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2025.10.27

ぼっちぼろまる、溢れんばかりの『銀魂』愛と“青春”を込めた話題曲に迫る!TVアニメ『3年Z組銀八先生』OPテーマ「桜風」徹底解説コラム

ぼっちぼろまる、溢れんばかりの『銀魂』愛と“青春”を込めた話題曲に迫る!TVアニメ『3年Z組銀八先生』OPテーマ「桜風」徹底解説コラム

TVアニメ『逃げ上手の若君』EDテーマ「鎌倉STYLE」、TVアニメ『負けヒロインが多すぎる!』OPテーマ「つよがるガール feat. もっさ(ネクライトーキー)」、TVアニメ『ババンババンバンバンパイア』EDテーマ「NE-CHU-SHOW」と、個性的なアニソンを次々とリリースしてきた“ひとりぼっちロックバンド”を自称する“地球外生命体”アーティスト・ぼっちぼろまる。そんな彼の最新曲「桜風」が、『銀魂』のスピンオフ作品であるTVアニメ『3年Z組銀八先生』OPテーマとして現在オンエア中、11月12日にはシングルリリースも決定している。「桜風」の魅力は、痛快な青春ロックチューンのなかにほとばしる、ぼっちぼろまるの熱い『銀魂』愛!その魅力の中身を、紐解いてみよう。

TEXT BY 阿部美香

『銀魂』から『3年Z組銀八先生』へ──ドタバタな日常とくだらない笑いの奥に

まずはここで、アニメ『銀魂』をおさらいしておこう。原作は皆さんもよくご存じ、「週刊少年ジャンプ」連載を出発点としてコミックス77巻で完結した空知英秋原作のSF時代劇コメディ漫画だ。TVアニメは2006年からスタートし、幾度かの休止を挟みつつ約12年の長きに渡って放送。2018年10月7日の第367話をもって最終回を迎えている。さらに劇場版アニメとして2010年には『劇場版 銀魂 新訳紅桜篇』、2013年には原作者がストーリーを書き下ろした『劇場版銀魂 完結篇 万事屋よ永遠なれ』が話題を呼び、2021年には原作漫画のラストを描いた映画『銀魂 THE FINAL』が公開。それ以降もファンの心を熱く保ったまま、原作で人気の名エピソードの新作アニメ映画『新劇場版 銀魂 -吉原大炎上-』も2026年2月公開がアナウンスされている。

そんな『銀魂』シリーズ最大の魅力は“なんでもアリ”な世界観とストーリーだ。宇宙人・天人(あまんと)が支配する江戸時代末期の「かぶき町」を舞台に、無気力な侍・坂田銀時とツッコミ役・志村新八、口が悪く破天荒なチャイナ服娘・神楽による「万事屋銀ちゃん」の仲間を中心に、江戸の治安を守る個性派集団「真選組」などのハチャメチャなキャラクターたちが、ギャグとパロディ要素全開!時にシリアスな涙を誘うエピソードを交えながら、ドタバタな日常を繰り広げる。

そんなハチャメチャ、ドタバタ感満載の『銀魂』をモチーフに書かれた番外編スピンアウト小説が「3年Z組銀八先生」(大崎知仁著)。単行本はすでにシリーズ10冊目を数える人気作で、その小説をベースに“銀魂まるちばーすアニメ”化されたのが、TVアニメ『3年Z組銀八先生』だ。銀髪の天然パーマに死んだ魚のような目がトレードマークの高校教師・坂田銀八が担任を務めるのは、ドルオタ、ゲロイン、ストーカー、マヨラー、ドS、ヤンキーなどなど、自由すぎるクセ強な生徒が集結した「銀魂高校 3年Z組」。もちろんその生徒たちこそ、性格や属性はそのままに高校生となった『銀魂』キャラクターたちだ。タイトルと主人公名からも一目瞭然!銀さんとは正反対の熱血教師が活躍する感動の名作学園ドラマを、悪びれることなく堂々とパロディにしているのも、面白ければ何でもアリ!な『銀魂』らしさだ。ちなみに3年Z組のZは、“ゼット”ではなく“ズィー”と呼ぶのが正義だ。できれば“ビー”に限りなく近づけて、“ズィー”と発音したいところである。

筆者も『3年Z組銀八先生』のアニメ化を聞いて小躍りした人間の1人だったが、『銀魂』スピンアウト作であることはタイトルや絵から分かるものの、事情を知らない人にいきなりぶつけるのはチャレンジだよなぁと思っていたが……第1話の冒頭を観て、さすがアニメ『銀魂』!と感心してしまった。精神世界が登場し、坂田銀時から坂田銀八へと「主人公引き継ぎの儀」を自虐の入ったぶっちゃけ話で始め、本編キャラクターたちが学ランとセーラー服へと着替えるシーンや制作スタッフのバトンタッチまで盛りこんでのメタなスタート。アニメオリジナル回の荒唐無稽さでも人気を博してきた本シリーズらしい、『銀魂』スピリットの健在ぶりを見せつけてくれた。本編に入っても、有名作品のパロディネタはもちろん、『銀魂』本編にまつわる小ネタも健在。ファンには堪らない(そしてファンじゃない人にもインパクト大の)話数を重ねている。

OPテーマ「桜風」に注がれたぼっちぼろまるの『銀魂』愛

そんな『銀魂』の魅力を引き継ぐ『3年Z組銀八先生』への限りない愛情を感じるのが、ぼっちぼろまるによるOPテーマ「桜風」だ。ぼっちぼろまる本人が公式コメントで語っているように、主題歌オファーがあった時“銀魂に夢中だったぼっち学生時代を思い出した”という彼。“銀さんみたいな大人になりたかった”“あの時の自分はほぼ新八だった”“神楽ちゃんに恋していました”などなど、さまざまなエピソードを交えて『銀魂』が彼の青春だったことを告白していた。

彼の『銀魂』愛は、「桜風」のさまざまなポイントから読み取れる。まずタイトルに入った「桜」の文字。過去のアニメ本編でも、咲き誇る桜の木と花吹雪は印象的な場面で多く映像化されてきた。また2010年公開の原作漫画でも屈指の人気を誇るエピソードを映像化した『劇場版 銀魂 新訳紅桜篇』は、記念すべき劇場版第1弾。何より『銀魂』と“桜”の縁を感じるのが、「花は桜木、人は武士」のことわざだ。短命だが美しい桜の花と、潔く生きることこそが本懐だという武士の美意識を表現したこの言葉は、一見、自堕落に見えても実は仲間を守り、正義を貫く侍である銀さんの生き様にも通じる。それくらい“桜”は『銀魂』にふさわしいワードなのだ。

歌詞の中身に目をやると、ここにも『銀魂』スピリットがいたるところに存在している。サビの一節“くだらぬ話 永遠に続け”から始まる冒頭から、まさにくだらない笑いが貫く長寿作品となった『銀魂』ワールドが全開だ。漫画の読者もアニメの視聴者も、この『銀魂』のくだらない笑える話がいつまでも続けばいいと願ったはずだ。“ケンケンパーで歩いて 電柱衝突間一発で神回避”から始まる1番Aメロは、スラップスティックな『銀魂』アクションを想起させるハチャメチャなシーンを、ぼっちぼろまる流のワードに重ねて表現。Bメロの“一緒に行こうぜ! 空に爆笑が竜巻く春へ” も『銀魂』ワールドの空気をそのまま運び、『3年Z組銀八先生』が描くさらにヘンテコで笑える日常――銀八先生やZ組の面々が巻き起こす、馬鹿馬鹿しくも真っ直ぐなドラマを想起させる。

さらに注目したいのが、サビだ。“くだらぬ話 永遠に続け”から繋がる“踊れ! 騒げ! 笑え!”はもちろんのこと、繰り返される“笑え! 笑え! 笑え!”のリフレインと、そこに添えられた“泥だらけでも”や“いつだって側にいるんだ”のフレーズには、『銀魂』キャラクターがそれぞれに内包する、表には出さない人間味あふれる痛みや辛さを引き受けた上での前に進もうとする強い意志と、仲間との想いを感じる。舞台や設定は変わっても、相変わらずの仲間たちと笑い合う日常を過ごす『3年Z組銀八先生』の世界にもぴったり。『銀魂』本編を知っていれば、なおさら胸を打たれる。なおアニメのオンエアには載らない2番にも“その魂で今日も気高くあれ ずっと側にいるんだ あいつらが”という、仲間への愛を思わせるフレーズが登場し、グッとくる。

笑えるだけではない、この曲からは「バカをやりながら、正しくちゃんと生きる」こと、そして「くだらない日常を笑って肯定する」こと。銀さんと仲間たちがずっと私たちに示してくれている「笑いの奥にある誠実さ」という『銀魂』らしいメッセージを、受け取ることができるのだ。ちなみに、1番Aメロ頭に出てくる“晴天”と対をなして、2番の頭は“曇天”から始まる。この“曇天”もアニメ『銀魂』ファンから爆発的人気を博すDOESの同名主題歌を連想する、オマージュ感あふれる言葉。他にも、“風船ガム”や“桃源郷”といった歴代主題歌を思わせるワードが散りばめられており、思わずニヤッとしてしまったことは伝えておきたい。

次ページ:真っ直ぐなロックサウンドが表現する青春の疾走感

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