INTERVIEW
2026.03.15
――逆に、今のDIALOGUE+では「曲が育つ」というのはどういう感覚なんですか?
田淵 例えば「デネブとスピカ」という、DIALOGUE+の中でも渾身の1曲がありまして。ライブの最後を飾れるような曲だと思っていたんですけど、最初にライブでやった時に単純にパワー不足を感じたんです。でもこの曲には絶対にそのポテンシャルがあると信じていたから、繋ぎや置き場所、特殊イントロや照明演出まで含めて試行錯誤していきまして……リリースして2年くらいが経った辺りで、それが「見えてきた!」となった。そういうふうに「曲のポテンシャルを発揮させるために浸透したりパフォーマンスを良くしていく」というのが、僕の考える「曲を育てる」という言葉の意味なんですよ。
青木 なるほど。
田淵 そこは青木さんの言う「曲を育てる」とは、ちょっと意味合いが違うかもしれないですね。稗田さんに聞きたいんだけど、歌うメンバー的には「デネブとスピカ」のリリース後の変遷について、何か体感ってあった?
稗田 きょん(守屋亨香)のソロの特殊イントロから始まる形って、それこそ“LIFE is EASY?”の時が最初だったと思うんですけど、あれはDIALOGUE+にとっても大きなライブで気合いもひとしおだったというのもあって、そこで初めてやった特殊な形がすごく印象に残っているんですね。だから、元々とても好きな曲ではありましたけど、そこからDIALOGUE+の数ある楽曲の中でもひとつ抜きん出た存在になったように感じていまして。それに、あれ以降特殊イントロで披露すると、ログっ子さん(=DIALOGUE+ファンの総称)がすごく喜んでくれるんです。
青木 あはは(笑)。
田淵 「ライブでしか聴けないイントロだ!」ってね(笑)。
稗田 そう。きょんのロングトーン自体がすごいパフォーマンスというのもありますけど、あれこそライブでないと聴けないものなので。
田淵 そうだね。だから「リリースして終わり」じゃなくて「リリース後にライブで披露してからが勝負」みたいな気持ちで、僕はDIALOGUE+のライブは作っていて。それはこういうフェスをやる理由にも繋がってくるんですけど……DIALOGUE+って、メンバーもそうだし曲数も含めて、もはや財産になっているんですよ。でも解散しちゃったらライブでその曲を聴けなくなってしまうわけだから、更に長く続くユニットになってほしい。そのためには「ライブで観たら超良い」というアーティストでいてほしいし、「この金額でもライブチケットを買いたい」という気持ちになってもらえるアーティストでいなければならないと思うんです。そうなるためにライブでできることは、ステージを通じて「すげぇ体験したなぁ」と思わせること。だからこそ既存の曲を単に歌うのではなくて、「この使い方があったか!」と思わせられるようなことをしていきたいんですよね。
――その“財産”が輝き続けるように。
田淵 そうですね。だからこの“DIALOGUE+Festa!!”でも、例えばこの記事を読んだ青木さんのファンが(DIALOGUE+に)興味を持って観てくれた時に、「なるほど、こりゃすげえ!」と思わせるライブができなければいけない。逆に僕は、そのための「ぶつかり合い」みたいなものがあるのが対バンの良いところだという考えで。そうやって熱量の高い音楽フェスを作ることで、全部のアーティストを輝かせたい。そのためにDIALOGUE+には何ができるのかを考えていきたいです。
――ステージに立つ側としては、やはりフェスはワンマンとはだいぶ心持ちに違いがありますか?
稗田 そうですね。フェスはワンマンとは違って、全員が私たちを観に来ているわけではないということを前提にしているといいますか……よく言うのは「ライブの雰囲気を身内ノリにしない」ことですね。ステージに出た時の表情や空気づくりがワンマンみたいなものだと、短い時間の中で初めての方がそこに入り込めない可能性もあるから。でも私は、個人的には毎回対バンはすごく楽しいです。元々好きで聴いていたアーティストさんとご一緒できるのも嬉しいですし、逆に今までそんなに交流がなかったり触れてこなかった方たちとご一緒することをきっかけに、好きになることも結構あったんです。そういう新しい音楽との出会いを楽しむことができる、という意味でもすごく楽しいですね。
――ちなみに、出番が短めなフェスの際には、1曲目からのフルスロットル加減のすごさも感じるのですが。
稗田 そうですね……例えば“TOKYO IDOL FESTIVAL” (以下、“TIF”)だと30分で7曲くらいやるので、正直かなり辛いです(笑)。でも、昔は「こんなセットリスト、できないよ……(泣)」みたいになっていたんですけど、“TIF”で短時間に凝縮するようなセットリストを何年も続けさせていただいてきたり、その他のライブも含めて場数をたくさん踏んで色んなパターンの繋ぎも経験してきたのもあり、最近では「体力的にキツそうだな」よりも「これをやれたら、うちらめちゃくちゃかっこ良くない?」みたいな気持ちが先にくるようになったんです。そこはやっぱり7年近く活動してきたなかでの成長だと思いますし、たくさん場を設けてくださったレーベルの皆さんと田淵さんに大感謝ですね。
――一方で青木さんは、ソロでフェスやライブイベントに参加される際にはどんなことを大事にされているのでしょう?
青木 もちろん私のことを初めて観るお客さんも初めてじゃない方も、すべてのお客さんを「楽しませるぞ!」という気持ちは大前提として……変に「新規客を、絶対引き付けてやるぜ!」みたいにはならずに、あくまでも普段どおりの「これが青木陽菜です」というライブをすることですね。それをやって、後でSNSで反響を検索した時に「あ、良いな」と感じてくれた人がいたのなら嬉しいですし、実際にそうやってフェスに臨んだ後のお渡し会などで「あのフェスから来ました!」みたいに言ってくださる方も多いんですよ。“DIALOGUE+Festa!!”でも、ちょっとでも私たちの音楽を良いなと思ってくれる方と出会えることが楽しみです。
――ライブ中に、反応が良くなってきたのを感じたりもしますか?
青木 そうですね。やっぱり歓声などを通じて「お客さん、この曲すごく好きなんだな」みたいなものは感じるので、その反応をセットリストを組む時の参考にはするようにしています。
田淵 変に無理しないようにするというのは、要は「身の丈に合ってない変な盛り上げ方をしようとすると滑るよね」みたいな意味ですか?
青木 そうですね。例えば無理に煽りすぎちゃう、とか……そういういつもとは違う、頑張りすぎている姿を好きになってもらっても、ゆくゆくはズレが出てくる気がするんです。だからあくまでも、等身大の自分を好きになってもらうことが大事なのかな、と思っています。
田淵 確かに……でも、どうやったら“客を取った”ことになるんだろう?初めて観た人の心に響かせるというのは。
稗田 それで言うと、私……元々好きでずっと対バンしたいと言っていたCYNHNさんと去年対バンさせてもらえた時にそれを感じました。その対バン前は、どちらかと言うとログっ子(DIALOGUE+のファンの総称)さんにはCYNHNさんのことを知らない方のほうがきっと多かったのに、終演後にはCYNHNさんにすごく衝撃を受けたという感想がたくさん届いて。しかも、その後CYNHNさんがやった大きなワンマンライブに、ログっ子さんが結構行っていたみたいなんですよ。
――まさに“客を取る”ことに成功していたわけですね。
稗田 そうなんです。その時に私は、CYNHNさんが大好きだから嬉しくもあり悔しさもあって(笑)。でもその悔しさは、「お客さんを取られた」というところから来るものでは決してなくて。ライブでの破壊力みたいなものの凄まじさを目の当たりにしたことで、生まれたものだったんですよ。
――自然と悔しさが湧き上がるくらい、とてつもないパフォーマンスだった。
稗田 はい。出順的にはDIALOGUE+が先で、後にCYNHNさんだったんですけど、ガラッと空気が変わったのを感じて。CYNHNさんも踊りながら歌っていらっしゃる方で、ライブならではの破壊力みたいなもののある凄まじい歌の力があったんです。パフォーマンスと歌声でそれほどまでの衝撃を与えられるCYNHNさんって本当にかっこいいですし、私たちも頑張ったし「良い」と言ってはもらえたけれど、その時「もっと歌が上手くならなきゃ」と思いました。それこそ青木さんがさっきおっしゃっていたみたいに、自分たちもフェスや対バンからその次のライブに来てくれるように繋げられなきゃいけないな、って。
田淵 逆に自分たちがそうやって新しく出会った人を感動させるための強みって、なんだと思う?
稗田 DIALOGUE+としての強みは、やっぱりあのフォーメーションダンスをしながら歌っているということですね。単純な歌の上手さだけで言ったら、もっと歌唱力の高いアーティストさんやユニットは他にもたくさんいると思いますが、あのフォーメーションダンスをしながらあれだけ難しい曲を歌っている声優ユニットは他にいないと私は思っているので。そこで「なんだこれ!?見たことないぞ!」みたいに衝撃を受けてもらえたら嬉しいですし……そのうえで個人のお話をさせていただくと、私は歌が好きなので、初めて観た人の「黄色の子の歌がすごく良かった」みたいな感想を見るとめちゃくちゃ嬉しいです。
田淵 それ、大事なことだと思います。実際ライブで歌った時に「あの人の歌すごかったな」と感じさせられるかどうかが、ライブの価値にそのまま直結するはずなので。だからそこに稗田さんが強い使命感を持って向き合ってくれていることは、すごくありがたいですね。青木さん自身は、ご自分の歌の強みや得意なところはどこだと思われているんですか?
青木 私……客観視したことなかったです……でも、ピッチの良さについてはよく褒めていただいている気がしますね。あとは、声優だからできることといいますか。例えば早口の歌を滑舌良く歌えたり、色んな役を演じることができるからこそあえてかわいい声で歌ったり、声楽チックに歌ったり……そういう意味での表現の幅は、声優ではないアーティストと比べたらあるほうかなと思っています。
田淵 素晴らしい。なるほど……ライブで観るべきところがわかってきました(笑)。
――解剖が始まっている(笑)。
青木 わー(笑)。
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