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INTERVIEW

2026.08.18

ファンと築き上げた“信頼”の証をこの曲に込めて――。ClariS、TVアニメ『鬼の花嫁』OPテーマ「ヒトコト」撮りおろしインタビュー

ファンと築き上げた“信頼”の証をこの曲に込めて――。ClariS、TVアニメ『鬼の花嫁』OPテーマ「ヒトコト」撮りおろしインタビュー

デビュー15周年イヤーを駆け抜けるClariSが、ニューシングル「ヒトコト」をリリース。TVアニメ『鬼の花嫁』OPテーマとして書き下ろされた本作は、和の情緒をまとった三拍子の旋律に乗せて、「愛すること」と「愛されること」の尊さを繊細に描き出す1曲だ。
インタビューでは、作品との向き合い方はもちろん、レコーディングで追求した表現、3人体制だからこそ生まれた歌声の化学反応、そして15年間支え続けてくれたファンへの想いまで、たっぷりと語ってもらった。

PHOTOGRAPHY BY 堀内彩香
INTERVIEW & TEXT BY 冨田明宏

「ヒトコト」が描く、“愛される”という物語

――すっかり暑い季節になりましたが、今はどんな毎日を過ごしていますか。

クララ もう本当にライブの準備、それだけですね(笑)。

アンナ (インタビュー時期の)「もう来週末からツアーだね」って、さっき冨田さんに言われて「えっ!? 本当に?」って。

エリー 本当にびっくりしました(笑)。時間が経つのがこんなに早いなんて!

クララ 期間としては長めのツアーになりますし、今はリハーサルを重ねながら、少しずつ気持ちも作っているところです。

――そんなツアー中にリリースされるニューシングル「ヒトコト」は、1枚を通して“夏”を感じさせる作品でありながら、和の世界観も印象的でした。シングル全体としてコンセプト性の高い作品になっていますよね。まずは表題曲「ヒトコト」について聞かせてください。

クララ 今回はTVアニメ『鬼の花嫁』のOPテーマということで、あやかしたちが暮らす和の世界観が楽曲にも反映されています。言葉遣いも和の雰囲気を感じさせるものになっていますし、それでいてワルツの三拍子という、一見すると意外な組み合わせがすごくマッチしていて。そこがこの曲ならではの魅力だと思います。

――和のテイストと三拍子という組み合わせが、ClariSナンバーとしてとても新鮮でした。

アンナ 歌詞もすごく『鬼の花嫁』の主人公・柚子ちゃんに寄り添っているんです。愛されることを知らなかった彼女が、少しずつ恋心や相手の愛情を信じられるようになっていく。その心の変化が丁寧に描かれていて、特に“託していいのでしょうか? 信じていいのでしょうか?”というフレーズはすごく印象に残っています。鬼は花嫁を一生愛すると言われているのに、それでも過去の経験があるから信じ切れない。その揺れる気持ちが、この作品を象徴しているように感じました。

エリー 私は恋心をこんなにも繊細に、日本語の美しさで描いているところがすごく好きです。「好きだ!」というストレートな表現ではなくて、本当に少しずつ心が動いていく様子が言葉から伝わってくるんですよね。個人的には“お願いワタシの此の全て”というフレーズが、ワルツのリズムにすごく気持ち良く乗っているところがお気に入りです。本当に突然人生が変わるような出来事が起きて、「託していいのかな」「信じてもいいのかな」と迷いながらも、たった一言によって気持ちが動いていく。その繊細な感情が1曲の中に全部詰まっていると思いました。

――『鬼の花嫁』は、いわば“和風シンデレラ”とも言える作品ですよね。自己肯定感を失っていた柚子が、愛されることで少しずつ自分を取り戻していく。その物語には、いつの時代も愛される普遍性があるように感じました。

アンナ 本当にそう思います。女の子なら「こんなふうに愛されたい」と憧れる部分もありますし、同じ経験ではなくても、自分の過去や悩みと重ねながら読める作品なんですよね。私は柚子ちゃんにすごく感情移入してしまって……原作を読みながら、最初の頃は本当に泣きそうになりました。

エリー 「もうやめてあげて!」って(笑)。

アンナ 「私たちが守るから!」って。

エリー 「私がワンピース買ってあげるから!」って。

一同 あはは(笑)。

クララ それくらい感情移入できる作品なんです。あやかしが登場するファンタジーではありますが、描かれているのは「愛すること」「愛されること」という、とても普遍的なテーマ。だからこそ、今を生きる私たちにもすごく身近に感じられる作品なんだと思います。古き良き日本らしい繊細さは残しながらも、今を生きる私たちが読んでも自然と感情が動く。その絶妙な距離感が、この作品の魅力です。

――作品を読んでいて、ClariSの皆さんにも少し重なる部分があるように感じました。人生を変えるような出会いがあって、そこで初めて「自分を信じてもいいんだ」と、自己肯定感に気付かされるとか。「ヒトコト」の“託していいのでしょうか? 信じていいのでしょうか?”という歌詞を聴いていると、皆さん自身の歩みとも重なるように感じたんです。

クララ 私も実は、今回この作品と向き合いながら、そういうことを考えていました。『鬼の花嫁』では鬼が花嫁を見つけて人生が変わっていきますが、私にとって、その「鬼」のような存在って誰なんだろうって。そう考えた時に、真っ先に思い浮かんだのはファンの皆さんでした。もちろん作品とは一対一で重なるわけではないですが、私にとっては本当にそうなんです。ファンの皆さんは、良いところだけじゃなくて、上手くいかないところも全部含めてClariSを愛してくださる存在で、「クララちゃんはクララちゃんのままでいいよ」と言ってくださる。その言葉に何度も背中を押していただきました。だから今回の“託していいのでしょうか? 信じていいのでしょうか?”という歌詞を歌っていて、「ああ、私はこれを何度も繰り返して今ここにいるんだな」と思ったんです。

――15年間という時間をかけて築いてきた信頼関係が、この作品と自然に重なったわけですね。

クララ 本当にそう思います。最初から全部信じられたわけではありませんでしたし、一歩踏み出すたびに「これでいいのかな」と迷うこともたくさんありました。でも、そのたびに皆さんが言葉を掛けてくださって、「大丈夫だよ」「そのままでいいよ」と受け止めてくださった。その積み重ねがあったからこそ、今のClariSがあるんだと思います。だから今回の作品は、物語として共感するだけじゃなく、自分自身の15年間とも重なる部分がすごく多かったですね。

エリー 私たちにとっては、クララちゃんの存在だよね?

アンナ 私もそれ言おうと思ってた(笑)。クララちゃんが私たちを信じて選んでくれたからClariSになれたわけで、「今までの人生、これで良かったんだ」と思えたから。

エリー 人前で歌う喜びや、ファンの皆さんの笑顔に出会う喜びを全部教えてくれたのはクララちゃんなので。

クララ 本当に嬉しいけどすごく恥ずかしいですね(笑)。私のほうこそ、一緒に歩んでくれている2人に「ありがとう」です。

今の3人だから描ける情緒を湛えたこだわりの感情表現

――「ヒトコト」を聴いていて印象的だったのが、3人それぞれの感情表現でした。これまでのClariSのシングル表題曲とは少し違って、ストレートな感情や情緒がより前面に出ているように感じたのですが、レコーディングはいかがでしたか。

クララ シングル表題曲として、こういう艶やかな楽曲に挑戦するのは初めてだったので、すごく新鮮でした。個人的にはソロでバラードを歌わせていただく機会はありましたが、ClariSの表題曲としてここまで感情を乗せる作品はあまりなかったので、「やっとこういう曲が歌える」という嬉しさもありました。ただ、そのぶんすごく悩んで……。もっと感情を爆発させたほうがいいのか、それとも和の世界観らしい奥ゆかしさを残したほうがいいのか。そのバランスを探りながら歌っていく作業が、とても難しかったです。でも、本当に歌っていて楽しいレコーディングでしたし、2人の歌を聴きながら「こんな表現もできるんだ」と新しい発見もたくさんありました。

――ワルツの三拍子というのも、歌としては独特の難しさがありますよね。

アンナ そうなんです。ClariSとしてこういうコンセプトの楽曲に挑戦すること自体が初めてだったので、自分の声をどう寄り添わせればいいのか、最後まで手探りでした。しかも三拍子って、ゆったり歌おうとするとリズムに置いていかれてしまうんです。でもリズムを追い掛けると、儚さや余韻がなくなってしまう。その両方を成立させるのが本当に難しくて、ディレクションをいただきながら何度も歌い直しました。だからこそ、この曲では2人とは少し違う役割を意識していました。クララちゃんやエリーちゃんは、切なさや透明感がすごく魅力的なので、私は恋心に気付いた時の高揚感だったり、少し胸がチクッとするような感情だったり、そういうスパイスになれたらいいなと思って歌いました。

――“甘美で香しい声 包まれて”というソロは、まさにその印象でした。

アンナ ありがとうございます!サビの印象を少しでも強く残せるフレーズになったらいいなと思いながら歌っていました。

エリー 私は歌詞を読むと感情移入しやすいんですが、それをワルツのテンポに乗せるのがすごく難しかったです。例えば“お願いワタシの此の全て”というフレーズは、言葉だけ見れば切実な願いですが、あえて叫ぶのではなく、1人でそっとつぶやくように歌ってみたり。逆に“指先は揺れて 視線戸惑う”では、バックで鳴っているサウンドの揺らぎに合わせて声を置いていくようなイメージで歌いました。艶やかな言葉とワルツのリズムが重なっていく感覚がすごく心地良くて、歌っていて本当に楽しかったです。

――今回はハーモニーやコーラスワークも、これまで以上に印象的でした。

クララ そうですね。3人体制になってから、ハモリやコーラスをすごく大事にしてきたんですが、この曲は特にそれぞれの表現がしっかり際立っていると思います。聴けば聴くほど新しい発見がある曲ですし、Aメロ、Bメロ、2番と、構成もすごく凝っているので、何度でも楽しんでいただける楽曲になったと思います。

――せっかくなので、自分以外のメンバーの歌唱で「ここが好き」というポイントも聞かせてください。

クララ エリーちゃんの“ふっと落ちてく この雫の意味は”ですね。本当に歌詞の通り、雫が静かに落ちてくる情景が浮かぶような歌い方なんです。ただ優しいだけじゃなくて、そっと心に触れてくれるような温度があって、本当に大好きです。

エリー 嬉しいです(笑)。

アンナ 私はクララちゃんの“手をとって”です。ぎゅっと胸の奥に抱えていた想いが、その一言で少しだけ外へ出てくるような感情が伝わってきて、ライブのリハーサルでハモるたびに「この気持ちをそのまま届けたい」と思うんです。

エリー 私はアンナちゃんの“玲瓏な月の 照らす姿は”の歌い方が大好きです。色んな声色を使い分けながら、1つのフレーズの中で景色を作っていて、本当に上手だなぁって。

――皆さんがお互いの歌を本当に細かく聴いているんですね。

クララ 最近はライブのリハーサルでも自分たちから「上ハモ行きます」「下ハモ行きます」って(笑)。

アンナ もう職人みたいですね(笑)。

エリー 一度メインを歌ってもらって、「じゃあ合わせますか」みたいな感じで。

クララ 私はずっと主旋律を歌うことが多かったので、2人が自然に「任せてください」ってハモリを作ってくれるのが本当に心強いんです。「自由に歌っていいよ」って言ってくれるんです。

エリー 私たちが合わせに行くから、って。

――その信頼関係こそが、第3章のClariSらしさなのかもしれませんね。

クララ 本当にそう思います。それぞれが自分の役割を理解しながら、1つの音楽を作っていく。この3人だからこそ生まれる歌を、ライブでもしっかり届けていきたいですね。

――アニメのOP映像を拝見しましたが、『鬼の花嫁』の世界観と「ヒトコト」のMVが驚くほどリンクしていました。

クララ 私たちも完成した映像を観た時に、「すごくリンクしてる!」って3人で話していたんです。事前に内容を細かく情報共有していたわけではないんですが、作品へのリスペクトを持って制作していった結果、自然と同じ世界観に近付いていったんだと思います。私たちも着物を着て撮影させていただいたり、作品に寄り添った表現を意識していたので、アニメとMVを観比べながら楽しんでいただけたら嬉しいです。

次のページ:シングルとツアーを通して描く鮮烈な夏の情景

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