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INTERVIEW

2015.03.05

名曲を新たに輝かせる世界と、名曲が惹き込んだ世界。『I AM GILLE. 4 ~Anime Song Anthems~』リリース記念 GILLEインタビュー

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タイトルに違わぬ名曲揃い――アニソン・カバーアルバム『I AM GILLE. 4 ~Anime Song Anthems~』を一度聴けば、アニソンファンなら誰もがそう感じることだろう。しかもただのカバーではなく英詞に落とし込み、ときにスタイリッシュにときにロッキンに歌い上げるGILLEの歌声が、アンセムにあらたな魅力を吹き込んでくれている。これらの名曲に接したGILLEは、何を感じ何を表現しようとしただろうのか?

――今回のアルバム、ご自身の手応えとしてはいかがですか?

GILLE 自分の中では、感覚としては「かっこいいな」って思うし「歌い切った!」とも感じています。ただ、アニソン大好きな人に「かっこいい!」って思ってもらえるかどうかはリリースされないとわからないので、結構今ドキドキしています。

――では、歌ってみた感覚としてはいかがでしょう?

GILLE オリジナルを聴きつつレコーディングをしていくなかで、皆さん今の自分が表現できる声の技術をフル活用してる曲を常に歌ってるんだな、というのを感じました。

――なるほど。シンガー目線としては、オリジナルのパワフルさや密度に目が行った?

GILLE はい。それと先日LiSAさんの武道館ライブを拝見したんですけど、めちゃくちゃ走るし声もブレないし、そこでもまた「すごい!」と思いました。

――では1曲ずつお話を伺っていきたいと思います。まずは1曲目が「林檎もぎれビーム!」。鈴木このみさんとのデュエットです。

GILLE 原曲はすごく独特だし、日本語の歌詞がほのかにメロディや歌声にパンチを与えていたのかな、って思います。その中にインパクトのある大槻さんの歌声が入っていて。表現力の点では、今回本当にこのみちゃんに助けられた部分があります。最初は「女性同士で大丈夫かな?」とも思ったんですが、逆に“女子の「林檎もぎれビーム!」”でよかったな、って。

――今回の8曲の中でいちばんパワー系の歌い方をされていたように思ったんですが、女子同士とはいえ鈴木さんが女役でご自身が男役、みたいな意識もあったんでしょうか?

GILLE それも少しありましたし、やっぱり私の中ではサウンドも含めて、P!Nkとかジャニス・ジョプリンみたいな人がここを歌っているっていうイメージがあったので、そういった歌い方になりました。

――一方GILLE ver.では、やはり鈴木さんのパートの声色は少し変えようという意識が?

GILLE はい。それにプリプロで少し遊んでみたらOKが出たので、それでいこうと(笑)。あと、普通にやるとオリジナルや1曲目のような派手さが足りなく感じたのも、そうした理由ですね。ひとりでやったもので負けたくないっていう気持ちもあったので。

――では、その次が「Q&A リサイタル!」。思いっきりアイドル・パーティソングなこの曲をGILLEさん色にするときに、どこに力を入れられましたか?

GILLE 原曲と比べたときに、自分の声では頭の中で鳴ってるキラキラ感が、なかなか自然に表現できなかったんですよ。なので、すごく意識的に子音が立つような発音にして、なおかつできるだけハイが響くように歌いました。キラキラ感にコンプレックスがあるからこそ、余計に「ちゃんと表現したい!」っていう想いは強かったですね。

――キラキラした声って、結構密度が濃くてそのまま刺さってきますよね。

GILLE しかも、実は音階としては高くないんですよね。オリジナルの方の声質もあって高く聴こえるんですけど。だから、実際歌うと「あれ?」ってなる(笑)。そこは練習のときから悩みました。

――あと、エレクトロソナーさんのアレンジの特徴かなとも思うんですが、結構デジタルな加工も感じました。ヘヴィなカッティングなんですけど、シンセがスーッと入ってきて。

GILLE ソナーさんはヘビメタが好きなんです。でもメイドカフェに行ったりするのも好きだし、ニコニコ動画で音源上げたりもしてるので、アニソンとかも好きなんだと思います。ライブもやってるって聞いたので、自分のライブでも弾いてもらいたいな……なんて。

――たしかに、ギターもかっこよかったですもんね。では続いて「Butter-Fly」ですが、今回のアルバムの中ではいちばん昔の曲です。

GILLE 本当に失礼な話なんですけど、歌う前はこの曲がどれほど有名なのか知らなかったんです。でも「この曲を歌った」ってラジオのスタッフさんとかに話すとみんな大興奮して。逆に「なんで知らないんですか!?」ってちょっと怒られたぐらいで(笑)。

――アレンジからは若干90年代の雰囲気を感じました。

GILLE それは私も感じました。オリジナルの雰囲気をリスペクトしたサウンドですよね。私自身も気づくと鼻歌でうたっているくらいメロディが頭から離れなくて、よ。みんなに歌われる曲ってそういう心地よさがいっぱい重なってるんだろうなぁ、ということを感じた曲です。

――アレンジのやしきんさんもお若い方なんですが、ちょっと8ビート感が出つつもドラムの乾いた感じも含めて、原曲リスペクトな仕上がりですね。

GILLE おかげでレコーディングでも歌いやすくて、すんなりいきました。

――そして4曲目の「深愛」。さらに美しさを増したバラードになっていますね。

GILLE この曲は原曲とまったくテンポ感が違う仕上がりになっているので、最初はしっくりきていなかったんです。でも練習していくうちに、自分が昔出した「花びら」っていう曲と重なってきて。その曲は震災の復興支援で仙台に行って現地の方々と話しているなかでできた“失ってから気づく大切な人への想い”を歌った曲だったんですけど、たまたまNHKの収録で水樹奈々さんにご挨拶したら「これは父のことを書いた曲だから、私にとってすごく意味深い曲なんです」って話されて。それが、はっきり亡くなったとは言わなかったんですけど、もういないみたいなニュアンスだったんです。だからなのか、勝手ながらお話してから「花びら」を書いたときの感覚と噛み合って、歌いやすくなりました。

――OPになったアニメの舞台もバブル時期ですし、水樹さんのルーツも含めて歌謡曲っぽいアプローチもにじみ出ていますよね。GILLEさんの歌声からも、20~30年前の海外女性シンガーのニュアンスを感じました。

GILLE 最初はBメロ終わりの哀愁とか落ちサビの寂しさを出せるように水樹さんに似せようとしてたんですけど、「それより力を抜いて、手前でしゃべるように歌うとGILLEらしくていいんじゃない?」ってディレクションしてもらったので、最後はそこを意識しての歌唱でした。

――その侘びしさが、特にA・Bメロに強く出ていると思います。

GILLE ありがとうございます。うれしい。

――そして「READY!!」はまたキラキラ曲ですね。

GILLE そうなんですよ(笑)。

――キラキラしたスペーシーなI’veのアレンジがあり、大勢の声優で歌っている原曲があり……そして「さぁどうしよう?」と(笑)。

GILLE この曲もキーは高くないんですよね。だから最初歌ったときは、自分の声が低くてあまりキラキラしてないように聴こえて。ただ、これを歌う前に、たまたまテレビでアニサマが放送されてたのを観たんです。音先で「READY!!」が流れだした瞬間に客席が段違いに盛り上がったのを目にして、この曲の見られ方を理解しました。だからこそ、余計にキラキラさせたかった。ちゃんと「女子!」っていう感じを出したかったんです。

――続く「Enter Enter MISSION!」もかわいい路線の曲です。

GILLE これは「自分っぽくしすぎないように」って意識をするのがすごく難しかったです。アレンジがすごくロックだし、自分が普段聴いている洋楽にあるようなサウンドが鳴ってるので、その分好き勝手に歌うと色気もキラキラ感もなくなっちゃうんだろうな、と思って。

――出だしの「Enter Enter」に結構力が込もっている感じもしましたが。

GILLE サウンドに寄っている部分だとは思うんですが、かわいく歌うよう心がけてはいるので、この曲は歌うたびにいろんな表情をお見せできると思います。アニソンフェスみたいなところではこのみちゃんみたいなキラキラを意識した歌い方になるかもしれないし、逆にバンドイベントの中では思いっきり自分色で歌っているかもしれない。アレンジが本当にかっこいい曲なので、原曲を知らなかったりアニソンをどっぷり聴いたことがない人たちにもこの曲を気に入ってもらって、そこからオリジナルを聴く架け橋になれればうれしいですね。

――「READY!!」よりもパワフルに、ロック系の歌い方をしている印象がありました。

GILLE はい。あまりにも気持ちよかったのか、この曲では今までレコーディングのときにしなかったような身振りを無意識にやってました(笑)。

――そして「INNOCENCE」は、この中ではいちばんオーソドックスなミクスチャー系のロックなように感じまして。これも結構ナチュラルに歌われている印象がありました。

GILLE すごく歌いやすかったです。アレンジも含めて自分の中でしっくり来ていたし、メロディも気持ちいいぐらいド直球なので。ただ、同じ女性ということもあって、媚びない部分や芯がちゃんと色分けできるようには考えました。エイルさんの「INNOCENCE」からは、私にはないいっぱいいっぱいの強さというか、傷だらけだけど「全然行けるよ!」って言ってるっていう色気を感じたので、逆に強く歌いすぎないようにもしましたね。

――日本のロックほど密度があって速い、という感じではなく、余裕のある洋楽寄りのロックな感じがしました。

GILLE だからなのかな、この曲もサビのときに身振りが出ました(笑)。

――そして最後は山下達郎さんの「僕らの夏の夢」。ノラ・ジョーンズみたいな歌声でしたし、曲もやっぱりかっこいいんですよね。

GILLE 毎回、英語歌詞が上がってきてメロディにそれをハメてチェックしながら歌うっていう作業を多くて4回ぐらい繰り返すんですけど、この曲に関してはなんとなくで1回歌えちゃいました。やっぱり日本のアーティストの中でも自分が歌い始めた根本となった方の曲なので、すんなり切りどころもはまっていきましたね。

――シンガーとしての原点にも触れる存在なわけですよね。

GILLE そうですね。この曲は比較的普段自分がやってることに近い曲で、それ以外はチャレンジ、という。だからレコーディング期間中は、深夜アニメを観るように意識したんです。そしたら私、『暁のヨナ』にすごくときめいちゃって。しかも、そういう作品の中で出てきたセリフを実際自分で会話で使ってみると、アニメと同じような言葉が返ってくる。だから「私がアニメを観て『いいな』って思った言葉は、ちょっと恥ずかしいし普段は言わないけど、でも言われたい言葉なんだな」って感じて、人生としても勉強になるし、もっと早くから観ておけばよかったなって思いましたね。今回のアルバムを通して改めてアニメもアニソンも大好きになったので、カバーも含めて、機会があればアニソンを聴いている人たちにも愛してもらえるような歌をうたいたいです。

――すでにそういった前向きなお気持ちになられているわけですが、今回のカバー・アルバムを通したGILLEさんの中の気づきや変化を、改めて最後にお話いただけますか?

GILLE すごく、すごく生意気な発言なんですけど、今回こうやって歌わせていただいたような楽曲を、自分のオリジナルで日本語で作りたいなって思いました。子供の頃洋楽のロックの英語歌詞と和訳を見て憧れたようなストレートな作品を、いざ自分が日本語で書くとすごくダサく聴こえて、辞めてた自分がいたんです。でも今回のアルバムはそのヒントをくれた気がしているので、オリジナルで歌詞もメロディもこれぐらい迫力ある曲を作りたいと思ったし、その曲を大きい会場で思いっきり歌いたいです。武道館ライブでのLiSAさんの「Rising Hope」のように、「歌っている自分を好きになれるようなオリジナル曲を作る」ことが、今の目標です。

Text by 須永兼次


 

I AM GILLE. 4 ~Anime Song Anthems~
2015年3月4日発売
【初回盤(CD + DVD)】
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価格:¥2,500+税
品番:UPCH-9981
<収録曲>
1.林檎もぎれビーム! feat. 鈴木このみ
2.READY!!
3.Q&A リサイタル!
4.Butter-Fly
5.深愛
6.Enter Enter MISSION!
7.INNOCENCE
8.僕らの夏の夢
BONUS TRACK
9.林檎もぎれビーム! (GILLE Ver.)
10.林檎もぎれビーム! (Instrumental)
<DVD>
「林檎もぎれビーム!」 Music Video & Making 収録
【通常盤(CDのみ)】
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価格:¥1,852+税
品番:UPCH-2018
発売元・販売元:ユニバーサルミュージック

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