INTERVIEW
2025.10.29
ReoNaの約2年ぶり通算3枚目のニューアルバム『HEART』のリリースを記念した集中連載企画「リスアニ!’s Heart」。これまでReoNa本人のインタビューを含め、彼女のクリエイティブをともに作り上げているクリエイター陣の言葉で『HEART』の真髄を紐解いてきた。ハヤシケイ(LIVE LAB.)×Ryo’LEFTY’Miyata×傘村トータ(LIVE LAB.)による濃厚な座談会を届けた第4回に続く連載第5回。『HEART』には「コ・コ・ロ」を楽曲提供し、1stツアーからReoNaバンドのキーボーディスト/バンドマスターを務めている音楽家・荒幡亮平に話を聞いた。
■【連載】ReoNa 3rdアルバム『HEART』リリース記念「リスアニ!’s Heart」
INTERVIEW & TEXT BY 阿部美香
――荒幡さんは、2019年の1stツアー「ReoNa Live Tour 2019 “Wonder 1284”」からずっとReoNaバンドのキーボーディスト/バンドマスターを務め、作曲、アレンジ、演奏でも数々のレコーディングに参加していらっしゃいます。
荒幡亮平 はい、ReoNaとはもう7年目になりますね。もともと僕は、スタジオミュージシャンとして活動していたのですが、ReoNaのクリエイティブを手がけていらっしゃるLIVE LAB.のスタッフさんとは20年程前からお付き合いがありまして。彼女が1stツアーを行うにあたって、ライブサポートのお話をいただいたのがきっかけ。そこからほぼ全てのライブに参加させてもらっています。
――良きパートナーとしてReoNaの音楽をずっと支え続けてきたなかで、彼女の成長や変化を間近で感じることも多いと思います。
荒幡 そうですね。人柄的にもちゃんとした大人になっているなというのは横でいつも感じますが、そもそも歌声が成長している。例えばライブのリハーサルでは、ReoNaのボーカル音源を流しながらバンドだけで演奏を合わせる時間もあるのですが、デビュー前に歌っていた曲、デビューしたての頃の曲だと、まるで今と歌声が違う。ReoNaの歌が成長し、進化している証拠ですよね。
――特にライブで感じる部分は大きいと思います。他のアーティストとは違う、1対1でお歌をじっくりと聴かせるReoNaスタイルも、しっかりと築いてきましたし。
荒幡 そうなんです。最初の頃は、ReoNaスタイルを確立するまでの試行錯誤があったと思うんです。今も忘れられないのは、1stツアーでの「虹の彼方に」。まだコロナ禍前で、会場もオールスタンディングのライブハウス。セットリストも中盤に「Independence」や「Disorder」「レプリカ」「Rea(s)oN」など神崎エルザ starring ReoNa名義の曲が並び、そこから「虹の彼方に」に続くんですが……激しい曲では客席が「わーっ!」と沸き立ったままで。
――今のReoNaワンマンでは考えられないですね。
荒幡 そうなんです。お客さんもアニソンフェス的なノリが当然という感じでした。でも、アーティスト・ReoNaの「虹の彼方に」は、静かに聴いて欲しくて、僕がピアノの単音をポン、ポン……と鳴らして、静寂ができるまでイントロを始めなかった。そこからですね、ReoNaのワンマンライブのあるべき姿が、見えた気がしました。
――静寂とともに伝えるReoNaの音楽世界ですね。
荒幡 それは大型アニソンフェスでも、ReoNaのワンマンステージでは貫いてきました。最初の頃は想定していない曲間で拍手が起こって止まないこともありましたが、ReoNaもそこでひるまず、確固たる自信を持って静寂を待ち、ReoNaスタイルを提示していけた。だからこその今があるんじゃないかなと思いますね。
――やはりReoNaとの道のりでは、より心に残っているのはライブという場なんですね。
荒幡 そうですね。もちろん楽曲制作中も結構話はしますけど、リハーサルを重ねて本番に向かい、さらにそれがツアーだったりすると、作品以上に時間を費やしているんです。曲そのものもライブで歌い続けることで成長していく。一度、作品として出来たものが、さらに出来上がっていくのがライブなんです。お互いディスカッションすることもライブの方が多いですし。みんなで作っていく達成感も大きいですよね。
――ReoNaさんの音楽に触れ、ライブに触れ、こうして関わる皆さんのお話を伺うたびに、そんなReoNaチームの一体感のすごさを感じます。同じ方向を向いてクリエイティブを続けている。
荒幡 僕を含めたバンドメンバーしかりですけど、それはReoNaを一番身近で支えているスタッフが変わらないからじゃないですかね。僕もいろいろな現場を経験してきましたけど、ReoNaほど制作からライブまで長く携わらせていただいているアーティストはいないです。現場によっては、数日で1曲書くとか翌日までにアレンジを上げてほしいといったオーダーもあるんです。ですが、ReoNaチームにはそれが全くない。いいものが出来上がるまで待ってくれますし、全員がそこに全力で向き合うんです。そこがReoNaチームの素晴らしさですね。
――『HEART』はまさに、そんなReoNaチームの“心”が結集した1枚だと思います。荒幡さんはアルバムのラストを飾る「コ・コ・ロ」を、奥様である作詞家・宮嶋淳子さんとタッグを組んで書かれました。クリエイターの皆さんへの新曲オファーは、まず“HEART”という言葉ありきで、始まったと伺っています。
荒幡 はい、まさに。「『HEART』というアルバムを作ります、荒幡さんが思う“HEART”を書いてください」と。“我が家”で1曲作ることも、最初から決まっていました(笑)。
――宮嶋さんとのReoNaへの楽曲提供は、シングル「Alive」のカップリングナンバー「一番星」以来になりますね。
荒幡 実は「一番星」は、僕が歌詞を含め全て書いたものが土台としてあって、そこからブラッシュアップするために2番以降の歌詞に手を加えてもらった曲だったんです。ですからReoNaに向けて、それぞれが作詞・作曲をゼロから手がけるのは、これが初めてでした。2人で曲を作る場合はいつも、僕が先に取りかかって曲先で作るので、まずは僕が“HEART”とは何だろう?と考えるところ始まったのですが……“HEART”ってすなわち“ソウル”じゃないですか。「ANIMA」の歌詞じゃないですけど、“魂”がいつも問いただしている。だから、ソウルミュージックをReoNaに歌わせたかったんですよ。
――荒幡さんにとっての“心”は“魂”であると。
荒幡 昔から、ReoNaにソウルミュージックを歌ってもらいたかったんです。常々、ReoNaに足りないのは16ビートの曲だという話もチーム内ではあったので、これはチャンスだと。というのも、僕も昔からブラックミュージックが好き。自分のルーツミュージックの1つでもあるので、それをReoNaにぶつけてみよう、というところから曲作りが始まりました。僕にとってのオマージュですね。
――確かに「コ・コ・ロ」には往年の70’sモータウンサウンドを感じますね。演奏されている楽器類こそ、ReoNaらしくアコースティックでオーガニックですが、ジャクソン5の初期を彷彿とさせるポップでファンキーなソウルミュージックがベースにあり、間奏にはスティーヴィー・ワンダーの「Sir Duke」を彷彿とさせるフレーズも。
荒幡 リフも楽器全員でユニゾンさせました。歌詞の世界観的に、心と体は別々だけど、1つになれたらそれが幸せの鍵になるんじゃない?というメッセージが入った歌なので、音楽的にもユニゾンさせるポイントは作りたかったです。
――ReoNaナンバーには数少ない、メジャーコード進行の温かなサウンドも新鮮でした。
荒幡 そこも宮嶋と2人で話したんですけど、「もうちょっとマイナーでアップテンポなソウルファンクでも良かったんじゃない?」という説も出たなかで、今回はあえてこの形にしました。傘村トータ(LIVE LAB.)さんの曲を僕がアレンジした「ライフ・イズ・ビューティフォー」(2022年のEP『Naked』収録曲)の時は、メジャーコードの曲でちょっとキラッとさせたサウンド感を作るのに、結構試行錯誤したのですが、その布石があっての「コ・コ・ロ」ですね。
――ちなみに荒幡さん作曲方法は、やはりピアノやキーボードでメロディを……。
荒幡 いえ、歌っちゃいます(笑)。歌う人の気持ちになって曲を作りたいんです。「これ、どこでブレスするの?」という曲にはしたくない。鼻歌から作ると、自然なブレスポイントができるので、文節が出来上がるんです。すると、作詞もしやすくなるし、歌いやすくなるんですよね。ReoNaチームがずっと言い続けているのは、ReoNaの曲は “メロが良くて歌詞がいい”こと。どんなに攻めた曲でも、メロディには切なさ、ノスタルジックさがほしい。そしてそれをかっこよく聴かせたいというのが、1つのルールとしてありますね。
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