――アニメの音楽メニュー(劇判曲の発注リスト)に必ずあるのが、キャラクターのテーマ曲だと思います。音楽がイメージしやすいキャラクターはいましたか?
百石 アニメを観てファンになってしまったのが敷島桜子さんなのですが、敷島さんの音楽(「マイペース」)を作っている時もすごく楽しかったです。オーダーには、「1人違う時間の進み方をしている女の子」というキーワードがあったので、そういう音楽を楽しみながら作っていた記憶があります。
――お洒落で、ちょっと切なさもある曲でしたね。独特だったのは秋山春乃をイメージした曲(M6)で、気だるさもある感じが良かったです。
百石 その曲はおっかなびっくり書いた曲ですね(笑)。僕、ギター弾きでブルースが好きなんですけど、この曲はドブロ・ギター(主にブルースで使用されるリゾネーター・ギターの一種)を使っているんです。スライド奏法で弾いているんですけど、これをアニメでやったら怒られるのではないかと思ったのですが、採用していただけたので良かったです。前半はグダグダ感を出しているんですけど、後半はテンポアップして明るい曲になっていく。ここのモチーフは、誰もわからないとは思うんですけど、ザ・ビートルズの「オクトパス・ガーデン」で、レスリースピーカー(ロータリースピーカーの一種)を通したギターや鐘の音はそこからイメージしています。
――言われてみると、わかります。ザ・ビートルズでいうと、同じく#6「山梨でカレー、食べます」で流れていた曲(「カイトフォト」)からも、「ラヴ・ユー・トゥ」が思い浮かびました。
百石 そうそう。そういう感じがいいなと思って書いたんです。あとは世界中の民族音楽が好きで、実際にそういう曲も作るんですけど、インド音楽は得意中の得意なんですよ。インド楽器ももちろん大好きで。
――サイケな感じも出て、良いですよね。
百石 すごくサイケですよね。
――また、クロクマ(玄熊虎代)先生が登場した時に流れる曲(「玄熊先生」)は、ホラー感がありました。
百石 この曲のモチーフは、『アダムス・ファミリー』で、ホラーコメディといったイメージで書きました。また、ホラー曲もクロクマ先生の曲以外に2種類あって、#5「心霊スポット憑依事件」のラストで春乃さんがもう一度霊に憑かれてしまった時に流れていた曲(「憑かれちゃった」)はホラーコメディ曲になります。もう1つ、本気ホラーの曲(「何か見えてる?」)も書いていて、これは(アルフレッド・)ヒッチコック監督の『サイコ』をモチーフに作った曲になります。この曲は夜中に真っ暗な部屋で作っていたんですけど自分でも怖くて怖くて、時々後ろを振り向きながら作っていました(笑)。この曲は「ここぞというところで使います!」と監督がおっしゃれていました。(※#7「初めてのアニメ化」クロクマ先生作品の収録中に起こった怪奇現象のシーンや、#3「アニメ化直前!!地獄の弾丸聖地巡礼スタンプラリー!!」の夜叉神峠のシーンで使用)
――アニメを観ていて、よく流れていて印象的だったのが、ピアノとクラップから始まる楽曲(「撮影旅行」)です。
百石 はずむ感じのイメージで作った曲ですね。これはあまり考えずに、アコースティックという縛りもなく「普通に旅行するのが楽しい!」というイメージで書いた曲になります。同じく、撮影旅行をテーマに書いた曲がもう1曲(「ロードムービー」)あって、それはロードムービー的に使うということを監督がおっしゃられていたんです。なので、走る車から見える景色だけが映っている、セリフのないシーンなどで流すイメージで書きました。この曲は尺を長めにというオーダーだったので2分以上ある曲なのですが、展開はほしいだろうと思って作りました。
――また、#1の駄菓子屋のシーンで流れていたベースから始まる曲(「駄菓子屋さん」)も、癖になる曲でした。
百石 これも作っていて楽しかった曲ですね。モチーフにしたのは、ゾンビーズの「ふたりのシーズン」という曲です。完成したものは、全然違う雰囲気になっているので、あまりわからないかもしれないですが、監督からオールディーズの世界観がほしいというキーワードがあったんです。それで僕のほうから、駄菓子屋なので「昭和のオールディーズですか?」と聞いたところ、「洋楽のオールディーズの雰囲気です」とのことだったので、その時にパッと「ふたりのシーズン」が思い浮かんだんです。ただ、最初はアニメの劇判曲なのでもう少しアニメに忖度した曲を提出したのですが、全然ダメで。開き直って、最初のイメージで曲を書いて提出したら、OKをいただけました(笑)。
――個人的には、「スタンド・バイ・ミー」(ベン・E・キング)だと思っていました。
百石 あぁ確かに!その2曲は似ているかもしれないですね。実は打ち合わせの時から、監督の出してくるキーワードの節々にオールディーズのイメージがあったんです。シネフォト部のテーマとして制作した曲(「シネフォト研究部」)も、監督がリファレンス曲として教えてくれたのが、1960年代のアメリカのホームドラマで流れているような曲だったので、そのイメージが監督にあったのかもしれないですね。
――この曲には途中でスクラッチのような音が入っていますよね?
百石 そこがデジタルとアナログの融合という部分で、そのまんまやってしまうとただのオールディーズになってしまうし、デジタルさは求められていたと思うので入れました。
――少し話も出ましたが、コメディ曲もTVアニメ『mono』の世界ではすごく活きており、ギャグシーンに合っていました。
百石 ありがとうございます。コメディ曲が大好きなので褒められると嬉しいです(笑)。今回はコメディ曲を2曲書いたんですけど、その中で展開を入れるのって実は難しいんです。でも、好きなので一生懸命書きました。わりと色んなところで使われていたと思います。
――ドブロ・ギターの話もありましたが、他に変わった楽器を使った楽曲はありますか?
百石 それだとカヴァキーニョですかね。ハワイのウクレレはナイロン弦ですけど、カヴァキーニョは、鉄弦のウクレレのような南米の楽器で、弦も4本なんです。これは#3「アニメ化直前!!地獄の弾丸聖地巡礼スタンプラリー!!」で陣馬形山に着いたシーンで流れていた曲(「着いたど~」)で使っていますが、普通のギターでは出ないような鉄弦の倍音が出るので面白いんです。あと、マンドリンもどこかで使っていたと思いますが、複弦のある楽器だと世界観が一瞬で変わるので、いいなぁと思っています。
――煌びやかな音がしますからね。たくさんの制作秘話を聞かせていただきありがとうございます。監督と何度もやり取りしながら、劇伴が作られていることが知れました。
百石 話したことは、あくまでこちらの立場からの話でして、監督や制作サイドが捉えているものと、また少し違うと思うんです。例えば、僕が提出した楽曲を良いと思っても、映像に合わせてみると合わないので、「やはりこうしてください」と変更になったりすることもある。そこはフラットにやり取りをしていくことが重要になるんです。最終的に監督がイメージしている音楽を作ることが僕にとって一番大事なことなので。
――あくまで、監督が求めるものを書いていくのですね。
百石 ヒッチコックの作品って、ヒッチコック自身が通行人などで映画に出演したりするんです。それと同じように、僕も劇伴を作る時は自分の主張をどこかに入れているんです。それはほんのちょっとしたことだったりするんですけど、制作にあたっていつも楽しみにしていることです。
――「百石さんの音だな」というのがどこかにあるんですね。それはすごく面白いお話です。
百石 ただ、放送が始まってから『mono』に対するSNSのコメントを読んだりするんですけど、その中に『けいおん!』っぽいと思ったら、百石さんだったというコメントが多くて、これは良いことなのか悪いことなのか、ちょっと考えちゃったんですよ。別に意識して書いたわけではないけど、そう思うんだなと。
――それは百石さんの印があるということなのかもしれません。
百石 考えてみると、先程ギター弾きだったという話はしましたけど、僕はジャズギターをすごく勉強していたんです。だから劇伴を作る時にコード進行がスタンダードジャズになることが多いんですね。そこに共通項を感じたりするのかな?とちょっと思ったんです。クラシックがルーツの方が使うクラシック独特の持っていき方があるように、ジャズにもそれがあるので。
――共通するものを潜在的に感じ取っているのかもしれないですね。では最後に、『mono』ファンの皆さんへメッセージをお願いします。
百石 劇伴はあくまでもお話を盛り上げるツールの1つだと思っていて、主役になるべきものではないと思っています。今は出来上がったアニメを観る立場なので、皆さんと同じ気持ちで楽しんでいます。これからも『mono』を楽しんでください!
●作品情報
TVアニメ『mono』
TOKYO MX 毎週土曜24:00~
とちぎテレビ 毎週土曜24:00~
群馬テレビ 毎週土曜24:00~
BS11 毎週土曜24:00~
MBS 毎週土曜26:08~
山梨放送 毎週木曜25:29~
AT-X 毎週火曜23:00~
【配信情報】
ABEMA・dアニメストアにて毎週土曜24:00~地上波同時配信
ほか各配信プラットフォームにて順次配信中
<イントロダクション>
芳文社『まんがタイムきららキャラット』にて連載中の、あfろによる人気4コマ漫画『mono』
アニメ・実写化も果たした代表作『ゆるキャン△』でキャンプブームを盛り上げたあfろが、写真部と映像研究部が合体した「シネフォト部」に所属する女子高生たちを中心に描く《今週末の楽しみ方漫画》。
360°パノラマカメラでの撮影や、凧にカメラを括り付けた疑似ドローンなど様々な技法を用いて、山梨県甲府市を中心とした景色や彼女たちの日常を切り取っていく。
『ひだまりスケッチ』や『ぼっち・ざ・ろっく!』など、様々な作品をアニメーションとして送り出したアニプレックス×芳文社のタッグに、新進気鋭のスタジオソワネが加わり映像化が実現。
スタッフ陣は、監督に愛敬亮太(「呪術廻戦 懐玉・玉折/渋谷事変」)を迎え、キャラクターデザインを宮原拓也(「恋する小惑星」)、シリーズ構成を米内山陽子(「ゆびさきと恋々」)が担当。
今注目のクリエイター陣が集結。
新たな週末の遊び方を、一緒に見つけませんか?
【プロローグ】
今週末、何して過ごす?
高校の写真部員・雨宮さつきは大好きな部長の卒業により意気消沈していたが、
親友でもう1人の部員の霧山アンからの激励により、再び部活動を頑張る決心をする。
しかし、さつきが意気込んでオークションで購入した360°カメラが届かない。
アンが出品者を調べると学校のすぐ傍に住んでいるらしい……。
さつきとアンが出品者の住所を訪れるとそこには駄菓子屋が。
2人はそこで漫画家の秋山春乃と出会い、「マンガのモデルになって欲しい」という依頼を受ける。
元映画研究部の敷島桜子を加え写真部と合併した「シネフォト研究部」は、春乃の取材に協力することになるが……?
【スタッフ】
原作:あfろ(芳文社 『まんがタイムきららキャラット』)
監督:愛敬亮太
助監督:諸冨直也
キャラクターデザイン:宮原拓也
シリーズ構成:米内山陽子
美術監督:藤井里咲 野村正信
色彩監督:小松さくら
CG監督:小川耕平
撮影監督:荻原猛夫
編集:柳圭介
音響監督:田中亮
音響効果:北方将実
音楽:百石元
アニメーションプロデューサー:藤田規聖
アニメーション制作:ソワネ
【キャスト】
雨宮さつき:三川華月
霧山アン:古賀 葵
敷島桜子:遠野ひかる
秋山春乃:上田麗奈
駒田華子:河瀬茉希
【主題歌】
オープニングテーマ:シネフォト部「メニメリ・メモリーズ!」
エンディングテーマ:halca「ウィークエンドロール」
Ⓒあfろ/芳文社・アニプレックス・ソワネ
TVアニメ『mono』公式サイト
https://mono-weekend.photo/
TVアニメ『mono』公式X
https://x.com/mono_weekend
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