――ここからは本作が初出の新曲について詳しくお話をお伺いしていきます。まず、先ほども話題にあがった1曲目「羅永線」は爽快かつ解放感あふれるパンクナンバー。
小日向 私はすごく爽やかで明るい印象の曲だなって思っていたんですけど、さっきの羊ちゃん(羊宮)の話を聞いて、確かにいろんな受け取り方のできる曲だなあと思って。また新しい「羅永線」の楽しみ方を羊ちゃんに教えてもらえました。
羊宮 でも、レコーディングの時も「明るい曲」という部分は残すようにしていたの。プロデューサーさんとお話しして、リリース時期が夏になるので、夏のすがすがしさやみずみずしさ、明るい印象は持たせつつ、でも燈ちゃんは全部が明るい夏みたいな曲はきっと歌わないだろうから、また今までとは違うものが乗った歌い方になったのかなと思っていて。夏の明るい曲と言えば、楽しい気持ちになれる歌詞が多い印象ですが、「羅永線」では歌詞が“見上げてみたって 届きもしなくて”で始まるところにもMyGO!!!!!らしさを感じますし、どこかしらに影が差しているところが“MyGO!!!!!の夏”という感じだなと思います。いつ雨が降ってきてもおかしくないような。
――“そっけなく浮かぶ空”とも歌っていますものね。
立石 でも“届きもしなくて”と言いつつ、空を見上げて憧れている感じや、視野が広がっている感じもあって。曲調が暗くないのもすごくいいですし、私は「羅永線」に『致並跡』というタイトルとの繋がりを一番感じているので、アルバムの1曲目にふさわしい楽曲だと思います。
小日向 私はこの曲のメロディがシンプルにすごく好きなんです。歌詞をしっかり深読みすることでいろいろな見え方が生まれる曲だと思いますけど、純粋にライブで聴いても楽しめる楽曲になっていると思いますし、最後のシンガロングもファンの皆さんと盛り上がれたら嬉しいです。それにこの曲、MyGO!!!!!のこれまでの足跡、まさに“ライン”を辿っていくような歌詞になっているとも感じていて。特に“わだかまる昨日 手詰まりの日々も 手放せないから 連れていくよ”は、みんながどうしようもなかった出来事も全部手放さずに大切な思い出として連れて行っているMyGO!!!!!そのものだと思うので、燈ちゃんの紡ぐ歌詞の成長も感じますし、そういうエモさも爽やかな曲調と合わせて楽しんでいただきたいです。
――羊宮さんは先ほど、今回の新曲に関して「大人になっていく感じ」がしたとお話していましたが、それは歌の表現においても意識したのでしょうか。
羊宮 歌に関しては、大人というよりは「成長していく」という意識が強いです。感情面もそうですし、音幅で言うと地声をどのくらい入れ込むか。燈ちゃんはウィスパーが特徴のひとつなので、その部分をどこまで残しつつ、地声を入れていくかの塩梅は、毎回試行錯誤しながら歌っています。
――そういえば最近は地声の割合が増えているように感じますが。
羊宮 そのあたりはいろいろ計算しながら、毎回、燈ちゃんの成長具合を意識してレコーディングしています。あとはどのくらい気持ちを込めて歌うのか。あまり気持ちを高ぶらせてしまうと心の叫びが強くなりすぎたりするので……。そして曲によって憑依させるのかどうかですね。例えば普段の燈ちゃんがあまり歌わなそうなカバー曲、パラレル楽曲を録る場合は、ちょっとだけ憑依させるのか、あるいは憑依しているように見えて憑依しないで歌い切るのか。ひとつ感情が変わるだけで全然違うものになるので、そこはかなり意識しています。
――深いですね……!初出の新曲だと「素寄曲」は穏やかなミディアムナンバーで、燈やMyGO!!!!!メンバーの心根の温かさを感じさせます。
小日向 私はみんなでお散歩してそうな曲だなって思いました。
立石 あー、わかる(笑)。
小日向 “階段の猫”とか、燈ちゃんがみんなと歩きながら見てきた景色を歌詞にしたような感じがして。私はお散歩が好きなので、歩きながら聴きたい楽曲です。メンバーのハモのパートも多くて、後ろで4人が温かく包み込むように歌っているのが、まさに5人でお散歩している感じがすごく出ているなあと思って。
立石 なんか「放課後」って感じがするよね。そのまま絵本になりそうな情景の浮かび方がして。このトーンの燈ちゃんの歌い方は、温かくて聴いていて落ち着きます。
羊宮 実はこの曲、最初はもっと波風立てずに歌っていたんです。でもプロデューサーさん的には「もっと感情が乗っていってもいいかも」ということで、プロデューサーさんからのディレクションを受け取らせていただいて、どこか心の中に芯が感じられるような感情の入れ方をしました。“僕は選んでみたくて”の部分とか。
小日向 細かいディレクションがたくさんあったんだね。
――やっぱり燈を表現する上で感情の揺れや“迷い”は大切な要素なんですね。言われてみれば確かに「素寄曲」というタイトルも意味深ですし。
羊宮 そうですね。温かさだけじゃないというところを表現している曲なのかなと思います。
小日向 これは余談ですけど、ファンの方たちが曲名の読み方を予想しているなかに、この曲の読み方を「そよりん」と予想している人がいて(笑)。
羊宮 えっ、本当だー!
立石 確かに「そよ」と読めるけど(笑)。
小日向 皆さんの曲名予想はいつも見ていて楽しいです!(笑)。
――もう1曲の「騒混出」は個人的に今作の中で一番新鮮さを感じました。スピーディーで抜けの良いロックナンバーですが、アンサンブルはかなり複雑になっていて。
小日向 この曲、地味にMyGO!!!!!の最難関楽曲だと思っています!きっとボーカルも難しいと思うんですけど、コーラスも初めてピアノで1音1音確認しながら練習したくらいで。
立石 すごくややこしかったよね。
小日向 そうそう。楽器も難しそうだし、それこそ今までボカロの楽曲をカバーさせてもらってきましたけど、ついにボカロみたいな楽曲が来たぞと思って。
立石 イントロのリードギターがめっちゃかっこよくてテンションが上がりますし、私たちの世代的に聴きやすくて馴染みのある楽曲だなと思いました。めちゃくちゃ激しいわけではないけど、爽やかさもかっこよさもあって。私もMyGO!!!!!としてすごく新鮮さを感じましたし、ライブ映えもしそうなのですごく楽しみです。最後の“らったった”もみんな絶対に歌ってくれるだろうし(笑)。
――ギターは楽奈パートと愛音パートが合わさってこそ成立するような構成になっていて、愛音役の立石さんとしても弾き甲斐がありそうです。
立石 ですよね。でも、新曲で難しい曲や速い曲がきても、大変だなあと思う時もありますけど、それよりも先に「愛音ちゃん、すごく成長したなあ」という気持ちが先にくるんです。
――なるほど。羊宮さんはこの曲、どんな印象をお持ちですか?
羊宮 ここまでお話した「羅永線」と「素寄曲」、そしてこの「騒混出」と、どれも明るい曲調なのに、歌詞は暗くも明るくもなくて、すごく漂っている感があって。だからレコーディングはすごく難しかった記憶があります。どれも「それじゃない」感じがして。なあなあで歌ってしまうとそこに何もないことが、音として伝わってしまう気がして……。もちろん作品によっては音程やリズム感など、大事にしているものが違うので、作品が大事にしているものを、私も大事にして歌わせていただきますが、燈ちゃんにおいては、感情が大事になってきます。その中でもこの曲は、成長の面において地声を多く使うようにしました。
――歌詞に関してはどのように解釈したのでしょうか。
羊宮 最後の“らったった”を繰り返すパートの隙間に“僕にもあったようだ”“いくらかの期待が”という歌詞が入るのですが、私の中ではこれはすごいなと思って。期待にもいろんなものがあると思うんです。自分に対してなのか、相手に対してなのか、それとも運に対してなのか。頑張り続けて報われないと期待しなくなっていく瞬間もあるなかで、“らったった”という明るいフレーズに紛れてこの言葉が入ってくるのが、疲れ切っていたとしても、それでも自分の期待する気持ちをみつけて言語化できているんだなと思って、すごく印象的でした。
――どんな状態になったとしても、期待を抱いてしまう自分がいる、と。
羊宮 その前にある“何かをきっと 僕は見つけだしたいようだ”という歌詞もそうで、生きていると見失ってしまうものも多い中で、毎回かっこよく「迷子でも進め!」とか「迷子だからこそ出会えた」とか、綺麗なものばかりではないと思うんです。やっぱり見失うこともあるし、答えを出せないこともある。それを感じ取れる曲だと思います。もちろん明るさもありますけど、ここまで歩んできたからこそ生まれてくる言葉がたくさんある歌詞だなと思いました。
――「騒混出」というタイトルの当て字に“騒ぎ”や“混乱”を想起させる漢字が入っているのも、MyGO!!!!!らしくて。
羊宮 そうなんですよね。なおかつこの曲は「騒混出(サンデー)」ということで“日曜日の昼下がり”をイメージした曲でもあるので、全部を悲しみで表現するのも違うんです。日曜日の軽やかさと、翌日に月曜を控えて少し憂鬱な感じ。いろんなものを入れ込みつつ表現したので難しかったです。
――その感情の組み立て方はどうやっているのでしょうか。自分には想像もつかないのですが……。
羊宮 そこに関しては芝居と同じだなと思っていて。ただ、芝居の場合は一つの作品の中で描かれる範囲が決まっているので、その過程での成長の幅を演じることはありますけど、基本的に成長する者を演じ切ることはないんです。でも、このリアルバンドプロジェクトの場合は、自分とキャラクター、二次元と三次元が交差するものなので、どう成長していくか、どう楽曲にアプローチしていくかは、役者としての引き出しなのか自分の中から生まれてきているものなのかわからない部分もあって……語り始めると長くなるんですけど(笑)。
――その成長を表現するにおいて、自分自身が成長しないと追いつかないケースもあるわけですか?
羊宮 逆に自分が成長してしまうことによって置いてけぼりになる感情表現もあるので、そこはすごく難しくて。だから自分がどのくらい成長したからそれを演じられるかはまちまちで、逆に自分の成長は一度抑えて歌う時もあります。でも、「これも結局自分のエゴなのかな?」と思う瞬間もありますね。結局は自分との戦いというか、正解はないものなので。でも、それもある種、MyGO!!!!!には向いているのかなと思います。もしかすると自分に言い聞かせているだけかもしれませんが……。
――常に迷いながら表現を模索されていると。ちなみに「騒混出」は燈以外のメンバーが歌うコーラスも難しかったというお話ですが、コーラスにおいてもメンバーの成長なり変化を感じることはありますか?
小日向 「羅永線」の話になってしまうんですけど、“僕らへと 風が吹いた”の前の”Ah”というコーラスは「希望を胸に叫ぶような感じで」というディレクションをいただいて。これまでにもかっこいい曲で振り切るように叫ぶコーラスはありましたけど、爽やかな曲でそういうディレクションは初めてだったので、キャラクターたちにそういう感情が生まれているのは成長なのかなと感じました。
立石 基本的に羊ちゃんというか燈の感情表現に合わせてコーラスも歌うので、そこはひとつになって表現しているから一緒に成長しているのかなとは思っていて。レコーディング現場では毎回羊ちゃんの歌声を聴きながら録るんですけど、表現が本当に繊細なので、そこで自分が持っていたイメージとの答え合わせをしている部分はあります。
小日向 羊ちゃんの録った歌声を聴くと、本当に細かいニュアンスをたくさん入れているんですよ。最初の頃よりもそれがすごく多くなったので、おこがましいですけど、そこは羊ちゃんの成長の部分だと感じていて。それをハモやコーラスに反映させる時に、羊ちゃんならではのニュアンスに合わせるのが難しくて、以前は4回くらい録り直しをしていたんですけど、最近は割と一発で成功することが多くなりました。
羊宮 えー、すごい!(パチパチ)。
小日向 自分も羊ちゃんの歌い方に適応できてきたのかなって成長を感じるし、燈ちゃんと共鳴することが多くなってきたから、絆が育ってきたんだと思う!
羊宮 嬉しい……!私は仮歌とは違う燈ちゃんならではの表現をすることが多くて、メンバーには難しいことをさせているなと申し訳ない気持ちもあったので、そう言ってもらえると本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
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