INTERVIEW
2026.03.05
声優ユニット・DIALOGUE+が2026年5月10日、初の主催フェス“DIALOGUE+Festa!!”を開催する。2部構成となるこの日、パスピエと多次元制御機構よだかが立つ夜公演「NIGHT stage」に対して、KOTOKOと青木陽菜が名を連ねた昼公演「DAY STAGE」では“ -Collaboration with リスアニ!-”としてリスアニ!が全面協力するという形となった。このフェスに向けてリスアニ!ではDIALOGUE+のメンバーや出演アーティストの声を連載形式で届けていくのだが、その第2回はDIALOGUE+の総合プロデューサーである田淵智也とリスアニ!編集長・馬嶋 亮による対談をお届け。このフェスや出演アーティストについて、そして現在のアニメ音楽・声優音楽シーンに対する両者の想いをたっぷりと語ってもらった。
DIALOGUE+主催音楽フェス“DIALOGUE+Festa!! DAY stage -Collaboration with リスアニ!-”開催記念 短期連載!はこちら
――まずはDIALOGUE+がフェス形式でのイベントを開催するに至った経緯をプロデューサーの立場からお聞かせください。
田淵智也 ユニット活動のプロデュースをやるからには、何か毎回面白いことをしたいなとは常々思っていて、お客さん目線でも新鮮なものをちゃんと観られるというのを提供したいという気持ちがあるんですね。これまでワンマンだけではなく対バン形式のライブというのもやらせてもらってきましたが、今回に関しては「フェスをやりたい」というよりも、「ロックバンドともやるし、今まで会ったことのないアーティストともやるライブ」をしたいなって。
――今回はアニソン系アーティストとの「DAY stage」とバンドとの「NIGHT stage」の2部構成になっています。
田淵 これが1日で上手くできるかどうかわからなかったんですけど、まずは提案するだけしてみようと思って。そんななか、ちょうど去年の夏にリスアニ!さんのライブにDIALOGUE+が出させてもらったんですよね。
馬嶋 亮 去年7月の“リスアニ!LIVE 2025 ナツヤスミ” ですね。その節はありがとうございました。
田淵 こちらこそ。そもそも僕はもっとリスアニ!さんにDIALOGUE+を好きになってもらいたい、興味を持ってもらいたいという気持ちが以前からすごくあったし、このユニットの音楽的意義がもっと広がるようなことができたらいいなと思っていたんですよね。というのもあり、リスアニ!さんに「DIALOGUE+が一緒にやって意義のあるアーティスト」についてアイデアを聞きたくてお声がけさせていただきました。あとは、リスアニ!さんに盛り上げてもらいたい!みたいな気持ちもあったりして(笑)。
――それが“DIALOGUE+Festa!! DAY stage -Collaboration with リスアニ!-”というタイトルへと繋がっていくわけですね。
馬嶋 実は“ナツヤスミ”でご一緒させていただくまでは正直DIALOGUE+さんへの解像度はものすごく高いわけじゃなかったんですね。でも“ナツヤスミ”に出ていただいた時に、田淵さんをはじめチーム全体の本気度を目の当たりにしたというか。メンバーの皆さんはもちろんのこと、当日の田淵さんのFOH(Front Of House。ライブ会場でのコントロール場所)での立ち方も含めて、エンタメへの本気度にすごく胸を打たれたんですよね。そんな矢先に田淵さんから今回のお話をいただき、これはリスアニ!という冠を広い意味での“メディア”として使ってもらえるすごく良い機会なんじゃないかと思いまして。
――ある種、お互いがwin winな関係を築ける可能性が見えたということですよね。そうして今回のコラボレーションに至ったわけですが、そこから打ち合わせをしていくわけですよね?
馬嶋 去年の夏でしたっけ。暑かった記憶があります。
田淵 そうですね。確か『PENTA+LOGUE』(2025年9月17日リリースのEP)の話もしたので9月ですね。
――そこではどんなお話が?
田淵 僕、“リスアニ!LIVE”のちゃんと持ち時間があってアーティストもしっかり紹介してくれて、トークもあって、みたいなあの感じが大好きで。今回のフェスでそれをそのまま踏襲するかはまだ決めていないんですけど、“リスアニ!LIVE”のああいう形でライブが進んでいくような作り方を参考にできないかなと思って、馬嶋さんにアイデアをもらいました。
――そのなかでKOTOKOさんや青木陽菜さんといったアクトについてはどのような話の流れで名前が出てきたんでしょうか?
馬嶋 ひとつは「リスアニ!らしさ」というキーワードが田淵さんからも出ていたので、“リスアニ!LIVE”の構造と近しい内容にするのはお客さんへのプレゼンテーションとしてもわかりやすいのかなと。じゃあ持ち曲もあってじっくり観られるという構造に耐えうるアーティストとは?それに加えてリスアニ!らしさとは?と考えた時に、まず、昔からご一緒しているKOTOKOさんのお名前を出させていただきました。
――なるほど。
馬嶋 KOTOKOさんはたくさん曲があるなかで、例えば電波ソングの体系はDIALOGUE+にも通ずるものがあると思って。青木さんに関しては先日の初ワンマンも素晴らしかったですが、去年の夏に大阪で、802 Paletteと一緒に開催した“ リスパレ!LIVE vol.3”にも出ていただいて、そこでのパフォーマンスがすごく良かったんですよね。そういう点で2組ともリスアニ!としても胸を張って推薦できるアーティストだなと。
――1つ思ったのが、“リスアニ!LIVE”のような大規模ではないフェスで、こうしたジェネーションが離れたラインナップは新鮮ですよね。
田淵 それこそ僕がポニーキャニオンに提案する時に多少丁寧なプレゼンが必要だろうなと思ってはいた点ですね。僕が地味にずっと思ってることなんですがDIALOGUE+を好きになってくれるターゲット層の中に、僕と同い年の人たちって一定数いるはずだとずっと思っていて、「彼らは今どこに行ったんだっけ?」というのをちょっと考えたりしたんですね。
――田淵さんと同じ40歳前後のユーザーですか。
田淵 例えば僕らの世代の声優アーティストやアニメ/ゲームソングアーティストを応援していた人たちが、もしDIALOGUE+を観たら、なかには響く人もいるんじゃないかなって思ったんですね。声優アーティストをプロデュースしたり宣伝する時ってやっぱり若い層向けに考えがちなんですけど、僕と同世代の人たちをターゲットとしてやってもいいんじゃないかなと思っていて。そこにKOTOKOさんというのはアリなんじゃないかなと。そういう人たちが今回のフェスに来てDIALOGUE+を発見してくれたらいいなと思ったんですよ。
馬嶋 そうですよね。
田淵 さっき馬嶋さんがKOTOKOさんとDIALOGUE+を体系的に見ているということを言ってくれていたのがめちゃくちゃ嬉しかったんですけど、僕はKOTOKOさんやI’veサウンドが作ってきたものが、アニソンの礎に当然繋がってるというのを、今回のこの連載も含めて文化論おじさんとしてしっかり主張したい、あの当時の音楽の偉大さを声を大にして言いたかったんです。昔のアニソンのライブが好きだった人たちは今も絶対にいるんですよね。これだけ大きくなった市場だと見つかりづらいこともあるし、なくなってしまったものもあるなかで、でも、ユーザー目線で言うと「俺たちは聴きたいんですよ」という気持ちがあるし、この「俺たちは聴きたいんですよ」をちゃんと形にしていきたくて。どれだけ規模が小さくてもやらなくちゃいけないし、頑張ろうという気持ちがあるんです。
――そうした田淵さんのスピリットはDIALOGUE+でも表現されていて。例えば「じょいふるしあんてっ!」で新谷良子さんのバンビポップを再発見したように、発信しなくてはいけないというものがあるわけですよね。
田淵 そうですね。だからこそ今回、リスアニ!さんとご一緒させていただくことで、このコラボの意味もちゃんと伝わると思ったんです。だからリスアニ!さんには本当に感謝しているんですよね。DIALOGUE+がベテランのアーティストさんと対バンをやるというのはいつかやりたいなと思ってましたが、組み合わせ的に「なぜ?」という疑問が生まれる可能性も感じていて。でもそこにリスアニ!というキーワードが入ることでストーリーを作ることができたんですよね。
馬嶋 ありがとうございます。もう、メディア冥利に尽きます。プロデューサーなりアーティストなりが表現したことって、その背景だったりにあるストーリーが表現できていないと「なぜ?」になるんですよね。だからメディアの我々が入ることで一気に色んなものが解決できる。これってメディアの使い方としては絶対正しいと思うし、我々がやっている10代から60代以上まで入る巨大化したフェスにも必要なんですよ。
――フェスにおいてラインナップの「なぜ?」をアーティストが説明するのは意外と難しいんですよね。本来それをするのは馬嶋さんらプロデューサーであり、メディアの役割でもあると。
馬嶋 15年以上メディアというものに携わらせていただいているので、そこはもっと知って使っていただいてもいいのかなという気持ちではありますね。大人たちが「アニソン流行ってんじゃん」と語っていても、それって1990年代、2000年代のアニソンがあったうえで成り立っている話なんですよ。アニソンフェスやライブが盛り上がる現場として、そこがないものとされるのは絶対にあってはならないわけです。
――さて、今回のラインナップについて改めてお伺いします。先ほども熱く語っていただきましたが、田淵さんから見てKOTOKOさんというアーティストはどう映っているのでしょうか?
田淵 僕としては2000年代当時、PCゲームの主題歌をたくさん聴いていたので、I’veサウンドとセットでそこの印象が強いですね。いわば今の二次元サブカルの最も基礎の基礎にいるアーティストというか。そこから火がついてアニソンに関わっていくという流れで印象強かったのが、I’veサウンドやUNDER17やMOSAIC.WAVで。あとは麻枝 准さんもそうですよね。そういうゲーム音楽の中でめちゃくちゃ渦巻いていたサブカルビビットクリエイターたちがアニソンを手掛けるようになった時は「ようやく来たか」と思いましたね。あそこがなきゃ今こうなってないんですよ、というのはめちゃくちゃ声を大にして主張したい。さっき馬嶋さんの話にもありましたが、「アニソン流行ってんじゃん」って言いますけど、今とはまったく違う熱がそこにはあったはずなんですよ。で、その熱がライブ空間にも生まれてほしいと思っていて、それは僕がそこで育ってきたからで。なので、何が言いたいかというと、とにかく皆さんに改めて「アーティスト・KOTOKOのすごさ」というのをしっかりお伝えしたいということなんですよね。
馬嶋 確かに。
田淵 あと、もうちょっと焦点を絞って言うと、僕は彼女が歌詞を書いているというのが結構衝撃で。あれだけの作品の主題歌を担当していて、それだけ詳しいんだよと。前に気になってインタビューを読んだことがあったんですけど、めちゃくちゃ良いこと言ってるんですよね。二次元ソングの文化論やこれまでの歴史についての理解も深いですし、現状の憂いみたいなものもしっかり説明してくれる人だなと思っていて。
馬嶋 うんうん。
田淵 あとは、そういうKOTOKOさんのファンに、DIALOGUE+はどう見えるのか?というのは単純に気になりますし、KOTOKOさんにはまだお会いしたことないのにすごくおこがましい話なんですけど、「今俺があなたたちの影響を受けて心を込めて作ってる音楽、どうですか?」ってご本人に聞いてみたい気持ちもあって。以前KOTOKOさんがインタビューで言っていた当時の熱や現代に対する寂しさみたいなものって僕もシンパシーを感じるところがありますし、その寂しさに対してのソリューションを考えながら活動や音楽制作をしている部分は僕もあるので。なので、「お、若いのにやるじゃん」って言われたい気持ちもあります(笑)。
――続いて青木陽菜さんはいかがですか?
田淵 まだライブは映像でしか観られていないんですけど、馬嶋さんもさっき言っていましたし、「リスアニ!RADIO」でも青木さんは歌が上手いという話はよく聞いていたんですよ。メディアの人たちがめちゃくちゃ褒めているのを聞いて、僕も嬉しい気分になりましたね。というのも、僕は去年聴いた色んなアルバムの中で『Letters』(2025年10月リリースの1stアルバム)が一番良かったと思っていて。ぶっちゃけちゃんとお金かかっている音楽をちゃんと届けるんだという気持ちがやっぱ音にこもってるなと。CDを聴く限りは歌上手いけどライブではどんな感じなんだろう?と思っていたら、リスアニ!の皆さんが上手いって言ってたので、何様だよって感じですけど、褒めてくれて嬉しい(笑)。
馬嶋 恐縮です(笑)。
田淵 だから今回のフェスラインナップの打ち合わせの時に馬嶋さんからいただいた案の中に青木さんの名前が入っていた時もすごく嬉しかったんですよね。「あっ、俺がこの間聴いたやつ!」だって。そこが繋がったのは素直に良かったです。
――リスアニ!の太鼓判があって、かつ田淵さんも共鳴できるアーティストであると。では対して、そんななかにあるDIALOGUE+はどうであるかという話です。プロデューサーとしてこうしたアクトのなかで彼女たちに期待するものはなんですか?
田淵 彼女たちは、「戦って負ける」ということを経験してなさすぎるんですよね。ちゃんと悔しがんなきゃいけないし、勝つためには、そしてお客さんの興味を惹きつけるためにはどんなパフォーマンスをしなきゃいけないのか、今のままで本当に良い感情の届け方ができているのか、ということに今一度向き合ってもいい頃だなと僕は思っていて。
――負けることの経験ですか。
田淵 僕が総合プロデューサーについた3年前くらいは正直チームの中は大変な状況でした。そんな中でリスタートする際にまず一番に考えたのは「とにかくどうすれば健康的に活動できるだろうか?」ということでした。なので僕はまずはメンバーの健康を保つ環境作りから始めたんです。僕は音楽を作るのが好きですし、「これはすごいライブだぜ」と思ってもらえるステージを作りたいから、「健康」と「良いステージができる環境作り」を成り立たせるためにはどうすれば良いのかを考えてきた2年なんですね。彼女たちも、去年からライブ活動が7人体制になったのもあって、より覚悟が決まった雰囲気があるし、前よりへこたれなくなってきてはいて。自分たちで色々と考えるようになってきて、より自覚も芽生えてきているタイミングなんだと思います。
――メンバーそれぞれの意識の変化も見られてきたと。
田淵 そうですね。ただ、やっぱりまだ出しきれていない部分があると思っていて。お客さんの感情を揺さぶる時のモーションについても、例えば「きゅるん」が良いのか「おりゃ!」が良いのか、そこをもう一歩踏み込んで考えるというのは確かに言ってこなかったなと。もちろん今もよくできているんですけど、でももう一歩踏み込んでみませんか?って。
――なるほど。
田淵 あと対バンという形で他のアーティストと同じステージに立った時に、ちゃんと「悔しい」と思ってほしいんですよね。せっかくKOTOKOさんや青木さんのファンに観てもらうチャンスなのに、ぬるいライブをやってもしょうがないよね、ということにどれだけメンバー個々が向き合えるかというのは、今まで以上に頑張らないといけない部分だと感じています。
馬嶋 いわゆるフェスでは、どのアーティストも「その日一番にならなければ意味がない」というくらいのマインドで挑まなければ出る意味はないみたいなことはよく言われますよね。そういうなかで、今はそこにより具体的なディレクションが入ってきているのかなと思うんですが、それこそ昨年の“ナツヤスミ”や”ANIMAX MUSIX”に出た時はどうでしたか?
田淵 “ナツヤスミ”の時に皆さんにすごく褒めていただいてすごく嬉しかったですし、気づいたら色んな人たちが「DIALOGUE+やるじゃん」と言ってくださっていたので、それくらいのパフォーマンスをするようにはなっているんだなというのは去年の象徴的な記憶ですね。
馬嶋 それはきっと、田淵さんが投げかけたものに対してシンプルにプリミティブな反応が出たということで、良いものを熱量高く見せている、振り切ってやっているんだということの表れなのかもしれないですね。
田淵 フェスに向かう課題として、ちょうどDIALOGUE+のライブの次のテーマにもしようと思っていたんですけど、決められた踊りを「ちゃんと振付どおりできて良かったね」っていうのって、僕らってそこで満足しちゃいけなかったよね?ということに、最近振付の先生とお話ししていて気づきまして。ライブをやる時にお手本どおりできているじゃなくて、どうやったら感情が揺さぶられるかなというのは、本人たちにより考えさせないといけない時期なんですよね。その課題が出てくるということは、そこまでに設定してた他の課題をクリアできたということだと思うので、僕から見ると緩やかではあるけれど、観てくれた人に褒めていただけるというのは、胸を張ってもいいのかなと思いますし、メンバーの自信にも繋がっていると思うんですよね。
馬嶋 DIALOGUE+は観ていてすごくストロングスタイルだし、ハードなことをやっているなとはずっと思っているんですよね。
田淵 それがいわゆるアニソン業界的に刺さるとか流行るかというのは、負け惜しみに聞こえるかもしれないですけど、僕は興味ないんですよね。ただ、誰かに強烈に刺さるものになっていたら良いなとは思っていて。目の前にいる人を裏切らない、初めて観た人のうちの誰かに丁寧に鮮烈に刺さるライブをやっていれば、長く活動できるという未来に繋がっていくんじゃないかなと。
馬嶋 ライブにずっと来てくれているお客さんたちの満足度が毎回上がっているというのは、多分今の状況からして間違いないと思うんですよ。それはリスアニ!周辺の人たちの反応からもわかります。だからこそ対バンやフェスは、新しいお客さんが来て分母が増えたところでプレゼンテーションしやすい場にはなっている。だからこそアーティスト側から招き入れてこういう場を作るというのは意義がありますよね。
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