ASCAにとって人生の大きな転機となった28歳の想いをこのアルバムに――。最新作『28』リリースインタビュー

自分を愛するための歌「28」でASCAがシェアしたかったメッセージ

――そんなご自身の今の心境、28歳の等身大の想いを描いた楽曲が、本アルバムの結びの楽曲「28」だと思います。ライブツアー“ASCA LIVE TOUR 2025 – 28 -”のアンコールで披露した際、MCで「“自分を愛すること＝みんなを愛すること”になると信じて、生涯をかけて自分を愛していこうと決めました」とお話していましたが、まさにそんな気持ちが乗った曲ですよね。

ASCA　『28』というアルバムを作ろうとなった時に、一番最初に作ったのがこの曲でした。冒頭でもお話ししましたけど、私は自分を後回しにする癖が幼少期の頃からあって、それこそ家でも自分が家庭内の空気を保つ役を勝手に担っていたんです。「ここで私がふざけたら、ちょっと空気が和むかも」とか。でも、それでは自分自身が満たされることはないと気付いて、最近は少しずつ自分の本音を開示できるようになった。そんな中、去年、とある海外ライブで、歌っている時に何か突き抜けた感覚を味わったんですよね。自信に満ち溢れている自分がステージの上にいて、自分のからだ全てが鳴っているような感覚。歌っていてそんな感覚になるのは数年ぶりだったので、ライブ後、その時に自分が感じたことをメモしたんですけど、後から見返したら「生まれてこれて良かった」と書いてあって。

――「28」の歌詞に同じフレーズがありますね（“歌って、届いて君に出会えた生まれてこれて良かった”）。

ASCA　そう、この経験は絶対に歌詞にしたいと思ったので、アルバムの制作が始まった時、歌詞にそのフレーズを入れました。心の底から「生まれてこれて良かったな」と思えるのは、すごく幸せなことだと思うんですよね。私、親にもそれを連絡しましたから。まあ、娘から急に「生まれてこれて良かった、ありがとう」なんて連絡がきたので、びっくりしたと思いますけど（笑）。そういう経験が積み重なって、28歳の私は、素直に言葉を出せるようになって、素直に歌が歌えるようになった。その感覚を歌にしたかったので、とにかく自分の気持ちを偽らず、そして複雑にしない言葉選びを意識しながら歌詞を書いていきました。

――サビのフレーズはすべて英語詞になっていますが、その内容も含めて、自分を愛するための歌という印象があります。

ASCA　そうですね。最近は色々な新しいジャンルに挑戦していて、例えば今回のアルバムにも収録している「Gift Of Life」ではオルタナティブロックの要素が入っているんですけど、この「28」もまさにオルタナの延長にある楽曲になっていて。それをよりかっこよく聴かせるために、サビは英語詞にすると最初から決めていたなかで、私がこの曲で一番伝えたかったことをサビに込めました。

――“Always be on your own side（常に自分の味方でいよう）”や“What’s fun over what’s right（正しいことより楽しいことを優先しよう）”といったフレーズは、まさにASCAさんがこれまでお話してくれた言葉と重なります。

ASCA　そうですね。自分のことを後回しにして誰かのために生きてきた人生も、それはそれですごく素晴らしいことだと思いますけど、自分のことも大事にできたら、その喜びが倍になると思ったんですよね。年々、自分自身が定めた固定概念から解放されてきたことで、自分自身を愛することの大切さがわかってきた。自分の心が楽しいと思ったり、ワクワクする方向に進んだ方が、人生楽しいよねっていう。それってすごくシンプルだけど、実現していくのはすごく難しいことだと思うんです。私もずっと悩んできたし、周りの友達からも呪縛から逃れられなくて苦しんでいる話をたくさん聞いてきたので、自分を愛することが本当に難しいというのはすごくわかる。でも、自分自身は辿り着けた感覚があるので、あえて英語詞の中に“Life is simple and now is the best time to be yourself（人生はシンプル。自分らしくいられる、最高の今”という言葉を入れました。「言葉にするのは簡単だけど、難しいよね、わかるよ」と。でも、生きていく中で、私が大切に思っている人たちがこの答えに辿り着いてくれたらいいなと思うし、「こうしたら幸せになれるよ」というのをシェアしたい気持ちが強くて書いた曲ですね。

――その意味では、ASCAさんのファンやこの楽曲を聴いてくれる人に向けたメッセージでもありますし、ASCAさん自身、今後落ち込むことがあったとしても、この曲があれば今のマインドを思い出すことができそうですね。

ASCA　そうだと思います。自分自身に対しても、お守りみたいになっている曲です。

――個人的には、ASCAさんが28歳の今、辿り着いた境地をそのまま反映した楽曲だからこそ、この先、年齢を重ねていくなかで、どう感じながら歌っていくのかが気になっていて。

ASCA　確かに。この境地でさえも、まだまだ若かったな、と思える時が来るのかな……？いや、絶対に来ると思います。今でも色んな人と会話をするなかで「あ、その考え方もあるのか。私にはない視点だ」と思うことがたくさんありますし、自分自身を成長させたり人生を豊かにする方法は、多分無限にあるんだろうなと思うんですね。今の私は多分それを1つ2つ見つけたくらいなので、今後歩んでいく中でまだまだ探していきたいですし、その度に自分自身も変わっていきたいなと思います。ゴールはないと思うので。

――「28」はMVも制作されています。ASCAさんが砂浜にいるシーンを中心に、時折、子供の後ろ姿が映る映像になっていて。

ASCA　これも“生まれてこれて良かった”という歌詞とリンクしてくるんですけど、今また歌が楽しかった時の感覚を取り戻して原点回帰した自分を象徴するような映像ができました。私が1歳の時に海で撮った後ろ姿の写真が出てくるんですけど、その写真をスタッフさんが見て「めちゃくちゃいい写真だから『28』のアートワークに使おう」となったんです。その1歳の頃の自分から28歳までの道のりが「28」のMVでも表現されていますし、今回のアルバムの完全生産限定盤には7インチのレコードが同梱されるんですけど、その盤の真ん中の穴から1歳の頃の私が見えるアートワークになっていて。ASCAとしての歩みと、私は今いる場所ですごく幸せに歌っていることが伝わる内容になっています。

――7インチのアナログ盤には、A面に「28」、B面にはこれまで未音源化だった「RESISTER – TV Edit – (Full Version)」が収録されるそうですね。

ASCA　「RESISTER」はアニメで使われていたサビから始まるバージョンのフルサイズで、今までライブでしか聴けなかったバージョンになります。「28」もオルタナを意識したアナログ感のあるサウンドなので、私というよりも角田さんとレーベルのスタッフさんがめちゃめちゃこだわって（笑）、マスタリングもレコードで聴いた時の生々しさを出すためにマスタリングの味付けも微妙に変えているので、ぜひ手に取って楽しんでほしいです。

――その意味では、ASCAさんだけでなく色んな人のこだわりが詰まった作品と言えそうですね。

ASCA　周りで支えてくださる方も変わっていくなかで、自分のことを後回しにしない対話ができるようになって、今は本当の意味で信頼できる人たちが周りにいてくれますし、それが音楽制作にも直結していて。人との出会いのおかげで今の私ができたというのは、アルバムを順番に聴いていても感じますし、かつての自分から想像ができない未来に今いることに、ちょっとびっくりしてますね。私が想像していたより、もっといい未来にいる感じがします。

――そんななか、9月27日からはアジアツアー“ASCA ASIA TOUR 2025”の開催を控えていますし、Keyの最新ゲーム作品『anemoi』の主題歌「エタニクル」など新曲の情報もすでに発表されています。29歳はどんな1年になりそうですか？

ASCA　変わらず挑戦は続けていきたいです。ついつい現状を維持しようとしてしまうのが人間だと思うんですけど、私はあえて、大変そうなところに自分から足を踏み入れてみたいなと思っていて。音楽制作しかりプライベートしかり。それこそこの間は富士山に登りましたし。

――登山好きの安月名莉子さんと、ASCAさんの妹さんの3人で登ったらしいですね。SNSで拝見しました。

ASCA　いやあ、さすがに大変でした（笑）。でも、まあ行ってみないとわからない景色がいっぱいあったので、そういうのを自分から見に行く29歳にして、色んな考え方をまた吸収して進化していきたいなと思っています。で、完璧じゃない大人になりたい。昨日もちょうど新曲を完成させたばかりですし、アジアツアーをはじめ色んな場所で歌を聴いてもらえる日が来るので、自分自身も楽しみですし、皆さんも楽しみにしていてください！

●リリース情報
ニューアルバム
『28』

【完全生産限定盤／CD＋BD＋アナログ】

価格：￥7,700（税込）
品番：VVCL-2780～2

【通常盤／CD】

価格：￥3,300（（税込）
品番：VVCL-2783

＜CD収録内容＞ ※完全生産限定盤・通常盤共通
01.エスキース
02.Never Let It Go（『鳴潮』ver1.3主題歌）
03.紫苑の花束を（『魔法科高校の劣等生古都内乱編』ED）
04.明日世界が終わるとしても（『魔王様、リトライ！R』OP）
05.FACELESS（『ばいばい、アース』第1シーズンOP）
06.MOONWORK（『ばいばい、アース』第2シーズンED）
07.Gift of Life
08.最前線（『ソードアート・オンラインヴァリアント・ショウダウン』主題歌）
09.Fighter!!（『Teamfight Tactics: K.O. Coliseum』テーマソング）
10.Pieces
11.28

＜BD収録内容＞ ※完全生産限定盤のみ同梱
「28」Music Video

＜レコード(7インチ)収録内容＞ ※完全生産限定盤のみ同梱
side A：28
side B：RESISTER – TV Edit – (Full Version)

●ライブ情報
「ASCA ASIA TOUR 2025」
9月27日ソウル
10月 5日上海
10月 7日北京
10月18日台北
10月25日香港
11月24日東京

＜東京公演＞
「ASCA ASIA TOUR 2025 in Tokyo」
日程：2025年11月24日（月祝）
会場：東京・Spotify O-WEST
時間：open 17:00 / start 18:00
問合せ：DISK GARAGE
https://info.diskgarage.com/
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