REPORT
2026.08.20
これまでも“特別な日”は幾度となくあった。だが2026年8月6日、CHiCO with HoneyWorks(以下、チコハニ)にとってこの日はまた格別な1日となった。デビュー12周年を迎えたこの日、彼女たちが選んだのは、全国ツアー真っ最中の一夜を割いてまで帰りたかった場所――2016年、初のワンマンライブを行ったShibuya WWW。“LAWSON presents CHiCO with HoneyWorks ANNiVERSARY LiVE 2026 -はじまりの場所で-”と名付けられた、プレミアムな一夜。10年の時を経て同じステージに立ったチコハニが見せてくれたのは、懐かしさと新しさが交差する、二度とないセットリストだった。
PHOTOGRAPHY BY江藤はんな(SHERPA+)
TEXT BY 阿部美香
これまでも“特別な日”は何度も訪れた。しかしCHiCO with HoneyWorksと長年応援を続けてきたファンにとって、2014年のデビュー日“8月6日”は、チコハニにとってもファンにとっても最上級に特別な日だ。過去を遡ると、2019年8月6日には、CHiCO with HoneyWorksデビュー5周年記念ライブ“LAWSON presents CHiCO with HoneyWorks 5th Anniversary Hall Tour 2019 LiVE 5’s ON !!”を東京・Zepp Tokyoで開催。昨年8月6日には、公式YouTubeチャンネルでのスタジオライブを通じて活動再開の報告を届けたほどだ。そんな、チコハニ12歳の誕生日を更に特別な日にしようと、全国ツアー“LAWSON presents CHiCO with HoneyWorks i BEST tour 2026 -STAY WITH YOU-”真っ最中の2026年8月6日に開催されたのが、アニバーサリーな“LAWSON presents CHiCO with HoneyWorks ANNiVERSARY LiVE 2026 -はじまりの場所で-”と名付けられたスペシャルライブだった。
会場は、東京・Shibuya WWW。チケットはもちろん瞬時にソールドアウト。普段のライブ会場と違いキャパシティもかなりコンパクトなShibuya WWWを会場に選んだのには、もちろん理由がある。ライブタイトルにあるように、ここは2016年1月、“世界は i に満ちている -1st-”のタイトルを掲げて、チコハニが初めてワンマンライブを行ったライブハウスだ。デビューから12年、ワンマンライブデビューから10年。そして、ライブ活動の再開という新しいフェーズに足を進めた節目でもある今年。デビュー記念日のお祝いに、この“はじまりの場所”が選ばれたことが、なんとも感慨深い。
段状になったスタンディングの客席は、正真正銘のぎゅうぎゅう詰めだ。後方の壁には黒字にCHiCO with HoneyWorksの文字が刻まれたバックドロップが下げられ、バンド5人分の楽器がギュッと置かれたシンプルなステージの中央。スポットライトを浴びたポールハンガーに、カンカン帽と中折帽、ストローハットの3つの帽子が飾られている。CHiCOの活動初期、ライブ衣装のトレードマークといえばハットだったことを思い出し、またまた懐かしくなる。ざわざわした客席の客電が落ち、BGMにクラップが重なると、ニコニコと笑顔で客席に手を振りながら、Oji(g)、中西(g)、Hiroki169(b)、AtsuyuK!(ds)、宇都圭輝(key)、あすきー(mani)とお馴染みのチコハニバンドの面々が登場。しばらくしてCHiCOが下手から姿を表すと、手拍子はますます大きく、いつも以上の大きな歓声がWWW全体を包む。BGMが止み、一瞬の静けさを破るようにAtsuyuK!がハイハットをカウントし、バンドの演奏がスタートしてCHiCOがお立ち台から「アニバーサリーライブ、はじまりの場所へようこそー! みんなと私たちの記念日、最高の1日にしましょう!」と、楽しそうに声を張る。ゆったりとリズムを刻んで始まったのは、CHiCOの優しい歌声が響く「恋のコード」だ。CHiCOもメンバーも、入場時にお客さんに配布された開催記念Tシャツをアレンジしたカジュアルな衣装なのも、ファンと共に今日を祝うファミリー感を演出する。
おだやかなナンバーからスタートしたアニバーサリーライブは、2曲目でグンとアクセルを踏む。CHiCOが「さぁ、行くぞ、お前らー!覚えてるよな?」と懐かしい曲の到来を告げ、Ojiと中西がお立ち台に駆け上がってハードにリフを奏でて始まったのは「identity」。激しいコールを浴びてCHiCOが頭を振り、お立ち台に寝転がり、座り込んで客席を煽る。ハードチューンの後には、更なるハードチューンが待っていた。「identity」終わりのかき回しから、CHiCOが“3,2,1 って”と歌い出した瞬間、何の楽曲かに気づいた客席から大歓声が起こる。HoneyWorksカバーの「ラズベリー*モンスター」だ!CHiCOがマイクを大きく掲げて激しくシャウトすると、それに負けじと大声のコールが飛ぶ。ステージに立ち込めたスモークが、ピンクと赤のライトに鮮やかに染め上げられた。
「ようこそ、選ばれし者たちよ」とドヤ顔で語るCHiCOが改めてライブタイトルをコールし、大歓声に包まれる。ここまでの3曲中、「恋のコード」も「identity」も、10年前のここ、1stワンマンで演奏されていた曲だったことに気づく。AtsuyuK!も髪色を当時に戻したかのようにカラフルにしていることを中西やHiroki169にツッコまれて「特別な日ですから!」と嬉しそうに応えると、「10年ぶりに(Shibuya WWWに)帰ってきました」と、CHiCOも緊張しっぱなしだった当時の自分を振り返る。AtsuyuK!と同じようにCHiCOも今日は、10年前に身につけていた懐かしいレザーブレスレットやピックネックレスなどのグッズを身につけていることをアピールすると、客席も「持ってるよー!」とたくさんの声が飛ぶ。「今日のライブはツアーとは別ものの、今日限りのみんなとの記念日。みんなとこういうホームな……アットホームな感じで(笑)、最後まで楽しんでいきたいと思います」と言うCHiCOと、「今日はとてもプレミアムなチケットだから、いつもの10倍楽しまなきゃ損ですよー!」と言う中西に、大きな拍手が送られる。
ベストアルバムを引っ提げて現在進行中の“-STAY WITH YOU-”ツアーでは聴けない、ファンに人気の高い活動初期の楽曲が、惜しみなく披露されたのもこの日のプレミアムな体験だ。続いて届けられたのは「カヌレ」。ソフトでポップなメロディをオーディエンスが声を合わせて合唱し、CHiCOは笑顔で客席のあちこちを大きく指さしながらファンへの“好き”を歌い、“愛してるよ”“信じてるよ”と、記念日だからこそ改めてファンに伝えたい想いを曲に重ねていく。温かな気持ちが溢れるなか、次に放たれたのは「カヌレ」とダブルA面シングルとしてリリースされた軽快なロックナンバー「ウルフ」だ。力強く“負けるな”のエールを贈るCHiCOの歌声が、真っ直ぐに突き刺さる。両A面の2曲が立て続けに演奏されたことはほぼなかったはずだと気づき、またもプレミア感が増す。
この2曲を続けて届けようと提案したのは、実は10年前の1stワンマンにはまだチコハニバンドに参戦していなかった中西だとCHiCOが報告。「それも感慨深いよね」とHiroki169が言う。中西がバンドに加入したのは、初のホールワンマン“中野は i に満ちている -one-”だったこと。WWWでの1stワンマンの時は、マニピュレーターも現在のあすきーではなく、2021年にチコハニのサポートを卒業したKaoruだったこと。今はCHiCOとメンバー同士も自由に喋っているが、10年前は10年前はCHiCOがHiroki169としか会話できなかったこと。客席を見れず、Hiroki169の方ばかり見てMCをしていたこと。そして、ファンの年齢層も中高生が多かったと振り返る。
「改めて考えると……大人になったねぇ」と感慨深く話すCHiCOの声をきっかけに、イントロがスタート。キャーッ!という歓声を受けてスタートした曲は「大人になったね」。華やかなブラスの音色をアクセントにした友情ソングを優しく歌い上げ、続けて届けたのは「幸せ。」だ。楽しそうにぴょんぴょんと跳ねながら歌うCHiCOの優しい表情。人生の1コマに溢れる無償の愛と感謝を歌ったハッピーなロックチューンはそのまま、人生という道のりの中でチコハニと音楽を通じて出会えたファンへのメッセージでもある。ラストの一節で「お前ら、幸せになれよ!」と叫んだCHiCOに歓声が巻き起こり、「さぁ次は、この暑い日にぴったりな、シュワシュワソング、行きましょ!」と告げて放たれたのは、幸せな空間を更に幸せで彩る「サイダー」。キュートな歌声にのせて、みんなで楽しく振付を踊りながらクラップ。曲のラスト、バンドメンバー全員がCHiCOを真似るように、後ろでかわいらしくVサインとポーズを決め、客席を盛り上げた。
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