『ひろがるスカイ!プリキュア』(以下、『ひろプリ』)のオープニング主題歌でデビューすると、以降の「プリキュアシリーズ」で確実に中核を担う存在の1人となった石井あみ。連続参加4作目となる『名探偵プリキュア!』では『ひろプリ』以来となるソロでのオープニング主題歌を担当する。目まぐるしく展開が変わる楽曲「ハートにヒント!名探偵プリキュア!」と出会い、「プリキュアシリーズ」での目くるめく日々で得た経験をすべて詰め込むと決意した彼女。箇所箇所に盛り込まれた、石井あみならではのエッセンスと技術を教えてくれた。
INTERVIEW & TEXT BY 清水耕司
――今作は、作・編曲に関わられている佐々木”コジロー”貴之さんがSNSで「展開だらけのハイパージェットコースターソング」と称されていました。石井さん自身としてはどのような意識でオーディションに臨まれましたか?
石井あみ 私も曲をいただいた時、展開がコロコロと変わる「遊園地みたいな曲」だと思いました。なのでオーディションの時からすごく楽しんで歌った記憶があります。ただ、「自分にしかない歌」にしたいという気持ちがあって、私が「プリキュアシリーズ」を通して学んだことや感じた気持ちを詰め込んだ1曲にしたいと思っていました。プリキュアでのお仕事って、一言で表したら「すごく幸せ」なんですけど、上手く歌えなくて辛かったことや上手く表現できなくて悲しい気持ちになったこともあって。この曲ならプラスな部分もマイナスな部分も入れ込める曲だと思ったんです。“なんで?なんで? トリックかな?”は『わんぷり』(『わんだふるぷりきゅあ!』)でかわいい歌声を学べたから歌えたし、Dメロの疾走感があるところは『ひろプリ』(『ひろがるスカイ!プリキュア』)のおかげだし。“ねぇ 生まれたこと めぐり逢えたことの神秘”で隣にいるキミに言いたいという気持ちになったのは、『キミプリ』(『キミとアイドルプリキュア♪』)で「キミに届ける」ということを教えてもらえたからで。レコーディングでも「色んな表現ができるから今回選ばれたと思う」とは言っていただけて、「プリキュアシリーズ」で歌ってきて良かったとすごく思いました。
――レコーディングではどのように歌われたかについても教えてください。
石井 歌詞にもある、“凛と”歌うことをベースに考えていたんですが、私自身、プリキュアソングを歌っていく中で、自分の声が凛とした声だと思うようになったので、そのままの自分で歌いたいと思いました。そのうえでAメロは少し軽めに歌って、次の“なんで?なんで?”から“なぜ?なぜ?”まではかわいい自分、 “立ち向かう”は『ひろプリ』の時みたいなかっこいい自分で歌いました。で、またちょっと軽めに戻った後、“勇気の一歩”からは力強くて元気な自分になって、“答え!? 気づいてないものに気づいたとき”でも軽めに戻ってから、ワルツになる“運命ね”からの部分は少しエレガントに歌いました。あと、“運命ねって 大好きよって”は大切な歌詞だと思ったんですね。なので心が揺れ動く感じにして、“運命ね”の“命ね”の部分はリズムをちょっと後ろに持ってきていました。
――ディレイさせているということですか?
石井 そうです。言葉が詰まっている感じにしつつ、クレシェンドさせることでドレスのふわっとした感じを表現したいと思っていました。
――そしてサビでは、ベースの凛とした歌い方に戻る、という。
石井 なので5人くらいの自分に分かれて歌いました。
――素早く違う自分で歌い分けるコツというのはありますか?
石井 私は、視覚で声が変わるタイプだと思っていて。(音楽)大学の頃から楽譜や歌詞に色をつけたり絵を描いたりしていました。
――色分け以外にも、歌詞の紙に何か書き込んでいましたか?
石井 「みんなが聴きやすいように」って楽譜に書いていました。例えば、「ヒント!」と「凛と」は同じメロディですけど、言葉では「ヒント(高低低)」と「凛と(低高低)」って違うじゃないですか?なので「凛と」は「りーんと」とアクセントを変えているんですね。
――話し言葉のアクセントに近づけるというか、歌詞を聴いた時に単語が理解しやすいように、という工夫なんですね。
石井 はい。音符がいっぱいなぶん、平坦に歌うとお洒落じゃないということはレコーディングでも言われていたので、表現はしっかりつけるようにしました。
――凛と歌うということは、オーディションの頃から決めていたんですか?
石井 私は毎年、オーディションが自分の声について考えるタイミングになっていて……。
――自分の歌声についてのカラーについて悩まれていましたよね。「白」と言われるし自分でもそう思うけど、でも何色にも染まる代わりに特徴がないという気もしていて……、というところで。
石井 そうなんです。でも、昨年夏の“プリキュアシンガーズ Premium LIVE HOUSE Circuit!2025”でスタッフさんに「凛としている」と言っていただいたんです。今まで、かっこいいと言われることは多かったんですが、私の中の「かっこいい」って(北川)理恵さんが熱く歌われる時のような印象があって。
――石井さんの歌声ももちろん「かっこいい」ですが、北川さんをはじめプリキュアシンガーズの方々は皆さんかっこいいし強いし。なので臆してしまいますよね。
石井 そうですね。だから悩んでいたんですが、「凛と」という言葉を聞いた時、上手くハマった気がしたんです。『キミプリ』はアイドルソング系だったので違う表現に挑戦してみたのですが、この曲の歌詞に「凛と」というフレーズを見つけた時、改めてピンときて……。
――「私の曲だ」みたいな?
石井 (笑)。だから、「凛と歌う」というヒントは夏にもらっていたかもしれないです。
――では、自分の声に対する悩みも今は消えて?
石井 そうですね。ないと思います。
――展開がスピーディで難易度の高い曲だと思いますが、苦労した箇所があったら教えてください。
石井 “つながる次への絆 ひらくよ”はシンコペーションになっていて、ここも少しずれるとお洒落に聴こえないので難しかったですね。“つながる、つーぎへの、きーずな”みたいに、アクセントを意識しながら歌いました。“ねぇ 生まれたこと めぐり逢えたことの神秘”は、同じようにリズムが詰まっていますが、プラス「神秘」(の音)が高いので繋げ方が難しいんですよね。レコーディングでは、“つながる次への絆”は扉が開くように、“ねぇ 生まれたこと”はいつも見てくれているお友達1人ずつに対して歌いたい、ということを井上(洸)プロデューサーに伝えていたんです。そしたら「そのリズムの中の全部をまったく違うように歌ってみて」と言われたんです。“ねぇ”は誰かが隣にいるみたいに、“生まれたこと”で心を少し開いて、それから“出会えたことが本当に嬉しいよ”で気持ちを表す、みたいに3段階で。そこも大変でテイクを重ねて、そうやって自分が歌いたい表現に近づけていきました。
――今回は、事前に家でかなり練習はしたほうでしたか?
石井 実は、オーディション前の練習でパソコンに録音した回数が4桁いったんです!
――え?でも音源をもらってからオーディションまでそんなに時間はなかったですよね?
石井 ないです。1週間くらいだと思います。ギリギリまで繰り返し練習していたらいつの間にか(笑)。そんな数字は自分でも初めて見ました。でも、この曲を好きだからたくさん歌ったというのもあると思いますし、曲に助けてもらった感覚はあります。歌詞にも“キセキ”という言葉が出てきますけど、この曲に出会ってから奇跡を感じることがたくさんあるんですよね。自分の今までの経験や気持ちを込めたいという気持ちに繋げられるような、場面が色々と変わる曲だったというところもそうですし。
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