2024年11月に1stアルバム『Determination』を発表し、鮮烈なアーティストデビューを飾った声優・前島亜美。2025年4月には初のワンマンライブを成功させるなど、成長著しい彼女が待望の1stシングル「Wish for you」をリリース!自身初のアニメタイアップとなる楽曲は7月放送開始のTVアニメ『公女殿下の家庭教師』のオープニングテーマ。楽曲の制作段階でのエピソードや聴きどころ、今後の活動へ向けての意気込みを聞いた。
NTERVIEW & TEXT BY 仲上佳克
――昨年8月にキングレコードからのソロアーティストデビューを発表して、もうすぐ1年が経とうとしています。この1年間をどのように過ごされてきたのか、振り返っていただけますか?
前島亜美 「もう1年なんだな」という気持ちもありつつ、まだ1年だとは思えないくらい、とても濃い時間を過ごさせていただいているなと思います。
――1stアルバムの発売、1stライブの開催に続いて、いよいよ1stシングルの発売が決まりました。この1stシングルで、初めてアニメの主題歌も担当されることになりますね。
前島 アニメのタイアップは夢だったので、こんなにも早く挑戦させていただけることにすごく感謝ですし、それと同時に責任もしっかり果たさなきゃいけないなと思っているので、これからも頑張らなきゃなと思っています。
――アニメのタイアップが夢だったというのは「声優アーティストとして活動するからにはアニメの主題歌を歌いたかった」なのか、「元々アニメが好きだったからアニメの主題歌を歌えるのは嬉しい」なのかでいうと、どちらがより近いですか?
前島 後者ですかね。元々アニメがすごく好きで、アニメを観ることで毎日を生きられていたタイプのオタクだったので。そして、アニメが好きなのと同じくらい声優さんも好きで、声優さんのライブに行ったり、CDを買ったりもしていたので、ずっと声優アーティストというものに憧れがありまして。とはいえ自分は元々声優活動が主軸だったわけではないので、「まさか自分が声優となるとは!?」というところでまず驚きですし、さらに声優アーティストになれて、ずっと夢だったオープニングが歌えるなんて、学生時代の自分に教えてあげたら泣いて喜ぶんじゃないかなというくらい、人生は何が起こるかわからないなとすごく思います。
――初のアニメタイアップであると同時に、記念すべきご自身の1stシングルでもあるわけですが、楽曲制作はどのように進められていきましたか?
前島 表題曲の「Wish for you」はアニメタイアップということもあって制作が早くて、1年くらい前にはもう曲を選んで、歌って……みたいな感じでした。カップリングの2曲は今年に入ってから作ったんですけど、時系列でいうと昨年出したアルバムを作っている途中で並行して「Wish for you」も作っていて。なので、アーティストとしての歌声が世に出る前に「Wish for you」のレコーディングをしたということで、まず「自分の素の声って何だろう?」「どの声で歌おうかな?」って模索したりしていましたね。タイアップさせていただくアニメが『公女殿下の家庭教師』という作品で、すごくキラキラした、ときめきにあふれている世界観で、夢に対してもとても真っ直ぐに、ひたむきに頑張る女の子たちがたくさん登場するんです。そのきらめきみたいなものが、私が1stシングルで見せたいものと重なるなと思ったので、とにかくキラキラしていて、フレッシュで、それでいて王道アニソンな曲がいいなと思って、コンペで曲を探すところから始まりました。
――楽曲や歌詞にはどんな印象がありましたか?
前島 本当にキラキラしている楽曲で、音の中にストリングスとかも入っているので、ちょっと品のある高貴な感じが『公女殿下の家庭教師』の世界にも合っているなと感じているのと、サビとかがキャッチーなので、明るい曲なんだなというのが第一印象だと思います。しかも、歌詞がすごく良いというのがこの曲の厚みを出しているなと思っていて、私も好きな歌詞がいっぱいあるのですが……まず1番のサビにある“ときめきに溢れている毎日だから”というのが『公女殿下の家庭教師』の世界観を一言でギュギュっと表しているなと思っていて。この一言を心にイメージしながらライブで歌ったり踊ったりして表現しています。それと個人的にすごく好きなのが、2番Aメロの“夢を見るために資格は必要ないのだと”というところです。私自身も背中を押されますし、私の声優アーティストデビューという挑戦を肯定してもらえているような言葉で、歌っていてすごく勇気をもらえるし、自分のことも表してもらえているなと思います。
――歌うときも気持ちが入りましたか?
前島 レコーディングはかなり頑張って録った思い出があります。まだ不慣れだったところもあるんですけど、5~6時間くらいは録った気がします。その5~6時間でいったん終わりました、となったんですけど、録ったものを聴いてみたところでチームの皆さんと相談をして。やっぱり、アニメタイアップとなるとTVサイズとして流れる部分がすごく大事なので、もう1回チャレンジしようということになり、かなり時間をかけて、頑張って歌いました。
――レコーディングから時間が経った今、ご自身で聴いてみて、今の声や歌い方とは違った印象はありますか?
前島 ちょっと声が若い気がしていて(笑)。そんなわけないんですけど、自分の素の声で歌う勇気がまだちょっとなかったというか。明るい曲なので明るめの声色で歌ったほうがいいかなとか……そんなことを思った初々しさというか、手探り全力感みたいなものが声に表れていて。でも、それがこの『公女殿下の家庭教師』の世界観に合っているというか、どうなるかわからないけど全力でやってみる!みたいなひたむきさが逆に作品と合ったなと思いました。
――「Wish for you」のMVではダンスを披露されていますね。
前島 楽曲が王道アニソンなので、MVも超王道にしたいなと。今回もデビューアルバムのリード曲「Determination」のMVと同じ監督さん、撮影チームの方々にお願いしたので、「前島さんの好みはアーティスティックで、かわいさというよりは美しさとか人間味みたいなものが好きですよね?」みたいなテンションで打ち合わせが始まったんですけど、「ここは声優アーティストっぽいかわいさみたいなものを押してみたいです」というふうにお話をしまして。あとはとにかく初タイアップで私の顔を覚えてもらいたいなという部分も意識しつつ、自分の個性は歌って踊れることだと思うので、ダンスもフルで踊って、カットの中にたくさん入れてもらっています。サイズとかも色々変えながらいっぱい踊ったので、素敵に撮ってもらえて嬉しいです。
――お花と写っているジャケット写真も印象的です。
前島 『公女殿下の家庭教師』のビジュアルでお花が描かれていることが多かったのと、私自身もお花が好きなので、アートワークでお花に囲まれたいという話をしました。写っている花はすべて本物で、実際に花職人の方に撮影現場まで来ていただきました。花にも鮮度があって、ずっと同じ花では撮影できず、みずみずしい状態の花をたくさん入れ替えたりしながら撮影をしまして、こんなにお花に囲まれるのも初めてで、とてもきれいなアートワークができて、嬉しいです。
――『公女殿下の家庭教師』にはカレン役で出演もされていますが、カレンはいわゆる妹キャラということになりますか?
前島 主人公のアレンと血の繋がらない兄妹で、妹ではあるんですけど、どちらかというと妹系というよりは、ちょっとボーイッシュでかっこいい一面もある、凛とした女の子というキャラかなと思います。オーディションを受けるときから「カレンちゃんが一番かわいい!」って個人的には思っていたので、カレンちゃん役で決まったときはすごく嬉しかったですね。魅力的な女の子がいっぱいいる作品ですけど、カレンちゃんが唯一ケモミミで、耳としっぽがついていてモフモフしている。アニメーションで絵が動くと、カレンちゃんの感情が動いたときに耳がぴょこぴょこっと動いたりするんですよ。それがかわいくて何度も見てしまって、台本チェックが全然進まない(笑)。カレンちゃんは生徒会の副会長も務めるようなしっかり者で、勉強も剣術も魔法も得意で、本当に努力家で秀才な子なんですけれども、ドラマが展開していくにつれて、水瀬いのりさんが演じられるステラと、花澤香菜さんが演じられるフェリシアと、3人で作っていくシーンが多くなっていきます。そうそうたるお二方とお芝居をご一緒させていただいて、個人的にもすごく勉強になって“胸熱”でしたし、カレンちゃんとしても全力でお芝居させていただいたので、すごく貴重な経験でした。ぜひ、最終話まで観ていただきたいです。
――アニメ本編を観てから聴くと、楽曲の印象が違って聴こえることもある?
前島 そうだと思います。やっぱりメインヒロインというか、ティナちゃんの目線の歌詞なんですか?と聞かれることが多いんですけど、実はヒロインのみんな、どの子の目線にも寄り添えるというか、『公女殿下の家庭教師』自体が一人一人の女の子をすごくしっかり表現して見せてくれるので、ただかわいいだけじゃない厚みみたいなものもこの歌詞とリンクしていくかなと思います。
――カップリング曲「劇薬」はタイトルからして刺激的ですね。
前島 (このインタビューを行っている)現段階ではまだ曲のタイトルしか世に出ていなくて、それでも「劇薬」というワードが皆さん気になるみたいで「一体どんな曲がくるんだろう?」とザワザワしているところなんですけど、今回1stシングルを作るにあたって、チームの方々とお話をして「今の前島亜美のすべてを乗せよう」ということで制作が始まったんですね。「すべてを乗せる」ってどういうことだろう?と自分で悩んだりもしたんですけど……わかりやすく言うと、人間の感情は大きく喜怒哀楽に分けられるということで、喜・楽みたいな明るい感情を「Wish for you」で歌って、前島の光の部分が「Wish for you」だとしたら、影の部分というか、怒りの感情を「劇薬」で表せたらということで入れた楽曲になっています。「Wish for you」で初めて前島を知った方がちょっとびっくりしちゃうようなギャップをお見せできたらということで作っていきました。
――前島さんにも影の部分があるということですね。
前島 個人的にもかっこいいアーティストが好きだったりするので、自分のそういう面も育てていきたいなというところで。歌うなかでも“がなり”というか、叫ぶような歌い方をしているところもあるんですけど、それは今回初めて挑戦した部分なので、どういう反応があるか楽しみだなと思います。
――「アミュレット」は前島さんご自身で作詞をされています。
前島 「Wish for you」ができた後に「劇薬」ができて、最後に「アミュレット」を作っていったんですけど、喜怒哀楽で残る感情が哀ということで、それを詞の中で、言葉で感じられる曲にできたらいいなと思って曲を先にいただいてから詞を作りました。曲を聴いてみると明るくて前向きなテンションなんだけれども、音の中にどこか哀愁を感じられるような印象を受けたので、この方向性で歌詞が書けるかもしれないなと思って、作業を進めていきました。とはいえ1stシングルなので哀しいだけの歌にはしたくなくて、温かみのある哀愁みたいなものがありつつ、最終的には心に光を感じられるような言葉がいいなと思って書いていきましたね。この「アミュレット」という言葉はアルファベットにするとamuから始まるんですけど、カタカナにすると私の名前のアミが入るなと思って、その意図でカタカナのタイトルを付けたりしました。
――ご自身で作詞をされているとなると、どうしても実体験を書かれているのかな?と思ったりしてしまうのですが……。
前島 今回で作詞が3曲目なのですが、アルバムで2曲書いたときは実体験というか、自分のすべてを書いたみたいなところがあったので、今回作詞をするときにはスタッフの方から「自分のことは前の2曲で書けたから、普遍的なこと、みんなが共感できるようなことを書いてみませんか?」というご提案をいただいて、なるべく自分から切り離してというか、アプローチを変えてみたいなと思って書きました。なので実体験というわけではないんですけど、人との温度感みたいなものを想像するときに、一緒に暮らしている猫ちゃんを触りながら妄想したりしました(笑)。
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