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INTERVIEW

2025.04.30

“波”のように揺れ動きつつ、その先にどんな景色があるのかを大切にしていきたい──青山吉能2ndアルバム『Fluctus』リリースインタビュー

“波”のように揺れ動きつつ、その先にどんな景色があるのかを大切にしていきたい──青山吉能2ndアルバム『Fluctus』リリースインタビュー

約2年ぶりとなる2ndアルバム『Fluctus』(ラテン語で“波”の意)をリリースする青山吉能。声優アーティストとして唯一無二の表現を磨き続けてきた彼女が本作で届けるのは、それぞれの曲に寄り添いながら“波”のように揺れ動きつつも、しっかりと芯のある10の物語だ。先行配信された日食なつこ提供の「ルーガルー」をはじめ、これまでにリリースしてきた配信シングルも含めた全10曲を収録。多面的に進化を遂げた青山吉能の“今”に迫る。

INTERVIEW & TEXT BY 逆井マリ

憧れのアーティストである日食なつこに曲を書いてもらって

――(取材日の)本日は「ルーガルー」の配信日。素敵なMVと共に公開され、色々な声が青山さんの元に届いてるかと思います。

青山吉能 空き時間のエゴサが止まらんです(笑)。「日食さんのファンはこの曲をどう思ってるんだろう」って気になっちゃって、なんなら「日食なつこ」でも検索しています。

――(笑)。「ルーガルー」は歌声もMVの映像もこれまでの青山さんとはまた違った雰囲気があるように感じました。まずは「ルーガルー」の制作の舞台裏を伺わせてください。

青山 まず、日食なつこさんにオファーをするということ自体が挑戦で。今までは作家事務所さんにお願いしていくつか曲を作っていただき、それを自分たちで選ばせてもらうスタイルが多かったんですけど、今回はダメ元で日食さんにオファーさせてもらったんです。そうしたらありえないくらい前向きに快諾してくださって!

――青山さんの情熱が届いたのですね。日食さんにオファーすることになった経緯についても教えてください。

青山 もちろんです!私はこれまでライブとかで日食さんの曲を度々カバーさせてもらっていて。それを聴いたファンの方が、日食さんのラジオに「青山さんがライブで(日食さんの)「ログマロープ」を歌ってました」って投稿してくださってたみたいなんです。それで日食さんが私のことを認識してくださってたらしく、今回オファーさせてもらった時に「ああ、あの青山さんか」となったそうで。もうその話を知った時は……嬉しすぎて、血の涙が流れました(笑)。

――すごい、ファンの方が繋いでくれていたんですね!

青山 本当にありがたい話です。自分からの一方的な矢印だと思っていたので、まさかまさかでした。それでこちらの楽曲制作のオファーを快諾していただいて、ミーティングで「どういう曲にしていくか」っていうのをオンラインで日食さん自身とお話できることになったのですが……もうファンすぎて「本物だ!」って(笑)。浮かれつつも、話し合いの時間がそんなに長くなかったので、自分の愛はさておき「どんな曲にしたいか」「なぜ書いてほしいと思ったのか」……とにかく色々とお話しして。それと、自分が好きな“日食なつこさんの色”に青山吉能という色が混ざることで変わってしまうのがすごく嫌だったので「日食さんの世界の中に自分を入れてほしい」ってお願いしました。

――青山吉能に曲を書くというよりも、日食さんらしく自由に書いてほしいと。

青山 そういうことを30分くらい私がペラペラ喋ってたらしいんですけど、興奮状態だったので記憶がなくて(笑)。後から日食さんとお話する機会があったのですが、画面から飛び出してくるんじゃないかってくらいの勢いだったらしいです(笑)。

――それが音楽という形になってプレゼントされたとき、青山さんとしてはどのような気持ちでしたか?

青山 「これ!これを求めてた!」って本当に感動しました。質感が「日食なつこ」という感じがしてすごく良いんですよね。デモはもちろん日食さんのお声で歌われていて、ピアノだけの弾き語りだったんですけども、それがもう完全に大正解すぎて。「これを逆にどうやって自分は歌えば良いんだろう?」って悩んだところもありました。というのも、私が日食さんのファンすぎて……。

――日食さんへの強い愛があったからこそ歌い方に悩んだと。

青山 そうなんです。そのせいで私が「ルーガルー」を日食なつこさんの新曲として受け取ってしまい、これをどうやって自分の中に落とし込んでいこうかなと。でもやっぱり、最初にお伝えしたように日食さんの世界にいる自分でいたい、そこはぶれないようにしたいと思っていました。だから自然と歌のアプローチも普段とは違ってきて。なので今までの私の曲を知ってくださる皆さんは聴いた時にちょっとびっくりしたかもしれません。

――今回の『Fluctus』を通して感じたのが、色々な声が宝箱のように詰まっていると言いますか。聴くたびに表情が違う、曲によって明確に演じ分けされているような印象がすごくありました。

青山 まさにそうなんです!今回は特に1曲1曲に過剰なほど寄り添ってます(笑)。でもそれにも迷いはありました。やっぱりアーティストとして活動するからには「確固たる自分があって、そこから音楽を生み出すもの」「アーティスト活動とキャラクターソングは明確に違うもの、そうであるべきだ!」みたいな考えがあったんです。でも、自分の根底にあるものって“人間”であり“役者”であるっていう感覚も強くあって。なので「自分の中にたくさんの自分がいる」ということを肯定しても良いのかなって思ったんです。例えば、どんな服を着ているかによっても自分って違ってっくると思うんですよね。「帰ろうよ」だったらだるだるのパーカーに10年前に買ったパジャマで、ゴムも緩くなってるようなイメージというか(笑)。一方「結び目I Wish」はフリフリのワンピースを着ている感じ。

――それぞれの楽曲に各々“装い”があっても良いというか。どんな装いでも“自分”であることは変わらないということですね。

青山 そうなんです。それであえて今回は思いっきり寄り添う方向に振り切ってみたんです。「ルーガルー」を歌う時も、最初は「日食なつこさんの曲だけど、自分らしさ100%で歌おう」って思ってたんですが、どこをどう切り取っても“日食なつこの世界”で、そこにちゃんと自分がいたという感じで歌えば良いんだよなって考えるようになって。それから日食さんからいただいたデモをかなりたくさん聴かせていただき、日食さんの歌い方の癖とかを自分なりに解釈して、それを自分の中から発露するような感覚で歌うことに意識を向けました。もちろん、どう考えても私は日食なつこさんの声帯にはなれないし、日食さんのようには歌えない。でも、そこにちょっとでも近づいてみるというのはリスペクトとしてあって良いと思ったんです。で、結果的にそれが“自分らしさ”になっていくんだろうなって。そういうこともあって今回のアルバムでは“曲によって登場人物を変える”というのが前作よりも明確になったかもしれません。

次のページ:アルバムの中で咲かせた花が色々な人の中でも咲いてくれたら

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