INTERVIEW
2026.05.03
――そうやって制作された楽曲を、リハーサルやレッスンを通じて身につけてライブに臨むわけですが、そのなかで沢口さんがメンバーの成長を感じられた部分はありますか?
沢口 本人たちの振付が入るスピードは速くなりましたね。ただ、振付自体が初期と比べて難しくなってきているので、そういう意味で時間がかかるというのはあって。あと「フォーメーションダンスを頑張るぞ!」みたいなことを公言していたので、こちらとしても「生半可なフォーメーションは作れんな」みたいな気持ちで作っているのもあって(笑)、今でも時間はそれなりにかかるよね?
守屋 はい!かかります。
――時間をかけるポイントが変わったような感じに?
沢口 そうかもしれません。昔は「振付自体を覚える」ことに時間がかかっていたけど、事前に送った、私とアシスタントとで撮った振付の映像を観てメンバーが昔以上に予習してきてくれているので、振付自体はスムーズですね。ただフォーメーションの面では、それに対してすごく細かくバミリがついているので、それを覚えるのに時間がかかるのかもしれません。
――そのバミリの番号は、小数点第2位まであるとお聞きしたことがあるのですが。
沢口 そうなんです。ただ、今はライブに基本的に7人で出ているじゃないですか?奇数になると数字がスッキリするんですけど、8人の時のほうが変な数字が出てくるんです。
――偶数だとセンターが取れないし。
沢口 そうなんです。だから小数点第2位まであったとしても、「0.25」とかだと「4分の1」できれいな数字だからまだ良くて(笑)。そうじゃなくて「1.3」とかあるよね?
守屋 そうですね(笑)。難しい……。
沢口 基本的に一番外のメンバーが3番になるから、8人だとそういう「それってもう各々の感覚じゃない!?」みたいな数字が出てきちゃうので(笑)、本人たちの感覚を合わせるしかないんですよ。「私の思う『1.3』はここだけど」みたいに。
守屋 だから最初は「ど、どこで取ってるの?」みたいになりました(笑)。
田淵 やっぱり「難易度上がってるな」みたいな感覚はあるの?
守屋 そうですね。フォーメーションはどんどん難しくなっている気はします。
田淵 それはもう、全部の曲に関してそういう覚悟をしてるんだ。
守屋 はい。
田淵 すごいなぁ。でも、さっきかなみ先生が言っていた「予習してくれる」というのも、結構DIALOGUE+の大事なファクターで。それこそ現場によっては「忙しくて予習できませんでした」みたいなことってあると思うんですけど、DIALOGUE+にはそれがないので、その真面目さに感謝している。なぜならそれは、僕やかなみ先生のモチベーションにかなり繋がってくるからなんですよ。それに、僕がやりたいと思っている「こういう音楽あったらいいな」とか「こういう踊りは他の人にはできないだろう」というものを実現するには、作り手もさることながら、やっぱりやり手にやる気があるかどうかが大事で。
沢口 うん。本当にそう。
田淵 逆にやる気がないと、どうしてもクリエイティブもそこに合わせてやるようになっていってしまうので。そこは定期的に、励まし合いながらというか……。
沢口 あははは(笑)。
田淵 かなみ先生には「難易度的に、容赦はしなくていい」と伝えていますし、「こちらがそこで手を緩めたら、DIALOGUE+の個性はなくなるので」という話もしています。
沢口 そうだ!「はじめてのかくめい!」で最初にレッスンした時、みんな踊りは上手じゃなかったけど(笑)、振付自体はちゃんと覚えてきていたんですよ。だから最初のレッスンから成立はしたし、私も「あ、このメンバーでこの感じならできるわ」と思った……という記憶はあります。逆にその時に「できませ~ん!(泣)」という感じだったら、難しかったかもしれないけど。
守屋 確かに……めそめそしてる子はいなかったです。
沢口 女の子のレッスンって今までにたくさんやってきましたけど、やっぱり振り入れ中に「無理ー!」「できなーい!」みたいに大きな声で言う子ってたまにいて。あれって周りのモチベーションを下げたりするじゃない?でもそれ、DIALOGUE+にはない!
田淵 自分が関わってもうすぐ結成7年になるけど、この姿勢はマジで忘れないでほしくて。逆に「はじめてのかくめい!」のレコーディングの時から絶対に「練習してきてくれてありがとう」と言うようにしてたんです。「やってくることって大事だし、そうすると一緒に仕事する人は喜びますよ」ということをなるべく早めに教えておきたかったから。
――『DIALOGUE+1』のインタビューでもおっしゃられていましたね。
田淵 そう。キャリアが長くなってくるとサボる子が出てきてもおかしくないとは思うんですけど、そうなるとこちらのやる気が下がってくるというのもあるので、「振付を作る時にも容赦しない」とか、ちゃんと練習してきたら僕が「よく練習してきてくれました」みたいなことをちゃんと言うことで……「あ、やらないと田淵は『良くない』と思っているんだ」と推測してもらうことが僕はすごく大事だと考えていて。そのためにはやはり一定の態度を取らなければ、とは考えています。
――ただ「忘れないでほしい」ということは、現状では皆さん練習して臨まれているわけですよね。
田淵 そうですね。レコーディングの時には本線はもちろんハモリも覚えてきてくれるので、それは本当に助かっていますし、これだけ長く続けているのにみんなまだちゃんと真面目にやっているというのはかなり奇跡的なことだと思うんです。TAKE1で明らかに練習してきていないことがわかると、「もっとこの人に曲書きたいな」となっても「でも、あのスタンスでしょ?」みたいに気持ちの面でどうしてもブレーキが掛かってしまうんですね。だからこそ、なんとかそれをサボらずにいてくれていることはすごくありがたいと感じているので、「偉そうにするけど感謝もする」ことは忘れないようにしたいと思っています。
――一方でメンバーの皆さんは、自主練もされるなど活動初期から積極的に取り組まれていたと思うのですが、より能動的になった瞬間みたいなものはあったのでしょうか?
守屋 そうですね、これはメンバーそれぞれで違うと思うんですけど……。
田淵 守屋単独だとどう?
守屋 私は「ユニットというものをやるとは思ってなかった」とお話しはしましたけど、憧れはずっとあって。元々アイドルが大好きだったのもあって「そういうことが自分でもできるなんて!」と思っていたから、私は最初から全部に対して「とりあえずがむしゃらに頑張ろう!」という気持ちで取り組んでいましたし、ずっと変わらずやる気はある状態でした。
田淵 じゃあ歌でも踊りでもいいんだけど、自分で自信を持てるようになってきたのは、いつくらいの時期から?
守屋 2023年くらいですね。私、それまではずっと自分の得意とするものとか見せ方みたいなものにずっと悩んでいまして。元々子役をやっていて芸歴が長いのもあって、結果が形になってわからないと満足しないタイプなんです。なのでライブ後とかにはエゴサをしてみんながたくさん書いてくれている感想を読むんですけど、そこにライブでの踊りや歌に対しての具体的なものがずっとなくて。「きょんちゃんは今日もかわいかった」みたいなものばかりだったんです。もちろん「かわいい」と言われることは嬉しいですけど、「自分の見せ方が間違っているのか力量が足りないのか、頑張ってはいるけどみんなにはあまり届いていないんだろうな」みたいな悩みがあったんですよ。
――それが、2023年頃まであった。
守屋 はい。多分みんな「『かわいい』って言ったら嬉しいでしょ?」という気持ちで言ってくれていたんだとは思うんですけど、他のメンバーが違うところを褒められているのを見て、それが羨ましかったんです。だからライブも毎回緊張して、歌い方なり色々考えながらやっていたんですけど……それが何も考えずに楽しくできるようになったのが2023年のZeppツアー中(“DIALOGUE+ Zepp Tour 2023 「Superday ─Latitude─」”)だったんです。あのツアーって、期間が結構長かったじゃないですか?なので毎公演色々なことを試して、その時できなかったことを次の公演でやって……ということができたのですごく成長できたと思っていますし、「これやってみようかな?」みたいに考えられる余裕のようなものも出てきて、あの頃から心からライブを楽しめるようになりました。
田淵 そうなると、「今日もかわいかった」ばかりだった感想はどうなったんですか?
守屋 「今日もかわいかった」は全員かわいいから変わらず言ってもらえますけど(笑)、それにプラスして「ダンスのこういうところが素敵」とか「歌のこういうところが良かった」という、具体的な感想をもらえるようになり始めました。その他にも、お渡し会みたいな直接お話できる機会でも、具体的な感想をたくさん言ってもらえるようになってきたんですよ。
田淵 かなみ先生が見ていて、それって成長の度合いと重なるところはあるんですか?
沢口 いや、実はずっと一緒にいるから、きょんに限らずみんな「あ、ここで変わったな」みたいな感覚がなくて。ふとした瞬間に「あれ?なんか踊り上手くなってない!?」みたいに気付くようなことのほうが多いかもしれません。
――あとはライブの本番でお客さんの前でのパフォーマンスを観て、改めて気付いたりも?
沢口 確かに。そういうことはありますね。でもそれもスキルの部分というよりは「あ、楽しそうになったな!」みたいなことかもしれません。
――それが守屋さんの場合は、2023年だった。
守屋 そうですね。自分のうたいたい歌がうたえるようになった、始まりの時期だと思います。それまではすごく悩んで、泣いたりしたこともありましたし。
田淵 それは、どういう時に?
守屋 特にミニアルバム『DREAMY-LOGUE』の時は、本当に悩んでいましたね。あの時は初めて色んなジャンルの歌を用意していただいたんですけど、「自分が苦手なものばっかり」という苦手意識もあったので「歌えない……」と思って。それに、歌割りがオーディションというのも声優としてのお仕事と同じ感覚がして、そこでも悩んでしまって。歌割りをもらえなかった時には「あぁ……まぁでも、歌えてなかったしなぁ」みたいな悔しさもあったして。
田淵 そうなんだ。逆に僕は『DREAMY-LOGUE』の頃には、リズムもピッチも全然だった「はじめてのかくめい!」の時と比べてキーの不安がなくなってきたうえに、むしろ「この子、こんな高いとこまで出るんだ!」という印象があったくらいだったんだけど。
――本人の感覚とは違って。
田淵 はい。でも今思えば、歌で個性が出てくるようになったのはもうちょっと後のことだったかも。確かに2022年くらいまでは、高いキーは出るようになったし歌の表現も良くなったけど、ライブとなると歌も表情も硬かった。その歌の良さがライブにも徐々に出てくるようになったのは、言っているように2023年だったな……って思い出してきた。
守屋 おっ!
田淵 で、2023年は「守屋亨香は歌で勝つんや」というところを打ち出していくにあたって結構象徴的な1年だったというのもあって、「この子が目立つところを」ということで「デネブとスピカ」の特殊イントロを作ったんですよ。それをお披露目したのは2024年の頭の“LIFE is EASY?”ですけど、そこで守屋の成長の証として「見ろ!こいつの歌を!」という意図のもと作った……ということもありましたね。
――それも、守屋さんの成長が見えたからこそ。
田淵 そうです。僕は頑張ったところは評価したいし、個性があるところは伸ばすべきだと思うので。それで今では、僕は守屋のことをメンバーの中ではボーカリストとして見ていまして。いつの間にかレコーディングでは「この子、歌っとけばどこか取れるでしょ」という感じになっているんです。オーディション振られてないところも曲流してたら勝手に歌うんですけど、それが良かったら守屋のソロにしたりします。時間もかからなくなったから、そのおかげで細かいところにもこだわれるし……あとキーも超高いし。
守屋 はい。ふふふ(笑)。
田淵 守屋の存在が、キー設定に結構関わってきているくらいなんです。「この超高い突出したソロは、多分守屋なら歌えるからこのキーでいい」みたいな。
――楽曲を制作するうえで、選択肢が増える。
田淵 そうですね。もちろん高音が出ることだけが偉いわけではないですけど、ここは守屋の強みとして主張していいところだとは思います。奇跡の声帯だから、売りにするべきです。
――そんななか、昨年の4月からはライブは7人体制で臨むことになりましたが、それにあたってのフォーメーションの入れ直しには苦労もあったのでは?
沢口 そうなんです。結構大変な作業で!(笑)。
守屋 そう!(笑)。
田淵 最初はだいぶ弱音を吐いてたらしいね。
沢口 そう(笑)。最初の数日、何曲目かまでは「わかんなーい!」みたいになったりしていたんですけど。
田淵 あ、出た。さっきのだ(笑)。
守屋 それで、かなみ先生に活を入れられたんですよ。「もう『できない』を言うのはやめよう」って。
沢口 確かに言ったかも。
守屋 「『できない』と言ってても始まらないから」ってガツンと言われて、それからはみんな本当に言わなくなりましたね。
沢口 フォーメーションを入れ直すと、例えば「右で踊っていたものが左に変わる」みたいに、振付がまるっきり逆の動きになるようなことが、全員に起こり得るんですよ。それで最初のうちは、みんなも慣れてないから「え!?これ私逆になるの!?」「え!やばい!」みたいになってて。で、「それをやられると進まないから、それ言うのやめよう」ってピシッと言ったら、そこから本当に言わなくなって。そういう瞬間に、成長は感じるかもしれないですね。しかもフォーメーションの修正自体も、慣れていくとかかる時間がどんどん短くなっていったので。
田淵 そうやって2025年に短期間で踊りを全部組み替えたことは、「やればできる」というものがあるという意味で、彼女たちの成長には大きかったと思うんですね。だからこそ去年1年を通じて音楽集団として、ライブ集団としてやるという覚悟ができたし、そのための実力も少なからずついてきた。それもあって今回の“Festa!!”をはじめ「ちゃんと外に出ていこう」という気持ちにもなれたわけなんですよ。そもそもライブが7人体制になるとなって……「8人組の踊りをすべて7人組にしよう」と判断した決定的な瞬間があって。
――それはいつ頃だったんですか?
田淵 2025年の頭です。「ライブが7人体制になったことによる悲しさを抱えたお客さんを感動させるためには、やるしかないやろ」って。それで「今から1曲ずつ組み替えていったら、何曲できるか?」を洗い出して、ツアー初日から全部逆算して作っていった……のを始めたのも、2025年の頭だったよね?その頃はまだ宮原もライブに出てはいたけど、次のツアーに間に合わせるために。
守屋 はい。
田淵 ただ、それくらい緻密に考えていっても「誰かが休んだりしたら間に合わないな」というくらいギリギリだったんです。だから、弱音を吐きたくなる気持ちもよくわかる。でもそこでかなみ先生が活を入れてくれたことで「何をぅ!」と頑張ってついていって、結果「やればできる」となったから“カクノゴトキロックンロール!”のツアーが成立したんですよ。
沢口 うん。
田淵 僕もずっとヒヤヒヤで、「間に合わなければ8人版を残してもいい」とも言っていたんですけど、取り組んでいくなかで「全部やるんだ!」みたいにこの子たちの目の色が変わっていって……とユニットの歴史の中でもただの「声優さんが歌って踊る」のちょっと先に行きかけるための大きな一歩になったと思います。大変だったと思うんですけど、よくぞやってくれました。
――そういった成長を踏まえて現在のライブのセットリストは作られているのだと思うのですが、今田淵さんと沢口さんはどんな意見交換をされてライブ作りをされているのでしょうか?
田淵 まず最初に連携を取るのは、曲の繋ぎに関するところなんですね。僕は「音楽で90分飽きさせない」ためには繋ぎや曲順も大事だと思っているんですけど、全曲踊りがあるということは、繋ぐ際に踊りを少しマイナーチェンジする必要があるから。
――確かに、曲ごとに終わりの立ち位置も最初の立ち位置も違いますし。
田淵 そうなんです。その話し合いのなかで、かなみ先生はできないことはちゃんと「できない」と言ってくれるので、その場合はプランBに移行する……みたいなことを結構早い段階からやっていて。
沢口 それが決まったらまず1回通してやってみて、また田淵さんから追加でリクエストがあった時には、それを受けてまた見せ方を提案して……というように相談しながら進めていっているんですよ。
――しかもライブの頻度も多いので、同時並行的に様々なパターンをやっていく必要があるのでは?
田淵 だからこそさっき言ったように、逆算でセットリストを作らないといけないんですよ。それこそ以前の飯塚との対談で「4つのライブが同時に動いてる」みたいな話がありましたけど、それによってクオリティが下がることが僕は嫌なので、先にやりたがるんですよね。
――基本的には、どれくらいの期間を取るようにされているんですか?
田淵 ライブの1~2ヵ月くらい前には基本決めていますし、セットリストだけなら半年前から決めてるというのもあります。1~2ヵ月くらい前までに繋ぎを作っておけばいつでも通すことが可能になるから、ブラッシュアップができる。逆にその段階で僕がサボって、例えば2週間前とかに渡してしまったら……多分対応できるんでしょうけどクオリティも下がるし、やっていて楽しくないだろうし、やるメンバーのメンタルにも来ると思うんですよね。なので、なるべく巻いて作ろうとしています。ブラッシュアップする時間は、いくらあってもいいはずだから。
――そういう意味でも、「先回りしてスケジュールを作る必要がある」と認識できたことは大きかったわけですね。
田淵 そうなんです。やっぱり総じて「どうやったらみんなのモチベーションが上がるかな?」ということをリサーチして盛り込むことができれば全体のチーム力が上がるし、みんなが楽しく続けられるかどうかってユニットの寿命には大きく関わってくるんですね。だから、同じコーチ陣としてかなみ先生のモチベーションが高いというのは結構大事だし、支えみたいなところがあるので……やっぱりご機嫌を伺っちゃう(笑)。
沢口 あはは!(笑)。
――先ほどの活を入れられたお話も、モチベーションの高さ故でしょうし。
守屋 そうですよ!なのでもう「言われなくなったら終わり」だと思ってます。
沢口 確かに。「なんか泣き言言ってんなぁ……じゃあ、別に全曲フォーメーション直さなくてもいいんじゃない?」ってなっちゃうもんね(笑)。
田淵 そうそう。
守屋 そうなったらもう終わりですから。親身になってくれている証拠ですからね。
沢口 そうだね。私もみんなに対して「やってくれる」っていう信頼があるから言うわけだし。あと最近は、課題みたいなものも設定しますよね?「今回はこれが達成できるか、ライブが終わってから私たちで判断しよう」みたいなものを。
田淵 ここ1年くらいは、そうですね。ただ、僕は踊りに関しては素人だから、それにあたって「こういうブラッシュアップってできるんですか?」とかなみ先生に聞いていますし、先生がそれを踊りの練習に反映してくれたりもしているんですよ。
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