INTERVIEW
2025.11.20
唯一無二の歌声でアニソンファンの心を撃ち抜くシユイのニューシングル「インフェリア」は、TVアニメ『最後にひとつだけお願いしてもよろしいでしょうか』のEDテーマ。ボカロP出身の人気クリエイター“すこっぷ”との初タッグから生まれたダークでエモーショナルな「インフェリア」は、作品の登場キャラクター・テレネッツァの内面を見事に表現しながら、シユイ自身の新たな音楽的挑戦をも感じさせる一曲となった。カップリング曲となった、今最も世界から注目を浴びる音楽クリエイター・原口沙輔による「ハピネス オブ ザ デッド(原口沙輔Remix)」の話題とともに最新シングルについて語ってもらった。
INTERVIEW & TEXT BY 阿部美香
――新曲「インフェリア」がエンディングを彩るTVアニメ『最後にひとつだけお願いしてもよろしいでしょうか』が絶賛オンエア中ですね。作品にはどんな印象がありますか?
シユイ まずは原作を読ませていただいたんですけど、私、自分が好きで読んできたのは少年漫画ばかりだったんです。女性が主人公の漫画を読むのはほぼ初めてだし、タイトルを見ただけでは内容も想像つかなかったから、すごく新鮮で面白かったですね。何よりめちゃめちゃ痛快でした。主人公のスカーレット(・エル・ヴァンディミオン)が人を殴る、こらしめるお話は少年漫画っぽさもあって入りやすかったですし、読み進めていくと深みもあって。アニメになってからはますます、主人公のスカーレットが、原作以上にスパスパ悪人を殴ってくれて共感しますし、日頃の憂さ晴らしじゃないですけど、週末の夜に観るにはぴったりのスカッとするアニメですよね。
――そこに寄り添っている「インフェリア」は、シユイさんの公式コメントにもありましたが、主人公・スカーレットの宿敵、テレネッツァ(・ホプキンス)をモチーフにした楽曲ですね。シユイさん自身は、テレネッツァにどんな印象がありますか?
シユイ テレネッツァは、すごくかわいいけど、ライバルキャラだけあって、ウザくて腹黒い女の子なので、原作を読んでいても自分がこの子を殴りたい!って誰もが思うと思うんです(苦笑)。でも、彼女が置かれていた状況とか、どうしてそういうことをしているかがわかってくると、人間味があってすごく愛おしい。テレネッツァも愛を求めているから、どこか憎めないですよね。そしてとにかくかわいい。かわいい女の子は大好きです(笑)。
――そんなテレネッツァを歌った「インフィリア」は、作詞・作曲・編曲をすこっぷさんが手がけられました。これまでにコラボは?
シユイ すこっぷさんに曲を書いていただいたのは初めてです。お名前こそ存じ上げていましたが、今回のレコーディングで初めてお会いできて光栄でした。
――楽曲を受け取ったとき、どう感じました?
シユイ 作品に痛快な印象があったので、もっとパンチが炸裂するような楽曲が来るかと思っていたんですけど、結構ダークで。でもテレネッツァの曲だということで、すごく納得しました。漫画を読んだときのテレネッツァのイメージとぴったりでしたし、テレネッツァだったら絶対にこう言うだろう!という歌詞なので、受けたイメージをそのまま曲に込めて歌えました。今までもアニメの主題歌は何曲も歌わせていただいていましたが……。
――デビューシングルとなったTVアニメ『機動戦士ガンダム 水星の魔女』EDテーマの「君よ 気高くあれ」に始まり、今年もTVアニメ『青の祓魔師 終夜篇』EDテーマの「オーバーラップ」がありましたね。
シユイ はい。でもこれまでは作品の世界観やストーリーをテーマにした曲が多かったので、ここまでキャラクター本人に寄り添った曲も本当に初めてなんです。自分の中でも新しい試みだから「どうしよう?」と一瞬思いましたが、すこっぷさんがテレネッツァそのままの曲を書いてくださったので、私はもうテレネッツァになりきるだけ。すごく寄り添いやすかったです。
――曲調もいつものシユイナンバーとは違うテイストですよね。
シユイ そうなんです。すこっぷさんはボカロPとしても有名な方ですし、その頃からダークな曲がお得意。私が歌手を目指したきっかけはsupercellさんでしたけど、例えばカゲプロ(カゲロウプロジェクト)さんのようなダークなボカロ曲も大好きだったので、どこか懐かしい気持ちもありながら歌わせていただきました。すこっぷさんもキャリアが長い方だし、私がボカロ曲を大好きだった時期の楽曲たちの要素も「インフェリア」にはたくさんあって。私の中でも色んなことがタイミングよくマッチした曲になったと思います。彼女のダークな内面を、こんなに思い切って言える歌にしてもらえたら……私がテレネッツァだったら、すごく嬉しいでしょうね。
――シユイさんが公式コメントとして語っていらした、“まるでダークチェリーみたいな、酸味と甘さの混ざり合う一曲”という表現がぴったりの「インフェリア」。シユイさんの深くて、様々に表情を変えながらテレネッツァの心情を表現するエモーショナルな歌声と、心の闇を描き出すメロディー&サウンドが切なく響き、聴きどころも中毒性もたっぷりの楽曲ですが、特にお気に入りのパートはどこでしょう?
シユイ どこも好きなんですけど、イントロからすごく気に入ってます。お伽噺が始まるような幕開け感がすごくあるのが好きですね。
――トイピアノのような音が、お伽噺的な世界を広げていますよね。
シユイ そうですね。サウンドとしてそこも好きですし、歌詞で言うとやっぱり、繰り返される“愛愛愛愛愛を”です。……結構、“愛”って言葉は強いと思うんです。その強い言葉を重ねることで、胸をえぐられる。“嫉妬”や“憎悪”という言葉もそうですね。物語の中でのテレネッツァの悪役ぶりというのかな?かわいさの猫をかぶりながら悪役をやっているみたいな感じが彼女にはあると思うんですが、そういう強い言葉たちがすごく合っていますよね。まるで、強い言葉を盾にしているような気がして……。でもお話が進むにつれ、テレネッツァのこともわかっていく。そういうストーリーが、この楽曲のだんだん開けてくる感じとちょっと似てるな、重なるなって思います。この曲の歌詞は、もうすべてがテレネッツァの言葉。すべてのフレーズに彼女の吹き出しがついてる感じです。言葉の1つ1つに彼女の感情が溢れていますし、テレネッツァの物語の一端を知っていただけると思うんです。アニメを観終わったときには、また違うテレネッツァにも出会えると思うので、ぜひ歌詞カードを見ながら、読み解きながら聴いていただけたら嬉しいですね。
――イントロにお伽噺が始まるような幕開けを感じたとおっしゃいましたが、10月から公開されているMVもまさにお伽噺のような映像になっていますよね。歌詞に出てくる“赤い靴”もそうですが、私たちが知る童話やお伽噺を彷彿とするモチーフも映像には散りばめられているので、ダークなファンタジーが好きな方にもぜひ観ていただきたい。
シユイ そうなんです。まさに幕が開いて、人形劇が始まる感じ。私がこの曲から受けたイメージ通りの映像になっていて、すごく素敵なMVを作っていただきました。
――先ほど、テレネッツァになりきって歌ったという話がありましたが、レコーディングでこだわったところは?
シユイ 最初のほうはキーが低めで暗い感じなので、必然的にちょっとぼそぼそと毒を吐くように、喋るような感じで始まり、感情が高まるにつれて、ヒステリックに叫ぶ……こう、黒板を引っ掻くような声を出す、そういう表現をちょっと入れたかったんですね。叫ぶところはちゃんと叫びながら、一番印象に残る“愛愛愛愛愛を”の繰り返しなどは、色々な歌い方を試しました。同じ“愛”の言葉の連なりでも、だんだん勢いを上げるのか、途中で一度落としてからまた上げるのか、とか。声の質をちょっとずつ変えながら、研究しながら歌っていきました。
――すこっぷさんとは、どんなやりとりがありました?
シユイ すこっぷさんがほぼお任せしてくださったので、要所要所でアドバイスをいただきながら、歌わせていただきました。すこっぷさんはとても穏やかでお優しそうな方で。なんかもう、お互いちょっと口下手っていうか……。
――人見知りが発動しちゃった(笑)。
シユイ あ……はい。私からもっと喋りかけたらよかったな、というのが反省点です(苦笑)。
――そういえばリリースより一足先に、「インフェリア」は7月に開催されたワンマンライブ“LAWSON presents シユイ 4th Live 「シユイさんといっしょ #04」”で初お披露目されました。リスアニ!でもレポート(https://www.lisani.jp/0000288194/)させていただきましたが、いかがでした?生バンドで歌ってみて。
シユイ 歌う前はちょっと不安だったんです。セットリストも爽やかな曲が多かったから、こういうダークなテイストの曲を、みんながどう聴いてくれるかな?と思って。でもバンドアレンジをしてもらったおかげで、音源とはまた違う、めちゃめちゃベースが効いたかっこよさが表現できて、これは結構、みんなドキッとしちゃうんじゃないのかな!と思いながら歌ってました。
――セットリストの中でもそれまでとはガラッと違う雰囲気があり。激しい曲でありながら、振り絞るようなシユイさんの歌声に、皆さんが聴き入っている様子がすごく感じられました。今までなかった新しいシユイさんの魅力が、しっかり伝わっていた気がします。
シユイ はい。本当にそう思います。すこっぷさんにもまたぜひ曲を書いていただきたいなと思いますし、こういう曲調の歌も、これからもっと歌っていきたいですね。アニメをご覧になってくれた皆さんからも、嬉しい感想をたくさんいただいたので。
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