『エヴァンゲリオン』シリーズを制作するスタジオカラー×サンライズの『機動戦士ガンダム』シリーズという最強のコラボで誕生した『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』。『機動戦士ガンダム』世代からまだシリーズに触れたことのない視聴者までをも虜にした本作のオリジナルサウンドトラックがリリースされた。音楽を担当した照井順政、蓮尾理之の2人の言葉から『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』を紐解く。
INTERVIEW & TEXT BY えびさわなち
――まずはお二人それぞれの『機動戦士ガンダム』シリーズの思い出を伺いたいです。
照井順政 自分にとっては『SDガンダム』が最初です。世代的にはまさに、というタイミングなのですが、アニメよりも先に幼稚園や小学校低学年くらいの頃に、佐藤 元さんが連載していたマンガとの出会いからでした。そこからすごくはまって、『SDガンダム』のガシャポンを買いまくって、箪笥を一段全部それで埋めるくらい持っていましたし、OVAも全部観ていました。それからある程度大人になって、自分のお金で映画を観たり、映像のレンタルをしたりできるようになってから、古典としての『機動戦士ガンダム』を勉強する時が来たかと、観始めてだんだんと追っていった感じでした。この『機動戦士ガンダム』がものすごく面白くて。独特のタイム感というか。会話での言葉や間が独特で文学的で素敵だなという印象がありました。
蓮尾理之 僕は小さい頃に田舎で再放送していて観た『機動戦士Zガンダム』が最初でした。あとは照井くんと同じで、『SDガンダム』にすごくはまっていましたね。『機動戦士Zガンダム』に出てくるジェリド・メサが特に大好きで。プライドは高いんだけど、全然上手くいかないみたいなところを自分に重ねて、ジェリドを応援していました。どうやったら死なないかと思って、『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』のララァみたいな気持ちで考えていたくらい、Zとジェリドが好きです(笑)。
――その『機動戦士ガンダム』シリーズ最新作『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』の劇伴のお仕事が決まった際にはどのようなお気持ちでしたか?
照井 まず僕が先にお話を受けたのですが、その時は挿入歌の制作でのオファーだったんですね。そこから色々あって劇伴全体をやらせてもらうこととなりました。設定資料をいただいた時に、すごく大胆な設定だったことに驚きました。『機動戦士ガンダム』シリーズということだけでも大きなタイトルなのでプレッシャーはあったのですが、制作がスタジオカラーということもすごくて、最初の印象としては「これは大変なことになってきたな」というものでした。僕が劇伴全体をやらせてもらうことになった時に、重なっている仕事とのスケジュールの兼ね合いで1人でやるのは厳しいと思って、自分としても信頼できて、作風も合うだろう蓮尾くんに声を掛けました。蓮尾くん、その時はどう感じた?
蓮尾 『機動戦士ガンダム』に自分が携わるのか……という気持ちと、照井くんに『ガンダム』の仕事が来たのか!という気持ちがありました(笑)。照井くんともたくさん話をしましたが、やはり『機動戦士ガンダム』という大きな名前を受け止めるところから始まりました。
――『機動戦士ガンダム』から派生していく物語ですが、劇伴制作では46年前の系譜的なものは意識されましたか?
照井 それはもちろんありつつも、自分の中では『機動戦士ガンダム』の劇伴を意識しすぎず、シリーズ全体に対して持っているイメージを意識しました。やはり『機動戦士ガンダム』シリーズに対しては戦争ものとしてのイメージが強いですから、そういった場面で流れる楽曲といった全体のイメージを参照しているような感覚で、特定のシリーズの曲ではなかったです。『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』も後半は戦争へと物語が寄っていくので、監督からもそうした楽曲が欲しいというオーダーをいただいていましたから、そこに合うような楽曲を目指していました。
蓮尾 僕も後半の、戦闘が激しくなっていくところではオーケストレーションの楽曲を多めに作っていましたから、シリーズは意識しました。どちらかというと自分の血肉となっていた『機動戦士Zガンダム』の三枝成章さんの、ルートを固定したうえで動く独特のメロディラインが僕の中でのガンダムらしさのイメージなので、そういうところは意図的に出していましたね。
――今回『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』の劇伴の発注で驚かされたことや印象深かったことを教えてください。
蓮尾 序盤はボーイ・ミーツ・ガールありつつのマチュとニャアン、シュウジの3人を軸にした若者のパートが多かったので、そういう青春感が欲しいというオーダーがありました。その青春感は僕よりも照井くんが得意だろうということや、監督が望まれている部分が照井くんのプロデュースしていたsora tob sakanaの青春感だろうと思ったので、そこは照井くんに一任したということはありました。
照井 割と物語に対してはストレートなオーダーだったと思います。だから意外なオーダーはなかったです。
――その中でもご自身が苦戦した楽曲やシチュエーションを教えてください。
照井 苦戦と言うと、ほぼ苦戦しているんですよ。
蓮尾 僕も苦戦をしてきたんですけど、それが形としても表れているのがDISC1収録の「夜間散歩」をはじめとした「I_018」と名のついた楽曲群です。他にはDISC2の「毒薬の手帖」、特典CD収録の「シュウジ」ですが、そもそも同じシュウジをテーマにして作っているけど、結果的に違う曲になったものなんです。彼の個性であるグラフィティから派生してアブストラクトヒップホップみたいなトラックに、浮遊感のあるメロディとシュウジの持つミステリアスさを乗っけようと思っていたんです。それがミステリアスからダークの方向に行き過ぎたのが毒のシーンに使われたんですけど、苦労したからこそ、様々なアレンジが生まれて、それぞれが別の曲ともなりましたね。
照井 僕は全体的に苦労しましたが、ベースが打ち込みなのにウォーキングベースみたいなバトルの曲の「MAV」(DISC1)です。これは基本になるテーマからのアイデアを気に入りすぎて、楽曲としてすっきりさせたかったのにガチャガチャさせ過ぎちゃったなと思った曲なんです。かっこ良くしたすぎて、音を詰め込みすぎちゃったんですよね。劇伴としては音の情報量が半端ない感じになってしまったので、最終的に削って、削ってという作業に苦労しました。
蓮尾 ミックスに苦労していたよね。
照井 この曲がミックスで一番難航しましたね。
――では会心の楽曲も教えてください。
蓮尾 DISC1の「残り香」です。特に印象的だった使われ方としてはララァとマチュが初めて会った時の、キラキラの中で会話するシーンで。今まで自分がやってこなかったけど、好きだったものを入れられた曲です。メランコリックな楽曲ですが、今まではこうしたジャンルは苦手なイメージでいたんです。でもすごく良いシーンで使っていただけた、とても好きな1曲です。もう1曲、DISC1の「逃走」も挙げさせてください。例えばエグザベくんがマチュと一緒にロッカーに逃げ込んだシーンでも流れているんですけど、この曲はリズムと重低音で乗り切りつつ抑揚がある曲として作れました。僕はアニメの劇伴が初めてなのですが、その中でも劇伴らしい曲が作れたイメージのある曲です。
――では照井さんの会心の楽曲というと?
照井 「ゼクノヴァ」(DISC2)はかなり気に入っていて。シーンにもすごくはまったなと思った曲でした。あとは日常曲もすごく好きなんですよね。「夏の現在地」(DISC2)も気に入っていて。青春感と今っぽい音像の曲で、TR-808のボーンというベースが鳴っているんだけど、上はローファイみたいな感じの音像にしつつも、切ない青春感がバランス的にいい感じに出せました。マチュがこの曲を聴いていたヘッドフォンを外すことで外に聴こえる音が変わるギミックもあるんですけど、マチュみたいな世代の子が聴いているような楽曲じゃなきゃダメだろうみたいな狙いもちゃんと遂行できたかなと思って。
――「夏の現在地」のような曲もあれば、「イオマグヌッソ」のようなオーケストレーションでの曲もあり、「戦域のメタフィジックス」のような戦闘曲もある。表現の幅の広い楽曲が全12話の物語を彩りました。こと『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』の楽曲を作る際にどんな要素を最も意識していましたか?
照井 全12話の中ですごくシーンが変わっていくんですよね。場面も変わっていくし、話の重さや規模感も変わるので、一貫した何かを作るよりもあえて流れを変えていったという意識はありました。作曲家としてのテーマは「シンプルで力強いものを作りたい」というのがあったんですけど、それはマチュのイメージもあったと思うし、自分の個人的な、作家としての命題が重なっているとも思います。あまり複雑にせずにシンプルで核心を突いたものを作りたいというのはシリーズを通してありました。
蓮尾 僕は照井くんから話をもらった時に既にあった「フォールアウト」(DISC2)や「薄暮のハイフロンティア」(DISC1)、「コロニーの彼女」(DISC1)のイメージが強かったこともありますし、その楽曲が僕の中で『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』のコンセプトアートや世界観とかなり合致したことで、音像の基本となったこともあって制作は進めやすかったです。ただ、制作を進めていくなかでもっと『ガンダム』らしさ、戦争ものらしさが必要だろうというのはありましたが、基準にあったのはその3曲のコード感や浮遊感、シンセの音色でした。
――そのベースとなった初期3曲は、どのようなコンセプトで制作されたものだったのでしょうか。
照井 劇場先行で流れたコロニー内の音楽やクランバトルの頃の楽曲だったので、そこは素直にコロニーの雰囲気もありつつ宇宙空間の広がりみたいなところや時代でいう今っぽさを出したいということで、なるべく今の時代らしい音色を選んでみようと思いました。主人公3人の青春物語的なところが軸にあるので、メロディやコード感は切ないけれどがむしゃらに進むところを入れ込みたいなというイメージでしたね。
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