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INTERVIEW

2025.03.08

不器用な恋をしている人に共感してもらえる1曲を目指して――ぼっちぼろまるが新曲「NE-CHU-SHOW」に込めた想いを語る

不器用な恋をしている人に共感してもらえる1曲を目指して――ぼっちぼろまるが新曲「NE-CHU-SHOW」に込めた想いを語る

「NE-CHU-SHOW」に封じ込めたトレンディの美学と表現へのこだわり

――『ババンババンバンバンパイア』の印象は?

ぼっち 古き良きラブコメ作品のような手触りもある作品で、“勘違い”とか“すれ違い”というラブコメの王道も結構コテコテにわかりやすくやっていて、やっぱりそこが魅力的ですよね。でもずっとすれ違い続けて話が進展しないようなラブコメ作品ではなくて、勘違いした結果出てくる発言や妄想、そのあとの展開がすごく面白くて。

――しかもお互いが純粋で真剣だからこそ勘違いしたり妄想したり(笑)。

ぼっち そうそう(笑)。本人たちは大真面目だからこそ笑えて、それがちょっと切なかったりもするんですよね。主人公であるバンパイアの森(蘭丸)さんも、森さんが狙っている童貞の(立野)李仁も、李仁が思いを寄せるヒロインの(篠塚)葵ちゃんもすごくピュア。ピュアゆえにそれぞれが一方通行の三角関係になってしまっているという、このもどかしくも微笑ましいラブコメ感はちょっと懐かしさもあって僕は大好きなテイストの作品でした。

――それを受けてか、「NE-CHU-SHOW」は古き良き90年代的なトレンディドラマを彷彿とさせるようなサウンドデザインをあえて取り入れている印象もあるのですが、どんな発注を受けて生まれたのでしょうか?

ぼっち 「トレンディ」って言葉、最高ですね(笑)。言ってしまえば「東京ラブストーリー」的な“あの感覚”ですね。まさにそこは意識したところではあるんですけど、すごく細かい指定があったというわけではなくて、先ずは「イントロが欲しいです」という依頼がありました。最近は歌始まりのアニソンが増えていますけど、アニメ本編で「この後どうなっちゃうのー!?」という展開の後にビシッ! と入ってくるイントロで作品が締まる……みたいな、まさにトレンディでちょっと懐かしい“あの感覚”が欲しいんだろうなって。だからまずは原作のマンガを読みながらイントロから作っていきました。第01話、森さんが葵ちゃんの血を吸おうとしているところを李仁君が目撃してしまって「あー!この後3人はどうなっちゃうの!?」っていう、あの場面に相応しいイントロと言えば「これだろう!」みたいな感じで(笑)。『リーガル・ハイ』の主題歌だったRIP SLYMEさんの「SLY」とかもそういう演出だったと思いますけど、「NE-CHU-SHOW」でも上手く表現できたと思っています。

――なるほど。まさに狙いどおり、アニメ本編のBパートから曲のイントロがカットインしてエンディングへ……みたいな『ババンババンバンバンパイア』らしいノリと次週への引きが「NE-CHU-SHOW」で生まれていますね。

ぼっち 毎話しっとり儚く終えるラブコメ作品もありますが、やっぱり王道はこっちですよね(笑)。僕の世代ではないのですが、トレンディなドラマが華やかだった時代のラブロマンス感というか、「来週が楽しみで仕方がない!」みたいな作品には、印象的なイントロって必ずついていたような気がしていて。儚い恋心を歌ったバラードとかではなくてノリノリな曲で終わらせたいという発注もいただいていたんですが、あとは「自由に好きにやってください!」みたいな感じでした。

――ダンサブルなノリの良さをグルーヴ感で演出しつつも、このストリングスのアレンジにもこだわりをすごく感じました。まさにラブロマンスを引き立てる流麗なフレーズがちょっと懐かしくもあって。

ぼっち ストリングスでもやっぱりトレンディ感は出したくて(笑)。森さんってどこか紫色っぽいイメージというか、妖艶さもあるじゃないですか。なので彼の美しい艶めかしさみたいなものを表現するような艶のあるストリングスを使いたくて、サンプル素材をいじったりしながら作ったんです。

――やっぱりこれ、サンプリングからくる質感ですよね。そこは敢えて生録りはせず?

ぼっち あえてです。この艶感というか、音から得られる“画質感”にロマンチックで独特な味わいがあるんですよね。

――電気グルーヴの「Shangri-La」のような、柔らかいベールのような独特な風合いのあるストリングスの質感とフレーズだなと。

ぼっち 「Shangri-La」も電気グルーヴさんらしい「俺たちなりのトレンディをやってやろう」みたいな志しを感じますし、ストレートにやらない独特な美学があるじゃないですか。ああいうテイストからもかなり影響を受けているかもしれませんね。ぼっちぼろまるらしい“トレンディ”を目指そうということで。そこが固まったら結構スムーズに制作は進めていくことができました。実は最初に作ったデモから変えた部分ってほとんどなくて、すんなりと「めっちゃ良い曲できちゃった!」みたいな感じでした。サビの“NE-CHU-SHOW”を際立たせたくて何度か微調整しながら、今のちょっと詰まったリズムのフレーズが作れたのは自分の中でもポイントが高いです。「これだ!」みたいな(笑)。

――ぼっちさんは作詞・作曲・編曲までご自身でやられるので、アレンジ先行でもイメージが固まったらメロディも同時進行で作っていけるのは圧倒的な強みですよね。様々な意味に解釈できる“NE-CHU-SHOW”というパワーワードが浮かべば、歌いながらメロディとリズムと一緒に印象的なフレーズに落とし込んでいけるわけで。

ぼっち そうですね。“NE-CHU-SHOW”というワードも割と早くから生まれていたので、「熱中症」と「ねえ、チュウしよう」、そしてバンパイアの森さんらしく「(血を)チューチューしよう」に絡めてイメージを固めていきながら、アレンジとリズム作りとを同時進行で進めていきました。ラップパートはいつも最後に考えることが多いくらいで、毎回そんな感じかもしれません。「鎌倉STYLE」もこんな感じだったと思います。ラップはビートの気持ち良さも大切にしたいので。

――改めて歌詞も本当に秀逸ですよね。キャラクターたちの視点を混ぜ合わせながら、“NE-CHU-SHOW”も文脈で意味を変えてくる感じとか。

ぼっち ありがとうございます。まあ、人生が上手くいっている感じの恋愛ソングではないと思うんですよ。ストレートに自分が表現できないから、妄想が先走って暴発しちゃったり。そういう不器用な恋をしている人に共感してもらえるような歌詞にしたいとは思っていました。僕的にはかなりかっこつけて書いてます。それが逆に面白いだろうと思って笑ってもらうことも狙っていたんですけど、それを普通に「かっこいい!」みたいな感じで受け取っている方もいて、ちょっと恥ずかしかったです(笑)。

――正直なところ、ぼっちさんの恋愛観も含まれている?

ぼっち 僕にもありましたし、きっと皆さんにも一度は経験があると思うんですよ。思春期特有のモヤモヤとしたどうにもならない恋心みたいな。

――恋に恋しすぎてしまう、俗に言う童貞感みたいなものというか。

ぼっち まさにそういう感じですよね。僕、今まで書いてきた曲を思い返してみると、ちゃんと結ばれた恋愛ソングを書いたことがなくて。でも確かに、自分の人生を振り返ると、そんなことばかりだったなぁ……なんて(苦笑)。

――“来世で会えたら NE-CHU-SHOW”で終わるなんて、切なすぎると思っていたんですよ。しかし今の良い話なので、一旦宇宙から来た侵略者という設定を忘れて聞き続けてもいいですか?

ぼっち 地球外生命体でも恋はしますから(笑)。ぜひ恋に恋している片想い中の皆さんにカラオケでこの曲を歌ってもらいたいですね。それで共感したり恋をするエネルギーに変えてもらいたいです。もしくは、実は意中の人と一緒にカラオケに行ってこの曲歌っちゃうとか!

――それができるくらいなら1人でモヤモヤしてなくないですか(笑)。

ぼっち 確かに!そこまで辿り着けているならもう良い感じなのか……。

――ボーカルのニュアンスもパートごとにガラリと変わるような印象もあって、こだわりをすごく感じました。

ぼっち 今回、全部宅録でレコーディングしたんですよ。

――え!?完全に自宅で?

ぼっち はい。この曲はこだわりたいと思って。スタジオで録ったほうが音質は良いかもしれないんですけど、それよりも時間をかけてじっくり録りたくて、3日間くらいかけてレコーディングしました。歌いながら「ここはもっとこういう歌い方がいいかな」とか試行錯誤を繰り返して、改めて自分の歌と向き合っていった感じです。細かく細かく、自分の理想を追求した歌を詰め込んでいった感じですね。

――本当に真面目でストイックな方ですよね。

ぼっち いやいやいや!だって悔いを残したくないじゃないですか。数年後にバージョン違いが出たりすることもありますけど、1回リリースされてしまうとリテイクはできませんし。

――そりゃそうですけど(笑)。いや、ここまでこだわって生み出された曲を受け取ったアニメ制作サイドの皆さん、本当に嬉しかっただろうなと思います。曲を聴けばどれだけ『ババンババンバンバンパイア』のことを思って制作したのかが伝わってきますから。

ぼっち そうだと良いなって思いながら、毎回アニメの主題歌は制作させていただいています。実際にそう言っていただくことも多くて本当に嬉しいんですよね。「NE-CHU-SHOW」というタイトルだけみたら「ふざけてんのか」と言われそうですけど、ちゃんと内容まで読み込んだ上で「良かったです」と言っていただけるので、感激しますよね。

――アニソン作るの天職なんじゃないですか?

ぼっち 多分そうです。いや、絶対そうです(きっぱり)。だからもっとたくさんアニソン作らせてくださせぇ……!

見出し:シンガーソングライターとしての真骨頂と“ぼっち”であることのアイデンティティ

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