INTERVIEW
2026.04.14
2026年4月から放送がスタートした、TVアニメ『ゴーストコンサート : missing Songs』。『戦姫絶唱シンフォギア』に続く“ソングバトルシリーズ”の2作目 にあたるオリジナルアニメ作品で、作中に登場する音楽すべてを音楽制作ブランド・Elements Gardenが制作していることでも話題を呼んでいる。今回は、そんな本作のOP主題歌「業魂REQUIEMER」の作詞・作曲に加え本作の原案も手掛ける上松範康と、編曲を担当する堀川大翼の対談インタビューを敢行。本作がアニメ主題歌初担当となる堀川の起用の裏側や、OP主題歌をはじめとした楽曲の制作プロセスとそのねらいを中心に、たっぷり語ってもらった。
INTERVIEW & TEXT BY 須永兼次
――まずは上松さんに、改めてこの『ゴーストコンサート』という作品の着想についてお聞きできますでしょうか。
上松範康 まず、自分自身が色々なアーティストさんやボーカリストさんに楽曲提供をしていくなかで、「今生きている地球人じゃあちょっと足りないな」と思ったんですね(笑)。それで、過去に名前を馳せた……“偉人”とカテゴライズさせてもらっているんですけど、その人たちがアーティストやボーカリストに見えて。「彼ら・彼女らが歌ったり表現したりしたら、その想いが歌に宿るんじゃないか?」と、ぼんやり考えていたものがまず根本にあったんです。それをアリア・エンターテインメント(※注:Elements Gardenが所属する音楽制作会社)の中の原作を作るチームに話して、作品に落とし込むことになったのが初期段階でした。ただ、プロジェクトが展開するなかで、ライブが中止になってしまったりもしまして……。
――コロナ禍の直撃も受けましたし。
上松 そうなんです。そんななか、『涼宮ハルヒの憂鬱』などで盟友だったハートカンパニーの斎藤 滋さんが「アニメ化に向けて動いてみる」と言ってくださったことがきっかけでどんどんと広がって今に至ります。
――やはり、アニメ化が実現するとなった時の感慨は大きかったですか?
上松 やっぱり嬉しさはありましたね。ただ同時に、今まで『シンフォギア』をはじめ手掛けてきた歌モノの作品とかぶるようなニュアンスでの音楽表現はしてほしくないな、という想いもありまして。なので“新しいソングバトル”というものをKADOKAWAさんやアニメーション制作のENGIさん、あとは神保(昌登)監督に投げかけさせていただき、何度か話し合った末に行き着いた答えが“憑依鎮魂歌”という形だったんです。“合体曲”と言われる合体した歌であり、なおかつ1曲ごとのソロになっても聴き応えのある曲になる。そういったもので新たな『ソングバトル』の2作目 をやっていけないか?という結論になりました。
――その「過去の作品とかぶるニュアンスでの音楽表現をしてほしくないという」ところも、堀川さんや近藤世真さんといった若い作家陣を起用された一因だったんですか?
上松 いや、実は逆で、僕は最初「手練れじゃないと難しいんじゃないか?」と(藤田)淳平に相談したんです。でも淳平が「新しい才能が育っているので、起用できませんか?」と提案してくれたことで、その3人がメインのチームになりました。
――そして堀川さんは、今回がアニメ主題歌の担当が初となります。
堀川大翼 やっぱり、自分が作家を志した頃からアニメのOP主題歌を担当することは夢の1つだったので、担当できると知った時はすごく嬉しかったです。ただ、実際制作に着手した時に、その“アニメ主題歌”という看板の大きさを実感しまして。「これにちゃんと応えられるだろうか?」という不安もずっとあったんですけど、そのプレッシャーに負けないよう強い気持ちを持つようにはしていました。上松さんにすごく強い曲を上げていただいても、アレンジが弱くて曲を台無しにしてしまったら最悪なので。
――そうして制作されていった楽曲が、今回のOP主題歌「業魂REQUIEMER」です。この曲で堀川さんが編曲を担当する決め手になったのも、先ほどのお話同様に藤田さんの提言がきっかけだったのでしょうか?
上松 そうですね。わがままですけど、とにかく自分は「感覚的に追いつかない才能であれば、申し訳ないけどちょっと……」という立ち位置なんですけど、そのなかでも淳平が「堀川は良いと思います」と言ってくれて。実際上がってきたものにも本当にびっくりしましたね。
――どんなところに驚かれたのでしょう?
上松 「今の時代に合ったサウンド感」というものにちゃんとなっていたんです。この曲は、最近では珍しく僕が自分でストリングスまで書いたんですけど、それは今回は「あえて“2000年代初期の上松のメロディ”みたいなものを、自分なりにオマージュしてみたい」という想いがあったから。周りのスタッフたちもみんな「今それをやったら、新しく聴こえるんじゃないか?」と言って薦めてくれたのもあって、今まで自分が作ってきたものから逃げずにちゃんとオマージュすることにしたんです。それを堀川は、そのストリングスをきれいに、しかも令和感のあるサウンドにアレンジしてくれたんですよ。僕も「かっこいいじゃん」と思ったし、周りはもっと興奮していました。そうだ、堀川は最初の音源を聴いてどう思ったの?
堀川 まず「うわ、上松さんの色濃っ!」と思いました。
上松 あははは!(笑)。血が濃かったんだ。
堀川 はい。今までにも上松さんが作られた曲のアレンジ自体は何曲かさせていただきましたけど、主題歌や表題にあたるものではなかったので、とんでもない濃さを感じたんです。それに、元々のコンセプトについてのお話も聞いてはいたので、「まさしく!」とも思いました。
上松 それを堀川が、2000年代に寄せなかったのが良かったんですよ。それはすごくリスペクトできるところ。良い意味で、想像を超えてきてくれたという感じがしました。
堀川 良かったです……ただ、「上松さんの曲で主題歌」ということでテンポの速い曲が来ると想像していたので、そこは意表を突かれまして。
上松 ふふふ(笑)。
堀川 16分の音符もあるし疾走感もあるのに、テンポ自体はゆっくりめ。なので元々の想定が一旦全部崩れた瞬間はあったんですけど、転調はすごく多いしストリングスも1st・2ndで入れていただいていて、そのラインもすごく主張が強かったのである程度アレンジの方向性は見えていたんですね。だけど、やっぱり意外性を持たせたい。「自分がやる意味」としては新人としての期待値みたいな部分が大きいと思っていたので、今回は「今までエレガがやってこなかったことをやろう」という気持ちはありました。“エレガらしさ”は上松さんのメロディや歌詞で完成されているので、「ある程度アレンジでは何をやっても成立するだろう」という気持ちもあって。
上松 それがさっき言った、令和感のあるストリングスに繋がっていったのかもね。
堀川 はい。メロディとストリングスのラインが決まっている以上「他で何かをやる」という意識はあったので、そこに令和らしさみたいなものが出ているのかもしれません。
上松 ただ、さっき堀川が言っていたようにテンポがゆっくりに感じたというのはそのとおりで……やっぱりあの頃って、売れたいとか目立ちたいみたいな色んな想いがあって、人の領域じゃないテンポで作り始めていたんですね(笑)。
――凄まじいテンポに凄まじいストリングス、というような。
上松 そうそう。だけど今はそれを削ぎ落として……あとは歳を重ねたのもあってか、僕の中ではあれが心地良いテンポだったし、芹亜というキャラクターが死なないギリギリのテンポだった。それがまず1つ、この曲を作るなかで大事にしたところです。ただ「転調が超多い」って言ってたけど、僕は遠慮せずに開放したらあれがデフォだからね?(笑)。
堀川 そうだったんですね……(笑)。
上松 サビの中での2回転調も、例えば「Synchrogazer」とか、最近だと「ゼッタイ歌姫宣言ッ!」でもやっていたし。やっぱりそういうものが自分らしさだったなと思ったので、そこは取り入れたかった要素でした。
――しかもそのうえで、芹亜が歌ってもキャラクター的に成立するという、その両方を狙われて。
上松 そうですね。これは監督はじめアニメのチームがそうさせてくれました。やっぱり「AIが音楽を司る世界」とか「歌を取り戻したい」といった神保監督の中から湧き出てきた内容がすごく僕に刺さって、そこの中でオープニングを書くとなった時に「この作品に失礼のないよう、自分を出すしかない」という感覚にしてくださったんだと思います。だからこそ、とんでもないテンポでガンガン行くような曲は、「『ゴーストコンサート』ではない」と思って。この先も芹亜が絡んでくる歌はたくさんあるし、それを新人の子に歌ってもらうというところも含めて、監督はじめチームの相当な「これを作りたい!」という意志が強く見えたので、自然とそういう感覚になりましたね。
――そして先ほど堀川さんは「自分がやる意義を」というものをアレンジに込められたというお話もされていましたが、実際どのように込められたんですか?
堀川 まずイントロの展開から今までのエレガとは違う感じにしたかったので、あまりエレガにはなかったモダンなサウンドを組み込んでいったんです。例えばパーカッションも含めて、ダンスミュージックが由来のサウンドを使ってみたり……特にダンスミュージックは発展の速いジャンルなので、時代感はすごく最前線に行くと思うんです。それに、自分がリズムに結構執着するタイプなので、自分自身でベースを弾いたりもして。そういうところにも結構表れているような気がします。
上松 いやぁ、良い心意気だなぁ……昔「エレガにいるとエレガを超えられない」と言って辞めていったメンバーがいてさ。その子のことは今でも大好きだから残念ではあったけど、その理由には納得できたんだよね。だけど、今堀川が言った「エレガにいながらエレガを超えようとする」という感じも新しくて面白いなと思ったし、良いことだとも思います。
――そういった取り組みもされつつ楽曲が制作されていくなかで、上松さんからのリテイクなどはあったのでしょうか?
上松 いや、それに関しては淳平にも現場管理の面で育ってほしいというのもあって、直接ではなく『ゴーストコンサート』の音楽の要である彼に要望を言っていくことにしていたんですよ。あの時って、淳平とどんなやり取りがあったの?
堀川 芹亜のソロ曲がバンドサウンドなので、初稿はそれを踏襲する形でもう少しバンドサウンド寄りでご提案したんです。そうしたら「オープニングとしては、もっと欲しい」となりまして、「じゃあもっと、エレクトロを出してみよう」とか「ストリングスをもっと立たせていいよ」みたいなやり取りをしていました。
上松 そういう指示があったんだ。
堀川 はい。藤田さんは的確に言語化してくださるので、この案件以外でも「確かに!」と思わせていただくことが多いんです。
上松 となると僕はもしかしたら、初稿を聴いていないのかも。一旦淳平で弾いたのかもしれないね。
――それを経て上がってきたものを聴いて、上松さんはどんな印象を持たれましたか?
上松 さっきも言ったように、聴き進めるうちに今の時代にも『ゴーストコンサート』にも合っているなと感じて。きっと「ここだけは譲れないんです!」みたいな堀川の変な“主張”みたいなものが強すぎて『ゴーストコンサート』を壊すようなものだったら、NGを出していたと思うんです。でも、ちゃんと作品を持ったうえで個性を出そうとしているのが感じられたんですよ。
堀川 その「自分らしさを出す」みたいなことは、実はあまり考えていないことでして。自分の中の「これが良い・悪い」を判断する琴線みたいなものが自分らしさになっているなと思っているんです。
――その価値基準や判断基準みたいなものが積み重なって、堀川さんらしさを構成しているような感覚?
堀川 そんなイメージです。なので自分が「この作品に必要なものだ」と考えたものを足していった結果が“自分らしさ”として残っている……ような感覚ですね。
上松 淳平との間では何往復くらいやり取りしたの?
堀川 そうですね……たしか7~8稿くらいまではやったような気がします。
上松 そんなに!確かに僕、淳平に「ここは大事だぞ~」って何度も発破をかけてはいたけど……(笑)。僕のところには、むしろ一発だけだった気がする。「これです。どう思います?」と言われて、絵を見ながら3回くらいじっくり聴いて、率直に「うん!良いんじゃない?」と思いました。
――続いては、そうして作られていった楽曲のレコーディングについてお聞きしたいのですが。
堀川 レコーディングには自分が立ち会いました。
上松 僕は今回は立ち会いませんでした。歌のレコーディングって、自分の中では編曲に属するものだと思っているので、あまり立ち会わないようにしているんです。サウンドが出来上がったということはもう作曲家の手は離れているのだから、編曲家や現場のプロデューサーたちには僕の意見は雑音でしかないので。
――ちなみに、以前芹亜役の藤寺美徳さんのインタビューでお聞きしたのですが、堀川さんが事前に楽器ごとの音のデータを送られていたそうですね。
堀川 あはは(笑)。そうなんですよ。今回はご一緒するのが初めてということもあってまずキーチェックをしまして。その時点で既にお上手ではあったんですけど、一部リズムの乗り方などについてアドバイスをしたところ、「オケのどういうところを聴いたら、リズムを捉えられますか?」という質問をいただいたんです。そこで、ステムデータのリズムトラックを流しながら色々とお話をした結果、リズムのトラックだけを書き出してお渡ししまして(笑)。本番のレコーディングではそれを聴いてきてくださったこともあって、より推進力のあるすごく良い歌になりました。
上松 そういう話を聞いていると、1人1人の気合いを感じますよね。この曲と、この作品に懸ける想いみたいなものが、みんな高い状態でやれているように思います。
堀川 実際レコーディングでも、監督たちと一緒に「芹亜のキャラクター性みたいなものをどう定めていくか?」についてはすごく話し合われていましたね。たしかキーチェック段階ではまだアフレコ前で、本番のレコーディングも第1話のアフレコをしたかどうかくらいの頃だったと思うんですね。なのでその芹亜のキャラクター性について意見を交わすのはもちろん、歌い上げすぎると10代という年相応感というか“実在感”が薄れていってしまうので、そこのケアもしつつ議論を重ねて今の芹亜像ができていきました。
――確かに、上手く歌い上げすぎてしまうと芹亜というキャラクター像からは離れてしまいますね。
堀川 そうなんです。特にこの作品のテイスト的に「歌を歌うことを知らずに育ってきている」子なので、そもそも上手いはずがないじゃないですか?そういう意味でも「歌い上げすぎるとちょっと違うかもね」という感じでした。
――ちなみに、神保監督の熱意の強さについても度々話に上がっていますが、そういった監督からの意向みたいなものはレコーディング中にもありましたか?
堀川 はい。すごくこだわりの強い方なので、オープニングに限らず「いや、ここはキャラ的に少し違うんですよ 」ということはありました。
上松 あ、あったんだ。
堀川 はい。なので、絵コンテを見せていただいたりしながら非常に細かくオーダーをいただきまして。こちらからも「今の聴こえ方だと、どう感じられていますか?」みたいに細かくヒアリングもしながら進めさせていただいたんです。その結果、歌を録った後にアニメの演出がちょっと変わった、みたいなこともあるようなんですよ。もちろん歌われる演者さんもキャラクターの捉え方について監督とお話されていたので、本当に一体となって作っていくという現場でしたね。
上松 良いね。やっぱり歌や音楽の現場にも、アニメの監督って立ち会うべきだと思うんですよ。だって監督は、それを用いて映像を作るわけだから。
堀川 神保監督は、レコーディングに毎回いらっしゃっていましたよ。
上松 素晴らしい……!
――そしてOP主題歌はもちろん、憑依鎮魂歌も本作のカギの1つだと思います。そういった楽曲制作時には、お二人はどんなことを大事に取り組まれましたか?
堀川 キャラクターがどういう心情を持ってその歌の場面を迎えて、どの感情を歌うのかを取っ掛かりに考えていました。特に憑依鎮魂歌というものは、劇中で芹亜が言っているとおり対話に近いもののように思っていまして。1分半~2分といった短い間で対立の状態からどう収束していくのかが大事になってくるんですよ。なので、一緒に歌うグレート ゴーストのバックボーンも踏まえつつ、それを芹亜がどう受けるかまで考えて、ソロ曲も憑依鎮魂歌も作っていきまして……どの曲でも、その感情のつけ方みたいなものには気をつけてメロディやアレンジを組み立てています。
――一方上松さんは、早くも第1話の憑依鎮魂歌「RES∞NALIST」にて、作詞と作曲に共作の形でクレジットされています。
上松 そうですね。実はこの曲、最初は全部自分で書いていたんです。そうしようとした理由は2つあったんですが、まず1つは神保監督とのやり取りの中で非常に熱のこもった長文をいただきまして。「これを人に投げるのは無理だ」と思って、自分が監督の作りたい世界を誰よりもラーニングしようと考えたこと。そしてもう1つは、第1話で流れるということで「このアニメはどういうもので、どう勢いを出さなきゃいけないところがあって……」という説明が必要になるからなんです。ただ、曲を提出したらどうやら監督のイメージとは違っていたようで。
――そうだったんですか?
上松 はい。それはなぜかというと、神保監督が目指すものと自分のメロディの相性が、多分そんなに良くないからなんですよ。僕のメロディは空間を占拠するようなすごく“主張する”ものなんですけど、この作品をチーム感を持って作っていこうとすると主張が強すぎる。なのでこの作品の中では、自分で自分のことをちょっと異物のように捉えて、引くべき時は引くよう決めたんです。そこで生きてくるのが、藤田淳平なんですよ。彼には作品全体を考える位置に君臨してもらわなければいけないので、僕が「多分作れない」と判断したところで、一度彼に全部託したんですね。でもその時「監督が思う『1話に合う』というところは残してもらって構わない」とも伝えたら、サビだけは残りまして。
――それで現在のようなクレジットになっているんですね。
上松 はい。逆にA・Bメロは淳平が作り直してハマっていったんですけど……ここですごく大事だったのは、「“憑依鎮魂歌”というものは何か?」が、最初だからみんなわからないということ。だからその指標となる曲にするために手を尽くさなければいけなかった、といいますか。
――観る側の共通認識になるだけではなく、制作上でもマイルストーンにならなければいけない。
上松 そうそう。だから「チーム戦でなんとかしなきゃ」というところだったので、結果としてクレジットも豪華な感じになったんですよね。……あ、今の話だけだと「もう上松曲は出てこないのでは?」と思われてしまうかもしれませんけど、まだ僕が作った曲も出てきます(笑)。それこそ、その曲も堀川に編曲を担当してもらっていまして。後半に出てくる曲なので、その段階ではもう監督の言うことがスッと落とし込めて「ズレないだろうな」という安心感のもと作れた気がしたんですけど、堀川もそうだった?
堀川 そうですね。ただ後半になると物語の展開によって前半とは状況などが変化しているところもあるので、それを踏まえて作るという意味で、後半に出てくる楽曲なりの難しさみたいなものはありました。
――そんなこの作品のテーマになぞらえてお聞きします。昨今、現実でも生成AIによる楽曲が世に出てきていますが、お二人はそういったものを今どう捉えられていますか?というのも今回のインタビューにあたって、以前上松さんがラジオ番組で「自分が今までに作ってきた楽曲を取り込んだ“AI上松範康”を作って、それと戦って勝ちたい」と話されていたことを思い出したので、今の考えをお聞きしたくて。
上松 これはまず、堀川の話から聞いてみたいな。この前もエレガ会議(※注:Elements Gardenの作家陣による定例会議)でも議論したし。
堀川 そうですね。エレガの中でも「AIとどう向き合っていくか?」という話は度々出ていまして。実際、例えば仮歌用のシンセボーカルみたいなもののように、制作の中であくまでも補助としてAIを活用していくということは、業界全体のトレンドとして存在するんです。ただ“生成AIによる曲”となると……僕も「戦って勝ちたいタイプ」です(笑)。
――上松さんと同じように。
堀川 はい。確かに「うわ、こんな曲作れるんだ!」という生成AIが出てきたら面白いなとは思うんですけど、同時に「自分には何ができるか?」とも思うというか……僕はどんどん新しい音楽を作っていきたいと考えるタイプの人間なので、そういう最前線の技術自体は知ったうえで、勝っていける作家になっていきたいです。
上松 自分は「自分としての、AIの音楽」と「後進教育としてのAI」の2つについて考えていまして。まず自分に関しては、いよいよ自分にとって得でしかない時代になったなと感じているんですね。それはなぜかと言うと、自分が20何年間ゼロから作ってきたから、これから作るものに対して信頼しかないと思うからなんです。だから、これからデジタルで音楽が量産されていくかもしれない世界の中では、「純粋に、僕が譜面だけで書きました」というものの価値って高くなると思うんですよ。そこはエレガ会議でもみんなに言っていることではありますね。ただもう1つ、後進教育という部分に関しては考えることが多くて……。
――どんなことが大事になってくると思われていますか?
上松 「もし今自分が新人だったら、何に気をつけるべきか?」を考えると、まず創作意欲がなくなる恐れがある。これを止めなきゃいけないので、第一に「音楽を作っていくことに、ポジティブになれ」と言っています。なぜならAIは結局ツールでありおもちゃであるし、シンギュラリティが起きた後のことも誰にもわからないから。それを前提に、今度は作る時に何が価値になるかを考えると、「人間は過程に恋をする」ということを頭に置いておく必要があるんです。
――なるほど。過程に。
上松 はい。とある会社のAI開発者の方が、「AIで作る音楽に、誰が見向きをするの?」と言っていたのを聞きまして。開発者自身がそう言うくらい、AIで出力された音楽には魅力がないんですよ。それは、ボタン1つで出てきたものにドラマがないから。だからこそ自分は新人に対して、自分をもっと出すようにと言っているんです。例えば許可をもらってプロモーションのために制作過程を発信したり、監督との話し合いを表に出したりというように制作中のドラマを見せるところに、初めて音楽の価値が生まれる。それは、AIには無理なことなんですよね。だから、技術や知識に溺れず、もっとポジティブに発信を強めるべき……というのが今の答えですかね。ただ、これもあくまでも“今の”答えですよ?今の世の中どこで何が起こるかわからないので、もしかしたら1ヵ月後には変わっているかもしれないから(笑)。
堀川 あはは(笑)。僕自身も元々楽観主義なところもありますし、生成AIの音楽ができたからといって、自分の「音楽を作るのが楽しい」という気持ちは変わらないんですよ。むしろ「生成AIにこれができる!」となったら、自分にもまだできることがよりはっきり認知できるような気がするんです。最近気づいたのが、個々人によって変わる演奏のグルーヴも、AIには出せないものの1つだと思ったんですよね。だからそういう意味もあって、自分のギターやベースの演奏についてはより「やってますよ」とアピールしていこうと思っています。
上松 良いね!どんどん動画とか上げていったら良いと思うよ。
――では最後に、本作や作中の音楽について、読者の皆さんに楽しみにしていてほしいポイントなどをお教えください。
堀川 先ほどから度々申し上げてもいるんですが、「そのキャラクターがなぜそのメロディを、どういう感情で歌うのか?」というのはアニメの中の音楽における価値の1つだと思うので、そこにはぜひ注目してほしいですね。それに、憑依鎮魂歌はメロディラインが2つ同時に鳴るのできっと1回では全てを聴き取りきれないでしょうし、それだけではなくソロ曲というものもあるんです。「ソロ曲のこのフレーズが、合体曲にも使われている!」という発見もできる、今までになかった楽しみ方ができるアニメだと思うので、ぜひそういった部分にも注目していただけたら嬉しいです。
上松 自分もアニメを観たんですけど、いつの間にか制作側ではなくて“ファン”になっている気がしていまして(笑)。やっぱりこの「AIで音楽を作っていて、音楽家のいない世界」が、ここからどうなるんだろう?みたいなところに強烈に惹かれたんですよ。実際観ていて「やっぱりすごい人はいるんだな」と思うなかで、そういうふうに僕がやってきたものとはまったく違うものを形にした、神保監督の凄さも熱意の強さも感じますし……だから、何よりまず「面白いよ、これ!」と伝えたいですね。実験的だし、『ソングバトル』の新しい答えにも出会える。そんなチーム『ゴーストコンサート』が作った答えを、ぜひみんなに見届けてもらえたら嬉しいです。
●リリース情報
オープニング主題歌
「業魂REQUIEMER」
4月6日デジタルリリース

歌:相葉芹亜(CV:藤寺美徳)
作詞・作曲:上松範康(Elements Garden)
編曲:堀川大翼(Elements Garden)
配信リンクはこちら
https://nex-tone.link/WVb9DzMR3
歌:オデッセウス(CV.寿美菜子)
作詞:Spirit Garden
作曲・編曲:藤田淳平(Elements Garden)
配信リンクはこちら
https://nex-tone.link/WVb9DzMR3
●作品情報
ゴーストコンサート : missingSongs

<INTRODUCTION>
2045年、歌が禁じられた世界――。
音楽を創造し、奏でることは人間の代わりに
音楽アプリ《MiucS》がその全てを担っていた。
少女・相葉芹亜は友人たちと出かけた先で、
禁じられているはずの歌声を耳にする。
歌声の先で芹亜が目にしたのは、一人のゴーストだった。
この世の外から顕れた偉人――”グレートゴースト”。
霊能力者集団――”TERA”。
そして響く――”憑依鎮魂歌”。
「これは、私がゴーストになるまでの物語。」
【STAFF】
原案:上松範康
原作:UNISON/Project MiucS
監督・シリーズ構成:神保昌登
キャラクターデザイン:宇井川真明
美術監督:草間徹也 里見篤
美術設定:高橋武之 柿本晋吾
色彩設計:小谷和樹
撮影監督:佐藤敦
オフライン編集:近藤勇二
音響監督:土屋雅紀
音響効果:上野励
音楽:Elements Garden (藤田淳平/近藤世真/堀川大翼)
音楽制作:Elements Garden/Heart Company
アニメーション制作:ENGI
製作:「ゴーストコンサート : missing Songs」製作委員会
【CAST】
相葉芹亜:藤寺美徳
西園寺 楓:小鹿なお
村山朱莉:櫻井みゆき
市川瑠衣:安 雪璃
青木凛空:佐藤聡美
雪庭:日野 聡
葉哲:入野自由
MiucS(ミウクス):陶山恵実里
クレオパトラ:日高里菜
オデッセウス:寿 美菜子
©2026 Project MiucS / 「ゴーストコンサート : missing Songs」製作委員会
TVアニメ「ゴーストコンサート : missing Songs」公式サイト
https://ghostconcert-anime.com/
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