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INTERVIEW

2014.09.03

さまざまな“色”で彩られた1stフル・アルバム『Couleur』がついにリリース!日笠陽子スペシャル・ロング・インタビュー

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昨年のデビュー以来、アーティストとして目覚しい活躍を見せ続ける日笠陽子。そんな彼女の初のフル・アルバム『Couleur』が9月3日に発売となった。音楽を作るということに並ならぬ熱意を持つ彼女に、楽曲の解説から創作への想いまで、アルバム制作を振り返っての心境を語ってもらった。

 

――まずはアルバムタイトルの『Couleur』について、タイトルにフランス語を選んだ経緯などをお聞かせいただければと思います。

日笠陽子 実はフランス語ということ自体には深い意味はないんです。なぜこのタイトルに決めたかというと、まず去年1年間をいろんな楽曲とともに旅してきて、作品を作っていくなかで、自分が主体ではない表現もやってきて、それも含めて現在の日笠陽子の“色”になっているんだと思いまして。そういう意味合いをアルバムのタイトルにしたいと考えていたんですけど、なかなかぴったりな言葉が思い付かなくて。そこでジャケットのキーワードになる「花」の絵が決まっていたので、それを作詞家さんに見てもらって、絵のイメージと私が伝えたいことなどを踏まえて、アルバムのタイトル案をいろいろ出してもらったんです。その候補の中から満場一致で選ばれたのがこのタイトルで。私だけじゃなくプロデューサーがいて、デザイナーさんだったり作詞家さん作曲家さんがいてっていう、いろ人の手を借りて作られたアルバムだっていうのを表していて。うちのチーム力というか、みんなでひとつの作品を創っていんだというのを表すタイトルになったと思います。

――アルバムを構成する要素を総合したら、「色」を意味するタイトルに自然となったわけですね。

日笠 「色」っていう意味ならたとえば英語で「Colors」でも伝わるんですけど、ジャケットの力みたいなものが加わって、フランス語に引っ張られた感じですね。

――ある種なるべくしてなったということですね。モノクロで花を使ったジャケット写真もなかなか挑戦的だと感じたのですが、撮影の際に印象深かったエピソードなどはありますか?

日笠 お花と一緒に撮るっていうイメージは元々あったんですけど、チーム的にいわゆる普通の花を使うのは私のイメージになかったみたいなんです。「日笠にかわいい花はちょっと似合わないよね」って言われていて(笑)、そこで選ばれたのがちょっと怖い多肉植物なんです。

――確かに不思議な印象というか、あまり目にすることのない植物ですね。

日笠 収録される曲も暗めというか、心の芯の部分に触れる楽曲が多いので、表面だけきれいっていうよりは、「美しいけど恐怖を感じるもの」とイメージしていたので、この花はぴったりだなと。見た目にも毒々しいですけど、触ると痛くて気軽に触れられないんです。

――花そのものもデリケートなものなんですか?

日笠 デリケートだと思うんですけど、フラワーアレンジメントの方は結構ブチブチブチ!って切ったりしてて(笑)。「ええー、いいの!?」って何回も突っ込んでました。撮影は私がちょっとでも動くと花も動いちゃうので、ずっと身動き取れずにされるがままで。でもそんなに大変だとは感じなくて、早く出来上がった写真を見たいっていう気持ちの方が強かったですね。自分で考えてポーズを取る写真とは違って、ジャケット写真は完全に被写体って感じだったので、なかなかない経験ができて面白かったです。最終的に完成したジャケットはモノクロなんですけど、撮影した段階の写真は当然カラーなんですよ。でもフラワーアレンジメントの方は、撮影時からモノクロを想定して花を選んでいて、カラーでは使ってほしくないということを仰っていました。

――確かにモノクロの状態でも絵になっていると感じますね。

日笠 もうちょっと柔らかいモノクロになるのかなと思ってたんですけど、完成したものは結構パキッとした白黒になっていて、ここからカラーの状態って想像できないですよね。中の花にひとつだけ色がついているんですけど、これまでピンクってあまり使ったことがない色なんです。黒とか深い赤とか、基本的には暗い色のイメージだったんですけど、逆にピンクって面白いかもって話が出たので使ってみました。

――ちょっと紫っぽくも見えますね。ピンクだけど毒を感じさせる感じというか。

日笠 まさにその通りですね。ピンクをピンクに見えなくする錯覚というか。ピンクって基本的にはかわいい色じゃないですか。だから使ってみたらかわいげが出るのかなと思ったんですけど、意外と出なかったですね(笑)。

――では楽曲についてうかがっていきましょう。先ほども歌詞の中に怖さとか異色なイメージがあるとおっしゃっていましたが、まさに1曲目の「新世界システム」から衝撃的なスタートでした。

日笠 そうですね。作品の曲だとその内容に合う詞だったりとか、前回のコラボレーション・アルバム『Glamorous Songs』ではアーティストさんが表現したいものがあって、「ここからスタートなんだ」っていうイメージが強かったんですが、今回は自分自身のアルバムで、「自分ってなんぞや?」っていうことをあらためて見つめ直す機会だったんです。最初の1年はやっぱり初めてだから、いろいろ迷ったり悩んだりもしたし、自分がやりたいことを言葉にできないとか、具現化する力がなくて上手く伝えられないとか、がむしゃらに作っていく段階の年だったんです。そういう時間を経てのアルバムなので、まずどっしりと「自分の音楽は、こういうことを伝えたいんです」っていうのを見せたいと思って。「バンド・サウンドでロックにいく」っていうのはずっと押し続けて、一本の筋を変えないようにしていたんです。

――まずバンド・サウンドという大きな土台を作ったわけですね。

日笠 そのうえで、私は声優として仕事をしているので、「言葉」というのはとても大切な要素だと考えていまして。言葉の意味を理解して、想いを込められないと上手く歌えないところがあるんです。なので歌詞は人間らしいというか、生々しい言葉を選んでいきました。私も含めて人間って誰しもきれいなだけじゃなくて、内面にはジャケットの植物みたいなちょっと怖い部分を持っているというか。なにかと生きづらい世の中ですし、苦しいこともあるけど、そこを無理して隠さなくてもいいんじゃないかと思うんですよ。そういう想いを歌にして、言葉にできないモヤモヤを抱えている人に聴いてもらって、「あ、モヤモヤを言葉にするとこうなるんだ」って気付いてほしいんです。たったひとりでも、それで救われたりしてくれたらやっててよかったなと思えるなと。

――たしかに決して綺麗事を歌っているわけではない歌詞で、聴いていて引き込まれます。そして2曲目の「ENVY DICE」は、その流れを踏襲しつつも少し色が変わった雰囲気がありますね。

日笠 そうですね。渡辺 翔さんにはかなり私の意見を反映して作詞していただきました。最初はもう少し漠然としていたんですが、もっと生々しくて狭い世界観にしてほしいという要望を出させていただいて。これは翔さんだけじゃなくて、総じて皆さんに伝えていました。「わたしとあなた」ぐらいの狭い世界観でいいですという感じで。

――なるほど、そこから3曲目の「Brighter day」は明るいイメージに変化しますね。

日笠 アルバムの中では唯一といってもいいぐらいの、明るくサッパリした曲調ですよね(笑)。この曲は以前のシングルを作るコンペのときに、詞も曲もとてもいいんだけど、作品のコンセプトに合わなくて「いつか歌わせてください」って取っておかせてもらったものなんです。歌詞も当時のデモのままなんですよ。この曲は「人間界」な感じがしますよね。普通の大学生やOLさんが主人公というか、聴いてくれてる人たちの生活に寄り添える曲だなと思います。

――1曲目、2曲目の雰囲気にグッと引き込まれて、3曲目で現実に戻ってくる感じがありますね。

日笠 そうですね、夜から始まってやっと朝日が見えるイメージというか(笑)。

――4曲目の「Crazy you」は一転して、Myuuさんによるヘビーな楽曲ですね。

日笠 Myuuさんには前回の『Glamorous Songs』で「めざまし時計」という曲を作っていただいたんですが、私はこの曲が大好きで、今回のアルバムでもまたMyuuさんにお願いできないかと思っていたんです。でもまた同じ人にお願いするのも……と躊躇していたんですが、うちのプロデューサーとのご縁で制作スタジオに集めていただいたデモ音源の中に、Myuuさんの楽曲が2曲あったんです。最初はアルバム収録曲は11曲を予定していて、無理に増やさなくてもいいと思っていたんですけど、その2曲との出会いで急遽13曲に増えた形になりました。

――昨今のアルバムとしては13曲ってかなりボリューミーな曲数ですよね。しかも追加された2曲ともMyuuさんの楽曲というのがまた運命的というか。

日笠 お互いにピンとくる何かがあるみたいで、相性が良いんでしょうね。YADAKOさんの書く詞が本当に良くて。言葉選びとか比喩は難しい表現が多いんですけど、芯の部分で私とYADAKOさんの感覚が合っているんだと思うんです。

――そして5曲目がデビュー・シングルでもある「美しき残酷な世界」となるわけですが、アルバム制作を通してあらためてこの曲を聴いてみて、想うところなどはありましたか?

日笠 アルバム用に新録した曲とは世界観も違うし、ほんの1年前の曲なのに声とか歌い方に若さや未熟さを感じますね。救いのない物語の曲なんですけど、この声のおかげでちょっとだけ救われてるなって思います。「美しき残酷な世界」はシングルの中でもいちばんライブやイベントで歌っている曲なんですが、曲ってライブとかで歌って、お客さんのエネルギーをもらったり、自分でエネルギーを発したりするうちにどんどん進化していくものだと思うんですよ。だからきっともう二度と再現できない状態のものが、今こうやってアルバムに入っているのがとても面白いなと。ライブで聴く歌と収録される歌は全然違うので、そこを聴き比べられるのは楽しいと思うんです。

――1年でこんなに変わるんだっていうのは、聴く人も分かるでしょうね。

日笠 ライブの力がすごいっていうのをあらためて感じますよね。お客さんと一緒に曲を進化させていくので。

――今年1月の「リスアニ!LIVE 4」でのステージを拝見したときに、私も同じ感想を抱きました。あの時点でも日笠さんの歌声やパフォーマンスは、シングルとして発表した音源から進化しているなと。今回のアルバムに収録されているシングル曲は、そうやって変化する前の歌声ですが、それでも際立って聴こえると感じます。

日笠 「美しき残酷な世界」に限らず、シングルの曲たちはアルバムに入れてよかったですね。自分のやりたいことだけで突き抜けすぎると、疲れちゃうと思うんですよ。そこに作品とのコラボレーション曲が挟まると、気持ちを切り替えるポイントにもなるし、作品と曲が噛み合ったときって、パワーが2乗になるじゃないですか。それに負けないように私たちも新しい曲を作ろうっていう気持ちになっていたので、良い相乗効果が生まれているんだと思います。

――アルバムの曲順がとてもバランスが良いと感じたのですが、これも日笠さんがお決めになったんですか?

日笠 かなり意見は出しました。でも結構二転三転しましたね。完成してから後悔を残したくなかったので、曲順に限らず、アルバム制作に関することは細かい部分まで意見を出させていただきました。曲の終わりと次の曲の頭を繋げて聴いてみて、「違和感なさそうだね、大丈夫だね」って話し合ったり、チームのみんなで作ってるという意識が常にありました。

――与えられたフォーマットにただ乗っかるわけではなく、かなり日笠さんの意思が反映された形のアルバムになっているということですね。

日笠 そうですね。以前から楽器を録音するときは見学に行ってましたし、トラックダウンも立ち会っていたんですけど、今回は楽曲なども私のやりたいことを後押ししてくれる形だったので、責任を持ちたいと思っていました。打ち合わせはスタッフの顔を見飽きちゃうぐらいにやってましたよ(笑)。

――やってることはもうシンガーというかクリエイター・プロデューサーですね。

日笠 そうですね。歌うだけというより、歌を通した表現や創作とか、みんなでモノを作るっていうのが私のやりたいことなんだと気付きました。自分的には私が前に立たなくてもいいんだと思います。誰か別の人を立てて、いっしょに曲を作ろうってなっても、たぶん私はやると思います。

――なるほど。裏方に回っての表現もありだと。

日笠 うちのチームメンバーはすごい人がいっぱい集まってくれて、みんな創作に真摯で、そんな人たちが私の背中を固めてくれているってすごいことじゃないですか。たったひとりのために力を貸してくれるって。だからつい「うちの人たちすごいでしょ!」って自慢したくなるんですよ。今日はなるべくおさえるように言われてますけど(笑)。

――では続けて曲のお話をうかがっていきましょうか(笑)。6曲目の「憂冥」ですが、これはGLAYのHISASHIさんによる曲ということで。ビッグネームとの共作はいかがでしたか?

日笠 一時代を築いてきた方の力を感じますよね。ちょっとコラボレーション曲っぽい雰囲気もあるんですけど、作り終わってみるとやってよかったというか、不思議な力を感じました。HISASHIさんもアーティストなので、やりたいことがあるでしょうし、ぶつかったりすれ違ったりする可能性もあったんですが、完成してみるとお力をお借りして本当によかったと思います。私がずっと肩の力を張って作ってきたアルバムの中に、HISASHIさんの表現が加わることでフワッと色が増えるというか。表現って正解がないものだし、いろんな物の考え方があるんだなというのを教わった曲になりました。

――7曲目の「風と散り、空に舞い」はこだまさおりさんによる詞が印象的ですが、日笠さんからは何かアイデアを出されたんですか?

日笠 この曲は『百華夜光』というゲームの主題歌としてオファーをいただいたものなんですが、ゲームの制作の方とお会いして、イメージをお聞きして曲を先に作ったんです。そこで作詞をどなたにお願いしようかと考えて、歌詞に作品のイメージを込める作業に通じてらっしゃるということで、こだまさんにお願いしたんです。でも作品に寄りすぎず、もうちょっと“こっち側”というか、世界観よりも人物に寄り添ってくださいとお伝えして。ゲームの世界とか運命的なものではなくて、主人公とヒロインの周囲、「わたしとあなた」の世界を描いてくださいとお願いはしましたね。

――神様の視点ではなく、もっと狭い、登場人物に近い視点の歌詞ということですね。

日笠 そうですね。作品が「自由を求めて外の世界へ出る」という物語なので、視点も一人称的にぐっと狭めて作りました。

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