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INTERVIEW

2026.04.14

原点回帰のような1曲に――紫 今、TVアニメ『左ききのエレン』エンディングテーマ「New Walk」リリースインタビュー

原点回帰のような1曲に――紫 今、TVアニメ『左ききのエレン』エンディングテーマ「New Walk」リリースインタビュー

アニメ、ボカロ、K-POP、そして両親から受け継いだゴスペルとアフリカンミュージック――そんな独自のルーツを持つシンガーソングライター・紫 今が、TVアニメ『左ききのエレン』EDテーマ「New Walk」をデジタルリリース。「世界に私ひとりだけの組み合わせ」と語る音楽的バックグラウンドから生まれた本作は、天才と凡人の狭間で揺れるエレンの生き様と、23歳の紫 今自身の葛藤を重ねた、キャリアのマイルストーンとなる1曲だ。

INTERVIEW & TEXT BY 阿部美香
PHOTOGRAPHY BY 堀内彩香

アニメと共に育った、紫 今の“好き”の原点

――リスアニ!には初登場の紫 今さん。リスアニ!はご存知でした?

紫 今 もちろんです!私もアニメ好きですし、リスアニ!さんは有名ですから!

――安心しました(笑)。どんなアニメがお好きですか?

紫 今 世代的にいうと、『ノーゲーム・ノーライフ』や『サーバント×サービス』『終わりのセラフ』、あとは『繰繰れ! コックリさん』に『ばらかもん』に……有名なアニメだと『進撃の巨人』も。小学校の高学年から中学生の頃は、リアルタイムでやっていたアニメはほぼ全部観ていました。“ニコニコ超会議”や“コミックマーケット”にも通っていて、当時SNSでも「始発で行きました」みたいにつぶやいたりもしていました(笑)。

――意外ですね。活動を拝見すると、音楽にどっぷりなアーティストさんのイメージが……。

紫 今 いえいえ、それだけじゃないです(笑)。それこそ当時はアニソンにもどっぷりだったので、観ているアニメのOP・ED曲は全部好きでたくさんダウンロードして聴いてました。『ラブライブ!』とか。
――えっ、『ラブライブ!』ですか。

紫 今 はい。推しは、(矢澤)にこちゃんです(笑)。好きなアニソンもたくさんあります。「killy killy JOKER」(※分島花音/TVアニメ『selector infected WIXOSS』OPテーマ)とか、TVアニメ『メカクシティアクターズ』のOP主題歌「daze」(※じん feat.メイリア from GARNiDELiA)とED主題歌の「days」(※じん feat.Lia)とか、TVアニメ『ノーゲーム・ノーライフ』で鈴木このみさんが歌っていた「This game」も。TVアニメ『ギルティクラウン』のsupercellさんの「My Dearest」なんかもよく歌ってました。最近は、配信で有名な作品を観るくらいで、そこまで詳しくはなくなってしまいましたけど……。

――今まで影響を受けた音楽家、好きな音楽家として、ピノキオピーさん、ミキトPさん、れるりりさんなどのボカロPを挙げられることもありますね。

紫 今 そうですね。あと、今お名前が挙がっていない方だと、HoneyWorksさん!めちゃめちゃドンピシャ世代なんです、私。

――それも意外!

紫 今 人生で自分のお金で行った最初のライブもHoneyWorksさんでしたし、スマホのパスワードも好きなカップルに関係のある数字にしてたり……影響受けすぎですよね(笑)。去年の末は同じイベントに出ていたのですが、出演日がCHiCO with HoneyWorksさんと同じだったのにご挨拶できなかったのがすごく残念で。実は昔、HoneyWorksさんがやっていた歌い手オーディションに応募したこともあります。もしそこで受かっていたら、今の紫 今はいなかったかもですね(笑)。

多文化をミックスした唯一無二の音楽的個性の源泉

――今さんに影響を与えた音楽というと、他には?

紫 今 これも世代的なものですけど、K-POPですね。小中学生でアニメとボカロ、高校生でK-POPみたいな順番です。好きなK-POPグループもたくさんあるんですけど、一番は?と聞かれたらIZ*ONEですね。

――J-POPだと?

紫 今 コンサートで色々な方の歌を聴いてきましたが、歌の素晴らしさという意味だと玉置浩二さんは別格です。自分は決してそこに近づけないから。あと椎名林檎さんと宇多田ヒカルさん、aikoさんや相対性理論は、中学時代にインターネットを通じて出会いました。

――そして、今さんの一番の音楽的ルーツといえば、ブラックミュージックがありますよね。

紫 今 そうだと思います。母がゴスペルを歌っていて、父はアフリカ民族楽器のジャンベ奏者なので、ジャズやアフリカンミュージックも私のルーツにありますね。そこから洋楽も好きになりました。

――ポピュラーミュージック以外だと?

紫 今 ミュージカルですね。母が好きなので、劇団四季の『ライオンキング』や『ウィキッド』にも連れていってくれたし、『ミス・サイゴン』の来日公演にも行きました。『ラ・ラ・ランド』とかのミュージカル映画も好きですね。『ハイスクール・ミュージカル』世代だし、ディズニー系のミュージカルも。

――ご両親が音楽家だった影響は、やはり大きいですよね。

紫 今 大きいですね。両親のルーツであるゴスペルとアフリカミュージックを除いたら、多分みんなと同じ音楽を辿っているんですけど、私の場合はそこが違っていて。子供の頃から、アフリカの歌を父がジャンベ叩いて、母が歌って、私もマラカス振って……と家庭内セッションしていたので(笑)。なのでいつかアフリカに行きたいと思っています。

――ボカロ音楽もK-POPもブラックミュージックも、すべてが今さんの血となり肉となっているわけですね。

紫 今 そうですね。そんな組み合わせは、世界に私1人だけなんじゃないかな?(笑)。それが自分の歌い方だったり、曲作りにもすごく影響を与えていると思います。

作品と自己の共鳴から生まれるアニメ主題歌への向き合い方

――リスアニ!読者には、今さんの既存曲では「学級日誌」(TVアニメ『青の祓魔師 島根啓明結社篇』EDテーマ)や「メンタルレンタル」(TVアニメ『勇者のクズ』EDテーマ)がお馴染みかと思います。アニメ主題歌を担当されるのは、アニメ好きとしては嬉しいことですか?

紫 今 すごく嬉しいです! 小さい頃から夢でしたし、私はアニメを神格化してるところがあって。昔、アニメイトでHoneyWorksさんのCDを買っていたのに、今、私の曲がアニメ絵柄ジャケットのCDになってお店に並んでいるなんて、本当に夢みたいで……まだ慣れないです(苦笑)。

――アニメを入口に、今さんの曲を好きになってくれるファンも増えたんじゃないですか?

紫 今 はい。そうやって“アーティスト・紫 今”に興味を持っていただけるのは、すごく嬉しいです。アニメやアニメソングに浸っていると、いわゆるSNSでバズっているJ-POPに、あまり興味が持てなかったり聴かなかったりしますよね。そういう流行り方が、むしろノイズになっちゃう。私も昔そうだったのでわかるんですよ。

――今さんも、楽曲が注目されたきっかけはTikTokだったんですよね。

紫 今 はい。だから私と同じようなアニメ好きの人にも絶対刺さる音楽をやっているはずなのに、そういう皆さんに曲を届けるのは難しかった。でもアニメのEDテーマなら、素直にアニメ好きの方にも届くし、紫今に仲間意識を持ってくれた方が私の音楽と出会ってくれて、好きになってくれるのがとても嬉しいんです。アニメに感謝ですね。

――今さんはシンガーソングライターであり、楽曲やMVなどすべてのプロデュースをご自分でやられています。アニメ主題歌を作る時と、他の曲を作る時では、アプローチが違ったりします?

紫 今 そうですね。でも……私は自分が書きたいことや自分の意見しか曲を作れないので、アニメが伝えたいメッセージや主人公の思想の部分で、自分と一致するところを探し出して曲にしていきます。逆に、自分が元々言いたかったことに、その作品のエッセンスが新しい気づきを与えてくれて、さらに深い曲が書ける。相乗効果がありますね。

――例えば「学級日誌」を作るうえで、『青の祓魔師』の何と今さんの想いがリンクしました?

紫 今 『出雲編』では、お母さん(玉雲)が自分を犠牲にして娘の出雲を救うストーリーがあるんですね。そんなお母さんに向けて、出雲が伝えたかったこと、伝えられなかったことを、“私は今、大丈夫だよ”という報告として話しかけているような曲を書きたいと思ったんです。それが「学級日誌」という曲になりました。

――「メンタルレンタル」がEDテーマだった『勇者のクズ』は、また全然テイストが違いましたよね。

紫 今 そうですね。ただ……「メンタルレンタル」という曲で私が言いたかったこと自体は、前から自分のメモにあったんです。最初はぼんやりしたものでしたが、『勇者のクズ』の原作を読んでテーマの解像度が上がり、自分のもっと深いところに降りて、答え探しができた。ヒロインの(城ヶ峰)亜希ちゃんをメインにした曲ですが、他の子とメンタルをレンタルし合っているみたいなところ、お互いが尊敬し合って影響し合って、でも自分にないものをお互い持ってて……みたいな部分を、更に落とし込んで曲にしました。

キャラクターたちの葛藤と自分が重なり生まれた「New Walk」

――そして新曲「New Walk」は、4月から放送中のTVアニメ『左ききのエレン』のエンディングテーマに起用されています。原作マンガはご存知でしたか?

紫 今 『ジャンプ+』で存在は知っていましたが、ちゃんと読んだのはエンディングテーマのお話をいただいてからでした。改めて読むと、めちゃめちゃ面白くて!逆に、先に読んでいなくて良かった、自分の人生のこのタイミングで出会えて良かったと思いました。

――それはなぜですか?

紫 今 ちょうどその時期、私も(朝倉)光一と(山岸)エレンたちと、ほぼ同じ悩みを抱えていたんです。その2人が、マンガの中でそれぞれ答えを出していたから、私も私なりの答えを出せたし、悩んでたモヤモヤが、スッと消えたんです。

――主題歌発表の際に、今さんは『左ききのエレン』を“私の人生を支えてくれた”作品であり、“アーティストであり、クリエイターでもある私にとって、エレンにも光一にも、自分と重なる瞬間があり、二人の生き様に何度も励まされました”とコメントを寄せていましたが、そういう背景があったんですね。

紫 今 そうなんです。エレンに関しては……「先行上映記念舞台挨拶」に私も行かせていただいたんですけど、原作者のかっぴーさんが広告代理店時代を振り返って、“才能ある人ほど幸せに見えなかった”とおっしゃっていて。私も同じことを、感じていました。才能があるからこその孤独って絶対にあるし、普通の幸せを掴もうとしても、どうしても上手くいかない。人生の中で、色んなものを手放してきたんです、私も。普通の23歳の女の子が得ている幸せを、多分9割くらいは手放してきたし、辛いけど、手放さなきゃ!と思って捨てたものもあります。エレンは“自分は普通じゃない、どうやって幸せになればいいのか?”という孤独との戦いを、ずっと続けている人。そういう葛藤が、自分とドンピシャで重なりました。

――逆に光一は、エレンのような天才ではないことに苦しみますが、光一に重なった部分は何でした?

紫 今 「何者かになりたい」という部分もそうですし、自分の人生の中でずっと答えを見つけようとしているところですね。「自分ってなんだろう?」「自分だけの特別な何かってなんだろう?」という。私はジャンルレスなことを自由にやってきたから、「自分の音楽性ってなんだろう?」とか、「自分らしさってなんだろう?」が、逆にわからなくなるんです。特に今の時代は、曲だけが独り歩きして、誰が作って歌っているかを知られないこともあるから、自分のアイデンティティがわからなくなった時期が私にもありました。それが光一と重なりましたね。

――そういえば、今さんが2023年に発表した楽曲に「凡人様」があります。あの曲も“凡人”と“天才”を歌っていますよね。

紫 今 あの曲に関しては、テーマが2つ、裏表になっているんです。「凡人でもいいんだよ」ということと、「凡人と天才の違いってそんなにないんだよ」という。天才の定義ってフワッとしてるじゃないですか。誰かが「この人は天才!」と言えば「そうかも」と思うし、自分で凡人だと思い込んでいても、傍から見たら天才だったりする。結果論でしかないし、世間のふわっとした評価でしかないんですよね。そんなものに惑わされて苦しむのはくだらないよねということを、提示した曲でした。『左ききのエレン』は天才と凡人を分けて存在させてる作品で、私の「凡人様」は一見逆のことを言ってますけど、生き様だったり、信念という意味では通じるものがあるし、最終的に導き出される答えは……探すのをやめたら見つかった、ってことじゃないかなと。カテゴライズが人を不幸にするんです、きっと。

次のページ:エレンの人生に寄り添い、新たに歩み始める歌詞とアレンジ

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