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INTERVIEW

2025.07.02

新たな出会いや挑戦の詰まった多彩な楽曲たちが、心を揺さぶる1枚に!岡咲美保、『SHAKING』リリースインタビュー

新たな出会いや挑戦の詰まった多彩な楽曲たちが、心を揺さぶる1枚に!岡咲美保、『SHAKING』リリースインタビュー

声優・アーティストの岡咲美保が、7月2日に1stミニアルバム『SHAKING』をリリース。TVアニメ『公女殿下の家庭教師』EDテーマに起用された「少女のすゝめ」を筆頭に、目前に控える3rdワンマンライブを見据えた自作詞曲「イエロー♡ビート」や俊龍からの提供曲「月の季節」といった新曲3曲に加え、ボーカロイド曲「ブリキノダンス」のカバーなどを通じて、岡咲の多彩な歌唱表現を堪能できる色とりどりの楽曲がぎゅっと詰まった1枚に仕上がった。そんな本作での表現に彼女が込めた狙いや想いについて、制作秘話を通じてじっくりと迫る。

INTERVIEW & TEXT BY 須永兼次

ただ盛り上がるだけで終わらせたくない!「イエロー♡ビート」に込めた想い

――前作「JOY!!」のリリース後、“リスアニ!LIVE 2025”のSATURDAY STAGEに出演されました。声出しOKの日本武道館で歌われた感想や、印象深く心に残っていることからお教えいただけますか?

岡咲美保 「やっぱり、“リスアニ!LIVE”大好きだなぁ……」と思いました!「ライブって素晴らしいものなんだ!」ということを教えてくださったのが、私にとって最初の有観客ライブだった3年前の“リスアニ!LIVE”でしたから。それで今回は“初の声出し”ということで、“リスアニ!LIVE”だからこそセットリストも攻め攻めにして……色んなファンの方の予想を裏切り(笑)。

――かなり意外性のあるセットリストでしたよね。

岡咲 話し合いも、結構白熱しました!(笑)。でも最終的には、チームとしても「今回は挑戦してみよう」と決断をしてくれて。出番の最後には自分の中でも特別な「Starting Bell」という楽曲も歌いまして……「絶対に、盛り上がる!」とまではいかないような曲を歌っても、ものすごく盛り上がってくださった皆さんの熱量がすごく嬉しかったですね。それと私、結構考えながらステージングするタイプなんですけど、あそこまでステージ上で「本能で歌う」というか、叫ぶように歌えたのは初めてだったようにも思います。

――そしてこの度、ミニアルバム『SHAKING』がリリースとなります。

岡咲 『SHAKING』というタイトルになったのは、3rdワンマンライブのタイトル決めがきっかけなんです。その話し合いで私が「体を動かして楽しんでくださるお客さん、多いよね」みたいなことを言いまして。それは楽しいし嬉しいことだけど、心を揺らしていけるというか“命を感じていく”みたいな……「ライブだけで感じる鼓動」みたいなものも大事にしたくて。そこで、過去のワンマンにもなぞらえて「ライブタイトルは“ハートシェイキング”かなあ」となり、ミニアルバムを出させていただくんだったらタイミング的にライブとリンクできるように、「今までアルバムが『BLOOMING』『DREAMING』と続いているから、『SHAKING』にしよう!」と決まっていきました。

――ということは、「ハートシェイキング」という言葉が用いられた「イエロー♡ビート」の歌詞ができたのはその後?

岡咲 そうです。そもそもこの曲、私が作詞する予定ではなかったのですが、サウンドを聴いた時に「この曲で、私が作詞をしてもいいですか?」と提案しまして。

――そう思ったのは、なぜですか?

岡咲 その時の自分が「何か言葉で、今の自分の価値観みたいなものを残しておきたい」というモードに入っていたタイミングだったんですね。そんなところに、すごく好みのサウンドが降ってきてくれて……本当に直感なんですけど、「あ、書けるかも!」と思ったんですよ。それで相談したら、プロデューサーに「締切は1週間なんですけど大丈夫ですか?」と言われまして(笑)。それから覚悟を決めるまで何日か悩んで、決めてからは1日で書きました!

――その勢いも手伝ってでしょうか。歌詞から岡咲さんの姿が浮かぶ曲になっているようにも思います。

岡咲 嬉しい……ちゃんと承認欲求とかも散らばらせたつもりなので(笑)。みほちゃんず(※岡咲のファンネーム)にも「認知してほしい」みたいな承認欲求はあるだろうし、アーティストにも絶対あるものだと思うので、終盤がちょっと重めだったりするんです。

――そんな「イエロー♡ビート」は、今まで作詞に携わられた曲2曲とはサウンド性がまったく異なるアッパーチューンです。作詞のポイントにも、違いはありましたか?

岡咲 ありました。「ライブで盛り上がる楽曲にしたい!」というのは大前提にしつつ、単に“盛り上がる”だけで終わらせたくなくて。ライブに参加している時って、楽しみながらも終わりに近づいていることも感じているじゃないですか?それはアーティスト側も同じで、やっぱり“終わりに向けて盛り上がっている”というのはどこか見えてしまっている。その刹那的な、盛り上がりの切なさを入れたかったんです。そこを無視しちゃったらなんだか寂しいな、と思って。それと私、“言葉遊び”もずっとしたかったんです!

――言葉遊びですか?

岡咲 はい。これまではすごくきれいな言葉で自分の想いを紡いできましたが、「日本語として一見わからないけど、言いたいことはすごくわかる!」うえに「言葉がかわいい」という感じの言葉遊びにも挑戦したかったんです!「イエロー♡ビート」で言うと、例えば“ぽしゅってドンして”とか“ウギャッってきゅんして”みたいなフレーズって、正直どの言葉を選んでも良かったんですね。それを全部日本語として口に出してみて、「語感が一番良かったもの」を重視して選んでいきました。

――ちなみにこの曲、“100秒のイノチが 駆けて戻らないのに”のフレーズでちょうど100秒になっていませんか?

岡咲 そうなんです!気づいてもらえて嬉しいです!チーム美保、誰も気づかなかったんですよ!(笑)。

――それは狙った?

岡咲 はい、狙いました!やっぱり2番の作詞って、1番で割と言いたいことを言った後なので、若干難しさがありまして。それで悩んでいるなかで、「あれ?この曲100秒経ってるわ」と気づいて。で、「楽しく曲を聴いている間の“あー、戻ってこないんだなあ……”となる感覚も、ライブと似ているな」と思って、書かせていただきました。そういうところも含めて、本当にそのときの“ノリと勢い”みたいなものを受け止めてくれる楽曲でしたし、そこが上手くハマってくれたなと感じています。

――そんなこの曲、歌ってみていかがでした?

岡咲 難しかったです……7~8時間かけた気がします。

――普通の倍くらい?

岡咲 そうなんですよ。まず……パーツが多い(笑)。ライブで盛り上がるために、ガヤもすごく多いんです。プラス、ちゃんとリズムに乗れないと聴き心地が良くならないので、そこの合わせ方も大事にしましたし。それに喉が開いてくることでよりライブ感も出てくるので、「たくさん歌ってナンボ!」な体育会系レコーディングでした。

――「アンビリバボーアンセム」とコンセプトが近いようにも思うのですが、この曲ならではのポイントは?

岡咲 「アンビリバボーアンセム」は「バカになってナンボ!」みたいな感じがあったんですが、「イエロー♡ビート」はそこまで捨てきれていないところが愛おしいんですよ。特に個人的に好きなのが、“冴えないハート”というフレーズで。見つけてほしいけどそこまでアピールできないし、終わっちゃうの寂しいけど参加したいし……みたいな煮え切らない気持ちをバーン!と昇華してくれる曲になったらいいかなあと思うので、“ライブに行くまでの自分”みたいなところもすくい上げてくれる曲になれば嬉しいですね。

「少女のすゝめ」「月の季節」は、いずれも新鮮で新しい扉を開ける曲に

――では続いて、リード曲「少女のすゝめ」についてお聞きしていきます。こちらも岡咲さんの持ち歌にはあまりなかったタイプの曲ですよね。

岡咲 はい。その新鮮さが、選んだ決め手になりました。この曲は女の子たちが日々励む物語であるTVアニメ『公女殿下の家庭教師』のEDテーマなので、「生きている鼓動のまま終わらせたいから、BPMはちゃんと保ったままで次週に繋げたいな……」というイメージでデモ曲を募らせていただいたんです。他にもかわいくて楽しい曲はたくさんあったんですけど、この曲が本当に新鮮で。しかも自分が一番大事にする“中毒性”もあるように感じたんですよね。

――イメージする“EDテーマとして欲しい要素”にマッチしながら、すごく新鮮に感じる曲に出会えた。

岡咲 はい。それに歌詞も、“文学少女”的な世界観があるじゃないですか?魔法の世界ではありますけど、“家庭教師”という「勉強」を連想する作品にあてた曲で、四字熟語みたいに色んな漢字がたくさん入っているのもすごく素敵だなあと思って。今回、作・編曲の澤田(空海理)さんは初めましてだったんですが、どことなくレトロ感のある、すごく素敵な曲を書いてくださって感謝しています……懐かしい曲が好きなので(笑)。

――そんなこの曲はリズムがスウィング調で、繰り返しになりますが岡咲さんの持ち歌としては新鮮なものとなっています。

岡咲 自分が「リズムで歌う」というか、「縦を揃えながら歌ったり聴いたりする」ことがすごく好きなので、歌う時には言葉をそこにハメていったといいますか。声優としても、難しい言葉を発音すること自体が楽しかったりするので……壁にぶつかるようなこともなく楽しくレコーディングをさせてもらいました。ただ、2サビ最後の“世界はまわっているのさ”のフレーズは難しかったですね(笑)。ここまで一気に歌い上げるのは、初めての経験だったので。

――加えて、全体的には歌声には、サウンドにマッチする軽快さみたいなものも大事になってくるように思ったのですが。

岡咲 そうですね。メロディ自体に十分キャッチーさがありましたし、なんと言っても「リピートしてほしい」という気持ちがあるので、「聴いていて疲れない」というか……「お散歩中ずっと流していても、ご機嫌でいられる」ようなものはすごく重視していました。

――確かに、お散歩にはぴったりかもしれないですね。

岡咲 そう、ぴったりなんですよ!私、実際にお散歩しながら聴いたりしています!聴くのもいいし、鼻歌でもいいし……ご機嫌になって、家事も捗りそうですよね。

――ただ、EDテーマでありミニアルバムの最後を飾る曲らしく、締め括り感みたいなものも持った曲になっています。

岡咲 そうですね。最後「じゃーん!」となって、“センキュー!”で終わりますから(笑)。“センキュー!”はレコーディングの最後にやったので、チーム的には若干“打ち上げ感”もありまして。最初はかわいくやっていたんですが、録った後に多数決を取ったら作家さんと私が選んだほうが多くなったので、かわいさよりも刺激のあるボイスになりました(笑)。楽曲自体もずっとご機嫌気分で、最後の“センキュー!”もすごくご機嫌で良いのではと思って。

――この曲のMVはカフェの閉店作業がメインになっていまして、それにプラスしてパフォーマンスシーンがありました。

岡咲 撮影は1つのカフェの中で行なっていまして。普段だったらミュージシャンの方々が演奏されていたりするステージをお借りして、「MV!」という感じのパフォーマンスをさせていただきました。

――そのステージシーンや曲の雰囲気も相まって、ミュージカル調のMVだとも感じました。「今は下積みだけど、理想の自分はステージ上のもの!」みたいな。

岡咲 確かに。そうとも取れますし、「それ楽しいー!」みたいに気軽に妄想しているだけとも取れますし……どちらにも当てはまる塩梅に仕上げていただいたように思います。ただ、実際ミュージカルみたいに軽快なリズムに合わせてモップがけをしながらステップもやったんですけど、わかりやすく私の運動神経の悪さが映像に出てしまって(笑)。そこがサイドステップのカットに変わったりしています。

――閉店作業で掃除をしていたはずなのに、最後はかなり散らかして終わっていましたね。

岡咲 まさに“センキュー!”のところですね(笑)。あれ、膝スライディングがすごく難しかったです。しかも音ハメもあったので、監督さんの合図に合わせて何度もトライして。音ハメで言えば、Dメロでモップを回すところも難しかったですし、“回っているのさ”で地球儀を回すところも「どれくらい回転させるか?」とか……ちょっとしたアクションみたいな部分もあり、難易度高かったですね。

――そしてもう1曲の新曲「月の季節」は、俊龍さんが作詞・作曲を手掛けられました。

岡咲 これ、初めて言うんですけど……実は以前、ラジオ番組「ANISON INSTITUTE 神ラボ!」で俊龍さんのフェスの話題が出た時に、「俊龍さんに書いてほしい!」と思ったことがきっかけでお声掛けしてできた曲なんです!受けていただけたという連絡をスタッフさんにもらった時には私自身も「え?え?いいの!?」とびっくりしました。

――楽曲のイメージについても、希望を伝えられたんですか?

岡咲 はい。“岡咲美保”としてなかなか出会えない扉を俊龍さんに開けていただきたくて、「かわいいよりはかっこいい前面で、ピアノイントロでお願いしたいです」とお願いしまして。逆にそれ以外は、全部おまかせでした。

――そのリクエストは叶えられた曲になっていると思うのですが、そのうえで最初に聴いたときはどんな感想がありましたか?

岡咲 「かっこいい……!」と思いました。覚醒してステージに立てる曲ってなかなかないので、私でありながらも、更にギアを上げてくれる曲になりそうで。ライブもすごく楽しみです。あと、メロディとピアノの音だけの段階を聴かせていただいて、俊龍さんから入れたい要素について聞いていただいた時に、「“カンパネラ”って感じがします!」とお伝えしまして。それを受けてサビの“鐘が鳴るよ月の季節”のフレーズや、一番大事なところに“鐘”を入れてくださったんです。それこそ“リスアニ!LIVE 2025”で歌った「Starting Bell」もそうですが、自分のアーティスト活動の中で“鐘が鳴る”というのが1個のサインになるのかな?と思っていた段階でいただいた曲なので、より自分の中で“鐘”というモチーフが特別になってきたような感じがしています。

――そんな「今までにない曲を」という希望から生まれたこの曲、歌ってみていかがでしたか?

岡咲 レコーディング前は歌えるかどうか想像がつかなかったんですけど、1回目に歌った時からすごく歌いやすくて気持ち良かったです。それに、歌の中でもお芝居をしている感覚で歌えたといいますか……私、「自分の中での葛藤」みたいなお芝居がすごく好きなんですね。「わかってほしいけど、わかってもらえないんだろうな」って塞ぎ込んでいる子とかのお芝居がすごく好きなので、その延長線上というか。例えば1-Aメロの“声 『君らしく』 嘘 『歌えばいい』”も、メロディでありながらすごくセリフっぽいと思ったので、演じる気持ち良さみたいなものも含んでくれている曲のように感じました。

――また、例えばBメロの追っかけが1オクターブ下だったりと、低音も生かす曲になっている印象があります。

岡咲 そういった低音の支えもあったりして、自分の中では“太陽と月”じゃないですけど、普段のアーティスト活動で見せている「明るく!」とは違った自分を引き出してくれる楽曲にまた出会えたようで嬉しいです。まだまだ岡咲美保の中では、少数派なジャンルなので。

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