INTERVIEW
2026.06.16
2019年にBURNOUT SYNDROMESの「Good Morning World!」が眩いばかりの音と共に「おはよう世界!」と声をあげてTVアニメ『Dr.STONE』の幕を開けてから7年。ついにアニメが最終局面を迎えた。月で人類を待つホワイマンとの対峙に向けて日々ロケット作りに渾身の力で挑む主人公・石神千空と仲間たち。その背中を押し、ワクワクと鼓動逸るEDテーマ「ROCKET」について、フロントマンの熊谷和海に聞いた。
INTERVIEW & TEXT BY えびさわなち
――TVアニメ『Dr.STONE』の最初のOPテーマとなった「Good Morning World!」から7年。この曲を改めて振り返ると、バンドにとってどのような楽曲ですか?
熊谷和海 7年も経ったんですか!?なんだったら3~4年前くらいの感覚です。今ではライブでだいたい最初のほうに必ずやるような曲になりました。曲自体が「おはよう」と挨拶から始まるので、「何かを始めよう」という空気に満ちている気もしますし、ライブでも使いやすい曲ですね。「今から始まるよ」というTVアニメ1期のオープニングにふさわしい曲だったなと今、改めて思います。
――物語にとってのアンセムでもあるけれど、バンドにとっても幕開けのアンセムになっていたんですね。
熊谷 BURNOUT SYNDROMESにとってもそうですが、私自身も上京して最初に来たお話だったので気合いも入っていましたし、その心情と作品が上手くシンクロしたと思います。
――『Dr.STONE』があったからこそ生まれた「Good Morning World!」は、石化していた人類と文明が消えた大自然の地球から始まった、まさに物語の“はじまり”を象徴するオープニングでしたが、今日まで、物語も進んでいます。現在までの印象の変遷をお聞かせください。
熊谷 ストーリーやキャラクターが際立っているので、理系の知識がふんだんに散りばめられていても読み手が理系であろうが文系であろうが胸にスッと浸透していくんだと思います。それこそ今クールについてはドラマ性が高まってきましたよね。最初の頃はどんな人物がいて、どんな考え方をしているのかもわからずに見ていたと思いますが、終盤となった現在ではキャラクターそれぞれの個性が光っていますし、敵と味方が目まぐるしく入れ替わっていく感じに引き込まれていました。
――確かに「敵と味方が入れ替わっていく感覚」はとても大きく物語を動かしていきましたね。
熊谷 実は、今回の「ROCKET」の話をいただくまで、「Good Morning [New] World!」が担当したテレビスペシャル『Dr.STONE 龍水』以降の原作を読まずに止めていたんです。それで話をいただいてから読み始めたのですが、マンガはだいたいどこかしらかで面白さのピークが来るものだと思うのですが、『Dr.STONE』はずっと面白いままなんですよね。『宝島編』でピークになるかと思ったら、面白さは継続して、そこから追いかけっこが始まり、最後にはロケットを作る。読みながら、「面白さがこんなに続いていく物語があるのか!」とびっくりしたほどです。アニメの最終(ファイナル)シーズンではひたすらロケットの材料を集めていますが、それだけロケットを作るのは大変なことなんですよね。現代に生きている中では気づかないけれど、原始的な状態から積み上げていく彼らを見ていて「ロケットを作ることは大変なことなんだな」と思います。それを成していく千空は本当にかっこいいですし、ストーリーのすごさも感じました。
――今回の最終(ファイナル)シーズン第3クールのエンディングのお話を受けて、石化していた熊谷さんの『Dr.STONE』の知識も動き出したのですね。
熊谷 もしもこのお話がなかったら、エンディングを知らないままだったかもしれないので、今回楽曲を作ることができて良かったです。ちなみにそもそもの発注段階ではオープニングかエンディングかということを言われてはいなかったんです。どちらに使われるかが決まっていない状態でアニメ制作サイドに提出したので、EDテーマを書こうという認識ではなかったんです。とにかく「『Dr.STONE』に楽曲を書こう」と思って臨みましたし、「最後を締めるのは、幕開けを書いた俺たちしかいないだろう!」という気持ちでした。
――物語の幕開けを飾った1曲に続いて、シリーズ最後のシーズンのEDを作る。どのような思いでしたか?
熊谷 「Good Morning World!」を作った責任があると思っていました。第1期のOPテーマは作品にとっても大事だと思いますし、後に続くアーティストへのリファレンスにもなっていくものだと思うので、その流れの中でアニメの最後をBURNOUT SYNDROMESが締め括れたら美しいなと思っていました。
――楽曲制作でこだわった部分もお聞かせください。
熊谷 基本的に私の場合は作曲はサビの一行目から書くのですが、「ROCKET」は“あの月まで届け!”から書き始めたんです。話をもらってから3~4日で一気に原作を読み込んで、読み終わって最初に出てきたのが「月まで届け!」という言葉でした。物語としても月へ行くことが目的だし、ネタバレも含んでいないので、優秀なフレーズだと思いました。現実的な比喩として、ここでいう「月」はきっと人それぞれが持っているものなんですね。例えばその瞬間の私にとっての「月」は「『Dr.STONE』の主題歌を担当する」こと。それが目標でした。そんなふうに私自身の目標とシンクロするということは、夢を持つ人にとっても、登場するそれぞれのキャラクターにとっても「月」と「目標」がシンクロしていくのではないかと思って「月まで届け!」を念頭に楽曲にしていきました。『Dr.STONE』のキャラクターと同じようにこの曲を聴いている皆さんそれぞれの「月」にも届きますように、という思いも同時に込めましたし、そうすることで『Dr.STONE』と視聴者が繋がると考えました。
――誰か1人の視点を、ということではなかったということですか?
熊谷 基本は千空です。でも私自身の視点でもある。歌詞にある“必ずキミの夢は叶う”という歌詞を、過去へ向けて言っているところは千空だとも思います。ただ主題歌を書く時には、キャラソンにならないようには意識しているので、結果として千空が見えるものになったけれど、書いている時にはあまり考えてはいないです。
――最終話に近づくにつれて、千空とDr.XENO(ドクターゼノ)が共にロケットを作ります。幼少期の関わりも含めた2人の姿も浮かんでくる1曲ですね。
熊谷 私にとってはそこに千空の父である百夜も被ってきます。やっぱり百夜のいる宇宙飛行士世代がいて、その下にゼノがいて、更にその下に千空がいる、という系譜が浮かぶ気がしますね。それは「宇宙飛行士」や「ロケット」がテーマとして物語の重心となっているからなのかなとも思います。
――「ROCKET」というタイトルも早い段階で出ていたのでしょうか。
熊谷 ほぼほぼ“月まで届け!”が出るのと同時だったかもしれないです。物語を読んだ時の印象も相俟っていましたから。ここまで様々なものを作ってきた千空たちにとっての「最終クラフト」だろうと、いち読者として思ったんです。最終目的地であり、最終クラフトであることが伝わったし、『Dr.STONE』における特別なアイテムという感じがしました。
――その1曲は提出をした後に制作陣の心を掴まなければならなかった。そのためにどのようなこだわりを持っていましたか?
熊谷 こだわりは色々ありますが、フックとなったのは「選んでくれ」という思いです。その1つ目はサビでバーンと開けるアレンジにすることでした。だいたいのロックは、サビからビートを叩くんですよね。そこをあえてシンバルのダーン!という音を入れてダイナミックなアレンジにして、これまでの曲との違いをつけました。パッと聴いた瞬間にフックとなるようなアレンジにしたくて、サウンドもすぐには走り出さず、発進した瞬間にドーンと勢いのつく印象に繋ごうと思いました。そこがこの楽曲の顔で、制作段階で物語にすごく合う主題歌になるだろうなと感じていました。
――音色やテンポなどでポイントとなるのはどんなところですか?
熊谷 ところどころオートチューンを入れた部分です。ずっとエフェクトが響いているのではなく、部分的に入れることが科学っぽいかなと思ったんです。全編を生声で歌うだけでは面白くないと思いましたし、声が張る瞬間にケロッとしたエフェクトが掛かることで、ノイズっぽさのある昔のSFのような質感を出せるかなと思いました。あとはあまりギターの音が歪まないようにしました。当時の私の流行りもあったのですが、アコギも入れたきれいな音で空間を作りたかったんですよね。「Good Morning World!」は激しくギターを鳴らしていましたが、この最終(ファイナル)シーズンと向き合った時に私の中ではロックは鳴らなかったんです。ロックンロールの激しさよりも、楽曲に終始寂しさが滲んでいても良いんじゃないかと思って。ギターを歪ませると熱さは出るものの、物語のラストに向けては「これで終わるのか」という寂しさがあってもいいんじゃないかなと。そうした余白のある音像にしたいと思いました。
――編曲にejiさんを迎えられていますが、どのように楽曲に作用しましたか?
熊谷 ピアノは本職の方に弾いてもらうことで雰囲気をきちんと出したかったので、ピアノ奏者であるejiさんにはアニメサイドに楽曲を提出する段階から入ってもらっています。コード感も複雑な曲だったので、ejiさんにはコードアレンジャー兼ピアニストという役割で参加していていただいて。おかげで非常に良い形になりました。
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