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INTERVIEW

2025.06.03

念願だった初の全国ツアーも決定!Who-ya Extended 、TVアニメ『ばいばい、アース』第2シーズンOPテーマを含むニューシングル「Aufheben」の制作過程を振り返る。

念願だった初の全国ツアーも決定!Who-ya Extended 、TVアニメ『ばいばい、アース』第2シーズンOPテーマを含むニューシングル「Aufheben」の制作過程を振り返る。

アコースティック、ロック、エレクトロニカ。重層的なミクスチャーサウンドをジャンルレスに奏でる気鋭のクリエイターズユニット・Who-ya Extendedの新曲「Aufheben」は、TVアニメ『ばいばい、アース』第2シーズンOPテーマのために書き下ろされた、哲学的で深奥な言葉が踊る、彼ららしさが存分に詰まった1曲だ。昨年11月に5周年を迎えた彼らだが、デビュー当初から自身の音楽への向き合い方にも変化が生じたと語る。その象徴にもなったカップリング曲も含め、楽曲制作にかけた想いを聞いた。

INTERVIEW BY 北野 創 TEXT BY 河瀬タツヤ

物語のキーワードとなる「Aufheben」の概念

――今回のインタビューはリリース後に行っていますが、ファンの方からの反応や反響はいかがでしたか?

Who-ya Extended 今回久しぶりにリリースイベントをやらせていただいたんですが、多くのファンの人たちが足を運んでくれて、「楽曲のここが好きです」「歌詞のこの部分が好きです」といった、ストリーミングの再生数のような数字だけの反応ではないリアルな声を感じられました。表題曲「Aufheben」の歌詞は難解な言葉を多く使っている一方で、カップリングの「Re:Call」と「ALONENESS -add Prologue-」は頭の中でイメージしやすい言葉をあえて選んでいるので、イベントではカップリング曲の話が多かった気がしますね。

――そんな難解なテーマ性を含んだ「Aufheben」は、TVアニメ『ばいばい、アース』の第2シーズンOPテーマとして書き下ろされた楽曲です。

Who-ya 「Aufheben」という言葉はドイツの哲学者・ヘーゲルが提唱した哲学用語で“止揚”という意味で、二者の対立をただ単に良くないよねと否定するだけではなく、一旦否定しながらもそこからまた高いレベルに昇華していくという概念なんですけど、2年前くらいにお話をいただいてアニメサイドとやり取りしているなかでもよく挙がっていたワードになります。実際、アニメの第15話のサブタイトルにも使われたくらいですし、『ばいばい、アース』という物語の中での1つのキーワードになる単語だと当時話を聞いていたので、今回その言葉から広げて楽曲を作っていきました。

――そうだったんですね。作品に触れた時の第一印象はいかがでしたか?

Who-ya 最初に『ばいばい、アース』の文章や設定を見させていただいた時には舞台っぽい演劇的な作品だと感じたのですが、読み進めていくと作中の世界で唯一の人間である主人公のベルが、「自分自身ってなんだろう?」と問いかけながら自分の居場所を探して物語がスタートする “自分探し”がテーマだったので、自分たちの世界ともすごく繋がっているところがある作品だなと思いました。自分たちもこれまで4回ワンマンライブを開催したり、海外公演でも10ヵ国ほど周らせてもらったりして、音楽やライブを通じて自分の想像できなかった世界をたくさん見ることができた一方で、視野が広がって選択肢が増えていくほど「自分は何がやりたいんだろう?」「結局自分ってなんなんだろう?」と考えることも多くなっていたので、自分に重ねやすい部分もありました。

――今回は物語の後半を飾るOPテーマになりますが、作品サイドからはどういった要望があったのでしょうか?

Who-ya 先方からの指定はそこまでなかったです。第1シーズンはベルの矢印が自分に向いているなかで旅が始まって、そこから色んな出会いや別れを経て大きな戦いを迎えるのですが、それらを経たことで、逆に第2シーズンではベルの矢印は外を向くようになったと思うんです。自分たちとしてはそういう部分を“Who-ya Extendedの世界”に落とし込んで作ってみたいというのは要素としてありました。「Aufheben」の概念は、今回は自分と相手、または自分と世界の2つの関係の中での自分探しという観点でスポットを当てています。

――なるほど。それにしても「Aufheben」という概念を歌詞だけでなくサウンドに落とし込むのは結構難しいですよね。

Who-ya そうですね。ボーカル面では、すごく大雑把に言うと曲を聴いてくれた人をヒリヒリさせたいという気持ちがあって。

――確かに切迫感がある歌い方で、あえて苦しそうに歌っているようにも聴こえますが、それはどういった意図で?

Who-ya 厚みのあるトラックなので、その中にボーカルを入れた時にただきれいに上手く歌うよりも、ボーカルに耳が向けられるように高音の部分や息の成分についてハッとさせられるようなことができたらと思いながら歌いました。あと、ボーカルのエモーショナルな要素についても今回トライしてみました。今はほとんどの人がサブスクを使って移動中にイヤホンで音楽を聴くことが多いと思うんですけど、その場合、他の音が聴こえるようにある程度のボリュームで聴くじゃないですか。でも自分はとにかく大きい音で、欲を言えば家で爆音で聴いてほしいという思いがあるので、大きい音で聴いた時に1つの作品としてまとまりがあるようにサウンドを作っています。とはいえ爆音で聴くのはなかなか難しいとは思うので、イヤホンやヘッドホンで聴いた時にも、例えば最初のベースから始まる印象的な音など、この楽曲の良さをさらに感じてもらえるようにも作っていますね。

人間の精神性は矛盾ばかり

――静謐と激情の対比のような形も「Aufheben」のテーマ性に繋がっているのですね。歌詞に関しても作品の世界観にすごくマッチしていますが、こだわったポイントはどの辺りでしょうか?

Who-ya サビの最後で“飛び立っていく”というワードを入れているのですが、日常でも誰かと誰かが存在している以上、対立って起きるものじゃないですか。そういうものから逃避したい、一旦自分を他の所に置いておきたいというのが、“飛び立っていく“というワードで。争いや対立から飛び立っていきたいという思いを叫んでいる曲なので、特にサビの歌詞に注目して聴いてほしいです。

――Who-yaさんも自分自身を確立するうえで飛び立っていく感覚をこれまで経験してきたことがあるんですか?

Who-ya 自分の居場所とかそういう大きな話ではないですけど、制作が詰まっている時とか、深夜に部屋を真っ暗にしたまま歌詞を書きながら「もう何も出てこない……」という気持ちになった時とかは、やっぱり飛び立ちたいですよね(笑)。逆にそういう時は家の外を歩いたり、飼っている犬と触れ合ってみたり、自分の周り四方数メートルの世界から意識を切り替えていくことはよくしています。

――他にも「Aufheben」というタイトルの影響か、“真実すら虚構のアポリア”“矛盾すら普遍のクオリア”といった対立する言葉が多く並んでいますね。

Who-ya 哲学は元々好きだったので制作時に改めて調べてみましたけど、哲学って単語だけだと正直何を言っているのかよくわからないじゃないですか。でも自分なりの解釈をすることですごく面白くなると思います。例えば、自分が圧倒的に1人で生きていれば、比べる対象がいないので劣等感や孤独は絶対感じないけど、孤独だと思っている人間が他の人とたくさん繋がった時、比べる対象が増えれば増えるほど結局孤独に戻っていく。それを「Aufheben」と呼ぶのかはわからないけど、人間が生きていく中で起きているほとんどの事象、とくに精神性な部分はすごく矛盾ばかりだなと、この曲をきっかけにすごく考えているんです。歌詞の言葉遊び的な要素は自分の癖ではありますが、そういう意味ではこの曲は特に多いですね。歌詞はすごく難解なので、歌詞カードを見ながら聴いていただくのがこの曲の一番良い受け取り方なのかなと思います。

――アニメのOP映像も作り込まれていますが、ご覧になってどのような感想を持ちましたか?

Who-ya 自分はアニメが好きなので色々な作品を見ているんですが、最近の作品は色と色の繋ぎ目がリアルなものが多いなかで、『ばいばい、アース』は色の濃淡がはっきりしている、映える色使いの作品でめちゃくちゃ面白いと思いました。「Aufheben」自体はマイナーロックっぽい曲ではあるんですけど、それが逆に明るいパッとした映像と合わさった時にすごく『ばいばい、アース』らしい仕上がり方に見えて。あと、「これがどう繋がるの?」みたいな意味深なカットも結構ありますよね(笑)。オープニングという本編が始まる前の映像なのでやっぱりワクワクしました。

――ちなみに『ばいばい、アース』の中で好きなキャラクターはいらっしゃいますか?

Who-ya 自分は結構頭が固いところがあって、何かをする時にもワンクッションを置いてこれはこうしようと算段を立ててから動くタイプなので、ベルのような物事を頭で考えるよりも先に体が動いちゃうタイプに憧れるんです。自分がこっちに進みたいからこっちに進むという選択をパッとできるのはやっぱりかっこいいですよね。そういえばこの前のリリースイベントでファンの方にも同じ質問をいただいて、その時は、質問の答えとしてはおかしいんですけど、「アドニスはあまり好きじゃない」って答えました(笑)。同性っていうのもあるかもしれないですし、それに、アドニスは闇堕ちしちゃうので(笑)。

――「Aufheben」のMVも公開されています。MVの撮影コンセプトやエピソードも教えてください。

Who-ya 前回の「Prayer」のMVがワンカット撮影だったのですが、今回は逆にカット割りがすごく多いMVになっています。MVの監督さんが面白い方で、鏡をたくさん使ったり、壁に向かって歌ったり、絨毯に寝そべって鏡を置いて撮影したり、撮っている最中はどういう映像になっているのかまったく想像がつかないカットがすごく多かったので、「これは何のシーンなんだろう?」とワクワクしながら撮影していました。結果的にとてもかっこいい映像になったし、自分が見ても面白いと思えるようなMVにできたので、もっとたくさんの人に観てほしいですね。

ライブは僕たちの想いに共鳴する人たちの避難所

――ここからはカップリング曲についてもお伺いしていきます。まず「Re:Call」はどういうテーマで作っていったのでしょうか?

Who-ya 「Re:Call」はシングル3曲の中で1番最後に作った曲なんですが、この曲に関しては何個かやりたいと思っていたことがあったんです。まず、ライブ曲を作りたかったということ。そしてこの曲の制作がちょうど(昨年11月の)5周年の時期だったのですが、これまでは聴いてくれる人たちをWho-ya Extendedの世界に招待するという感覚で楽曲を作っていたんですけど、このタイミングでそういうのを1回取っ払って、ライブに来てくれる人たちと1対1で音を共有できるような曲を作ってみたかったんです。

――なるほど。「Re:Call」は様々な意味を含むワードでもありますね。

Who-ya 「Re:Call」は大きくは2つの意味を掛けていて、1つは自分の過去や後悔、大切な人との別れに対して当時の自分に現在の自分が何と声をかけてあげられるか。なので、「Re:Call」=「何度でも呼び続ける」という意味になります。あとは不良品や壊れてしまったものを新しいものに取り替えるという製品のリコールに掛けて、自分の傷ついた感情をリニューアルしていくという意味も込めています。それらの言葉をライブ空間で鳴っていてほしい音に乗せて作った楽曲になります。

――前者の自分自身に向けたい言葉という観点では、どの部分でそれらを表現できたのでしょうか?

Who-ya サビで歌っていることが自分の叫びだと思っています。「Aufheben」の“飛び立っていく”にも繋がりますけど、“夢でさえ届かない 記憶に連れ出して”とか、“夢ならばただひとつ ここから連れ去って”の部分のように、自分のいる場所が受け入れられなくなった時には「夢でもいいから連れ去ってくれ」と思うはずなんですよね。そういった場面で呼び掛けてあげられる言葉はこれなのかなと思って書いていきました。

――そういった思いは、自分自身の孤独と向き合っているもう1つのカップリング曲「ALONENESS -add Prologue-」にも繋がっているように感じます。この楽曲は昨年11月にデビュー5周年を記念した配信ライブ「ALONESST」に合わせてリリースした楽曲のアレンジ版となりますね。

Who-ya 「ALONENESS」は5周年を10年に対しての折り返しという意味で、今までやってきたこととこれから先やっていくことのクロスポイントになる曲として作っていました。先ほどの話に戻ってしまうんですけど、デビューしてすぐにコロナ禍になってしまったので、当時は本当にSNSだけが自分たちの楽曲に対するリアクションのすべてだったし、ライブで実際にお客さんの顔を見て歌ったことがなかったんですよ。そこからライブができるようになって、特にこの1、2年くらいで海外でもたくさんライブができるようになったことで、飛行機やホテルなどで意外と1人になる時間が増えた。そんな時に5周年というタイミングで「自分たちの大切にしているものはなんだろう?」と考えた時に出てきた単語が「ALONENESS」でした。このワードは孤独そのものではなく、「人が生きていく中で孤独に向かってしまう性質」という意味だったので、自分たちがこれまでやってきたことや、自分たちがこの先歌っていきたいことにぴったり当てはまるのではないかと思いました。1人のはずなのに孤独を感じない。逆に他人と一緒にいるのに孤独を感じる。そういった自分と似たような思いを持っている人たちとライブを通じて共鳴していきたいという気持ちがあったので、「Re:Call」も「ALONENESS」も、まさに自分の気持ちや叫びが入った曲になっていると思います。

――「ALONENESS」は、“人は誰しも孤独である”ということを歌った曲のように感じました。

Who-ya 「ALONENESS」は、人は誰しも孤独であるという思想がベースにあって、そのうえで「みんな孤独だからこそ、自由に生きていけるんだ」ということを歌っている曲になりますので、孤独自体を歌いたいわけではないんですよ。今までの人生で数えきれないくらい色んな人と出会っているのにどんどん孤独になってしまうのは、それは性質である。だからこそ自由なんだということを「ALONENESS」では歌いたかったんです。

――こういった深いテーマ性の楽曲をデビュー5周年のタイミングでリリースしたのは、やはりWho-yaさん自身が音楽を通して届けたい思いだったからなのでしょうか?

Who-ya 5周年といえばアニバーサリーみたいなイメージがあるかもしれませんが、自分は曲を出してライブをすることがファンの皆さんに対する感謝だと思っているので。あと、(昨年11月開催の)5周年記念の配信ライブのタイトル「ALONESST」は、「ALONENESS」と巣や避難所を意味する「NEST」を掛け合わせた造語なのですが、これは自分の持っている考えや感情を、「私もそうだよ」と共感してくれる人たちと一緒に巣を作っていきたいと思ったからです。ライブは1つの避難所のような場所でもあるので、自分たちの理念の提示、そして僕たちの思いに共鳴する人たちが集まる場所の象徴という意味でも「ALONENESS」は作っておきたかったんです。

――確かに孤独な部分が歌詞に強く出ている一方で、“ただ見つけて欲しくて”のように、孤独の中でも期待や希望を抱く気持ちも描かれているような印象を受けます。

Who-ya やっぱり、時には誰かに見つけてほしいとか、「何やってんだろう」みたいに孤独でいる自分を情けなく思う瞬間があると思うんですよ。自分は歌を歌っている以上、たくさんの人に見つけてほしいし、自分と似た考えを持っている人がいることを自分たちの楽曲やライブを通じてみんなに伝えて少しでも避難所になってほしいという思いがあります。これは1つの願いでもありますね。

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