べしょべしょにして泣いていたのだが、真っ赤に泣きはらしたままの顔で、にっこにこに笑いながら客席に手を振っていたのが印象に残った。自分のMCをしっかりと務めて、最後は笑っていたのだから、やっぱり彼女の勝ちだろう。

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最後に2人。これまで『ミリオンライブ!』のステージを中心になって支え続け、特別な想いを持ってステージに臨んだであろう2人について書いておきたい。最上静香役の田所あずさは「今回のライブの最初に立てた目標はリベンジ、そして恩返しでした」と語った。それはもちろん、昨年の1stライブで田所が体調を崩し、2日目の一部にしか出演できなかったことへのリベンジであり、そしてステージで田所を支え、彼女のかわりに担当パートを担ってくれた仲間たちや、スタッフ、プロデューサーたちへの恩返しだ。初日にもその意気込みははっきりと感じられたが、やはり1stで歌い、その時は彼女のポテンシャルの全てを発揮することはできなかった楽曲「Precious Grain」を歌った2日目によりその色は濃い。だがその決意が悲壮なものではないことは、麻倉、雨宮と共に歌った「Shooting Stars」で感じられた。シリアスに決める楽曲で、本来パフォーマンス中は温度の低い空気を保つべき曲。だが、歌っている田所からは時折、ほんの少しの隠し切れない微笑みが漏れた。みんなと一緒に歌っていることが嬉しくて、幸せでしょうがない。そんな気持ちが如実に伝わってくる表情だ。そして、「Precious Grain」はソロラストから2曲目。万全の状態で、万感の想いを込めて歌うこの曲は、まさに圧巻だった。“たった一人だけじゃ叶えられないから”“たったひとつだけのかけがえのない夢”のフレーズの特別な響きに、会場にはたくさんの涙が流れていた。「プロデューサーさんがいるからこそ、『ミリオンライブ!』はできあがるんだなと思いました。絆を感じたライブでした。また次のライブがあったら、来てくれてくれますか?」の問いかけに対する万雷の歓声が、彼女のリベンジと恩返しに対する答えだろう。

ソロのラストが、春日未来役の山崎はるかが歌う「未来飛行」だった。LTHイベントで初披露された「未来飛行」は、悔しい涙の記憶と共にあった。『ミリオンライブ!』の最初の一年、数えきれないほど歌い込んでクオリティを高めた「素敵なキセキ」に並ぶことができない、春日未来として歌うことへの自身の理想の高さとこだわりから来る涙だった。彼女の性格的に、今日この日までに「未来飛行」をどれだけ歌い込んできたのかは想像に難くない。だが、そんな山崎はるかの苦労や努力を全てステージの裏に置いて、100%キラキラした春日未来だけをステージに連れて行くのが彼女のスタイルなのだろう。このステージに賭ける彼女の想いと意気込みの深さは、歌い出しの前の彼女の表情と、胸いっぱいに吸い込んだ息の深さだけに感じられた。幕張イベントホールの一番後ろまで届く「行くよーーーーー!」の叫びを発した時には、彼女はもう「春日未来」だったからだ。その歌声は安定して、楽しさがあふれてくるようだ。間奏の「プロデューサーさん、いつもありがとうございます。そして、これからもよろしくお願いします!」の声にプロデューサーたちの熱いコールが応える。いつの間にか、山崎の背後には一緒にライブを作ってきた仲間たち全員が立っていた。山崎が“それぞれの夢ぎゅっと繋げば”のフレーズを歌うのを見守っていた仲間たちが、“大丈夫1人じゃない”のフレーズと共に拳を掲げて客席を一緒に煽り始めた光景は、きっと忘れることはないだろう。

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ステージの借りは、ステージでしか返せない。山崎は自身と、春日未来と、仲間たちと、会場いっぱいのプロデューサーさんたちの力で、「未来飛行」の記憶を、『ミリオンライブ!』の未来につながる幸せな経験に塗り替えてみせた。「明るくなった瞬間に、プロデューサーさんがみんな笑顔だったので、もう楽しくなっちゃって、本当にこのステージが好きだなって思いました。アイドルマスターがだいすきだなって、改めて思いました(山崎)」。

Text&Photography By 中里キリ

 

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THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 2ndlLIVE ENJOY H@RMONY 最終日
0405幕張メッセイベントホール セットリスト
-overture-
M01:Thank You!(MILLIONSTARS)
M02:Growing Storm(山崎、Machico、夏川、伊藤 [乙女ストーム!4人])
M03:Super Lover(渡部)
M04:VIVID イマジネーション(夏川)
M05:トキメキの音符になって(麻倉)
M06:ジレるハートに火をつけて(藤井、上田[灼熱少女2人])
M07:Shooting Stars(田所、麻倉、雨宮[クレシェンドブルー3人])
M08:Up!10sion♪Pleeeeeeeeease!(村川)
M09:恋愛ロードランナー(上田)
M10:SUPER SIZE LOVE!!(大関)
M11:プラリネ(愛美)
M12:dear…(高橋)
M13:オレンジの空の下(末柄)
M14:THE IDOLM@STER(MILLIONSTARS)
M15:PRETTY DREAMER(山崎、高橋、村川)
M16:Sentimental Venus(夏川、渡部、末柄)
M17:Helloコンチェルト(田所、伊藤、大関)
M18:Marionetteは眠らない(Machico、麻倉、上田)
M19:Blue Symphony(雨宮、藤井、愛美)
M20:Believe my change!(Machico)
M21:フローズン・ワード(藤井)
M22:ライアー・ルージュ(雨宮)
M23:HOME, SWEET FRIENDSHIP(村川、渡部 [リコッタ2人])
M24:Eternal Harmony(愛美、末柄[エターナルハーモニー2人])
M25:ドリームトラベラー(大関、高橋[ミックスナッツ2人])
M26:空想文学少女(伊藤)
M27:Precious Grain(田所)
M28:未来飛行(山崎)
M29:Welcome!!(MILLIONSTARS)
EN01:Thank You!(MILLIONSTARS)

 

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