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INTERVIEW

2025.09.05

放送中のTVアニメ『ずたぼろ令嬢は姉の元婚約者に溺愛される』OPテーマ「月蝕」を歌うkrage。 夜をテーマに描かれた新曲3曲について聞いた

放送中のTVアニメ『ずたぼろ令嬢は姉の元婚約者に溺愛される』OPテーマ「月蝕」を歌うkrage。 夜をテーマに描かれた新曲3曲について聞いた

独自の世界観と透明感溢れる歌声で注目を集めてきた、日本語・中国語・英語を巧みに操るシンガー・krage。現在放送中のTVアニメ『ずたぼろ令嬢は姉の元婚約者に溺愛される』のOPテーマ「月蝕」を収録した最新シングルでは、プロデューサーには androp の内澤崇仁を迎え、エキゾチックな世界観を低音ボイスで彩ることで、これまでにない表情を覗かせている。カップリングには、krage自身が手掛けたバラード「融解」と、WHISPER OUT LOUDのKanatoとの共作「白群」をパッケージ。夜をテーマに描かれた3曲で新境地を切り拓いた彼女に、制作背景や歌詞への想いを聞いた。

INTERVIEW & TEXT BY 逆井マリ

低音の魅力ももっと活かしていきたいと思っていた

──あっという間に下半期に突入しましたが、今年の上半期を振り返ってみて、ご自身の中でどのような印象が残っていますか。

krage 今回OPテーマを担当させていただいたTVアニメ『ずたぼろ令嬢は姉の元婚約者に溺愛される』が7月スタートだったので、その準備にずっと取り組んでいました。それと配信前の6月、7月にはライブで「月蝕」を先行披露していたんです。これまで新曲をリリース前にステージで歌うことはあまりなかったので、お客さんにどう受け取られるのか試行錯誤しながら臨んでいました。

──実際に披露してみての手応えはいかがでしたか。

krage 「月蝕」は、これまでの私の楽曲にはあまりなかったアプローチで、とてもライブ映えする曲なんです。これまではじっくり聴いてくださる方が多かったのですが、今回は「ノれる曲もあるんだ」と感じていただけたみたいで。ライブの1曲目に歌うことも多かったんですが、私自身も気持ちが一気に高まりますし、「始まった!」という雰囲気になるのをすごく感じました。

──ライブで先に披露されたのには、何か狙いが?

krage 割と実験的な部分がありました。リリース前にライブのお声がけをいただいて、仙台、東京、名古屋と毎週あったので、せっかくだし未リリースの曲を何も言わずに先に披露してお客さんの反応をライブで感じてみたくて。。

──確かに、冒頭の歌声から一気に引き込まれる感覚がありますね。今回の楽曲はandropの内澤崇仁さんのプロデュースですが、最初にデモを受け取ったときの印象を教えてください。

krage 色々とご縁があって、内澤さんに曲を書いていただけることになった時が、ちょうど『ずたぼろ令嬢は姉の元婚約者に溺愛される』のOPテーマを担当できるかもしれない……といったタイミングで。せっかくだから、書いていただけたら嬉しいですって話をしたら、すぐに取り掛かってくださり、今の「月蝕」にかなり近い形のものが届いたんです。かなり原作を読み込んでくださったようで、最初の時点から歌詞も原作に寄り添った、ものすごくクオリティの高い曲に仕上げてくださっていて。最初から「これだ!」と思いましたね。

──内澤さんとは、以前から面識があったのですか。

krage 直接お会いしたのは「月蝕」を制作する少し前でした。私がTVアニメ『俺だけレベルアップな件』のEDテーマ「request」で凛として時雨のTKさんとご一緒した際に、TKさんと内澤さんがすごく親しいこともあって紹介していただいたんです。その時に初めましての挨拶を兼ねて音楽の好みや性格について話す機会があって。krage 陰キャですよ、とか(笑)。それと、内澤さんは青森出身で、私は北海道札幌市出身なので、北国トークもしましたね。そのすぐ後にこの作品のお話をいただいたという流れでした。

──なんだか運命的ですね。原作を読まれた時は、どのような印象を持ちましたか。

krage 最初は「シンデレラストーリーです」と聞いていたので、もっとキラキラした世界観を想像していたんです。ところが実際は、主人公マリーが非常に人間っぽいというか。家庭環境など、ドロドロした人間模様も描かれていて、思った以上に人間ドラマなんですよね。私はそういうドロドロ系の作品がすごく好きなので、面白く拝見しました。マリーは普段は自信がないけれど、好きなものの話になるとのめりこむ感じというか、一気に目が輝くんですよね。私もそういうところがあるので、その姿にとても共感しました。

──マリーは努力家でもあり、純粋な気持ちを持つ女の子ですよね。その部分が「月蝕」の歌詞にも重なっているように思いました。

krage そうですね。最初に内澤さんから曲をいただいた時点で、仮タイトルが「月蝕」だったと記憶しています。曲と一緒に「月が一度闇に隠れてもふたたび夜空に輝く」という現象を、主人公の心情に重ねたメモも添えられていました。まさに作品と主人公の姿を映した歌詞になっていて、強い思いや憧れが投影されていると感じました。さらに“踊る赤猫”というフレーズがあるんですが、これは劇中でマリーが好きな物語のタイトルから取られていて。細かい部分まで原作を読み込んで作ってくださったんだな、と伝わってきました。

──歌う時に意識されたところというといかがでしょうか?

krage サビは明るく、強いけどブライトな感じを意識しました。ただAメロや間奏部分はかなり前衛的というか、オリエンタルな要素が強いので、低音を響かせたりリズムに寄せたり、セクションごとに歌い方を変えています。1曲の中でいろいろな表情を出すことに挑戦しましたね。作品の異国感を取り入れつつも、思いっきりギターが歪んでいて、ロックしているところも面白いなと思っています。「月蝕」は特にラスサビ前の静かなパートで、低音から高音に一気に切り替わるところは、自分でも気に入っているポイントなので注目してほしいです。

──krageさんの声がまるで楽器のようで。今回のシングルは低声が多いように感じていて、だからこそ声の表現の幅広さも際立っているように感じました。そこはいかがでしょう?

krage 「月蝕」も含め、収録されている3曲はAメロなどで低音を響かせるアプローチをしています。これまで高音のイメージを持たれることが多かったのですが、実は地声は低めで、自分としては低音の魅力ももっと活かしていきたいと思っていたので、今回それをしっかり表現できたのは大きかったです。もちろん高音も歌唱のアプローチとしてはかなり好きなんですけども。

──どんどんとキーレンジが広くなっているように感じているのですが、ご本人の手応えとしてはどうでしょう。

krage そうですね(笑)。毎週ボイストレーニングを受けているのですが、先生と一緒に楽曲1つ1つに対してのボーカルアプローチを模索していて、その中で少しずつレンジを広げていけている実感があります。

──『ずたぼろ令嬢』のOP映像をご覧になった時の印象はいかがでしたか。

krage アニメのOPテーマを担当するのは今回が初めてなんです。これまではエンディングはありましたが、オープニングはやっぱり動きが多くて、映像を観た瞬間に感動しました。それと「月蝕」というタイトルにちなんで月のモチーフが散りばめられていたり、歌詞に合わせてマリーが月に手を伸ばすシーンが入っていたり……。本当に楽曲と作品に寄り添って作ってくださっているのが伝わって、すごく嬉しかったです。

──ところで、マリーとキュロスが描かれたジャケットも印象的ですね。

krage ラフをいただいた段階で「私のアーティストイメージに寄り添ってくださっているな」と感じました。青を基調とした、夜を思わせる雰囲気で、とても気に入っています。

対となるカップリング曲「融解」、「白群」

──カップリングの「融解」についてもおうかがいさせてください。静かなパートから後半のドラマチックな盛り上がりまで、幅広い表情がある1曲だと思いました。

krage 「融解」と「白群」は、どちらも「月蝕」と同じく夜をテーマに作った楽曲なんです。「融解」は作詞・作曲を私自身が担当していて、デモの段階でほぼ近いピアノを弾いていて、それを福島さんがアレンジしてくれました。イメージしたのは、夜中の2時や3時くらいの独特な空気感。静かな部屋の中で、自分の中にあるぼんやりある心残りみたいなものを感情を溶かすように、忘れてしまったほうがいい、と自分で諭すような感じで。最後に〈これは夢だった〉と締めるのは、すべてをなかったことにしてしまいたいという思いを込めています。

──シングル全体のテーマを「夜」にしたのは、「月蝕」を受けてのものだったのでしょうか?

krage そうですね、それも多少あります。「月蝕」というタイトルからして昼は合わないですし(笑)、自然と夜を基調にした世界観になりました。それとタイトルも「融解」「白群」と、ぽんぽんぽんと(笑)、まとまりのある字面になったのも気に入っています。ランダムにするより、関連性を持たせた方がしっくりくるタイプなので、3曲が響き合うような形にできたのが嬉しいですね。

──タイトルもすごく印象的でした。もう作ってるときに「融解」という言葉がピンときたんですか?

krage 冒頭のピアノを弾いている時点で「これは夜中の曲になる」と思ったんです。そこからぼんやりと「もう忘れちゃいたいって思うような曲になりそうだな」と思ったのですが、「忘れる」という感情をどう表現するか考えたときに「溶かす」という言葉にたどり着きました。それでサビにも“心を溶かして”というフレーズが出てきますが、そこから自然に「融解」というタイトルが浮かんだんです。

──“私が見た夢”という言葉で終わるのも印象的というか、声色もハッとさせられます。

krage 「もう全部なかったことにして忘れてしまおう」といった感じですね。それまでの想いを否定するということではなくて、流れに身を任せて、「夢」って言ってしまえばそれでいいや、なかったことにしよう、といった感覚で。「融解」は完全に女性視点の曲なんですよね。

──「融解」がkrageさんご自身らしい女性視点の曲だった一方で、もう1つのカップリング曲「白群」は“僕”視点の曲となっています。作曲・編曲のKanatoさんとはどのように作っていかれたのでしょうか?

krage Kanatoくんからは「全体を通して切なさを表現するため、内向的で淡々としたサウンドで音を構築した」と伺いました。私の中では「融解」と「白群」は対のような関係にあって。「融解」が女性視点で忘れたい思いを描いた曲だとすれば、「白群」は男性視点で忘れたくない思いを描いた曲。そして「融解」が深夜2時や3時の感情の揺れ動きを描いているとしたら、「白群」は夜明け前、朝6時頃の景色という感じですね。

──現実に戻っていく時間帯というか(笑)。

krage そうですね(笑)。「白群」って“白に青緑を混ぜたような色”で、真っ白にはならずに曖昧さを残した色合いを指しているんです。感情も同じで、愛情や温もりが薄れていっても、曖昧な色としてまだ残っている。その濁りや滲みも自分の一部なんだ、という想いを込めました。それが“濁りも僕だと知った”というフレーズにもつながっています。

──男女の感情の違いが2曲で表現されているのは面白いですね。「白群」は“あなたの色を探した”で終わるところからも、後ろ髪が惹かれているところを感じるというか……未練があるというか。そして歌い方も中性的な雰囲気。

krage そうですね(笑)。そういう意味でも女性、男性視点になっていて。「融解」は夢にして消化しつつある女性視点で、「白群」はまだここにいたいと願う男性視点っていう。歌い方もかなり違います。「融解」に比べて「白群」は低音を効かせて、よりドライで男性的なアプローチをしています。中性的と言っていただけるのはすごく嬉しいです。

──「白群」は、とりわけ声色のアプローチが印象的で、“混ざってしまった”など、歌詞に合わせて声のニュアンスを変えているように感じました。

krage はい。Aメロでは自分に語りかけるように低めで歌い、サビでは厚みを出してダイナミックに歌うことを意識しました。高音でキンキンさせるのではなく、声の厚みを保ちながらファルセットと地声を切り替えていく。メロディも行き来が多く難易度は高いですが、その切り替えが良いクセになっていると思います。自分の中で「融解」と「白群」は自分の中でディープなバラードというか。リスナーの方々が待っていてくださったタイプの曲だとも思うんです。ようやく届けられた、という手応えがありますね。

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