INTERVIEW
2025.06.01
『まんがタイムきららキャラット』にて連載中、あfろによる人気4コママンガ「mono」を原作に制作されたTVアニメ『mono』。本作の企画が動き始めた経緯から、スタッフィングのお話、さらに制作側がどのような想いで本作を制作しているのかなどを、アニメーションプロデューサーの藤田規聖とアニプレックスのプロデューサー田中 瑛に語ってもらった。
INTERVIEW & TEXT BY 塚越淳一
▼TVアニメ『mono』キャストインタビュー
▼TVアニメ『mono』愛敬亮太監督インタビュー
――まずはお二人のTVアニメ『mono』での役割について、教えてください。
藤田規聖 僕は、アニメーションスタジオ Soigne(以下、ソワネ)で、スタジオ側の制作現場をまとめているアニメーションプロデューサーです。これまで、制作進行・ラインプロデューサーと順を追ってやってきており、今作が初のアニメーションプロデューサーとなるので、今は慣れないことをしているなと思っています。
田中 瑛 僕はアニプレックス側のプロデューサーの1人になります。アニプレックスから『mono』という作品をソワネさんに提案はしましたが、実際に動き出したのは藤田さんと同じタイミングなので、足並みを揃えて『mono』という作品を作っています。
――アニメ化はどのような形でスタートしたのでしょうか?
田中 これはソワネさんの会社の立ち上げのタイミングからの話になるので、そこからお話ししたほうが良いかもしれませんね。
藤田 そうですね。ソワネの代表取締役である村上光とは、もともと私が在籍していた株式会社エイトビットで出会いました。そこで私たちは、TVアニメ『ヤマノススメ サードシーズン』の制作に携わり、その後も『ヤマノススメ Next Summit』に関わっていきました。村上と何かアニメを作りたいと考えた際に「自分達で会社を立ち上げた方が早いのではないか」と考えるようになり、ソワネを設立するに至りました。その際、アニプレックスさんに相談する機会があり、「mono」というマンガ作品を紹介していただきました。『ヤマノススメ』シリーズは聖地巡礼を楽しめる作品として評価されており、その経験やノウハウもありました。また、原作を読んで純粋に面白いと感じたこともあり、「mono」のアニメ化に挑戦してみようと思ったのです。
田中 僕と藤田さんは高校の同級生でもあるんですけど、会社設立の相談を受け「ぜひ一緒にできたら良いね」という話をした際、アニプレックスから提案したうちの1つが『mono』だったんです。マンガの連載は2017年から始まっているのですが、弊社の中でアニメ化を検討し始めたのも数年前だったので「ついに!」という感じでした。
――制作開始まで時間がかかったのはアニメ化が難しかったからなのですか?
田中 『mono』は映像やカメラの話が軸になるんですけど、映像の中で映像を取り扱う作品って難しい側面があるし、求められるハードルもすごく高いと思っていました。アニメ化はしたいけれど、誰がどうやって作るんだ?という問題もあって時間が掛かってしまったところはあります。でもソワネさんに声を掛けたところすぐに監督とキャラクターデザインの方の名前が出てきたんです。
藤田 そうでしたね。これは今後のソワネの方針にも関わってくることですが、私たちは「人で作品を選ぶ」ということを意識しています。村上や私の人脈の中で、その作品と自然に繋がりが生まれる、何か引っかかるものを感じられる人と一緒に作品を作っていきたいと考えています。もちろん、人気のあるタイトルや、売れることが確実な作品に取り組むことも重要です。ただ、設立したばかりの我々が今大切にしているのは、その作品に関わってくださるスタッフが適しているかどうか。相性が合わないとどんなに有望な企画でも、継続するのは難しいですし、モチベーションも長くは続きません。
――それは、作品に最適な人材をマッチングするということですか?
藤田 そうです。今回もまず、あfろ先生作品が好きなアニメーター・宮原拓也さん(『mono』ではキャラクターデザインを担当)がいて、さらに監督としての実力を備えた愛敬亮太さんがいたことで、点と点がうまく繋がり、企画として提案することができました。一方で、やりたいと思える作品があっても、監督やキャラクターデザインのどちらかが見つからず、やむを得ず断念したケースもこれまでに多くありました。
――スケジュールなどのタイミングもありますからね。今作ではそれが上手くいったのですね。
藤田 はい。宮原さんは、『ヤマノススメ Next Summit』で原画で参加しておりまして、キャンプやバイクに熱い思いを持っているんです。『ヤマノススメ Next Summit』が終わったあと、『mono』の企画がソワネに来たタイミングで、「これはもしかしたら宮原さんに合うんじゃないか」と思って声をかけました。しかも宮原さんは人脈もあり、絵描きとしてもすごく評判のいい方で、きっと作品の力になってくれると思ったんです。やはり1クールの作品を作るには、それだけの人材が必要になりますから……。監督に関しても同じで、『ヤマノススメ Next Summit』の第4話「夢にまでみた?フジ〇〇」で絵コンテ・演出を担当してくれた愛敬さんがいいだろうと思いました。あの回は難しい内容だったんですけど、完成までの道筋がちゃんと見えていて、それをしっかりやり切ってくれて、「この人はすごいな」と演出家としても本当に優秀だと感じたんです。経歴を見ても、素晴らしい作品で経験を積まれていて、次期監督候補だと思って声をかけました。しかもご本人もカメラが好きなんですよね。だからこそ、このお二人のどちらかが欠けていたら、『mono』のアニメ化は実現しなかったと思います。
田中 メーカー側としてアニメーションプロデューサーが「この人なら大丈夫です」と言ってくれるのならば、その方にお願いしたほうが絶対に良いので何も言うことはありませんでした。愛敬さんに関しては僕が宣伝でTVアニメ『かぐや様は告らせたい』をやっていた時に演出をやられていた方なのでお名前は知っていて。『mono』を引き受けてくださるのは意外だったんですけど、その後カメラが趣味だと知り、今は愛敬さん以外に監督に適した人はいなかったと思っています(笑)。
――スタッフ面で田中さんから提案された方もいるのでしょうか?
田中 シリーズ構成・脚本の米内山陽子さんはこちらから提案しました。特に弊社と繋がりがあったわけではないのですが、手掛けていたタイトルを拝見するなかで、一緒にお仕事をしたいと思ったんです。特に4コママンガはアニメ化するのが大変ですし、すごく丁寧にお仕事をしてくださるというのも聞いていたのでお願いをしたら、すぐに「やります!」とお返事をいただきました。ソワネさんとしても初のTVアニメシリーズ、そして僕も宣伝から制作に異動をしてから初めての作品だったので、我々のわがままを支えてくれるだろうと思っていたんですけど、本当に柔軟に対応をしてくださって助かりました。『mono』は1つの軸を作るのがすごく難しい作品だと思うのですが、そこでちゃんと起承転結を付けて脚本を書いていただけたことはすごく大きかったと思います。
藤田 ああしようこうしようという意見は愛敬監督からも出ていましたし、それを米内山さんを始めとした脚本チームが上手く落とし込んでくださったのかなと思っています。今回はコメディ要素が多く、ギャグをどう活かすかも大事になってきたんですけど、その取捨選択も意見を出し合いながら作っていきました。
田中 各話のロケハンはクリエイターさんのほうで手厚く行っていただいてるのですが、シナリオチームも「一度山梨に行ってみよう!」ということで、弾丸ではあったんですけど山梨へ行ったんです。そこでメインどころを周れたのはすごく大きかったと思います。
――実際に現地に行ってみるのは、脚本を書く上でも重要だったでしょうね。本作はロケハンがかなり重要な作品だったというのは、愛敬監督のインタビューからも感じました。
藤田 そうですね。基本的に行けるところは、可能な限り行ったと思います。
田中 しかも作品に出てくるものと同じ360度カメラを持って行きましたよね。
藤田 360度カメラは今後他作品のロケハンでも使おうと思うくらい本当に良かったんです。僕らは動画や写真を進行方向に向けて撮るけど、アニメにするタイミングで切り返しの画がほしい時があって「その画がない!」ということがよくあるんです(苦笑)。その撮り忘れがないという意味でも360度カメラは重宝しました。
――ロケハンの成果はアニメにもよく出ていると思います。
藤田 こういう作品ですから、ファンの方は現地へ足を運ばれると思います。その説得力を持たせるために我々も行かなければいけないというのはありました。そこで実際に見て感じたものをアニメに落とし込めばアニメにも説得力が生まれるはずなので。
――実際に画に落とし込む大変さもあったでしょうね。
藤田 背景に関しては色んな描き方があるんですけど、『mono』が目指したところでいうと、実写にし過ぎず、デフォルメにし過ぎずといったところで。(ロケ地を訪れた時に)視聴者の目で見たものとまったく同じではないけど、ほぼ似たような感覚が味わえるようにしました。美術は、美峰(アニメーション美術背景会社)さんにお願いをしたのですが、美峰さんの技術はすごかったです。すごく難しい要求を丁寧に作業していただけたと思っています。あと監督のインタビューでもありましたが、360度カメラで撮ったものをどうアニメで表現するのかというのも難しかったので試行錯誤しました。360度カメラで撮られた映像の中でキャラクターが動くと、最終的にはそのキャラクターを作画で描くことになる。そこは力技で進めるしかなかったのですが……(笑)。
――キャラクターデザインのこだわりに関してはいかがですか?
藤田 キャラクターデザインでこだわったところは、眉毛ですね(笑)。あfろ先生がすごく丁寧に監修をしてくださって、眉毛の角度や太さは何度かリテイクを重ねました。愛敬さんと宮原さんの中で良いと思ったものを提出したのですが、先生にお見せすると「もうちょっと眉毛はこう!」というのがあったので「なるほど~」と唸っていました(笑)。あと、これはアニメではよくあることなのですが、マンガの絵柄って(連載のなかで)変わっていくものなんですね。なので、あfろ先生が何を好まれるのか、視聴者はどの絵が好みなのか、そして我々が描きたいものはどれなのか。この3つの落とし所を探すのは難しかったです。
――また、音楽も『mono』の魅力だと思っています。
田中 音楽を百石 元さんにお願いをしたい、という提案もこちらからしました。『mono』に合う音楽……と考えていた時に、ふと百石さんが思い浮かんで。僕がアニメ業界に入った理由が、『まんがタイムきらら』で原作が連載されていた某バンドアニメ⋯⋯まぁ『けいおん!』シリーズなんですけど、その音楽が百石さんだったんですね。また別の好きな作品百石さんが劇伴を担当されていて。その2作品の印象が特に強く「劇伴で癒やしと感動をくれるメロディラインを作ってくださるのは百石さんだ!」と思い声を掛けさせていただきました。ここはわがままを言わせていただきました。
――愛敬監督も、TVアニメ『NEW GAME!』が好きで、その音楽が百石さんだったという話もされていました。
藤田 監督は、すごく喜んでいました(笑)。
田中 それは偶然だったんですけど、上がってくる音楽もすごく良いなぁと思っています。
藤田 僕も『けいおん!』シリーズは好きで、日常を捉えている時に自然と耳に入ってくる音楽が良いと思っていたんです。なので『mono』の音楽が上がってきた時「これだ!」と思い感動しました。
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