三月のパンタシアがアーティスト活動10周年を記念した初のベストアルバム『多彩透明なブルーだった』をリリース。本作はこれまでにリリースしてきた楽曲から選曲された27曲に8月6日に先行配信された新曲「LuMiNA」を加え、<Disc1 彩青(いろどりぶるー)><Disc2 憂青(うれいぶるー)>と名付けた2枚のCDにコンパイル。2015年8月16日に「daybreak」をYouTubeに公開し、翌年6月1日に1stシングル「はじまりの速度」でメジャーデビューを果たした、これまでの歩みをみあに振り返ってもらうと共に、選曲の意図や新曲に込めた思いについてじっくりと語ってもらった。
INTERVIEW & TEXT BY 永堀アツオ
――今年の8月16日で音楽活動を始めて10年を迎えますが、どんな心境ですか?
みあ 初めてYouTubeに「daybreak」を公開した時は、自分自身、まだ曖昧な気持ちのほうが大きくて。元々音楽が好きだったけれど、自分が音楽をやるなんて思ってもいなかったところから、周りの人たちに「声が素敵だから、音楽好きなら音楽始めてみたら」と背中を押してもらう形で三月のパンタシアを始めて。でも、その当時は、例えば1年後にはこういうふうになっていたいとか、先の展望はそんなになくて。ただ、目の前のことでいっぱいいっぱいだったんですね。三月のパンタシアの“言いたくても言えない青春時代の切なさを表現する”というコンセプトはあったんですけど、具体的にどういうシチュエーションを歌いたいかとか、どういう感情を伝えたいかという部分はまだそんなになくて。
――今振り返るとどんな感覚で歌ってましたか?
みあ 自分が好きなボカロPの方に書き下ろしてもらった曲を、とにかく心を込めて歌う。自分が好きな作家さんの曲の良さを精一杯表現するみたいな感じでしたね。感覚的に言うと、物語を演じていたような気持ちだったと思います。でも、活動を重ねていくなかで、“みあ”として伝えたい思いや、音楽にしてみたい物語がどんどん目覚め始めて。そこから、小説を書いたり、作詞もするようになって。活動を始めた当初に比べると、どんどん物語に対する意欲が膨らんでいって。その思いを持って走り続けて、今、ここまで来たときに、やっぱり自分は物語を紡ぐという行為がすごく好きだなって。そして、やっぱり三月のパンタシアの物語を自分の言葉で伝えていきたい。そういうふうに変化していった10年間だったなと思います。
――その曖昧な気持ちが自発的になったのはどの時期ですか?「ガールズブルー」企画をスタートさせた2018年の夏くらい?
みあ どうして曖昧だったのかなと考えた時に、自分に自信がなかったこともあると思っていて。元々ものすごく歌唱力があって、自信を持って音楽活動を始めたというよりも、音楽は大好きだったけどエンターテインメントの世界で自己表現できることを目指していた時に、自分の声を信じてくれる人がいるから、精一杯表現してみようというスタートだった。右も左もわからないまま、音楽の世界に飛び込んだから、迷いも不安も大きくて。なので、リスナーだったり、三月のパンタシアを信じてくれる人がいてくれるとはいえ、自分を上手く肯定できなかった時代が——最初の2年間くらいはあったと思うんですね。
――メジャーデビューしてからもそうだったんですね。
みあ そうですね。当時はそんなネガティブなことは言えなかったけど、本当はや迷いと不安と自信のなさが自分の中に半分、もしくは半分より多いくらいあって。でも、自分が三月のパンタシアのみあとして存在していいんだって思えたのが、初めてワンマンライブを経験した時で。もちろん、そこに至るまでにも、たくさん応援のメッセージや感想をいただいていたんですけど、実際に初めて、リスナーの皆さんと生で、お互いに生身の姿で対面することができて。ライブの生の熱量っていうのをぶつけられた時に、初めて自分を肯定することができた。その経験がきっかけになっています。
――2017年11月にduo MUSIC EXCHANGEで開催された初のワンマンライブ「三月のパンタシア ワンマンライブ~きみとわたしの物語~」が契機になっていると。
みあ そうです。そこから活動により積極的になったし、みあとして、こういうことをしていきたいと自信を持って発信できるようになっていった。そこから、次の2ndアルバムが『ガールズブルー・ハッピーサッド』なんですけど、自分で楽曲の原案となる小説を書いてみたり、作詞にチャレンジしてみたりするようになって。だから、ワンマンライブの経験は実はものすごく大きいんですよ。色んなインタビューで「ライブが一番好きだな」って言い続けている根源的な理由がそこにあるのかなと思います。
――初のベストアルバムは2枚組となってますが、どう分けようと考えていましたか。今の話を聞くと、例えば、リリース順に並べるっていうやり方もあったと思うんですが。
みあ まず、楽曲数も多いので2枚組にして。じゃあ、何かコンセプトを分けようっていうのを考えたんですね。最初は極端に“光”と“闇”みたいに、明るい曲とダークな曲で振り分けて選曲していこうかなと思ったんですけど、ダークな曲ばかり集め過ぎても、気持ちが重たくなるばかりだなと思って(笑)。だったら、もう少し意味合いを広げて、“彩青”と“憂青”っていう2つのコンセプトに分けて。“彩青”は三月のパンタシアの爽やかで甘酸っぱくて、胸がキュンとするような楽曲。<憂青>はちょっとダークな心情や病んでしまう気持ち、あとは、泣き曲やクールな曲とか、憂いが滲む曲という意味で選曲していきました。
――“彩青”を象徴する曲を挙げるとすると?
みあ 新曲と「愛の不可思議」は絶対に入れたいなと思ってました。「愛の不可思議」は“愛とは君だ”っていうことを歌ったメッセージ性がとっても強い曲なので入れたかったんです。
――「はじまりの速度」でも“君が呼んでくれたら走っていく”と歌ってるんですよね。
みあ 本当だ!?気づかなかったけど、確かにそうですね。
――“君”というのはファンやリスナーのことですよね。
みあ そうですね。以前のインタビューでは“音楽”でもありっていう話をしたんですけど、何回も歌っていくうちに、これってやっぱりファンの意味合いが自分の中でも大きい>くなっているなと思いますね。
――新曲「LuMiNA」でも“君と生きるほど/この声は光って”というフレーズがありますが、どんなところから作った曲でしたか?
みあ 10年の集大成となる曲を作ろうという思いで作り始めて。光がキラキラ輝く中をとにかく疾走感を持って走り抜けていくような。もう誰にも追いつけないような速度で走っていくから、みんなもついてきてね、みたいな曲にしたかったんですね。なので、アレンジがすさまじいというか。
――転調もかなり多いですよね。
みあ そうなんです。目まぐるしいぐらい走り抜けていく。新曲を作るにあたっていくつか楽曲を集めたんですけど、やっぱり駄菓子O型さんのこの「LuMiNA」が10周年っていう節目で歌いたかった楽曲の情景とすごくマッチしていたので。
――三パシらしいダンスロックで始まって、ハイパーポップのように変化していきます。
みあ 三月のパンタシアのルーツはボカロ音楽にあるので、この10周年の集大成となる曲も情報量が多くて、とにかく音が詰まっているようなボカロの背景もありつつ、それこそハイパーポップ的な新しさを感じられる要素を入れてほしいというオーダーをしていて。なので、まさにぴったりな楽曲が完成したなと思っています。
――タイトルにもなっている“光”とはみあさんにとって何を表しているものですか?
みあ この10年間を振り返った時に、実は三月のパンタシアの物語の中では、これまでに何度も“光”を救いの象徴として描いてきていて。救われない物語の中にも、主人公たちの心の中にはちゃんとひと筋の光があり、闇の中にも1粒の光を大切に持っていたりする。そうやって、救いとして描いてきた大事なモチーフだと思っていて。実は自分が作詞した楽曲「愛の不可思議」でも“愛とは光だ”って歌っている。なので、“光”というのは、“青春”や“青”というキーワードと同じくらい、三月のパンタシアに密接なモチーフだと思っていて。なので、“これまで”と“これから”を照らす光という意味で歌いました。
――同じく“青春”についても聞かせてください。冒頭で“この青春もいつか散って消えるなら/この青が褪せるまで君を歌う”と歌っています。青春、青、君と冒頭の2行で大事なキーワードが3つも入っていますね。
みあ 「LuMiNA」の作詞をしている時に、三月のパンタシアの大事なキーワードを歌詞に入れようと思って。三月のパンタシアンにとって青春って何だろう?って考えた時に、ここまでの10年間の活動のすべてが青春だったなって思ったんですよね。ライブをやればみんなではしゃいで、笑い合って楽しい日々もあった。でも、終わってしまえば寂しくなって、1人きりになると急に孤独になったりする。でも、また会える日のために頑張る、みたいな。そういう青臭くて甘酸っぱい青春の情景を描いて走り続けてきた10年間だったなと思って。なので、私にとっての青春は三月のパンタシアだし、この青春が思いとしてはずっと続いてほしいですし、終わらないでほしい。
――「ランデヴー」では“物語がまだ続いていく”と歌っていますが、この曲ではいつかくる終わりを想像してますね。
みあ 人間は必ずどこかで終わりが来るし、そういう意味でも多分いつかは散ってしまうと思うんですね。だったら、散ってしまうその瞬間までは、君のことを歌い続けたいという思いを歌った曲ですね。振り返った時に素直に出てきた言葉が、この冒頭の2行だったのかなと思います。
――Disc1は「光るよいつまでも」で締め括られていますが、Dosc2はインディーズ時代の楽曲や「リスアニ!TV 5season」OPテーマ「花に夕景」など、初期の曲も多めで、歌声も全然違っていますね。
みあ 1stアルバムまでは発声方法もよくわからないまま、無我夢中で歌っていたんですよね。高音を出す時に喉を締めて絞り出すようにして歌ってたんですけど、その歌い方だと喉を痛めてしまうので、色々なアプローチを試していた結果、歌い方が変わってきて。でも、あの頃はあの頃でいいなと思える声の部分もありますね。「花に夕景」は1stシングルのカップリングにしか入ってないんですけど、当初、歌うのが難しくて。喉をグッと締めながら、必死に必死に歌っている。その表現は今はできないので、この時期しか歌えなかった歌い方だなって思います。
――では、Disc2の“憂青”盤を象徴する曲を挙げるとすると?
みあ 最新曲に気持ちが行きがちですが、「ビタースイート」はほの暗くてダークな部分を描くきっかけとなった楽曲だったので、やっぱりこの曲は特別な思い入れがあります。
――2ndアルバム『ガールズブルー・ハッピーサッド』収録曲ですが、この曲からアルバムに1曲は病み曲を入れるようになりました。
みあ あのアルバムを作っていくなかで、爽やかな曲やガーリーな曲、ロックな曲とか、色々バリエーションを考えたのですが、すごく病んでいる曲が1曲あってもいいなって個人的には思っていて。なのでスコップさんにも「とにかく病み狂ったようなピアノのフレーズを入れてほしい。わかりやすく病んでもらいたい」ってお願いして。個人的には完成した楽曲をすごく気に入っていましたし、すごく良い曲ができたという自信がありました。でも、リスナーの皆さんがどう受け取るのかな?と少し不安な気持ちはあったんですね。でも、結果的にはみんなに気に入ってもらって、人気曲になったので、自分の想いをリスナーに受け入れてもらえたのが嬉しかったですね。それまでは三月のパンタシアは、割とキラキラしてて甘酸っぱくてきれいな物語を歌ってきたけれど、そうじゃない、青春の裏側にある部分も歌っていいんだなっていう確認ができた瞬間でもありました。
――アルバムの病み曲の中では、3rdアルバム『ブルーポップは鳴り止まない』収録の「不揃いな脈拍」や4thアルバム『邂逅少女』収録の「君の幸せ喜べない、ごめんね」が入っていません。他にどうしても入れかった曲がありましたか?
みあ 自分からしたら全部がベストだと思っていたので、このセレクトは心が痛みますね。例えば、「ピアスを飲む」は“青春を暴く”という新しいコンセプトを連れてきてくれた楽曲だったので、必ず入れたかったんですね。あと、「恋はキライだ」は曲としては明るいんですけど、別れのさよならを歌った泣ける曲だなと思って。“憂青”のほうが候補曲は多かったですね。振り返ってみたときにこんなに別れの曲ばかり書いてたんだって思ったりもしました。
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