INTERVIEW
2025.05.09
TVアニメ『ウマ娘 シンデレラグレイ』(以下、『シンデレラグレイ』)を彩る主題歌が、クオリティの高い映像と共に話題を呼んでいる。そんなOP主題歌「超える」で作詞・作曲・歌唱を担当した[Alexandros]の川上洋平、たかはしほのか(リーガルリリー)が作詞・作曲したED主題歌「∞」を歌うオグリキャップ役の高柳知葉、さらにベルノライト役の瀬戸桃子の鼎談が実現。楽曲の制作秘話や印象、レコーディングについて聞いた。
PHOTOGRAOHY BY 河本悠貴
INTERVIEW & TEXT BY 千葉研一
――川上さんはこれまでのインタビューなどで、「前のアルバムを忘れて、超えることを常に考えている」といった趣旨の話をされています。今回のタイトルはまさに「超える」ですから、そういった想いも込められているのではと感じたのですが。
川上洋平 常にそうなのですが、作品や曲を作り終えた時ってその曲を堪能しきっているんですよ(笑)。だって、0から曲を生み出して歌詞を書いてアレンジもやって、曲が出来たら今度はレコーディングしてミックスしてマスタリングして……何千回と聴いているわけで。自分のものになっているから。なので新曲を作り始める時はいつも「次は違うものにしたい」というモードになっているんです。これは意識しているというより、無意識的なことですが。あと、あえて意識的なことを言うならば、「これまでやっていたことで安定したくない」という思いはすごくあります。(ファンの方に)「ワタリドリ」が好きですとか「閃光」が好きですと言っていただけるのは嬉しいしありがたいですけど、同じようなものを作るのは安定志向というか、守りに入っていますよね。それってむしろ誠意がないと思うんです。何か犠牲を払ってでも「自分たちはこれがやりたい!」「このアートが今見せたいものです!」といった気持ちでいたい。それによって生じる犠牲を恐れたくないと毎回思っています。
――そして生み出されたのがOP主題歌「超える」。どういった曲にしようと考えたのでしょうか?
川上 まずは原作であるマンガを全部読んで、自分に共通する部分や共鳴する部分を見つける作業をしていきました。それが見つからなかったら大変なんですけど(笑)、『シンデレラグレイ』に関しては自分の今の気持ちにハマった部分がすごくあって。
――具体的にはどういった部分がハマったのでしょうか?
川上 1つ具体例を挙げるなら、オグリキャップが「私自身を超えなきゃいけない」「私自身を超えたいんだ」というシーンです。それはオグリキャップが他のウマ娘と競うなかで「どういう気持ちで生きていったらいいんだろう?」と思っていたってことですよね。自分もチャートなどで他のアーティストの方と競う中で「どういう心持ちでいればいいんだろう……」とぼんやり思っていて。なのでオグリキャップがその答えを見つけたシーンにすごく共感したんです。ならばそれを曲として書こうと思い、その結果タイトルが「超える」になりました。
――サビの印象的なフレーズ“私が私を追い抜き去っていく絵”も、まさにそこから生まれたんですね。楽曲制作を始める際に意識したことを教えてください。
川上 (曲調が)バラードではないのは共通認識として多分みんな持っていたと思いますし、お話をいただいた時から「バラードではなくテンポの速い曲がいいだろうな」というのは自分の中にありました。でも、楽曲制作を始める時に考えていたのはそのくらいでしたね。そのうえで、ただ作品に合う曲を作るのではなく、ロックバンドとして自分の音を鳴らすというか。僕らに依頼していただいたということは、さっきの誠意の話じゃないですけど、「好きにしてください」「“これを鳴らしたい”を追求してください」と言われたんだと捉えていました。
――川上さんの場合、歌詞と曲はどちらから作るのですか?
川上 基本的には、メロディを作ってから歌詞を作ります。仮歌みたいな感じで適当な日本語と英語が混ざったものを作り、そこから変えて歌詞を決めていくのですが、バッと浮かんでハマった言葉がある時はそのまま採用することもあります。最初に作ったデモではポップで派手なサビはなく、ちょっと地味な雰囲気だったんです。嫌いじゃなかったけど、微妙だなと思っていて。なので1つの形になった後で1週間くらい寝かせて、もう一度スタジオに入って作業をしていた際に、やっぱり(派手な)サビを作ろうとなりました。メロディが出るまでずっとかき鳴らして、鳴らして鳴らして……、それで出てきたのが今のサビです。歌詞に関しては、“私が私を追い抜き去っていく絵”や“物語の”の部分は仮歌の時からありました。このフレーズは本当に自然と出てきたもので、最初から変わっていないです。最初はその2行だけあって、これがどう繋がるのか探す旅に出た感じですね。
――この曲を聴いた時はここの歌詞が“絵”だとは思わなかったので驚きました。
川上 すごく細かいですけど、サビの2行目に“浮かべる”ってあるじゃないですか。この“浮かべる”も自分の中でハマっちゃったんですね。手の内を明かすみたいで嫌なんですけど(笑)。それで元々“私が私を追い抜き去っていく Yeah!”だったのを、“Yeah!”から“絵”に置き換えれば“浮かべる”と繋がるなと思い、“絵”にしたんですよ。
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