アイナ・ジ・エンドがTVアニメ『ダンダダン』第2期OPテーマとして書き下ろした新曲「革命道中」が配信リリースされた。映画『変な家』の主題歌「Frail」やドラマ「なんで私が神説教」の主題歌「Aria」などを共に手掛けてきた盟友のトラックメイカーであるShin Sakiuraとのコライトによる楽曲は、作品のタイトル『ダンダダン』をコーラスに盛り込んだ正真正銘の“アニソン”となっているが、4月に事務所を移籍し、新たな道を突き進むアイナ・ジ・エンドの現在のテーマとも重なって聴こえる。アーティストとしてオリジナリティに溢れた独特の世界観を持ちながらも、「薬屋のひとりごと」や「ムーンライズ」、「劇場版モノノ怪」など、作品に寄り添った主題歌を歌ってきた彼女にアニメ主題歌における制作過程を聞いた。
INTERVIEW & TEXT BY 永堀アツオ
――最初にTVアニメ『ダンダダン』の第2期OPテーマのオファー受けた時の心境から聞かせてください。
アイナ・ジ・エンド 「めちゃくちゃ嬉しい!」というのが、何の飾り気もなく、それが本音でしたね。
――元々原作やアニメの第1期をご覧になっていました?
アイナ 最初にお話をいただいた時はまだアニメの第1期が始まっていなかったのですが、マンガが本当に大好きだったので、そんな機会をいただけて幸せだ~と思っていました。
――原作はどんなところが好きでしたか?
アイナ マンガで読むと、セルポ星人とか、オカルンが豹変した姿とか、奇妙なのにポップでかわいいなと思って。その絵には生命力があるけれど、かわいさがたくさん残った感じが私は好きだなと思っていました。
――TVアニメの第1期が始まって、どう感じましたか?
アイナ 第1期で一番良いなと思ったのは声優さんですね。マンガを読んでいるとモモって口が悪くて。その声色によってはちょっと怖くなるなあと思っていたんですが、こんなに絶妙な声優さんいるんだ!ってくらい、若山(詩音)さんは人を惹きつける声色を持っていて。こんなの、口が悪ければ悪いほど良いじゃん!って(笑)。
――好きなキャラクターはいますか?
アイナ みんな好きですけど、特にターボババアが好きですね。去年の11月末くらいに、まだ自分が第2期の主題歌をやるという情報が解禁される前に、UFOキャッチャーで、めっちゃ大きなサイズのターボババアを見つけたんですね。それがどうしても取りたくて。仕事の合間だったんですけど、マネージャーとエイベックスの人と一緒に頑張って。エイベックスの人は6000円くらい使ってくれたんです。
――そのくらい苦戦してるとお店の人が来てくれますよね。
アイナ まさに、来てくれました。マネージャーが呼んでくれて、「取れないです」って言ったら、少し移動してくれて。でも移動してもなかなか取れなかったので、結局、6000円以上使ってしまって。エイベックスの人が汗だくで必死に取ってくれて、最高でした。それをそのままお父さんとお母さんに持たせて、なぜか写真を撮ったりもして(笑)。
――あはははは。なんで?
アイナ 記念です!大阪のゲームセンターだったので。だから、ターボババアが好きなんですけど、第1期の最後にターボババアが会った猫も気になりますね。私は猫が好きなので。
――では、今回の楽曲に関してはどう制作していきました?
アイナ 元々「ダンダダン」が大好きだと言っていたShin(Sakiura)くんと作ったのですが、Shinくんも大好きなマンガだったので最高でしたね。
――Shin Sakiuraと作るというのは決めていた?
アイナ そうですね。高校の頃からずっと友達なので、理由がないというか。いつも「Shinくん、ちょっと曲作ろうよ」みたな軽い気持ちで誘っています。でも、制作時間はすごい濃密なんですよね。私、5~6時間くらい集中していたら、急にプツって切れて、「できない……」ってすぐに病むんですよ(笑)。いつも「もう作れない」ってなっちゃうんですけど、Shinくんはそこも向き合ってくれて。そういうわがままを言える相手です。だから、今回、Shinくんとやろうと思いました。
――何かテーマを決めて作り出したんですか?
アイナ それが、まずはアニソンをめちゃくちゃ研究したんです。アニソンの曲だけを研究するんじゃなくて、オープニングでちゃんと画が載っている状態で見るっていう。曲だけじゃなくて、画も込みでの研究だけで1ヵ月くらいかけて。あまり同じメロディがずっと続くと飽きるんだとか、展開多いよねとか。そういった研究から始めたので、後悔のない曲になったかなと思いました。大好きな曲です。
――そこで何か見つかりました?
アイナ 見つかりました。今回の「革命道中」はAメロがものすごくキーが低くて、Bメロでちょっとチルっぽい雰囲気にして。サビの前の“ダメダメ… 待て待て… ”は女性キーで歌って、サビで疾走感を出すという展開にすごくこだわったんですよ。セクションごとに全然、声色が違うようにしていて。
――裏で鳴っているビートもセクションごとに変わりますよね。
アイナ そう、ビートも何十パターンも試して。一番軽快に聞こえるものを探しました。テレビ前で観ているみんなが、良い意味で心地良いスピード感を感じてくれるくらいの気持ち良さ。かっこ良さより気持ち良さを重視したので、その展開にはきっと飽きないんじゃないかなと思います。それは、『ダンダダン』に影響された部分が大きいですね。『ダンダダン』って観ていて飽きないじゃないですか。原作を読んでいても、中だるみがないなと思うので。そういった部分も共鳴できるように意識しました。
――歌詞にはどんな想いを込めていますか?
アイナ 基本的にはモモとオカルンのセンチメンタル恋、心模様、揺らぎみたいなところですね。だけど、大切なものを守るためにだったら戦えるよねっていう気持ちも込めています。人のことが好きな気持ちで戦えるようになったのは初めてなんだよ、みたいな。大切な人を守るために戦い走り抜く様というテーマを決めて考えました。
――モモちゃんを傷つけた相手に怒って立ち向かうオカルン視点ですかね。
アイナ 1番がオカルン的な、ちょっと男性チックな歌詞になっていて。2番が女の子っていうテーマで書いています。最初の“唸るぜ”ていうワードは、オカルンの“萎えるぜ”っていうセリフからイメージして。『ダンダダン』と言えば、“萎えるぜ”っていうワードのイメージがあったので。メロディラインというか、その言葉を使わせていただきたかったというところで考えました。だけどそのままじゃなく、ちょっと変えて使ってみました。
――これまでも「薬屋のひとりごと」や「ムーンライズ」、「劇場版モノノ怪」などのテーマソングを作ってました、ご自身のアーティスト活動の中ではどんな立ち位置ですか?
アイナ やっぱり楽しいですよね。でも、アニメの書き下ろしって、実は自分でやったのはまだあまりないんですよ。「劇場版モノノ怪 第二章 火鼠」の「花無双」と「ムーンライズ」の「大丈夫」くらい。「薬屋のひとりごと」の「アイコトバ」は石崎ひゅーいさんに書いてもらった曲ですし、「劇場版モノノ怪 第一章 唐傘」の「Love Sick」はほぼTK(凛として時雨)さんだし、「渇望」は作詞作曲に関わってない。グループ時代のアニメ主題歌は全体的にサウンドプロデューサーがいましたし、自分もまだまだ可能性に満ちている気がしているので楽しいですね。
――作り方は違います?
アイナ 違います。例えば『ダンダダン』だったら、『ダンダダン』のマンガを読んで、言葉をたくさん書き出すんです。キャラクターが言っているセリフを書き出してそれを、自分だったらこうやって言うな、みたいな感じで歌詞に落とし込んだりしていますね。自分だけの引き出しじゃ出ない言葉なので、楽しいですね。
――“萎えるぜ”もそうですが、セリフをそのまま引用して使ったりはしないんですね。
アイナ そうですね。例えば、「ここは人間の血が染み込みすぎている」みたいなセリフがあって。「染み込む」ってなんかいいな、みたいなところから、サビが“暗闇染み込む世界で”になる、みたいな。キャラクターが言っているセリフを少し交えるだけで、アニメと近づける気がしますし、自分らしくもあるんですよね。
――近づきたいという気持ちがあるんですね。
アイナ それはもう、めちゃくちゃありますね。
――歌詞カードには明記されていないですが、“ダンダダン”というコーラスも入っています。
アイナ そこはデモの時に家で歌って、Shinくんに送ったら「いいじゃん」ってなって。
――ここまでタイトルを直接的に入れるのは珍しいんじゃないですか?
アイナ 第1期の主題歌をやったCreepy Nutsさんが「オトノケ」でモロに言ってるんですよ。“ダンダダンダンダダンダンダダン”って。だから、それを引き継ぎました。
――そうだったんですね。ただ、これだけ『ダンダダン』の世界観と寄り添いつつも、アイナさんの心情と重なっているところもあるなと感じていて。
アイナ そうですね。私の心情しかないですね。
――先ほど出た“暗闇染み込む世界”というフレーズは、1人ぼっちだったオカルンも想起しつつ、まさにアイナさんぽいなと感じました。ソロを始めたばかりの頃はよく“暗がり”や“ダーク”というワードも使っていましたし。
アイナ 確かに。自分の心情は全部当てはまっているというか。自分からはみ出たことは書いていないし、ほぼほぼ全部自分の実体験です。で、『ダンダダン』と共鳴している箇所を探っているから、全体的にアイナ・ジ・エンドではあるかな。おっしゃるとおり、“暗闇”もちゃんと味わったことがあるっていうところもあります。
――『ダンダダン』の世界観とアイナ・ジ・エンドの人生で共鳴した部分というのは?
アイナ やっぱり1人だと頑張れないこともあって。でも、恋のパワーでこの子を守りたいとか、この子のためなら頑張れたりするみたいなことってあって。それって、1人だと気づけない強さなんだなというのを、生きているなかで何回か思ったことがあるので。クラスで独りぼっちで、オカルト雑誌を読んでいたオカルンがどんどん外に出て行けたのはモモのおかげだったりするし。モモも、色んな過去と向き合って、自分を強くしていこうと
思えたのは、多分、オカルンを守るため。そうやって、人と生きていこうと思える部分には自分もすごく共感しました。
――アイナさんを暗闇から引っ張り出してくれたのはどんな存在の人なんですか?
アイナ 私の場合は本当に恵まれていて、小さい頃から周りのお姉ちゃんやお兄ちゃん、先輩たちに本当にお世話になっているので。出会ってきた人すべてだと思いますね。
――ちなみにアイナさんはオカルトや妖怪、幽霊、UFOなどには興味はあるんですか?
アイナ 一時期ありました。目黒の音楽スタジオで、屋上に出てUFOを見つけるまでずっとエンジニアの人と寝そべって空を眺めている時期がありましたね(笑)。
――出るって言われて?
アイナ そう、出るんだよって言われて。何日間かずっと本当に屋上でUFOを待っていた時期がありました。
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