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INTERVIEW

2013.10.08

桂ヒナギクによるニュー・アルバム『HiNA3 Message』リリース記念、伊藤静インタビュー

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アニメ『ハヤテのごとく!シリーズの超人気ヒロイン、桂ヒナギクによるニュー・アルバム『HiNA3 Message』がリリースされた。これまで、ヒナギクを演じる伊藤 静の抜群の歌唱力も相まって高品質なキャラクター・ソングが数々生まれてきたが、本作は“ヒナギクをアーティストに”というテーマのもと、さらに進化を遂げた、またキャラソンとしてあらたな地平を開いた、またしても大傑作となった。ここではヒナギクを演じる伊藤をアルバム完成直後にキャッチ。アルバム について、また来る11月に開催されるワンマン・ライブについてじっくり語ってもらった。

キャラクターから一歩踏み出して、ヒナギクをひとりのアーティストに

 

 ――桂ヒナギクとしてのアルバムでは、3枚目となる『HiNA3 Message』ですが、こうしたキャラクター・ソングものでアルバムが3枚出るというのもなかなかないですよね。

伊藤 静 そうですねえ、よく……やったなあと(笑)。ここ最近はTVアニメ(『ハヤテのごとく! CAN’T TAKE MY EYES OFF YOU』、『ハヤテのごとく! Cuties』)がコンスタントに続いていたのも大きいと思うんですよね。そのなかでこうやって歌もやらせていただくのはありがたかったなあと。

――そのなかで、ヒナギクとしては3rdアルバムという作品を、どんなアルバムにしようと考えていましたか?

伊藤 ディレクターさんやプロデューサーさんからは最初に、「ヒナギクなんだけど、キャラクターから一歩踏み出して、彼女をひとりのアーティストにしよう」というお話があって始まったんですよ。今までよりは大人になったというか、歌詞のなかでも「ピンクの髪が~」みたいなものも抑えられていますし、『HiNA2』のとき若干そうだったんですけど、学生的なものは少し抑えられるようになって、より彼女の内面に向いたところはありますね。

――確かに最初の『HiNA』はそれこそヒナギクを紹介するような、『ハヤテのごとく!』としっかり隣接した印象があって、『HiNA2』はより彼女個人の内面が映し出された作品だったと思うですが、本作はそこからさらにアーティストとして一歩踏み出した作品になったと。

伊藤 今回は、今まで歌詞を書いていただいた女性の作詞家さんが見た、「ヒナギクってどういう人なのか?」という歌詞になっているんですね。自分が歌詞を書くときも、私から見たヒナギク像を書くという感じだったんですよ。なので、いろんな視点からのヒナギク像を描いているかなと。友情のことも書いているし、その視点を変えると恋愛のことを歌っているのかな? っていうのもあったりとか。
――そんな『HiNA3』ですが、もちろん過去2作も本当にすごいアルバムだったんですが……今回も素晴らしい楽曲が揃っていますね。

伊藤 そうなんですよ! いい曲揃いですみません!(笑)。

――わははは(笑)。伊藤さんが仰られたように、サウンドも歌詞もいろんなアプローチで、さまざまなヒナギク像が見える作風なんですが、全体的にはそれが統一されているような印象もあって。例えば歌詞に、雨の描写が多かったり。

伊藤 そうそう、空と雨の描写が多くて。そこは別の人が歌詞を書いていて、本当たまたま被ったりするんですよね。いろんな視点で書かれてはいるんですけど、そういう根っこの部分は同じことが感じられる、そんな一枚なのかなって思いますね。いろんな方向に向くんだけどまとまっているというか、ヒナギクから外れないというのはありますね。

――そういったなかで、伊藤さんの歌唱についてはいかがでしたか?

伊藤 まずヒナギクをアーティストにしましょうというのがあって、今までも“ヒナギクしなきゃいけない”というつもりで歌っていたわけではないんですけど、無意識にあったかもしれないそういう感じがなくなったのかも。今までのヒナギクだったらすごく伸ばしていたところもさっと切り上げたりとか。「どっちかな?」っていうのを、今までは正解がひとつだったのがどっちにも行けるようになったというか、選択肢が増えたかなっていう感じはします。そこでディレクターと「どっちが新しいヒナギクですかね?」って話したりしながらやっていたけたのはありますね。

――ヒナギクらしくはあるんだけど、そこに“新しい”がつくんですね。ある種それを模索しながら作っていけたという。

伊藤 迷いがあるわけじゃないんですけど、「こういうこともできるよね、こうするとこういう気持ちが出るよね」みたいなものを少しずつ模索できたかなって。私も、こうやって歌って……って作り込んでいくよりは、ヒナギクを歌うときに素直に出るものを、「ここは大人っぽく、ここは少女に」ってその都度いろいろできたかなって。

――そこにいわゆる“ヒナギクをアーティストに”という流れが汲んであるだけに、いわゆる今までの学生っぽさというよりかは、より大人な印象というか……。

伊藤 そうなんです、そうなんです。

――いわゆる、プロなヒナギク感が出ているというか(笑)。

伊藤 プロのヒナギク(笑)。歌詞でも学校をイメージするところはあるんです。でもそれをあまり強く感じさせないというか。あと1st、2ndまでは「……キュンっ!」って感じだったと思うんです(笑)。そこをキュンにはせず、フラットなヒナギクというか。

 ヒナギクの成長を見るクオリティと、ライブを想定したサウンド・アプローチ

 

 ――ではここからはアルバムの楽曲を一曲ごとに解説していただこうかと思います。まずは伊藤さんが作詞された表題曲「Message」。いわゆるアルバムの導入としては落ち着いた感じで。歌詞もまたポジティブなムードもありつつ。

伊藤 前向き前向き、でも……というか、多少ネガティブになっても前に進まなくちゃいけない、みたいな感じですよね。ちなみにこの曲に出てくる“キミ”というのは、ハヤテじゃなくて雪路なんですよ。今のヒナギクになるにあたって、どうやってなってきたのかなって考えると、雪路と力を合わせてやってきた……みたいなのをなんとなくイメージして。でもハヤテくんと捉えてもいいような内容になっていますね。

――続きまして先行シングルの「春ULALA♥LOVEよ来い!!!」ですが……これは歴史的名曲ですが。

伊藤 ありがとうございます(笑)。

――4月にパシフィコ横浜で開催された“『ハヤテのごとく!』×『神のみぞ知るセカイ』ジョイントコンサート2013 本日、満開桜色!”でも披露されましたが、今やヒナギクと伊藤さんの新しい代表曲という印象ですよね。

伊藤 そうですね、「本日、満開ワタシ色!」に並ぶ勢いで。やっぱり(『ハヤテのごとく!Cuties』の)OPテーマだったこともあって、知ってくれている人もたくさんいらっしゃって……まあいい曲なんで(笑)。

――またイイ顔で言いましたね(笑)。

伊藤 OP映像もヒナギク推しめで若干申し訳ないんですけど(笑)、それも含めてヒナギクらしさを詰め込んだ内容になっていると思いますね。

――続きましては「Girls Power CARNIVAL!!」ですが、これはまたかわいさ推しな楽曲で。

伊藤 私、これを歌うのを苦労したんですよ。わかります?(笑)。

――ええ、なんとなくわかります(笑)。

伊藤 どうしたらいいのかわからなくて、今までもかわいいというのはあったんですけど、ここまで際限なくかわいくして大丈夫っていうのはなくて、「大丈夫かな?」っていう気持ちが、伊藤 静に生まれてしまって。

――もちろんヒナギクにもかわいさを推した楽曲はありましたけど、ここまでというのは結構新鮮というか。ラップまでも披露したり。

伊藤 「ラップ……きたかあ」と(笑)。ラップというのはほかの作品でも何度かあったんですけど、わりとナチュラルにできるものが多かったんですね。これはラップっぽいうえに、「キュン!」っていうのが多くて、歌い終わるまで「大丈夫ですかね?」って聞いていたぐらいですから(笑)。でも出来たものを聴いたあとは、「いいな!」って思ったし、今も無意識に口ずさむのもこの曲ですね。

――続いては「雨色笑顔」。

伊藤 これは、いい曲ですよね……(笑)。

――今回は全曲、自画自賛できる内容になっていると思いますが(笑)。

伊藤 できちゃいます(笑)。まず最初にいい曲ですよねっていうひとことから入ります。

――こちらは実に、ヒナギクらしい楽曲というか。

伊藤 この切ない感じが。もともとアルバムの曲順は決まっていたんですけど、歌詞の内容などを見て少し変えたんですよね。「Message」が1曲目というのはずっと決まっていたんですけど、作詞家さんたちが、繋がりを持たせているわけじゃないのにどこか繋がっているようにも見えたので、そこは曲順を並べたいと。プロデューサーの熱いこだわりで、当初とはまた違う並びになりましたね。

――そうしたなかでこの5曲目という位置はまた絶妙ですね。こういう切ない感じはヒナギクの楽曲ならではな印象があります。

伊藤 そうですねえ。

――続きまして「Good Morning」です。

伊藤 この曲も「雨色笑顔」も「1ミリ」も、ライブに向けて作ったんですけど、音数が多くて、言葉がめっちゃ詰まっていて、もう……「ブレスどこで取んだよ!」みたいなのがあって(笑)。ライブで歌えるかなあ……。

――本作は全体的に、のちに控えているライブも視野にいれた内容になっているんですね。

伊藤 そうですね。ライブで歌って盛り上がるものも盛り込んでいこうというのはひとつありました。この曲は出来たあとのほうが、「これはライブで絶対盛り上がるね!」って現場でも盛り上がった曲です。爽やか系なんだけど、ものすごく盛り上がる感じがあるんですよ。

――次の曲は「1ミリ」。

伊藤 これは始まりから変わった感じの曲ですね。Aメロの入り方も特殊で。これもカッコイイし……本当いい曲ばっかりだなあ(笑)。この曲と「また明日」は同じく春和(文)さんが歌詞を書いてくださったんですけど、どちらにも“あのふたり”というフレーズがあって、それは同じふたりなのか、違うのか……みたいな。いろいろ張り巡らされているものがありますね。

――作詞家さんのみなさんがそれぞれのヒナギク像を描いているというのがわかるというか。

伊藤 それが、示し合わせていないのに別の作詞家さんでも起こっていて、それがまた奇跡的だなって。

――続いては『Cuties』第7話のED曲なった「ダイキライは恋のはじまり」です。ここはくまのきよみさんの作詞で、いわゆる切ない恋を歌うヒナギクというか……伊藤さんの好物というか(笑)。

伊藤 そうですね(笑)。恋愛に対する不器用さがモリモリ盛り込まれていて、私的にも大好きなんですけど。「ダイキライと言ったあとで もっと好きになってゆくのよ おかしいでしょ どうしよう」っていうフレーズがすごく好きで、「どうしよう」っていうのがかわいくて(笑)。ヒナギクが困っている絵が浮かんで、かわいくて仕方ないですね。ほかのことはなんでもできるのに、恋愛だけできないという。

――そして8曲目「まっすぐな虹」。

伊藤 これはいちばん最初に録ったかな? このときに「ヒナギクをアーティストに」っていう話があったんですよね。

――確かにこうしたミディアムな曲で、歌唱も落ち着いた、アーティスト・ヒナギク然とした印象がありますね。

伊藤 歌っているような語っているような、そんな雰囲気を出しましょうかという話をしながらレコーディングした覚えがあります。

――しかしこういう雰囲気の曲も……また素晴らしいですね。

伊藤 でしょでしょ?(笑)。

――そんななか、アルバムもクライマックスに向けて進んでいきます。続いては「また明日」。しっとりとしたバラードですね。

伊藤 こうやって聴くと、しっとり系がいっぱい入っていますね(笑)。普段聴いているときはあまりそういう印象はなかったんですけど、意外と。元気な曲のインパクトが強かったのもあるのかな?

――後半が特にしっとりとした印象ですよね。ヒナギクとしても魅力的ですが、またこういう曲は伊藤さんの真骨頂というか……。

伊藤 はい、歌いやすかったです(笑)。切ない曲が続いてのこの曲、というのがまた私的にも気持ちいいかなって思います。いい曲なんですよ……言いますよ、最後まで(笑)。

――やはり全曲自信を持って言えると(笑)。さて、続いては「プラネタサイリユム」。アッパーな曲になりました。

伊藤 これはまさにライブを意識して歌いましたね。タイトルも“サイリユム”というのもオシャレでいいなって。これはまさに歌いながら、ステージで歌っているのをイメージしながらレコーディングしましたね、Bメロの掛け合いのところとか。4月のジョイントコンサートを体験したおかげで、ライブというのはイメージしやすかったです。

――ここでも元気でポジティブなヒナギク、というイメージはあるんですが、以前より大人っぽい印象があります。

伊藤 そうですね、全体的にも成長した感はありますね。

――そして最後は「Special Thanks -君へ-」。これが本当に素晴らしくて……もう言うことないですね!

伊藤 そうでしょ? じゃあ終わり!(笑)。

――わははは、解説してください(笑)。作詞・作曲がeyelisの川崎里実さんという、以前もヒナギクの楽曲「クリスマスの少年」を書かれた、ヒナギクと伊藤さんとも縁の深いソングライターによる楽曲ですが、これが実に感動的なバラードになっていて。

伊藤 もちろん仮歌も川崎さんだったんですけど、それが素晴らしくて。聴いていて「難しいな」って思いながら、何も考えずに聴いていたいなって思うぐらい。あとこの曲、バイオリンを生で録っているんですけど、そのレコーディングも立ち会わせていただいて。なんか……アガりますよね(笑)。これで歌えるんだと思うと。

――そうしたなかで、歌のレコーディングはいかがでしたか?

伊藤 これはいちばん最後に録ったんですね。いやあ……緊張しました。まず仮歌が素晴らしいんですよ。うれしいんですけど、プレッシャーになるぐらい素敵で。何回も聴いちゃうから歌い回しとかを川崎さんを真似ちゃうんですけど、それをまずヒナギクにして。でも最終的には仮歌に沿った部分やそうじゃない部分を入れながら歌ったりしましたね。

――バラードとしても壮大で、最後に大きく盛り上がる展開も素敵で。

伊藤 そうなんですよ、すごく壮大な。『HiNA』のラストに入っている「Heart of Flower」とはまた違う壮大さがあって。

――さて、全11曲を解説していただきましたが、どれも非常に素晴らしい内容というのがあらためてわかるというか。

伊藤 いい曲しかないんですよ! すみません!(笑)。

――わははは、改めて(笑)。でも楽曲ごとにそれぞれのアプローチがあって、アーティスト・桂ヒナギクとしてもまたあらたな一歩を踏めた印象はありますよね。

伊藤 今までの経験を踏まえて、全体的にも広がりを持って来たなっていう印象がありますね。それがどこまでいけるのかっていう挑戦でもありましたから。

――まさに進化したヒナギクが聴ける作品ですね。

伊藤 あと、初回盤には「クリスマスの少年」のPVがつくんですよ。これは……すごいです。これね、超いいんですよ!

――PVですか。これはどんな内容に?

伊藤 新作アニメーションです。曲に乗せて、今までに見たことのないヒナギクが観れますよ。初回盤を手に入れない人は……ダメです(笑)。

 桂ヒナギクの音楽の集大成となる、11月の渋谷公会堂のワンマン・ライブ

 

 ――さて、そんなアルバムのあとには、11月17日にワンマン・ライブ“ヒナ祭り祭り2 Message”が開催となります!

伊藤 ……はい(笑)。

――急に神妙な面持ちになりましたね(笑)。“ヒナ祭り祭り”としては2009年の横浜ベイホール以来ですから、実に4年ぶりという。

伊藤 うんうん、懐かしいなあ。あのときはバンドではなくて、あの頃からプロデューサーに「バンドでライブをやらせろよ!」と言ってきたのが、いよいよ実現するわけです(笑)。

――今回はしかもワンマン、渋谷公会堂ですからね。

伊藤 ワンマンなんですねえ……。アルバム3枚出しているので曲には困らないんですけど……考えただけでも震えが来るんですよ(笑)。

――震えが!(笑)。

伊藤 この前のパシフィコのときは私のほかにもいたので楽しく、気楽……でもなかったけど、合い間にひと息つけたんですけど、ぶっ通しでいるんだって思うと……(お腹をさすりながら)おなか痛い(笑)。

――確かに、大会場だし緊張感はありますよね。ちなみに本番まで2ヵ月以上ありますが(インタビュー収録は9月上旬)、ライブの構想についてはいかがですか?

伊藤 まずは、今度みんなで……アルバムの打ち上げをします!(笑)。

――質問を間違えたかと思いましたが(笑)、いわゆる打ち上げのなかでいろいろ決めていくというか。

伊藤 打ち上げからの、打ち合わせということで。そういうときのほうがいろいろ出るんですよ、常識から外れたことを(笑)。今はとにかく……最高に緊張しますね。どうしたらいいんだろう……(膝を抱えながら)こういう状況です、怖くて(笑)。

――ただキャパシティもそうですし、いわゆる桂ヒナギクという音楽の集大成的な内容になるんだろうなという予測もあり、今から非常に楽しみではあるんですよね。

伊藤 ワクワクはします、はい……ってこういう話をしているとどんどん緊張してくるんですよ!(笑)。

――失礼しました(笑)。

伊藤 このお腹のあたりがザワザワする感じ?(笑)。でも、こんなにキャラソンを出させていただいて、これだけアルバムも出して、その集大成的なものをやらせていただくことってなかなかないので、これは気合い入れて最高のライブにしようと……これからじっくり考えます(笑)。

――11月、ピンクに染まった渋谷公会堂を観るのを楽しみにしています!

伊藤 ね? 私もそれが楽しみで。夢に見ますから。

[プロフィール]

伊藤 静

イトウシズカ/12月5日生まれの声優。『マリア様がみてる』(支倉 令役)、『ヨルムンガンド』(ココ・ヘクマティアル役)、『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ』(ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルト)、『犬とハサミは使いよう』(柊 鈴菜)など数々のキャラクターを演じる。また『ハヤテのごとく!』では桂ヒナギク役として3枚のアルバムをリリースするなど、その高い歌唱力を活かした音楽活動を行っている。 

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