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REPORT

2026.08.31

『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ〈ワルプルギスの廻天〉』の主題歌「彼方」も披露!“Yuki Kajiura LIVE vol.#22 ~precious pieces~”ツアー千秋楽公演をレポート

『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ〈ワルプルギスの廻天〉』の主題歌「彼方」も披露!“Yuki Kajiura LIVE vol.#22 ~precious pieces~”ツアー千秋楽公演をレポート

2026年8月9日(日)、“Yuki Kajiura LIVE vol.#22 ~precious pieces~”ツアーが千秋楽を迎えた。コンポーザー梶浦由記が自身の作品を演目とするライブ、“Yuki Kajiura LIVE”(以下、“YKLIVE”)を行い始めて18年。vol.#22となる今回のツアーは、ボーカルにKAORI、YURIKO KAIDA、Joelle、LINO LEIA、EMIKO(鈴木瑛美子)、ゲストボーカルとしてYUUKA(南里侑香)が参加。梶浦の信頼篤いミュージシャンで構成された「FRONT BAND MEMBERS」(以下、FBM)(ギター:是永巧一、ドラム:佐藤強一、ベース:髙橋“Jr.”知治、バイオリン:今野 均、フルート:赤木りえ、パーカッション:中島オバヲ、マニピュレーター:大平佳男)と共に、7月4日(土)のフェスティバルホール(大阪)を始まりの地に、昭和女子大学人見記念講堂(東京)を経て、大宮ソニックシティ(埼玉)の最終公演に辿り着いた。8月23日にはオーチャードホールで追加公演として“Yuki Kajiura LIVE vol.#22 ~precious pieces~ーチャード special”も行われたが、近年、“YKLIVE”は「多幸感」がキーワードとして挙げられるライブとなってきた。女性ボーカリストたちによる競演をはじめ、ここでしか得られない音楽をもたらす“YKLIVE”のツアー最終日を振り返る。

TEXT BY 清水耕司

久々のYUUKAを擁してのアカペラ曲スタート

ステージ上にシルエットが集うと公演の始まりを知った客席からは拍手が。その客席に届けられるYUUKAの歌声、そして支え、かしづくコーラス。合わさった六声によって、梶浦曰く“初々しい恋の曲”、「silent moon」が会場に響きわたっていく。YUUKAを囲む形でJoelle、YURIKO KAIDA、KAORI、EMIKO、LINO LEIAが並ぶ。ステージ上には歌姫のみ。長く“YKLIVE”を共にしてきたFBMのバンドメンバーはおろか梶浦さえも存在しないアカペラ曲でのスタート。18年を経た“YKLIVE”が示した新たな幕開けであり、訪れたファンたちに感動を与えるものだった。

歌い終わった6人は拍手を浴びる中で礼をし、上手と下手、二手に分かれて舞台袖に消えていく。入れ代わるように「Crush」の冒頭部分、overtureと共にステージに現れた演奏者たちが持ち場についていく。紫色のライトが照らす中でカウントを刻むハイハット。小気味の良いカッティングを鳴らし続けるギター。ステージ中央でピアノの前に座る梶浦を取り囲むように、Jr.、佐藤、オバヲ、今野、是永のFBMが左から順に位置している。彼らの頭くらいの高さの位置には一段高いステージがあり、その中央にはフルートを手にした赤木りえの姿が。大きなボタンをあしらった上着にゆったりとしたズボンを履き、頭には赤いベレー帽をかぶり、エドゥアール・マネの「笛を吹く少年」と見まごう装い。美しい旋律も相まって絵画や画集の世界にいざなうような非現実感をまとっていた。曲のラスト、赤いライトがステージを覆うと赤木は去り、Joelle、YURIKO KAIDA、KAORI、LINO LEIAによる「Pandora hearts expanded」が始まる。『PandoraHearts』から選ばれた2曲は共に力強くリズムを刻み、音楽の波が客席を進攻していく。やがて訪れた四声でのフィニッシュ。ここでLINO LEIAが去り、ピンクのライトの中、ピアノソロが流れるとセンターに立ったKAORIが「everytime you kissed me」の口火を切った。左に立つYURIKO KAIDAと慣れ親しんだデュエットを重ねたのち、今度はJoelleと組むKAORI。Joelleのソロを間に挟みながら、KAORIはYURIKO KAIDAやJoelleの歌声と絡みながら情感たっぷりに歌声を響かせる。代わる代わる訪れる、個性豊かな歌声の競演は“YKLIVE”でしか摂取できない時間。聴き惚れているとやがて背後から現れたピアノがラストを締めた。
鍵盤から指を下ろした梶浦は客席に顔を向け、「ようこそいらっしゃいました」の第一声。そして、“YKLIVE”が久しぶりの方、すでに今回のツアーに足を運んだ方、あるいは初参加という方、その誰もが「最後まで心行くまで、本当に好きなように音楽を楽しんでほしい」という気持ちを表明した。続いて、梶浦由記のソロプロジェクトであるFictionJunctionや参加する歌い手について言及したあと、話題はTVアニメ『魔法騎士レイアース』のことに。2026年10月より放送開始する同作品で梶浦は、尾澤拓実や寺田志保と3名体制で劇伴を担当しているが、そのなかで「レ↑イアース」の発音が「レイア↑ース」だと知ったと話す。横で立つKAORIはリアル世代だったらしく、楽しそうに梶浦の発音をチェック、「レイアース」のお手本を聞かせる姿は楽しそうだった。こういった和気あいあいとした時間に、“YKLIVE”の気の置けない一座としての一面を感じる。次曲はその『魔法騎士レイアース』から。まずは、PVなどで公開されてはいるものの放映前ということで特別に許可をもらった「レイアースのテーマ」。ドラムのフロアタムやパーカッションのタムがリズムをとる中、輝く歌声と清らかな弦の旋律が高揚感を与え、フィニッシュへは雄大さを伴って至り、アニメへの期待を高める時間ともなった。続いて、2025年に配信されたアプリゲーム『魔法少女まどか☆マギカ Magia Exedra』の主題歌、(9月2日リリースの「彼方」のc/wとして収録)の「lighthouse」。YURIKO KAIDAとKAORIがフルートと共に先鞭をつけたのち、メインボーカルであるLINO LEIAが歌い始めた。LEIAとYURIKO KAIDAの清冽なボーカル、KAORIやEMIKOのコーラス。2番に入るとLINO LEIAはKAORIと組みつ離れつ、さらにEMIKOも加わり、『まど☆マギ』を体現するようなドラマチックな楽曲を4人で歌い上げていく。
ドラムスティックのカウントから梶浦のピアノが入り、ステップを踏むようなそのメロディに今野がバイオリンを重ね、佐藤はハイハットの音色を散らしていた。そして上段のステージ中央に現れたYUUKA。歌うは、TVアニメ『.hack//Roots』のオープニング主題歌「Silly-Go-Round」。下ステージに並ぶJoelle、YURIKO KAIDA、KAORIも声を合わせ、手振りを交えながら歌う4人の姿に会場も追随。大きく観客が盛り上がったあと、YURIKO KAIDAとKAORIのコーラスから「約束」が始まる。高揚感溢れるギターのリフ、バスドラとハイハットが刻むAメロ、バンドらしいサウンドからYUUKAの歌声が浮かび上がってくる。やがてYUUKAは上手側の階段を下り、センターに歩み寄ってピアノと重なる位置に立った。YURIKO KAIDAとKAORIのコーラスが飛び交い、青い光に照らされたステージでYUUKAが熱唱するとライトも情熱の光に変わっていた。

演奏後、梶浦がYUUKAを会場に紹介する。その後、この日の「お題」が「あなたが思う名言」「座右の銘」であると発表。“YKLIVE”では出演者の人となりを知ってもらうため、日替わりで梶浦がトークテーマ=「お題」を用意、各出演者から回答を聞き出していく。回答者の1人目となったYUUKAの答えは、普段から自身がよく使う「大丈夫、大丈夫」の言葉。「誰かに言ってもらえるのも」嬉しいが、「緊張したり不安になったりしてる時」は自分に言い聞かせる気持ちで使っているという話に。その答えが気に入った梶浦は「私も使おうかな」「大丈夫、明日には曲が書ける」と継いでいた。次に梶浦が告げた曲名「ピアノ」。YUUKAと梶浦の2人で生み出す空間を堪能できる面もあれば、プレイヤーとしての梶浦が色濃く感じられる曲でもある。たった2人が作り出す珠玉の音楽に観客は酔いしれ、聴き終えると大きな拍手を贈った。が、2人が一体となった空間はまだ終わらず。初めてFictionJunction YUUKAとして世に出た楽曲「暁の車」を続ける。ピアノソロからYUUKAのソロへ繋げられ、23年という年月を円熟の期間に変えながら表現力を増した2人のデュエットに魅了される。2番からはバンドやKAORIに下支えされ、観客が運命の大きなうねりさえも感じるなか、切ない鈴の音色が散るラストへ。右半身が濃い影となるように赤いライトがYUUKAを照らしていた。

次のMCで梶浦は歌姫たちに「お題」を提出。KAORIはリハーサル中に自分を鼓舞した「優秀Junction」、YURIKO KAIDAは3年続けた手話の話を引用しながら「継続は力なり」、Joelleは平静さを失わないために「動じない」「なーんてね」を挙げていく。それぞれの答えを聞き、梶浦はYUUKAが答えた「大丈夫」にも通じる気がするという感想を。続いて、FBMからの答えを梶浦が代読していく。髙橋が挙げたのは、ザ・ビートルズのアルバム『Abbey Road』に収録された「The End」の一節「and in the end the love you take is equal to the love you make」。梶浦は紹介しながら、「この曲は無性に感動するんだよ」と興奮した様子を見せ、ピアノ付きで口ずさむなど、ビートルズ好き、ポール・マッカートニー好きの一面を見せる。その後、佐藤は「大勢に影響なし」、中島は横山やすしの言葉という「譲り合う心がなくてどつきあい」、今野は「人間万事塞翁が馬」、そして是永は「どんな難題も意外な解決策があるはず」を挙げた。赤木りえの、江戸川乱歩の「うつし世はゆめ よるの夢こそまこと」を読み上げた梶浦は共感を示し、自身が好きな小説『ホテル・ニューハンプシャー』内に登場する「Life is a fairy tale」のセリフを引用してもいた。マンガ『ONE OUTS』から「可能性が低いとはつまりゼロじゃない」という台詞を選んだ大平のあと、最後に梶浦自身は、ローマ教皇のヨハネ・パウロ二世による「The future starts today, not tomorrow」を「最近ずっと大事にしている言葉」として挙げた。今現在、仕事場のトイレにはその言葉がプリントされたポスターが貼られており、「未来は今日始まるんだから今日仕事しよう」と、怠け心に対する戒めにしているほどだとか。

次のページ:後半戦は7曲連続から演者への梶浦の熱い想いまで

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