アーティスト・小倉 唯の2025年第1弾となるニューシングル「So☆Lucky」は、自身も声優として出演するTVアニメ『スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました ~そのに~』のOPテーマ。不老不死の魔女として異世界に転生した主人公・アズサとその仲間たちのスローライフをポジティブに彩る、彼女らしい華やかなアップナンバーに仕上がっている。さらにカップリング曲「すうぃ~と♡ぱーてぃー」ではとろけるほどに甘い“ゆめかわ”なナンバーに挑戦。ビジュアルコンセプトを含め、改めて“かわいい”に向き合った本作のインタビューを通して、小倉 唯が目指す“かわいい”という表現の核に迫る。
INTERVIEW & TEXT BY 北野 創
――新曲「So☆Lucky」はTVアニメ『スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました ~そのに~』のOPテーマ。作品の顔としてアニメのどんな部分を象徴する楽曲になりましたか?
小倉 唯 この楽曲で一番大事にしたのは、主人公のアズサと彼女を取り巻く様々なキャラクターたちのことです。いつも賑やかでドタバタしているけど、アズサもその状況をむしろ楽しんで異世界での生活を送っていて、その「どんなことがあっても楽しんだもん勝ちだよね!」という精神を意識しています。楽曲自体はコンペで選んだのですが、オープニングとしての勢いもありますし、キャラクターたちの表情が目まぐるしく変わっていく様子が想像しやすくて、作品の世界観にピッタリと感じて選びました。
――小倉さんはマンドラゴラの女の子・サンドラ役で本作に出演しています。ご自身が演じたキャラクターの印象、アフレコの思い出をお聞かせください。
小倉 サンドラはメンバーの中でも幼い見た目で周りからかわいがられているのですが、本人はすごく強がりで小生意気な女の子。そのギャップがまたかわいらしい子です。アフレコではアズサ役の悠木 碧ちゃんが作品への愛を持って演じていて、お芝居の幅も台本を読んで想像していた以上の広がりがあって刺激を受けました。キャストそれぞれが楽しみながら演じている雰囲気がアニメの賑やかなテイストにも反映されていると思います。
――アズサはのんびりスローライフを送りたいのに、周りがそうはさせてくれないところが面白いですよね。小倉さんはスローライフに対して憧れはありますか?
小倉 そういう憧れはだんだん芽生えてきました。昔はお休みがあることがむしろ不安になるタイプだったのですが、今は休みがあると嬉しくて仕方がなくて(笑)。なのでいつかスローライフな生活ができたら嬉しいです。
――お休みの日はどんなふうに過ごしてリフレッシュしているのですか?
小倉 お出掛けすることもありますし、家でのんびり過ごすこともあります。私はお買い物が好きなので、好きなコスメを集めるのもそうですし、それこそコラボカフェに行ってグッズを収集することもあります(笑)。あとはコーヒーが好きなので、1人でゆっくりお茶をしたり。それと私は偏頭痛持ちで、休みの日に症状が出がちなので、しっかり休むことも多いです。
――お仕事の日は気を張っているから休みの日に出るんでしょうね。楽曲の話に戻りまして、「So☆Lucky」は小倉さんご自身が作詞をしています。作品のことを意識しつつ、どんなことを足掛かりに歌詞を書いていきましたか?
小倉 1番の歌詞は作品のイメージを落とし込んだフレーズが多いのですが、全体のテーマとしては「思いがけない人生だからこそ楽しもう!」という気持ちをコンセプトにしています。アズサは、色んなキャラクターと出会うことでドタバタに巻き込まれていくのですが、どんなことがあってもポジティブに変換させて楽しむことができて、守りたいものが増えることでそれをパワーにしてさらに前へと進んで行く。そういったアズサのマインドをこの楽曲自体の骨組みとして書いていきました。
――小倉さん自身にもそういった「So☆Lucky」精神はある?
小倉 もちろんそういう思考がまったく無いわけではないのですが、私はどちらかと言うと心配性な部分のほうが強いので、今回は自分の中にある“楽しんだもの勝ち”のマインドをMAXまで引き上げて歌詞を書きました。それこそMBTI診断(人の性格を4つの要素を元に分類する心理テスト)があるとしたら、自分の中でそのパーセンテージを変換してマイナーチェンジすると言いますか、自分の性格もだましだまし書いたところがあります(笑)。
――面白いですね。声優・役者として様々な役柄を演じるなかで、自分の性格を反転させるような技術が身についているのでしょうか。
小倉 それは結構あると思います。元気な役柄を演じることも多くて、そういう時にも(性格の)変換能力を活かしている部分があるので。でも、この曲の歌詞を書いたおかげで、自分の気持ちを引き上げることができた気がしています。本来はこのくらいのポジティブマインドで生きていたいな、と思いますね。
――1番の歌詞は作品の世界観に寄せたワードが中心ですが、2番以降はどんなイメージで書いていきましたか?
小倉 2番以降は“天気予報”や“占い”のように、日常を過ごすなかで誰もが経験しそうな情景をイメージして書きました。乗り越えるべき大変なことも“〆切 ・プレゼン・小テスト”という身近なものに置き換えて歌詞に落とし込んでいます。
――小倉さんは歌詞の“〆切”を守れるタイプですか?
小倉 今のところ間に合わなくて事故になったことはないです(笑)。でも、歌詞は生ものなので日によって降りてくる瞬間があるんです。なので書ける時は一気に書けたりするのですが、自分の中で「この日に書こう!」とスケジュールを立てていても、蓋を開けてみると全然進まないこともあって、自分との闘いみたいなところはあります。
――この楽曲の歌詞はどれくらいのスピード感で書けたのでしょうか。
小倉 この歌詞はとても素早く書くことができました。というのも、アフレコの期間中に歌詞を書いていたので、すごく情景を思い描きやすかったんです。それこそアフレコの現場に行く直前にも書いたりしていました(笑)。
――楽曲的にはアップテンポで華やかな曲調ですが、歌うにあたってはどんなことを意識しましたか?
小倉 役を演じる時の感覚に近かったのですが、自分の中のポジティブなパーセンテージを振り切って、スーパーポジティブモードで歌いました。それと歌詞の1行ごとに色んな表情感を乗せられるように意識して。例えば“こんなところで負けない!! 私レベルMAX!!!!”や“まじガチなんです!!!!”のように、言葉としてパワーのあるところは語尾の雰囲気を強くしたりしています。
――2番の冒頭にはラップパートもあります。今回の“おぐラップ”はクールめなフロウで、韻もしっかりと踏んでいますね。
小倉 結構かっこいい雰囲気になっています。歌詞もここのフレーズが最後まで迷って、楽曲を作編曲してくださった本田正樹さんと相談しながら作っていきました。レコーディングでも上手くできるか不安だったのですが、「全然良い感じですよ」と言ってくださったのですが、自分が思っていたよりもサラッと終わったので「本当に大丈夫かな?」と半信半疑でした(笑)。
――この取材の時点ではまだアニメの放送は始まっていませんが(※3月に実施)、作品にしっかりと寄り添う楽曲になりそうですね。
小倉 実はコンペで集めた中から楽曲を選ばせていただく時も、アニメの第1期のOPテーマの映像を観ながら選んだりもしていたので、私の中では「バッチリなんじゃないかな?」と思っていました。(この取材のタイミングでは)まだOPアニメの完成を観られてはいないのですが楽しみです。
――そんな「So☆Lucky」のMVはドラマパートとダンスパートで構成されていて、ストーリー仕立ての映像になっています。
小倉 今回の作品全体のイメージとして考えていたのが“ゆめかわいさ”と“コミカルでドタバタな異世界感”だということをMVの監督さんにお伝えしたところ、ああいったストーリーにまとめてくださりました。ここまでしっかりストーリーのあるMVは最近なかったので、自分の身でそれを演じるのも新鮮で面白かったですし、ダンスもスライム要素を交えた“スライムダンス”を作っていただいたり、世界観や色彩感を含め今回のシングルのジャケットやアートワークと統一感のあるものにしていただいたので、すごくボリューミーな内容で私もお気に入りです。
――ドラマパートでは、小倉さんがスライム風の生物と出会い、仲良しになっていく過程が描かれています。でも、最後は写真立てのカットで終わるのが意味深ですよね。
小倉 そうなんですよ。私もあのカットはどういう意味なのかわからなくて、初めて観た時は笑いが止まらなくなって、笑いすぎて腹筋が割れるかと思いました(笑)。あのスライム風の未確認生物には“ラッキーくん”という名前があるのですが、「ラッキーくん、どこに行っちゃったんだろう……?」と思って。あのカットの真意は今度監督に会った時に聞いてみようと思います(笑)。
――衣装も色んなものを着ていますよね。
小倉 今回は衣装が4着あって、シングルの初回限定盤のジャケットで着ている衣装も登場しますし、ダンスシーンの衣装も「So☆Lucky」のイメージで作っていただいてどれも素敵なのですが、そのなかでもお姫様っぽいドレス衣装がお気に入りです。あのシーンは着ぐるみが3体登場して、私がパンチンググローブをはめて戦うのですが、その衣装とのギャップも面白くて撮影も楽しかったです。
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