INTERVIEW
2025.02.21
TVアニメ『ギルドの受付嬢ですが、残業は嫌なのでボスをソロ討伐しようと思います』（以下、『ギルます』）のEDテーマ、ナナヲアカリのニューシングル「明日の私に幸あれ」がリリースされる。 作詞作曲を玉屋2060%（Wienners)が手掛けた本作は、印象的にリフレインする“ぱっぱら”のフレーズ、そして作品に寄り添ったワードで「残業絶対回避ソング」として仕上がっている。その制作過程についてナナヲアカリに話を聞いた。
INTERVIEW & TEXT BY 青木佑磨（学園祭学園）
――「明日の私に幸あれ」は過去にもナナヲさんの楽曲を手掛けてきた玉屋2060%（Wienners)さんによる楽曲です。まずは今回のタッグに至った経緯についてお聞かせください。
ナナヲアカリ 『ギルます』EDテーマのタイアップのお話をまずいただいて、オープニングは壮大な感じになるのでエンディングはすこぶるキャッチーでお願いしたいと言われていたんですよ。それで原作を読ませていただいて物語や雰囲気を把握して。いつもだったらアニメ主題歌をナナヲが担当する時はナユタン(星人)さんに曲をお願いすることが多いんですけど今回はライフソングというか、原作の『ギルます』に「完全放棄宣言」(玉屋2060%制作によるナナヲアカリ楽曲)と通ずるものがあるなと思ったんですよ。それで玉屋さんに楽曲をお願いすることになりました。
――ナナヲさんから見た玉屋さんはどんな方なんでしょうか？
ナナヲ 玉屋さんって一言で言うと“太陽”みたいな人なんです。誰とでも分け隔てなく接してくれるし、いつも快活で話もよく聞いてくれる。かと思えばライブはかっこいいし、ヒーローみたいな印象もあるんですよ。話しているとすごく前向きになれる、「こういう人になりたい」と思わせてくれるような。だから一緒に楽曲を作るとすごくいい塩梅のものができるんですよ。「完全放棄宣言」しかり「NOBODY KNOWS PARTY feat. 玉屋2060%（Wienners)」 （ナナヲアカリと玉屋2060%によるコラボ楽曲)しかり。
――今回の楽曲はキャッチーだけどあけすけにポジティブにはなりきらない絶妙なラインの曲ですよね。玉屋さんとはどんなお話をされたのでしょうか？
ナナヲ 『ギルます』の主人公・アリナ （・クローバー）ちゃんが「絶対に残業したくない」と言っているんですけど、これって働いている人全員に共通するテーマじゃないですか。だからもう直球で「残業を絶対したくない歌にしましょう」って玉屋さんにお伝えしました（笑）。作品の世界観はファンタジーですけど、アリナちゃんの言っていることって現代の人に刺さると思ったので、そのまま曲にしたいなというところから制作を進めていきました。あともう1つ明確にお願いしていたことがあって。私は平成のアニメを観て育ってきて、当時のアニメEDテーマには印象的なフレーズがあるものが多いイメージがあり、そういうものを入れたいねってチームで話していて。私のイメージでいうと『クレヨンしんちゃん』の「ダメダメのうた」やアニメじゃないけど初音ミクちゃんの「ぽっぴっぽー」に登場するような繰り返しループする印象的なフレーズが欲しかったんです。それで今回は歌詞に“ぱっぱら”というフレーズをたくさん入れてもらいました。
――初めてこの曲を聴いた時に「子供の頃に聴いていたアニメソングってこんなだったな」と感じていたのですが、意図的だったんですね。
ナナヲ そうなんですよ。リバイバルじゃないですけど、“あの頃”の雰囲気の曲をやりたいねって。伝わっていたのであれば嬉しいです。
――玉屋さんから届いた楽曲の第一印象はいかがでしたか？
ナナヲ もう何も言うことなかったです。ナナヲアカリというアーティストと、ナナヲアカリ個人への解像度が高過ぎました。玉屋さんは最初からそこの解像度が高かったんですけど、積み重ねるほどに解像度がさらに上がっていく印象があります。
――歌うにあたって「この言葉は違うな」などもまるでなかったと。
ナナヲ なかったですね。
――ナナヲさんの過去の楽曲を聴いていても思うことですが、ネガティブとダウナーって共存しなくてもいいんだなと思いました。積極的ネガティブと言いますか。
ナナヲ 前向きネガティブですよね、意味わかんない言葉ですけど（笑）。より楽をするために最低限のことは頑張ろうっていう。でも自分もそうだし、みんなそうなんだろうなと思っていて。ほとんどの人が嫌々言いながらやるべきことをやってるのを見て、今回の楽曲は結果として本質を歌った曲になったなと思います。
――確かにこれ、誰も言ってくれないですもんね。かつこういったアーティストイメージを積み重ねてきたナナヲさんが本気で言わないと、皮肉っぽく聴こえてしまう気がします。本気だから説得力がある。
ナナヲ 割とそういえばこういうことをずっと歌ってたな、と思います。たまたまそれがアリナちゃんの心情とすごくリンクしていたんですね。
――ご本人的に刺さった言葉などはありますか？
ナナヲ 2番終わりの“誰かのためとかそんなんじゃなく明日の自分のため（Fight)”から始まる4フレーズですね。ここはもう全部を通しての真理というか、超救われるって感じなんですよ。初めて聴いた時に「ありがとうございます」って思いました（笑）。
――クレジットにある「ポエトリー：ナナヲアカリ」はどの部分を指しているんですか？
ナナヲ 2番のAメロ、ジャジーになるところのフレーズですね。年々ポエトリーの定義が広くなりすぎてわからなくなりますよね（笑）。ここは丸々インスト状態で空いていたので、とにかく言葉として気持ちの良いものを作っていきました。ベースとリズムがとても格好良かったのでそれを害さないようにしたくて、具体的な内容を言葉にしつつも口すべりをよくすることを大事にしました。『ギルます』のストーリー全体を説明しながら、「アリナちゃんはこういう子ですよ」というのを掘り下げつつ、音として気持ちいいものになるよう意識して書きましたね。
――ボーカルレコーディングに関してはいかがでしたか？
ナナヲ 歌は普段のナナヲの曲よりキーが大分低くいのですが、あまり力み過ぎたくないということもあって。特に2番のBメロなんかは普段出さない音域でありながらもハキハキしたリズムになるのでちょっと難しかったですね。思ったより声が張れない状態で自分のトップの音よりかなり低い声を出さないといけないので、そこを得意な音域にするために念入りに練習しました。
――どのような練習をしたのでしょうか？
ナナヲ ボイトレですね。先生に相談して、「子音を強く出せば音が低くてもはっきり聴こえるから、アタック強めを意識してみて」とか色んなアドバイスをもらって。やっていくうちにかなり馴染んだ感じになりました。
――低いところを出したいからって腹から鳴らしたら意味が変わってしまう曲ですもんね。明るくてリズミカルな曲ですけど、ハイトーンで突き抜ける部分はないし。
ナナヲ そうなんです。ロングトーンで「うわーっ」て強く押すところがないから、ハキハキ軽快に歌うのが大事な曲でしたね。Bメロの“自分時間 堕落タイム確保”辺りもリズムをちょっとでもミスるとモタって聴こえちゃうのでかなり集中ポイントでした（笑）。
――リスナー側からすると“ナナヲアカリ節”に聴こえて、楽勝で歌いこなせているように感じてしまうんですよね。
ナナヲ 一度慣れてしまえば節でいけるんですけど、落とし込むのにはかなり時間が必要でした。「ブループリント」より苦戦したかも。
――「ブループリント」のインタビューの時にタイアップ作ファンの人たちに愛されるのはもちろん、ナナヲアカリファン側にとっても普遍的な曲になるように作るというお話を伺いました。今回の楽曲は自身のリスナー層にもフィットすると思いますか？
ナナヲ フィットすると思います。やっぱり自分に自信のない子がナナヲアカリリスナーに多いと思うので。たとえアニメのタイアップ曲じゃなくても聴いてもらえる1曲になったと思います。
――『ギルます』公式からは出演声優のみなさんがこの曲を踊る動画も出ていますし、みんなが踊る流行歌になる可能性も秘めていますよね。
ナナヲ 嬉しいですね。アニメサイドさんがすごくコミットしてくれているので本当にありがたいです。せっかくなら働いてない世代にも踊ってほしいですよね。「これから働くことになるんだぞ！踊ってられんのは今のうちだぞ！」って（笑）。残業を知らない世代にも踊ってほしいし、仕事帰りのスーツのおじさんにも踊ってほしいです。
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