2026年7月5日(日)、シユイが東京・新宿 ReNYにて、初の昼夜2部制ワンマンライブ“LAWSON presents シユイ one-man Live 思惟的錯覚”を催した。jon-YAKITORYやryo(supercell)をはじめ、ボカロPやネット発のクリエイターによる楽曲を歌ってきたシユイ。第1部「各位」ではカバー曲や弾き語りを交えたパフォーマンスを披露。第2部「拝眉」では、藍哀書き下ろしの「リンカルネーション」に加え、FINLANDS・塩入冬湖が手がけた新曲「タイムスロット」を初披露。これまでとこれからを繋ぐ、期待に満ちたステージとなった。本稿では、第2部「拝眉」の模様を振り返っていく。
PHOTOGRAPHY BY 中井智久
TEXT BY 逆井マリ
2023年11月に行われた1stワンマンライブの舞台に、再び帰ってきたシユイ。これまで“シユイさんといっしょ”と題してきたワンマンライブから一転、今回は「思惟的錯覚」というタイトルを掲げ、キービジュアルや衣装デザインにも本人が携わり、ライブの世界観を細部まで形にしていった。「思惟」とは、心で深く考えること。YouTube Podcast「思惟的思考」や過去作にも通じる、自身の名と重なるこの言葉を冠したステージで、その先へと進もうとしていた。
SEに合わせて観客のハンドクラップが響くなか、西山ケイン(Key./BM)、多部いなば(Dr.)、Y.O.U.(Ba.)、冬真(Gt.)、そしてシユイが姿を現し、第2部「拝眉」は、盟友・jon-YAKITORYが手がけた「ハピネス オブ ザ デッド」(TVアニメ『ゾン100~ゾンビになるまでにしたい100のこと~』EDテーマ)で幕を開けた。「オーバーラップ」で始まった第1部「各位」とは趣をがらりと変え、冒頭から昼公演との違いを鮮やかに印象づけてみせる。黒いジャケットを纏ったボーイッシュな装いも相まって、凛々しい存在感を放ちながら、“オーライ!今日を楽しんで”と、この夜の始まりを告げるように歌い上げ、観客を一気にステージへと引き込んでいった。
ステージ前方の台へ上がり、フロアを見渡しながら「手、上がりますか?」と観客へ呼びかけると、獅子志司の書き下ろし曲「君君舞」(ドラマ『墜落JKと廃人教師』OPテーマ)へ。フロア一面に掲げられた手とともに、一体感を生み出していく。DECO*27による「ラブコール」(TVアニメ『アンデッドアンラック』OPテーマ)では、アッパーなサウンドの中に差し込まれる、ダウナーな空気を纏ったラップパートを緩急つけて歌いこなす。そこからシームレスにChinozo提供の「バームクーヘン」へと繋ぐ流れにもフロアから大きな歓声が上がった。
アニメ主題歌をはじめとした四者四様の世界を一気に駆け抜けたシユイ。改めてレパートリーの幅広さを印象づける序盤を経て、「夜も昼も来てくださった方もいらっしゃると思うんですけど、夜は違った仕掛けをたくさん用意していますので、ぜひ最後まで楽しんでいってください」と呼びかける。MCもそこそこに、40mPが手掛けた「ひとちがい」へ。客席を半円状に囲む照明が一斉に点灯し、フロア全体が明るく照らし出されるなか、新しい自分になりたいと願う人に寄り添う1曲を爽やかな歌声で届けていく。
ここで、シユイの原点である、jon-YAKITORYとのコラボ曲「ONI」を披露。バンドメンバーも前へと身を乗り出し、Y.O.U.が激しく頭を振るたびに長い髪が大きく揺れる。荒々しくうねるバンドサウンドの中、シユイも鬼気迫る声を響かせ、楽曲に宿る衝動をむきだしにしていった。続く「ホロウ」は、バルーン名義でも活動する須田景凪が書き下ろした、TVアニメ『魔王2099』OPテーマ。目まぐるしく表情を変える複雑なメロディと展開を、シユイは息を切らすことなく歌いこなしてみせる。
そして「声、出せますか!」とフロアへマイクを向けると、熱気の高まった会場にハイノミが手掛けた「べらべら」を投下。すぐさまOiコールならぬ“雷(らい)コール”がフロアから力強く返ってくる。指揮者のように腕を振って観客の声を導いたかと思えば、サビでは体をバネのように使ってジャンプ。マイクを力強く握りしめながら歌い、楽曲の勢いをさらに加速させていく。その熱を受け継ぐように、ツミキが手掛けた「GLOW」へ。スマホゲーム『マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝』の『魔法少女まどか☆マギカ scene0』主題歌としても知られる1曲を、シユイはブライトな響きを帯びた歌声で伸びやかに届ける。エネルギッシュなバンドサウンドのうえを、声が真っ直ぐに抜けていき、会場の空気を明るく開いていった。
MCでは「皆さん、楽しんでますか!」と笑顔で呼びかけ、「みんなの熱気が伝わってきています」とこの日初めてじっくりと言葉を交わしていく。そして、昼公演では触れなかったという公演タイトルについて語る。第1部「各位」は、久しぶりのワンマンライブだからこそ、これまでを振り返り、「ぜひ来てください」という想いを込めたタイトル。一方、第2部「拝眉」は“お目見え”という意味をもち、「新しいシユイを皆さんにお披露目する」という想いから名付けたことを明かす。「まだ皆さんにお伝えできないこともたくさんある」と前置きしながらも、新たな挑戦へ踏み出していることを自らの言葉で語るシユイ。その言葉は、このあと披露される曲へと繋がっていく。
「こうやって会いに来てくれて、大好きでいてくれる皆さんに、最初にお届けしたいなと思って」と語ると、シユイは新曲「リンカルネーション」を初披露。シユイを象徴する青い光がステージを包むなか、複雑に展開するロックサウンドに歌声を重ねていく。そのクールな佇まいと力強い歌唱に、曲が終わるや否や、客席からは拍手だけでなく「最高ー!」という声が飛んだ。
シユイは改めて「新しいこと」の内容について語り始める。これまではボカロPをはじめ、ボーカロイドやアニメのシーンで活躍するクリエイターを中心に楽曲提供を受けてきたが、これからは「自分の出会ったことのない表現にも出会っていきたい」と、作家陣の幅を限定せずに広げていくという。その第一歩として「リンカルネーション」を手がけたのが、音楽プロジェクト「先生たすけて」で活動するシンガーソングライター・藍哀だった。さらに翌日、7月6日に「リンカルネーション」が配信リリースされることも発表。
観客の表情を見つつ「新しいことはいつも不安になるんですが」と率直な胸の内も明かすシユイ。それでも、「変わっていくところもあるけど、そんなに大きく変えるつもりはなくて。柔らかく進んで、私らしく進んでいけたら」と、飾らない言葉でこれからの思いを語った。
「シユイという表現者と、私という1人の人間を、一歩ずつ、皆さんと隣で一緒に歩んでいけたら、見ていただけたらと思います。これからもどうぞよろしくお願いします!」と、力強く決意表明。そして、「そんな大切な皆さんと、たくさんの勇気や出会いを与えてくれた楽曲を一緒に歌いたい」と、デビュー曲「君よ 気高くあれ」へ。ryo(supercell)が楽曲プロデュースを手掛けた、TVアニメ『機動戦士ガンダム 水星の魔女』EDテーマで、鮮烈なデビューを飾ったあの日から早くも約4年。青いレーザーが幾筋も走るなか、シユイは壮大なサウンドに負けない力強い歌声を響かせる。新たな挑戦への不安も、それでも進んでいこうとする意志も語った直後だからこそ、その歌はまさに気高く、これまで積み重ねてきた時間ごと会場を包み込んでいった。曲を支えた力強いハンドクラップは、そのままR Sound Design提供の「カトレア」へと引き継がれていく。軽やかなピアノの音色に乗せ、シユイはフロアとの距離を縮めるように歌唱。やがて、その明るさを反転させるように、妖しく不穏な音色が響きだし、「インフェリア」へ。観客との掛け合いを重ねながら、会場をより深く楽曲の世界へと引き込んでいった。
ライブはいよいよクライマックスへ進んでいき、Teary Planetが手がけたアッパーなロックナンバー「BOOOM!!」を歌唱。見て見ぬふりをする世界にNOを突きつけ、しがらみを振り払うように“腐り切ったその常識に 渾身の一撃を打て”と前へと突き進んでいく曲だ。間奏でシユイがバンドマスターの西山ケインをはじめとして、多部、Y.O.U.、冬真を紹介すると、メンバーもそれぞれの音で応え、会場の熱をさらに押し上げる。まさに畳みかけるような演奏の中、胸の内にたまったものを一気に吹き飛ばすように歌い放つ。それに共鳴するようにフロアからも拳が上がった。
本編最後は、TVアニメ『杖と剣のウィストリア』Season2 ED主題歌「リーチライト」。水野あつと雪乃イトが手掛けたミディアムナンバーを、ここでは1音1音じっくりと確かめるように届けていく。先ほどまでの熱を静かに鎮めるような歌声が、Dメロでは泣いているようにも聴こえた。けれど、そう感じたのは、もしかすると聴く側の感情が揺さぶられていたからかもしれない。最後まで張り詰めた思いをほどくことなく歌い切り、本編を締めくくった。
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